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【 青煮梅 】 [新潟県]

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【 青梅 】 

先日Y博士と新潟の弥彦山に行った時です。神社の入口のお店でうどんでも食べようか・・と一軒のお店に入りました。そのお店のお品書きに

「青煮梅 本日に限り、300円を150円」とあるのに気づきました。 

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オヒョウは、どんな買い物であれ、通常より安く買えると嬉しくなる性分です。買い物の中身が、魅力的な品物か、あるいは今の自分に必要な品物か・・・という事はどうでもよくて、上手な買い物をして得をした・・という事に満足する訳です。自分ではそのような性格をアウトレットショッピング症候群と名付けていますが、家内は私の事を、単にがめつい貧乏性だと見抜いています。

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話が脱線しましたが、本日半額という文句につられたオヒョウは、思わずきつねうどんの注文に続けて「その青煮梅ってのをひとつ」と指さしました。 

ウェイトレスの女性(おそらく昭和の時代には美人だったと思われる上品な人)は、「では食後にお持ちしましょうか?」と答えます。

(・・すると青煮梅というのは、食後のデザートみたいなものなのか・・)

「 ええっと、ところで注文してから訊くのも変だけど、その青煮梅ってどんな食べ物ですか? 」ウェイトレスは、怪訝な顔をしましたが、説明をしてくれました。

「 これは焼酎に漬け込んだ梅の実の皮を向いて、糖蜜のシロップで煮込んだものです。デザートとしていただけます 」

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ああ、なるほど、梅酒の瓶に漬け込んである梅の実みたいなものだね。子供の頃、あの梅の実を食べるのが大好きだったけれど、なにせ焼酎が染み込んでいるから、子供は1個しか食べてはいけない・・と厳しく言われたものだ・・と納得しました。

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踵を返して、調理場に向かうウェイトレスに、オヒョウは再び質問しました。

「あっ! それでその青煮梅を食べた後、車を運転したら飲酒運転になるかね?」

彼女は再び怪訝な顔をして、回答に窮した様子です。

「 さあ、どうでしょうか。お酒を飲まれない方は奈良漬を食べても酔われますし。なんなら、お子様用に梅の実を抜いてシロップだけでもおだしできますが?」

「いえ、結構です。梅の実付きでお願いします」

実際、オヒョウの体重当たりのアルコール量で考えた場合、梅の実1個が含んでいる焼酎の量では酒気帯びになるはずもないのです。

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でも世の中には、小柄な人も、アルコールに不慣れな人もいます。その方たちは、ウィスキーボンボンを食べても、洋酒チョコレートを食べても、あるいはスタミナドリンクを飲んでも、酔ってしまうかも知れません。彼らには勧められないデザートのようです。

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再び調理場に戻ろうとするウェイトレスに、オヒョウはもう一度声を掛けようとして止めました。もうひとつ気がかりな事があったのですが、これ以上、くだらない質問で、彼女を煩わすのは、まずいと思ったからです。

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オヒョウの頭の中では、「あおに・・・」とくれば、自動的に脳内ワープロで「青丹よし」と変換されます。つまり鮮やかな青と鮮やかな赤のコントラストが美しいありさま・・を意味します。しかし、お品書きには「青煮梅」です。これは漢字の間違いではないのか? 一体何色の食べ物なのか?

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出された、器の中は、緑色だけです。確かに青梅を煮ているので青ですが、実際は緑です。赤色はありません。

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オヒョウなら、器に紅梅の花びらでも添えて、お品書きを青丹梅とするのですが、そこまでの工夫は無いようです。そして、ちょっとがっかりしたのは、梅の香りが全くしない事です。梅の実の青酸を無毒化するためにアルコールに長期間漬け込んでおけば、香りなど飛んでしまってもしかたありませんが、ちょっと詰まりません。このデザートは確かに美味しかったのですが、梅の実固有の味わいを活かしていないように思いました。

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ちなみに、オヒョウの家がある茨城県の名産品である、のし梅は単なる梅のゼリーですが、竹の皮をめくると強い梅の香りがします。

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実は、オヒョウはバラ科の植物の果実は全て好きです。その中で、梅の実は生で食べられない代わりに、いろいろな食べ方があり、日本の食文化にとって大きな存在です・・・。と考えたところで、思い出しました。日本では梅の実といえば、紀州の南高梅だとか、水戸の偕楽園の名物の梅を思い浮かべますが、本当は中国が梅の本場のようです。 梅の実の食べ方も、中国にはいろいろあるようです。

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でも、中国には、日本と同じ味の梅干しはないようです。あの唾がたくさん分泌されるくらいの酸っぱさと塩辛さを持った梅干しは日本ならではの味覚かも知れません。

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以前 デュッセルドルフの日本料理店で、「日本食は大好きだ。刺身だって味噌汁だって、何でもOKだ」と豪語するドイツ人に言い返した事があります。

「梅干をおいしいと言えなければ、日本食ファンとは言えない。 そして本当の日本食ファンとは納豆イーターだ 」と言って、困惑させたのです。 彼はよく分からない様子だったので、その場に梅干を持ってこさせ、味見させました。予想を超える酸っぱさに驚いた彼の顔を思い出します。

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オヒョウなら、甘ったるいだけのデザートでなく、紫蘇で赤くした梅干しも青梅と一緒に器に入れてアクセントにし、梅の爽やかな香りを持たせて本当の「青丹梅」とするのですが・・・。

でも、それでは、やはり150円のアウトレット価格は無理かな?


【 暈酒山門に入るを許さず 】 [新潟県]

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【 暈酒山門に入るを許さず 】 

先日、Y博士と新潟の雪深い山里にある禅寺を訪ねました。寺の名前は明白山慈光寺。楠木正成ゆかりの曹洞宗の寺です。

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寺に至る杉並木の入り口に戒壇石なるものが置かれ、禅寺にはおなじみの言葉が刻んであります。 「禁暈酒」その横には丁寧に木製の立て札があり、「不許暈酒入山門:暈酒の山門に入るを許さず」と書いてあります。


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オヒョウは、この文言が有名なのは黄檗宗万福寺だったと記憶しますが、黄檗宗に限らず、曹洞宗でも臨済宗でもこの戒壇石があるようで、禅寺にはおなじみの言葉の様です。オヒョウがこの言葉を知ったのは、漱石の「草枕」か「虞美人草」のどちらかです。以前はその文章を記憶していたのですが、もう忘れました。

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余談ですが、明治の文豪を語る時、人々は山田美妙の美文を最上位に置くといいますが、オヒョウには、漱石の前期の作品も十分に美文であり、暗誦に適していると思います。「草枕」は特に記憶に値する文章です。

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脱線しましたが、この「葷酒山門に入るを許さず」になじみのない読者諸兄の方に申し上げれば、これは「暈:臭の強い野菜(ニラ、ネギなど)や酒を寺に持ち込む事を禁止する」という意味で、それらは禅の修行の妨げになるからだ・・・という事です。

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酒はともかく、臭の強い野菜がどうして駄目なのだ?と首を傾げますが、ニラやニンニクは精力がつきすぎて、修行の邪魔になる・・・と言われれば、ああ成程と理解できます。

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ところで酒と宗教の関係は微妙です。イスラム教が酒を厳禁にしているのは有名ですが、他の宗教でも酒類をどう扱うかは重要な問題です。キリスト教では葡萄酒をキリストの血に例えている訳ですから、アルコール類を禁止する訳にはいきません。

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しかし、強い酒で酩酊する事はキリスト者にとって好ましいとは言えません。 という事で強いアルコールはこっそりと蒸留し、こっそりと寺院内で僧侶たちに飲まれていた様です。オヒョウの好きな甘いリキュール、ベネディクティンなどをみると、ベネディクト修道院で発明されています。他にも修道院の名前を冠したリキュールが多くある事をみると、これは修道士が飲んだだけでなく、布教活動にも、甘いお酒を利用したのではないか?とさえ思ってしまいます。

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仏教では、五戒の内の一つとして、飲酒を原則として禁じていますが、般若湯と称して、薬の如く扱ってちゃっかり飲んでいる宗派もあります。おそらくは、飲酒自体が悪いのではなく、飲酒によって他の戒律を犯しやすくなるから禁じられたのであり、自分を失わなければ飲酒しても良い・・という勝手な解釈があるのでしょう。

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この考え方は、以前の米国での飲酒運転に関する解釈と似ています。「飲んでいても、正常に運転できればよい。酔っ払ってはダメ」というもので、論語にある「酒は量なし、乱に至らず」に通じる発想です。その米国も、今では曖昧な解釈は不可で、基本的に飲んでいてはダメという発想になったそうです。

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話が脱線しましたが、日本の仏教でも戒律が厳しい部類に入る禅宗は、勿論、酒はダメ・・なハズですが、そこはいろいろな屁理屈で抜け道を探せます。だからこんな碑が必要になります。

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オヒョウの祖父は、この文章を「暈は許さず、酒山門に入る・・とも読める」と言い、酒の持ち込みを認める文章と解釈できると笑っていました。しかしこれは祖父のオリジナルではなく、法学者の山田晟氏の言葉のようです。「ようです」と自信がないのは、これは同じく法学者の長尾龍一氏のホームページからの孫引きだからです。http://book.geocities.jp/ruichi_nagao/NewspaperNov.2009.html

法律の文言の厳密な解釈を求められる法学者ならではの言葉かも知れません。

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実は、この文章には、別の読み方も可能です。

 許されざれども、暈酒山門に入る

  許されずとも、暈酒山門に入る

という物で、これは××を禁止するという命令文ではなく、戒律を破る弱い人間の業(さが)を認めてしまう、ちょっとペーソスのある、叙景文です。

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オヒョウは、後の方の解釈が好きです。

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同じ文章に対して、複数の解釈ができるのは、漢文の特徴とも言えます。もともと外国の古典を直接、日本語に転換する事は、容易ではありませんが、それに加えて中国語固有の事情があるとオヒョウは思っていました。

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具体的には活用のない表意文字である漢字を並べ、一方で助詞がない構成であるため、目的格や主語述語を多様に解釈できるかも知れない・・と思っていたからです。 しかし、中国で暮らして理解した事ですが、現代中国語は、誤解や複数解釈の可能性が非常に低い、非常に正確な表現をする言語です。

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むしろ、多様な解釈が可能なのは日本語の方です。今も、政府が憲法九条の扱いを変える際、文章をいじらずに解釈の変更で対応したりしています。それを姑息とは言いませんが、外国に対しては説明の難しい話です。 憲法は日本国内の法律ですが、憲法九条などは外国に対しても、明確な説明が必要な法律です。

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それに、今の日本国憲法の原案はもともと英文だったので、解釈の違いによる議論の余地は少ないはずなのですが・・・・。自然科学系の研究者は一般に、文章の解釈や、文言の意味についてこだわり、議論する事をしばしば軽蔑します。

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でも法学者たちはそうではないようです。そういえば、前掲の山田晟氏も長尾龍一氏も日本の法学の泰斗です。

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文章の解釈を検討する事が専門である彼らが、冗談で禅寺の看板についてコメントしたもので、これは面白いと言えますが、法律については多様な解釈を認めるような世界はゴメンです。


【 菩薩の顔 】 [新潟県]

【 菩薩の顔 】 

近年、若い女性の間で仏像鑑賞を趣味にする人が増えているという話を聞きました。しかし、それはおそらく一過性の流行にすぎない・・とオヒョウは思いました。 なぜなら、彼女たちの人気を集めたのは、奈良興福寺の阿修羅像だけで、多様な仏教芸術全てに興味を示した訳ではないからです。そして彼女たちの多くが、仏像彫刻の背後にある、宗教観については無頓着であると聞いていたからです。 

でも仏像を眺め、その美しさを愛でる事はすばらしい事だと思います。 阿修羅像は、昔日本史の教科書の表紙になって、その美しい少年の顔が広く知られました。向田邦子の「阿修羅のごとく」のタイトルバックにも使われたと記憶します。

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かく言うオヒョウは、仏像について全く知識を持ちませんが、それでも、美しい仏像を見れば、すばらしいと思います。 亀井勝一郎のように小難しい理屈はいりません。そしてとりわけ好きなのは弥勒菩薩です。弥勒菩薩の像が日本中に何体あるのか知りませんが、半跏思惟像で特に有名なのは3体だと聞いています。 広隆寺の像、中宮寺の像、そして野中寺の像です。写真で比較する限り、中宮寺の像と広隆寺の像が特に優れているように思えます。

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最初に中宮寺の弥勒菩薩の写真を見た時、オヒョウは思わず、指の形を真似て、そっと自分の頬に触ってみました。その時、鏡が側になかったのは幸いです。 もし弥勒菩薩を真似たその表情が鏡に映ったら、むくつけきこのナルシストは、自己嫌悪にさいなまれたはずです。

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聞く所では、弥勒菩薩の半跏思惟像については朝鮮半島の仏像芸術の影響を強く受けており、これらの作品が日本製か朝鮮製かで近年まで議論があったそうです。

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オヒョウは広隆寺の半跏思惟像の実物は見た事があります。しかし中宮寺のそれは見たことがありません。 いつか見てみたいと思っていました。そして今年、その中宮寺の半跏思惟像が新潟市の美術館にやってきて、実物を見ることができると聞いていたのですが・・・、中止になりそうです。実に残念です。

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何でも、その美術館では、過去にカビが発生したり、虫がわいたりした事があって、文化庁が今回の展示にクレームを付けたそうです。美術館側では、館長に詰め腹を切らせて、責任を取った形にして、なんとか弥勒菩薩展示を実現させたいようですが、難しいかも知れません。

http://www.niigata-nippo.co.jp/news/pref/9564.html

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そもそも、館長には監督不行き届きの責任はあるでしょうが、カビや虫の発生防止は、美術館長の仕事なのか・・? カビ発生で辞職せざるをえないのなら、高松塚古墳の壁画をカビでダメにした文化庁の長官はとっくにクビです。

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それはともかく、自分の無知を承知で独断と偏見を申し上げます。アジアの仏像にはそれぞれ、瞑想し、深く思索している表情があります。どの顔にもアルカイックスマイルというのでしょうか、聡明さと心の平安を含んだ穏やかな至福の表情があります。

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瞑想を思わせる仏像の極致が弥勒菩薩半跏思惟像です。半分組んだあぐらは、リラックスした状態を示し、頬に軽く当てた指と薄く開けたまぶたは、哲学を考える人の表情です。

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そこにいくと、西洋の彫刻は、ギリシャであれ、ローマであれ、深い思索を伺わせる表情が顔にありません。西洋彫刻の像では半眼の表情はなく、おおむね目を見開いています。瞑想する像はなく、思索を思わせる像も知りません。 無論、男性の筋肉美や女性の肉体美の迫力は圧倒されるほどすばらしいのですが、そこには瞑想も思索もありません。

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ロダンの「考える人」は、確かに「考える人」ですが、あれはトイレの便器に腰をおろした時の姿勢です。顔の表情から、その思索を伺う事はできません。もっとも、オヒョウはトイレの中でよく考え事をしますが・・・。

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ところで仏像の顔の表情を素晴らしいと思うのに、オヒョウは20年を要しました。本当に仏像のすばらしさを理解するにはもっと時間がかかるかも知れませんし、或いはオヒョウには無理かも知れません。

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今からン十年前、室生犀星の研究家である新保千代子氏の講演を、中学生のオヒョウが聞いた事があります。 彼女の話では、晩年の犀星は、なぜか幾つものお地蔵さんを庭に置き、さらにそれらを水平に地面に埋めて地表から顔が覗く状態にして鑑賞したそうです。 不可解に思って尋ねる人に対して犀星は、「僕はこの姿が一番美しいと思うんだ」と説明したそうです。

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全くオヒョウには到達できない、不思議な境地です。多分、死ぬまで仏像の美しさの事を考えても、その発想には至らないかも知れません。 そして美しい弥勒菩薩半跏思惟像を地に埋めようとは決して思わないでしょう。


【 彼のカーボン、彼女のβ合金 】 [新潟県]

【 彼のカーボン、彼女のβ合金 】 

読者の皆様は、今度のバンクーバー五輪では、何に注目されるでしょうか?オヒョウは、一人ひとりの選手の活躍ではなく、1本(2本というべきか)のスキーのストックに注目します。 具体的にはモーグルの上村愛子選手の銀色のストックです。 そして、それはオヒョウだけでなく、上越地区の少なからぬ人々の思いだと思います。

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彼女が手にして試合に挑むストックは、Ti(チタン)のβ合金製です。上村愛子が契約するスポーツ用品メーカーのアルペンからの依頼で、犀潟鉄工が製作したものですが、材料提供や加工方法の研究では、住金直江津や日本ステンレス工材が協力しています。 上越の金属加工技術の粋を集めた作品なのです。チタン合金のストックは、数年前にも製造されたそうですが、あまりにも高価なので、まもなく姿を消したそうです。もし上村が活躍すれば、また売れ出すかも知れません。

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チタンのβ合金とは、15333合金とも呼ばれ、15V-3Cr-3Sn-3Alの組成の、体心立方格子型の材料です。 航空機などに使われるα+βの6Al-4Vのチタン合金に比べて、塑性加工を容易にした金属です。チタン合金の管を絞って細くするのは、かなり難しい加工ですから、β合金を使うのも当然・・・と思う反面、 本当にチタンがいいのかな?という気もします。

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オヒョウの同僚で、以前大手のスキーメーカーに勤務していたNさんは、ちょっと首を傾げます。彼によれば、ストックに求められる性能は、強度や軽さの他に、振動吸収特性または衝撃吸収特性だそうです。金属の中では、マグネシウムなどと並んで、チタンは振動吸収性能に優れた素材ですが、複合材料に比べてどうなのでしょうか?

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「それに複合材料は、繊維の配列方向を荷重のかかる方向に応じて調整できるという特長があるし、全体としてチタン合金に比べて劣るとは必ずしも言えないでしょう」と彼は語ります。

しかし、それは上越市では少数派の意見でしょう。上越市には、伝統的にステンレスや非鉄金属の加工に独特の技術があるのです。 彼女のストックはその技術の集大成でもあるのです。一部の技術者は、我が子がオリンピックに出場するように感じているかも知れません。

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しかし、ストックはそれほど重要な存在でしょうか?オヒョウの同僚によれば、ストックの役割は競技種目によって異なるというのです。ストックを杖にして、ひたすら前に進むノルディックの距離競技ではストックは重要です。 一方、アルペンの滑降競技では、バランスを取る為に使いますが、雪面にストックが刺さる事はほとんどありません。アルペンでも回転競技であればポールをなぎ倒す楯の役割が重要です。上村愛子のモーグルではターンの度に、ストックを使いますから、そこそこ重要な道具です。彼女はそれにこだわりました。

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それにしても、ウィンタースポーツは道具が重要です。

水泳でさえ、競泳水着の善し悪しで勝敗が決まるのですから、スキーやスケートでは、用具の善し悪しで相当、差が付きそうです。もし、上村のチタンのストックの評判が良ければ、スピードスケートの刃にも、チタンを採用して軽量化を図るかも知れませんし、ボブスレーやリュージュの橇の刃の部分もチタンになるかも知れません。そうなると、お金持ちしか勝てなくなり、ちょっとつまりません。 赤道直下の国でもお金持ちなら、上等な橇を手に入れ、練習しなくてもボブスレーは金メダルです。

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そう言えば、彼女の夫の皆川賢太郎は、アルペンの選手です。彼が使うのは外国のSWICK社のストック MACH CT1だそうです。これはカーボンファイバー90%の複合材料です。 夫婦で好みが違うのです。

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そしてスポーツ用品だけでなく、航空機材料などいろいろなハイテク製品の世界で、軽合金と複合材料は競合し、覇権を争っています。ここ20年は複合材料が勝利し、軽合金が敗北する事態が続いています。

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もし、バンクーバーで皆川賢太郎がカーボンのストックで大活躍し、チタン合金の上村愛子の成績がふるわなかったら、上越の人達はがっかりするでしょう。そして、日本中の金属屋が落胆するでしょう。(これはちょっと大げさですが・・・)

勿論、オヒョウの願いは、二人とも大活躍する事です。

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【 冬の歌 】 [新潟県]

【 冬の歌 】

 雪紘さんのブログ「みさきねっと」で、車の中でかけたい冬の曲は?というお題がでました。

http://misaki-net.blog.so-net.ne.jp/ 

これは難しい問題です。好きな冬の曲など、あまりにも多いので、選べません。でも、強いて挙げるなら・・・・、

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オヒョウはその時の天候、雰囲気で最適の曲は異なると思います。具体的には、雪の量で変わってきます。 

・雪の降らない寒風の中を歩くなら、サイモンとガーファンクルの「冬の散歩道」、

・チラチラと雪が舞う程度の駅のホームなら、イルカの「なごり雪」、

・しんしんと降る雪の中を歩くなら、高英男の「雪の降る街を」

・スキー場への雪道をドライブするなら、ユーミンの「サーフ天国、スキー天国」

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この内、「なごり雪」は冬と言うより春の曲ですが・・・。

ああ、これでオヒョウの世代というか年齢が判ってしまいました。

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冬の歌は、だいたい重苦しくて、陰鬱です。恋の歌より失恋の歌が多く、希望の歌より別れの歌が似合います。ハツラツとした、朗らかな歌にしようとすると、どうしてもウィンタースポーツと絡めるしかありません。ユーミンの歌だけでなくスキーの歌はだいたい明るい曲が多いのです。

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では暗く悲しい冬の歌の極北にあるものは何でしょうか?オヒョウは、シューベルトの歌曲「冬の旅」であると思います。暗い曲ばかりですが、オヒョウは好きです。 

でも車の中で聴く曲ではありませんね。それはともかく、実際、オーストリアやドイツの冬は、暗く、寒く、気が滅入ります。ましてシューベルトの時代は、スタッドレスタイヤも凍結防止剤散布もなかったから冬の旅行は大変だったはずです・・・とくだらないボケを言ってみます。

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「冬の旅」全体を聞く事はあまりありませんが、その中の「菩提樹」の部分は特に有名ですし、朗々と歌う曲ですから、ファンも多いと思います。第九の「歓びの歌」と「菩提樹」だけはドイツ語で歌えるという人も多いそうです。 勿論、オヒョウには無理ですし、第一、私は歌が苦手です。

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そう言えば、オヒョウの家内は、ドイツ語で歌を歌うそうです。歌を歌う為に、第二外国語はドイツ語を選んだ・・と本人から聞きました。第九だけでなく「レクイエム」や「荘厳ミサ」なども歌うはずですが、結婚してからこの方、ずっと家内の歌う声を聴いた事がありません。これはいかなる事か? 3510639 

ちなみに、写真はオヒョウの勤務先の工場から見える風景です。2mの積雪ともなると、もはや歌を歌う余裕もありません。


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【 雪国はつらいよ条例 その3 】 [新潟県]

【 雪国はつらいよ条例 その3 】

帰宅したオヒョウは、駐車場の積雪が朝よりもずっと深くなっている事に気づきました。 そして自分の駐車区画(03番)が2m以上の雪山になっている事を確認しました。「 これは天然自然に降った雪ではないな・・・ 」

ふと見れば、隣の04番の駐車区画は、雪が少なく停車できる状況です。

「 ははあ、僕のスペースに雪を捨てたな・・・ 」

・・・・・・

自分の区画の雪の量を見ると、とても除雪する気になりません。それに雪を排除するといっても、捨てる場所もありません。結局お隣さんに雪を押し戻すのでは、同じ事です。「仕方ないな、別の駐車場所を探そう・・・」

・・・・・・

しかし、今度は通路上に停めた自分の車が動きません。いたずらにタイヤが空回りするばかりです。4輪駆動だというのに・・・。スコップでタイヤの前後を掘り起こすしかないのですが、その体力気力はなくなっていました。

「通路上で邪魔になる位置ではないし、この奥には車もない。 今晩はこのまま停めさせてもらおう・・」

・・・・・・

正確には、その場所の奥には6台分の駐車スペースがあったのですが、運転を諦めて氷漬けになっている車と、雪の中を脱出して帰ってこない車がほとんどだったのです。・・・・・・そこで、オヒョウは、同じく雪の山になっている02番の駐車区画と自分の03番の駐車区画の前に車を置いて、部屋へ戻ったのです。しかし・・

・・・・・・

翌朝、前日より早く駐車場へ行くと、昨日と同じようにBMWの持ち主が雪かきをしていて、オヒョウを見ると言いました。

「昨晩02番の駐車区画の人が、せっかく雪かきしたのに、あなたの車がブロックしているので、駐車できない・・と困り果てて、結局よそに車をもっていきましたよ」

「 ええ? 02番は雪の山だったのでは?」でも朝の光の中で見れば、02番の区画はかなり除雪されていて、確かに車が入れる状態です。雪の山になっているのは、オヒョウの03番だけです。そして、私の車の駐車位置は確かに02番をブロックする位置でした。

・・・・・・

しまった。昨晩は錯覚して02番も除雪していないと思ってしまった・・。何だか、周囲でオヒョウだけが除雪作業を怠って雪の山を残し、しかも他の除雪した区画を塞ぐように通路に駐車して、他人に迷惑をかけたみたいです。

・・・・・・

ああ、それは申し訳ないし、恥ずかしい。 何とかしなくては・・でも、考えてみれば、02番も04番も、オヒョウの03番に雪を捨てて、それでオヒョウは除雪できなかったのです。彼らも、私に迷惑を掛けているのではないか・・。

・・・・・・

ちょっと反論したい思いもありますが、そこは隣に駐車するご近所さんです。喧嘩になってもいけない・・。こちらから謝らなくては。

・・・・・・

オヒョウは、昼休みにアパートの管理会社に電話をかけました。最初は苦情から言います。

「契約では、駐車場の除雪をしてくれるはずですが、今年は全然除雪に来ないではないですか?いったい、どうなっているのですか?」

「済みません。契約している除雪業者を1社から2社に増やして対応しているのですが、なかなかはかどらなくて、順番待ちになっているのです。オヒョウ様の駐車場も、今週中には除雪できる見込みですが、現時点では、何時除雪できると確約できない状況です」

・・・・・・

管理会社の言い分も分かります。確かに市内全域で除雪業者は大忙しですが、手が回らない様子です。 しかも、除雪自体はできても、雪の捨て場所がありません。 郊外であれば、田んぼに捨てる事ができますが、都心では川に捨てるしかありません。 関川の河原に用意された排雪場所に向かうダンプカーが、順番待ちの長い列を作り、大渋滞の原因になっている事もオヒョウは知っています。

・・・・・・

そこでオヒョウは話題を変え、「結果的に02番の駐車区画の人に迷惑をかけてしまった。 お詫びしたいので、その人の部屋番号を教えて欲しい」

管理会社は 「部屋番号とお名前は、個人情報なので開示できません。もし、言伝やお届け品があれば、弊社でお預かりし、責任をもってお届けします」 

(後で分かった事ですが、02番の区画の人は若い女性だったようです。 それなら確かにオヒョウなどには知られたくなかったのかも)。

元はと言えば、管理会社の責任ではないか・・・と思いますが、オヒョウはお詫びの印に「柿の種」を届けて貰う事にしました。

・・・・・・

最後は、より深刻な問題です。

「除雪が今すぐできない事も分かったが、では今日・明日、僕はどこに車を停めればいいのですか? まさか近所のスーパーや郵便局の駐車場に停めっぱなしという事もできないでしょう。 契約している以上、御社で責任を持って、駐車場を用意して教えてくださいよ」

「それは困りました。今の時点でご用意できる駐車場はありません。なんとか、ご自分で駐車できる場所をお探し願えませんか」

・・・・・・

何とも無責任な話ではないか・・・とオヒョウは不快になりながら、「柿の種」を携えて、管理会社の事務所に向かいました。 都心の商店街にある管理会社に着いて、車を駐車しようとすると、なんとその駐車場も深い雪に覆われて使用不能の状態でした。 仕方なく、ただでさえ狭くなった車道上に駐車してハザードランプを点けて、オヒョウは事務所に入りました。

「とにかく駐車スペースを確保するのは、あなた方の責任ではないか?融雪パイプもヒーターも無いという事自体、問題だ」と、言うべき事を言って、オヒョウは席を立ち、市内で長時間の駐車ができる場所を探し回りました。

そこで分かった事は、どんな駐車スペースも必ず誰かが除雪してこしらえた空間であり、無断で停めたり、無償で借りられるものではないという事です。 もともと土地は神が創造したものであり、私有物とする事には素朴な疑問がありましたが、今の季節、駐車スペースは誰かが創造したものだったのです・・・。

・・・・・・

結局、駐車場は見つからず、オヒョウが途方に暮れた時、携帯電話が鳴りました。 管理会社からです。

「隣の駐車場の17番の駐車区画が、未契約で停めてもいい状態なので、そこをお使いください。でも、18番も16番も契約者がいるので、間違って停めないでくださいね。地面に記した区画番号が雪で読めない状態なので、注意してください」

・・・・・・

オヒョウは、ちょっと嫌な予感がしましたが、取り敢えず礼を言って、電話を切りました。 そして17番の駐車区画に向かったのですが・・・、案の定、17番の区画は、18番の雪と16番の雪が集められ、うず高く積もっていました。 オヒョウは03番と17番を比べ、結局17番を選びました。そして、その晩は遅くまで、オヒョウはスコップで除雪作業に精を出す事になりました。

・・・・・・

そして、翌朝、オヒョウが駐車場へ行くと、今度は誰かのトヨタが駐車場の出口を塞いでいました。

「 ああ、どうしようか 」 そこへそのトヨタの持ち主の若い男性が現れましたが、彼の車はスリップして立ち往生しているのだそうです。しかたなく、オヒョウがタイヤの前の雪を掻きだしてやり、後ろから車を押してやって、彼の車はようやく脱出しました。

・・・・・・

オヒョウは、彼はお礼を言うかな?と思ったのですが、彼は「車を止めてはまた立ち往生するかも」とでも思ったのか、そのまま走り去ってしまったのです。逆にオヒョウはそのために遅れてしまい、あやうくその日も遅刻しそうになったのです。 そしてトヨタで走り去った男性から、いまだ「柿の種」は届きません。


【 雪国はつらいよ条例 その2 】 [新潟県]

【 雪国はつらいよ条例 その2 】 

雪の降る中、会社にたどり着いたオヒョウですが、駐車場の一角は、契約している建設会社のパワーショベルとホイールローダーが占領しています。

・・・・・・

積雪時は、駐車場や出荷場、資材搬入場の地面の除雪を、それらの機械が行うのです。しかし屋根に積もった雪の雪下ろしは、人間の仕事です。工場家屋の屋根は、広すぎるし高さもあるので、人が雪下ろしするのは無理です。 それに勾配があるので、雪はある程度までは自然に滑り落ちます。 しかし事務所棟と生産技術棟の方はそうはいきません。自分たちで雪下ろしをするのです。

・・・・・・

朝会が終わると、上下防水の服(つまり雨合羽)を着て、一同、屋根に登ります。 現場の生産を止める訳にはいきませんから、雪下ろしに参加するのは間接部門のスタッフや管理職です。 オヒョウも含め、皆さんそれなりの年齢なので、本来雪下ろし作業に向いているとは言えないのですが・・。

・・・・・・

雪は降り続いていますが、やるしかありません。まずは生産技術の建物の雪下ろしです。最初に2階のベランダに上がり、そこから隣の建物の平屋部分の屋根に移ります。梯子を水平にかけて、移動するのですが、まるでヒマラヤ登山隊がクレバスを横断する時のようです。 そこから、また垂直に梯子をかけて、生産技術の屋根に登ります。

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しかし・・・・、屋根に登れません。 屋根の上の雪はオヒョウの身長を上回る高さです。私の身長は176cmですから、2mくらいはあります。しかも、雪はひさしのように出っ張っていて、オーバーハングした状態です。 まずベテランの先発隊が梯子の上からスノーダンプを使って雪をよけ、橋頭堡を築いてから屋根の上に登ります。

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スノーダンプは、倉庫から取り出した多くのスノーダンプの中から塗装のきれいな物を選びます。「錆があるものは、雪が付着して使いにくいんですよ・・」と雪下ろしのベテランは語ります。 

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雪下ろし作業はひたすら肉体労働です。 しかも特定の筋肉だけを繰り返し使う作業なので、慣れていない人はすぐにギブアップして休憩です。つまりこれはオヒョウの事です。 そして私の受け持ち区画はなかなかはかどらず、最後まで雪が残っています。

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実は雪下ろし作業とは、個人の作業能率の差が極めて露骨にあらわれる仕事なのです。なんだか、オヒョウは苦手だなあ・・・。

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ようやく生産技術棟の屋根の雪下ろしが終わって、地上に降りると、これまた大問題です。屋根からおろした雪で入り口がふさがれ、ドアが開かない状態なのです。生産技術棟の前には高さ2mを超える、巨大な雪の壁ができていました。 こちらはフォークリフトに除雪用のバケットを取り付けて除雪してもらいました。

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午後は、事務所棟の雪下ろしです。今度はオヒョウが先頭に立って2階の窓から造り付けの梯子を登って、屋根に上がりますが、これまた、屋根に足を置くまでが一苦労です。 それでもなんとか雪下ろしを進めて、表面の雪を取り除いた箇所に足を踏み込むと、ズボッと股の深さまでのめり込みます。雪を掻きとったつもりでも、なお1m雪が残っていたのです。反対側の足で踏ん張って、抜こうとすると、今度はそちらの足もはまってしまいました。もはや下半身は身動きできません。 上半身をジタバタさせて、雪の上に寝そべり、なんとか脱出しますが、みっともない事おびただしい有様です。 屋根の上だから、誰からも見えないはず・・と思うと、後ろから「おひょうさん、何を雪の上で遊んでいるのですか?」と笑い声がします。

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笑える・・・・という事は他の人には余裕があるという事です。なかなか、オヒョウにはその余裕がありませんでした。なんとか、事務所棟の雪下ろしを終え、玄関前の雪も除けて、席に戻ると全身下着までビショビショになっている事に気づきました。「しまった、着替えを持ってこなかった」暖房の効いた部屋で、なおオヒョウは寒さに震えました。

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そこに現れた現場の人が言います。「何を寒そうにしているのですか? 現場の寒さはこの比ではありませんよ。 カマクラか冷蔵庫の中にいるようなものです。オヒョウさんが各職場に配置した赤外線ヒーターだけじゃ全く不十分なのですから」

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彼がそういうには理由があります。工場の屋根から滑り落ちた雪は4m程も積み上がり、軒の高さに到達しています。つまり屋根の雪とつながり、建物全体が雪の中になってしまいました。勿論窓からの採光はなく、電灯がなければ真っ暗です。 エスキモーが作る雪の家イグルーを巨大化した状態です。

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それはともかく、夕方の定時になると、すぐにオヒョウは帰宅する事にしました。 駐車場で車の雪を除きながら、事務所棟の屋根を見ると、先程雪下ろししたばかりなのに、もう30cmも雪が積もっています。

「あれまあ。さっきの雪下ろしの苦労は何だったのか?」

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でも考えてみたら、雪下ろしだけではないねぇ。 仕事の全て、生活の全てが、繰り返しの連続で、ふりかえると虚しさもあるけれど、無駄ではなかった・・・と思う事が多いな。

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ひとり納得して、再び大渋滞の道を家路についたオヒョウですが、最大の問題は、この後だったのです。 以下 次号


【 雪国はつらいよ条例 その1 】 [新潟県]

【 雪国はつらいよ条例 その1 】 

市町村合併で既に消滅しましたが、新潟県にはかつて中里村という村がありました。そしてその村にはユニークな条例がありました。「雪国はつらつ条例」であり、雪国である事をハンディキャップと考えたり、被害者意識に立たず、ポジティブに考えよう・・・というものです。今風に言えばプラス思考というもので、雪を克服する「克雪」、雪を利用する「利雪」、雪に親しむ「親雪」の3項目から構成されます。

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条例の詳細は省略しますが、この条例が全国に知れ渡った事があります。 実は、雪国の厳しい暮らしを紹介する社会科の教科書に、この条例が取り上げられたのですが、名前が誤記され「雪国はつらいよ条例」というフーテンの寅さんみたいな条例になっていたのです。

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この事は、教科書作成が杜撰で、誤記や誤謬が混じっている事を示す例としてマスコミに取り上げられ、全国に知られたのです。しかし、人々の中には、この方がユーモラスだし、実体にあっているじゃないか?との声もあります。 実際、オヒョウは「雪国はつらいよ」という体験を、今年は何度か経験しています。今日のブログはその1例を紹介します。

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ある朝、起きて出勤しようとすると、ドアの外は私の股の深さの積雪です。

 (雪が深いのか、私の足が短いのか・・はここでは議論しません)。

突然スキー場へテレポートしたか・・・と思いながら、ラッセルをして駐車場へ向かいます。ほんの30mの距離を、泳ぐように体を動かして、やっと自分の車にたどりつき、そこで自分の愚かさに気づきました。車のドアを開けるには、雪かき用のスコップが必要であり、それを取りに部屋に戻らなければならない・・・・。

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駐車場には数台の車が残っていましたが、何台かは脱出をあきらめたらしく、深い雪の中に埋れたままです。 斜め向かいの車は、完全に雪に覆われ、新雪の小山と区別ができません。駐車場にいるただひとりの住人は横浜ナンバーのSUV、 BMW X5を掘り出すのに懸命ですが、小一時間はかかるのでは?という状況です。オヒョウは携帯電話で、会社を呼び出し、遅刻の可能性とその理由について手短に話して、雪の海を振り返りました。

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その時、私の目の前、1mの位置に、スコップが投げ込まれました。駐車場の裏の家のご主人が塀越しに私に声を掛けます。「 お困りでしょう。 このスコップを使ってください 」彼はこのアパートの住人が他県の人々で、豪雪に慣れていない事を知っているのです。

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オヒョウはお礼を言って、そのスコップで車を掘り出しました。それから車を脱出させるスロープをこしらえ、やっとギヤを入れました。2、3、回タイヤが空転したあと、なんとか車は脱出し、駐車場の出口に向かってヨタヨタと走りだしました。 その時、BMWを掘り出していた男性が、オヒョウに「お見事!」と声を掛けてくれました。

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しかし、公道へ出た後も、苦難の連続です。除雪した雪の壁で、片側2車線の道は片側1車線の道になり、片側1車線の道は片側交互通行です。当然大渋滞です。雪の壁は車輌より高く、しかも吹雪で視界ゼロに近いホワイトアウト状態です。本当は車間距離を空けなければならないのですが、車は連続してノロノロ運転です。

どこかで、こんな風景を見たな・・・?

「ああ、そうか。昔、雪の新潟平野を、数人の瞽女が連なって歩いていく風景を映画で見たな。あれとそっくりだ」

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果たして、オヒョウは予想通り、遅く会社に到着しました。しかし、この朝のトラブルは、豪雪に振り回されたHard Dayのほんの始まりに過ぎなかったのです。 以下 次号


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