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【 一発だけなら誤射かも知れない 】 [航空]

【 一発だけなら誤射かも知れない 】

かつて、北朝鮮のテポドンが無警告で発射され、日本列島の上空を横切り太平洋に落下した際、北朝鮮を擁護する朝日新聞が書いた「一発だけなら誤射かも知れない」というあまりに間抜けなフレーズはインターネット上で流行語になりました。

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そして、このフレーズが似合う事件がウクライナでありました。ご承知の通り、マレーシア航空機が、ウクライナの親露派の武力組織またはウクライナ軍によって撃墜されたのです。 インターネットでは「すわっ! 戦争勃発か?」という意見もありましたが、そうはならないでしょう。 おそらく、誰が撃墜したか・・誰の責任かは、うやむやにされてしまうでしょう。 ひょっとしたら、事件のほとぼりが冷めた頃に、ロシアが何らかのコメントを発する可能性がありますが、責任を認めた形にはならないでしょう。

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確実に言えることは、国営のマレーシア航空が経営危機に陥ることです。連続して信頼性の高い大型機であるB777型機を、2機墜落させたとなると信用はガタ落ちでしょうし、賠償額も膨らみますから、国営の航空会社といえども、安泰でいられるとは思えません。

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どうして、そんなことが言えるかと言えば、過去の民間機撃墜事件を見ると、多くはうやむやな形で決着してしまい、責任所在は曖昧なままになっているからです。

第二次大戦後に民間機が軍隊に攻撃されて撃墜された例は多くあります。

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実際には、攻撃した軍が、相手を民間機だと承知の上で撃墜した場合と、軍用機と誤認して撃墜した場合、また領空侵犯の有無で、事情は異なるのですが、ざっと記憶に残るのは、下記の例です。

1955年 イスラエルのエルアル航空機が誤ってブルガリア領空を侵犯して

               戦闘機に撃墜される。 戦闘機側は民間機と確認した上で撃墜。

       旅客機はロッキード・コンステレーション。

1973年 リビア航空114便が誤ってイスラエル領空を侵犯して戦闘機に

               撃墜される。

       戦闘機側は民間機と確認した上で撃墜。

       旅客機はボーイングB727.

1983年 大韓航空007便がソ連(当時)の樺太上空で領空を侵犯して

               戦闘機に撃墜される。戦闘機は民間機と認識せずに撃墜した

               可能性あり。旅客機はB747 ジャンボ。

1988年 イラン航空655便が、ペルシャ湾上で米国イージス艦

               ビンセンスのミサイルで撃墜される。イラン航空機は正規の

               コースを飛行し、逆にイージス艦ビンセンスはイラン領海に

               侵入した状態でミサイルを発射。

               イージス艦側は、旅客機をイランの戦闘機と誤認して攻撃。

               旅客機はエアバス A300。

2001年 シベリア航空1812便が、黒海上空でウクライナ軍に撃墜される。

旅客機は正規のルートで領空侵犯はなく、公海の上空を

飛行中に演習中のウクライナ軍によって誤って撃墜された。

旅客機はイスラエルのテルアビブ発のツポレフTu154型機。

上記の全てのケースで、撃墜された飛行機の乗客乗員は全員死亡しています。そして上記の全てのケースで、撃墜した国は自分の責任を明確には認めていません。(賠償に応じた例はいくつかあります)。

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こうしてみると、イスラエル、ウクライナ、ソ連(ロシア)が絡んだ事件が多いことに気づきます。今回の事件で、マスコミはウクライナで内戦が行われている最中に、上空を飛んだことの不運を語りますが、紛争中であろうとなかろうとウクライナとロシアには気を付けなくてはならないのです。

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この中で、日本人も多く亡くなり、記憶に残っているのは、樺太上空での大韓航空機の事件です。ソ連は当初、自分達が撃墜したことを隠していましたが、否定できなくなると、あれはスパイ機だったと主張しました。

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そして私が民間機誤撃墜事件の中で、最も象徴的かつ検討しなければならないのは、

1988年の米国イージス艦ビンセンスによるイラン航空655便(エアバスA300型機)撃墜事件です。

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この時の撃墜の様子は米国のTVで放映されました。 イランの空港を定刻より少し遅れて離陸し、ペルシャ湾上空を飛んでいたエアバスの旅客機をイージス艦は、F14戦闘機だと錯覚し、ミサイルを発射します。艦橋には多くのマスコミ関係者が乗っており、艦長が撃墜に成功したと発表すると歓声が沸き起こります。 当時、イランと米国は緊張関係にありましたが、決して戦争中ではなかったはずなのですが・・。

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やがて、撃墜した標的は民間の旅客機だったと分かると、艦長は肩をすくめ、「この十字架は一生私が背負っていく」と語りました。米国のマスコミはそれを最大級の贖罪の言葉として報道しましたが、私には、まるで駐車場で後ろの車のバンパーに疵を付けた時の謝罪ぐらいにしか聞こえませんでした。 だいたい犠牲者のほとんどはイスラム教徒なのに、「十字架を背負う」という表現はいかがなものか・・。

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米国は早速、軍用機と誤認したことの正当性を主張しだしました。いわく、エアバスA300は、エンジンが双発の大型の戦闘機であるF14と誤認されてもしかたなかったとのこと。 でもエンジンの数は同じでも戦闘機と旅客機ではまるで大きさが異なり、レーダー投影面積も違います。 高性能レーダーが売り物のイージス艦というけれど、この程度のものか・・・・・。

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更に、イラン機はペルシャ湾上で速度を上げながら、高度を下げ、イージス艦に向かってきた。これは攻撃態勢と思われても仕方ない・・と言いだしました。しかし、他の機関から発表されたレーダーの記録には、速度を上げながら上昇している途中で、撃墜された航跡が残っていました。

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しかし、何より不思議なのは、ATCトランスポンダ反応があったか否かです。

これは、飛行機に対して信号電波を送ると、その飛行機の情報を送り返すシステムです。 イージス艦ビンセンスは、IFFコードに反応しなかったので、敵機だと認識したという説明をしましたが、理解に苦しみます。

IFFとは敵味方識別装置のことで、戦争中の地域で軍用機が用いるものです。IFFに応答があれば、味方の飛行機、応答が無ければ敵機という訳で、忠臣蔵の吉良邸での愛言葉「山、川」みたいなものです。

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しかし、当時、米国とイランは交戦中ではなく、まして民間機がIFFを装着しているはずはないのです。 当然、ATCトランスポンダで確認すべきだったのですが、イージス艦は、それをしていなかったのです。艦長が背負うべき十字架は相当に重いはずです。 米国は当初、イージス艦の非を認めていませんでしたが、ほとぼりが冷めてから犠牲者には見舞金を払ったとのことです。

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米国ですらそうなのですから、他の国も、自分達の責任を認めるはずはありません。犠牲者は全く浮かばれません。

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今回の事件で、ブラックボックス(フライトデータレコーダーとボイスレコーダー)の取り扱いが話題になり、恩着せがましく親露派勢力がマレーシア当局にブラックボックスを手渡す場面が放映されましたが、おそらくブラックボックスを解析しても、誰が撃墜したかは分からないままでしょう。 大事なのは、ATCトランスポンダの交信記録なのですがこれに言及するマスコミはいません。

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テロリストや地上軍が、上空の飛行機のトランスポンダをチェックしたとは思えないのですが、これを怠ったことこそが、悲劇の原因なのです。その責任の所在を明らかにすべきです。多分イージス艦ビンセンスの艦長と同じように肩をすくめるだけでしょうが・・・。

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繰り返しになりますが、民間機を撃墜するという恐ろしい失敗をした場合、誰も責任を認めるはずはなく、誰がやったかはウヤムヤになるでしょう。確実に言えることは、マレーシア航空の経営が悪化することだけです。


【 三菱対兼松 ?】 [航空]

【 三菱対兼松 ?】

 

兼松がボンバルディアの小型旅客機の販売に乗り出したことが、新聞に小さな記事で出ています。 

シングルアイル(つまり単通路)で 乗客は110160程度の飛行機で、これから世界中で売れると思われる機体です。

http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1120131226aaai.html

記事にはありませんが、新型機の名前はCS100CS300です。

そして、このことは、日本の商社の世界でちょっとした波風を起こすかも知れません。総合商社の多岐にわたるビジネスの中で、航空機の販売またはリースといった事業が必ずしも魅力的なものとは限りません。

しかし、民間航空機はハイテク製品の代表でもあり、国際的な商品で、かつ見栄えのする商品ですから、各社とも航空機ビジネスを宣伝します。唯一、例外としてロッキード事件とダグラス・グラマン事件の時は総合商社のスキャンダラスな部分を示す形となりましたが、過去の話です。

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酣燈社の雑誌「航空情報」の裏表紙などには、三井物産、双日、といった航空機ビジネスを手掛ける各商社の広告が載っています。

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ところで、兼松が扱う飛行機(CS100CS300)の絵を見ていて、あれっ?と思うところがあります。三菱航空機が開発中の国家プロジェクトMRJとシルエットがそっくりです。(正確には操縦席の窓の辺りの形は違いますが・・)。

そして仕様を見れば、こちらも似ています。乗客定員が10人~160人というのも似ていますし、何より「従来機より燃費が20%」も良いという宣伝文句がそっくりです。

よくよく見れば、プラットアンドホイットニー社(P&W社)の最新型ギヤードターボファンエンジンを採用して燃費を良くした・・とのこと。 三菱と同じ説明です。それに加えて複合材料を機体に用いたので軽量化に成功したという説明も、三菱MRJとそっくりです。

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これは、以前の私のブログで紹介した、新型エンジン採用問題の対抗機種だったのです。 http://halibut.blog.so-net.ne.jp/index/3

題名は【 飛ぶかMRJ再び その1 】です。 三菱はMRJの完成が遅れに遅れて、弁解に追われています。 正式なコメントにはありませんが、P&W社の新型エンジンの納入が遅れているのが原因だという情報が流されています。 無論P&W社は反論し、エンジン開発はスケジュール通りだとホームページで主張しています。

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しかし、三菱より後からP&Wにギヤードターボファンエンジンの提供を要請したボンバルディアは、三菱より早くエンジンを手に入れ、新型機の開発を完了しました。 

http://www.pw.utc.com/News/Story/20130917-1000

世の中の航空機ファンはそのことを知っています。

そして、そのボンバルディアの新型機こそ、今回兼松が販売権を獲得したCRJ機なのです。実に因縁浅からぬことです。

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国家プロジェクトであるMRJに逆らってライバル機を使うとは兼松は何を考えているのか? と考えながら、三菱航空機のホームページを見ると、三菱商事が10%、三井物産と住友商事が5%ずつ、出資しています。つまり三菱のMRJは国家プロジェクトであるだけでなく、財閥系の総合商社連合のプロジェクトでもあるのです。

つまり、兼松は三井、三菱、住友の総合商社連合と競争する道を選んだのです。

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根本にある問題として、三菱重工/三菱航空機とボンバルディア、MRJCRJを比較してみます。 三菱重工は、重工業界の巨人であり、老舗でもあります。一方、ボンバルディアはスノーモービルの開発から始まった新興企業ですが、旅客機の製造に関しては三菱重工よりずっと実績があります。

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日本でボンバルディアと言えば、故障続きの信頼できない飛行機というレッテルが貼られていますが、これはDHC(デハビランドカナダ)というプロペラ機のメーカーの系列であり、カナデア系列のジェット機とは違う系譜です。

小型ジェット旅客機のメーカーとして高い実績があり、旅客機のメーカーとしては今や、ボーイングやエアバスに次ぐ存在です。

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そして、その新型機がMRJと真正面からぶつかるライバルになる訳で、兼松は敢えて、そちらの側についたのです。

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向こう20年間の旅客機需要は調査した会社によって数字が違いますが、中小型機が5000機以上売れるのは確実です。 これは、21世紀に入って急に台頭してきたLCC(格安航空会社)の需要が見込めるからです。LCCは長距離便も飛ばしますが、小型機で短距離を頻繁に飛ぶビジネスモデルを考えており、CS100CS300はそれに適しています。(三菱MRJもです)。 兼松がそれに賭けたのは当然です。

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日本が独創的な飛行機を開発したのに、外国の実績のある航空機メーカーがそっくりの飛行機を売り出し、商売では負けてしまう・・という事はこれまでもありました。

戦後初の国産旅客機YS-11を開発した時、ほぼ同時期に英国のホーカーシドレーがよく似た旅客機(ホーカーシドレー74/アブロ748)を開発・販売し、YS-11は多くのお客を奪われました。同じことが、三菱MRJでも起こるのです。

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ホーカーシドレーは、英国の名門航空機メーカーでしたが、ボンバルディアは前述のとおり、新興企業です。そこに三菱は悩まされるのです。航空機のサプライヤーは、かつては一部の先進国の大企業に限られていたのに、今は違います。コモディティ商品化したとまでは言えませんが、価格の勝負の時代に入ってきました。

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お客のエアラインもかつては、その国を代表するナショナルフラグキャリアーが中心でしたが、これからは、新興のLCCが主体です。 航空機と航空の業界で下剋上が進行しているなら、総合商社についても、下克上があって然るべきかも知れません。

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日本の総合商社の場合、最上位に旧財閥系の3社(三井物産、三菱商事、住友商事)が御三家として君臨し、それに続く存在として、伊藤忠、丸紅があり、その後に双日や兼松が続く序列がありました。 しかし21世紀の現代、財閥系か否かは本質的な問題ではありません。 巷では売上高と経常利益額で、伊藤忠が住友商事を追い越した記事がながれています。 商社も航空機産業や航空業界と同じく、下克上の時代なのかも知れません。

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その中で、兼松が、財閥系の3商社が売る三菱MRJのライバル機を敢えて販売するというのは、象徴的な出来事です。 そしてこの問題は商社だけに留まりません。

前述のとおり、三菱MRJとボンバルディアCS100は、同じ新型エンジンを取り合った訳ですが、エンジン以外でも、同じサプライヤーが両社に部品を提供する例が幾つかあります。 例えば、両方とも、素材である炭素繊維は東レから、ギャレーやトイレはジャムコから、降着装置は住友精密から調達します。 これらの日本の会社は、ボンバルディア向けを優先すべきか、三菱向けを優先させるか・・でハムレットのように悩む事になります。 航空機ビジネスとしてはボンバルディアの方が大事ですが、日本の企業としては国家プロジェクトで三菱が進めるMRJが大事です。

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その中で、大手総合商社の兼松がボンバルディアを取ったとなると、他の会社もボンバルディアの方になびく可能性があります。 いまから10年ほど経った時点で振り返り、「そういえばMRJプロジェクトが失敗したのは、兼松がボンバルディアを取ったのがきっかけだったね・・・」という事にならなければいいのですが・・。


【 成田か羽田か 】 [航空]

【 羽田か成田か 】

 

こんな議論は大昔に語り尽くされた話なので、いまさら取り上げるのもどうかと思いますが、最近、羽田が本格的な国際空港になる過程で、再び議論されだしました。

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個人的にどちらの空港が好きか、あるいはどちらの空港を利用したいか?という質問であれは、大抵の人の答えは決まっています。

「羽田の方がいいですよ」「羽田の方が便利ですよ」。オヒョウの周囲でもほとんどの人がそう言います。

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出張の予定がはいった際、利用する便が成田発着だと分かって、「ありゃー」とがっかりする人も、オヒョウの周りにはいます。その理由は幾つもありますが、おおまかにくくると3つです。

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第一には都心からの距離、アクセスの問題です。羽田空港の場合、品川からの私鉄、あるいは浜松町からのモノレールで行っても近いですし、横浜からのバスも便利です。無論、自家用車やタクシーで行っても、東京や横浜からそんなに時間はかかりません。だから国内線の話なら、文句なしに羽田に軍配が上がります。

(もともと、成田の国内線は全く充実していませんが)。

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海外出張の場合だって、自分の家や会社から近い空港の方が便利に決まっています。だから、首都圏に住む多くの人にとって、羽田の方が便利となります。では千葉県に暮らす人の場合はどうか? 総武本線や成田線、京成電鉄の沿線あるいは東関東自動車道の近くに住む人には、本当は成田空港の方が近くて便利なはずなのですが、そう単純ではありません。千葉県でも木更津以東に住む人にとっては、羽田の方が便利です。それは東京湾アクアラインができて、羽田空港直結の高速バスが充実したからです。 一方、千葉市より東の人々にとって、成田に行くことは、鉄道でも高速道路でもかなり面倒なのです。

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もう一つの理由は、利用できる設備の違いです。羽田の国内線ターミナルにあるビッグバードは立派なショッピングセンターです。売られているのは食べ物とお土産が主ですが服などもお店にあります。こんな立派なショッピングセンターは成田にはありません。 だから、羽田の方が成田よりいい・・という人もいます。

でもこれは国内線だけの話です。羽田も国際線ターミナルのショッピングセンターは

大したことはありません。 現在、国際線ターミナルビルを拡充中で、お店も充実する予定だそうですが・・・・。

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成田でなく羽田を支持する人の最後の理由は、成田空港建設の時の経緯に関わるものです。その昔、昭和の時代、佐藤内閣が東京の第二空港の必要性を考え、成田の御料牧場を中心にした新空港の建設を閣議決定しましたが、世の中の革新派と呼ばれる人々は猛反対しました。 共産党、社会党、に加え、新左翼と呼ばれる人々は皆、反対派として結集しました。彼らは69年安保闘争の後、統一して行動できるテーマに飢えていたのです。 反対の理由はめちゃくちゃでした。 地元の農家の意見を聞かずに決定したとか、米軍に軍事利用されるに決まっているという・・根拠の乏しい理屈でした。 大事なのは反体制運動をするための口実が欲しかっただけです。

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成田開港後30年以上が経過し、今、成田闘争が正しかったなどと言う輩はほとんどいません。 まさにミネルバのフクロウは夕暮れに飛び立ったのですが、それでも若い頃に反成田を叫んだ人々の心の底には、成田空港に対する抵抗感があります。

だから、今でも成田空港という名前を聞くと反射的に否定したりけなしたくなるのです。 成田空港を褒めたりしようものなら、友達から軽蔑されたり、仲間はずれにされるのでは?という恐怖感を潜在意識の中に持つ昭和人は多くいます。

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現実はどうか? 成田空港は確かに不便ですが、安全な空港です。これまで成田で発生した死亡事故といえば、貨物機が着陸失敗してパイロットが2名死亡した事故のみです。成田がらみの乗客の死亡事故(事件)と言えば、その昔、成田発ハワイ行きの旅客機の荷物が爆発し、日本人少年が死亡した事故だけです。世界の大空港ではありえないほどの安全性とも言えます。 それに比べて羽田空港の場合、羽田を離陸して事故に遭った人、羽田の着陸を目指して事故の遭った人の数は、数多く、滑走路に3m間隔で墓標を並べれば、3000m滑走路がうまるくらいです。血塗られた空港です。

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成田は、不便だけれど安全な空港です。 そして不便さは努力で改善できます。

例えば・・・つくば学園都市と成田空港の間の交通機関は非常に不便でしたが、近いうちに改善されます。 かつては、世界的な大学者、研究者をつくばの学会に迎えるのに、田んぼの畦道のような道路を延々と走らなければならなかったのですが、圏央道が完成すれば、あっという間になります。

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長距離・長時間で評判が悪かった鉄道も、京成電鉄のスカイアクセス線の開通で随分快適になりました。 かつて美濃部東京都知事は、成田のような近い場所に新幹線を走らせる必要はないと主張し、成田新幹線計画を潰しました。彼の本音は成田新幹線ではなく、成田空港に反対だったのですが・・・。

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しかし、新幹線ではないけれど、標準軌の高速鉄道が、都内に短時間で入るようになり、成田へのアクセスの問題は相当程度改善されました。 後は東京オリンピックの前に、成田=東京=羽田を高速で結ぶ、新線を作るだけです。

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成田空港反対派が意気盛んだったころ、東京に空港は2つも要らない、ひとつあれば十分で、羽田を拡張すればいいだけだ・・と乱暴な事を言う人が多くいました。

しかし、今、そんな事を言う人はいないでしょう。 今、主要国の首都で国際空港を1つしか持たないのは、中国の北京ぐらいです。

首都級の都市の場合、最低でも空港は2つ必要です。ロンドンのように6つある場合すらあるのです。今、羽田は沖合拡張が一段落したあと、さらに新しい滑走路を計画して能力拡充を進めていますが、そうだとしても、成田が不要になる訳ではありません。 成田なしでは、日本の航空輸送は、破綻します。

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中国は、日本のODAで、世界最大級の北京首都空港を建設しましたが、たちまち手狭になりました。そこで現在、外国の首都を参考に、第二空港の建設を計画中です。

しかし、第二空港建設だけでは、夕方の慢性的で絶望的なダイヤの遅れを改善することはできません。軍国主義の中国では、北京付近の空域の大半を中国空軍が占めており、民間機は僅かに残された狭隘な空域を飛ぶしかなく、慢性的な運行遅れに

悩まされるのです。空港建設だけではダメです。

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どんなに拡張しても、日本の首都圏の空港は羽田だけでは足りません。成田を有効活用していくことが重要です。成田は成田で、よりよい空港を目指すべきです。そして私が考える良い空港とは、安全性や都心への交通機関の充実は当然のこと、どれだけ旅客をなごませる空間を用意できるか・・・です。

観光旅行、仕事の出張、やむをえない事情での移動、空港を利用する人々の事情はさまざまですが、皆、疲れて安らぎを求めています。癒しの空間が必要です。

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先日、成田の第二ターミナルを利用した時です。以前はサテライトと呼ばれる離れ小島のゲートに行くには黄色のシャトルと呼ばれる車両を利用したのですが、それが無くなり、長距離の動く歩道が設置されていました。新聞で読んで知っていたのですが、これがその動く歩道か・・と乗ってみたところ、左側に広いガラス窓が用意され、空港の景色がパノラマになって広がります。 大型の色とりどりの旅客機が目の前に並び、思わず目を見張ります。 私だけでなく、子供達はガラス窓に顔を寄せて、歓声をあげ、大人たちもカメラを向けます。

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「ああ、これまでこんなに見晴らしのいい場所は第二ターミナルには無かったかも知れない。成田も進化しているな」 と私は思いました。

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そして、私が好きなのは、成田と都心を結ぶ京成スカイライナーです。あの新しい電車は、高速でかつ快適です。 私にはちょっと贅沢ですが、あの静かな電車の窓から

外を眺めるのが好きです。

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どんなに疲れ、嫌なことがあった出張でも、あの電車に乗って、スカイツリーが夕日にシルエットになって近づいてくるのを車窓に眺めていれば、癒され、元気になります。

成田空港から会社に戻るまでに、いくばくかの時間があり、そこで気分転換できることがありがたいのです。 こんな時間の余裕は羽田空港にはありません。

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「成田までの新幹線なんていらない」と語ったのは美濃部都知事ですが、案外、彼が言ったことは正しかったのかも・・と、私は電車の日暮里駅到着を惜しみながら思いました。 

 

私は成田空港のファンです。


【 飛ぶかMRJ 再び その2】 [航空]

【 飛ぶかMRJ 再び その2】

 

仮にMRJの開発と製作において、エンジン開発の遅れが、全体の足を引っ張っているのなら、うつべき対策は明らかです。

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普通、英語でオルタネート(Alternate)と言うと、交互にとか、交番という意味ですが、飛行機用語でオルタネートというと、補助的措置とか、代替措置という意味になります。 本来の装置や設備が機能しない場合に、代わりに用いる手段や装置です。

エンジンの場合も、本命のギヤードターボファンがダメなら、代わりのエンジン(alternate engine)を探すべきです。

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MRJのセールスポイントは、他の同型機に比べて2割もまさる、すぐれた燃費ですが、実はその大半は、新型のギヤードターボファンエンジンに負うところが大きいのです。

だから三菱としては、新型エンジンPW1200は外せないのですが、いつまでもそんな事は言っておられません。

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航空機の常として、ユーザーの事情、政治的な背景などで、旅客機とは別にエンジンを選びます。 つまり、同じボーイングやエアバスの機種でもエアラインによって搭載するエンジンが異なります。

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主要なエンジンメーカーは、GE、ロールスロイス、P&Wと3社あり、それ以外にも、多くの会社があります。 機体メーカーは、ボーイング、エアバス、ボンバルディア、エンブラエル、スホイとこちらも多くあり、エアラインは機体メーカーとエンジンメーカーの組み合わせで飛行機を選び、飛ばすことになるのです。

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だから、普通、旅客機は、複数のエンジンメーカーの同規模のエンジンが搭載できるように設計されています。三菱のMRJも当然そうであるべきです。 P&W1200しかエンジンを選べないのであれば、機体が完成して初飛行したとしても、その後の営業戦略で大変なハンデを負うことになります。

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もしギヤードターボファンを選ぶ必要があるなら、プラット&ホイットニーだけでなく、ハネウェル社のエンジンも選択肢に入れるべきです。

もしプラット&ホイットニーにこだわるのなら、既にボンバルディア向けに出荷されているPW1500を回してもらうことも考えるべきです。 より大出力で高性能なエンジンです。

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しかし、もっと良い方法があります。それは日本の国産エンジンを使うことです。

少し出力が違いますが、石川島播磨(IHI)が製造するF7エンジンが流用可能です。

F7エンジンは自衛隊の哨戒機P-1に搭載されています。

ギヤードターボファンではありませんが、低燃費で騒音が小さく、信頼性の高いエンジンです。

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実はP-1哨戒機は、試験飛行でエンジン4発が同時停止するという重大な故障をおこしていますが、エンジンの問題ではないと考えられています。

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MRJは、とにかく、初飛行を早く実現されることが一番であり、そのためにはすぐに使える既存のエンジンを流用すること、あるいは納入遅れがない、国産のエンジンを使用するのが手っ取り早いのです。 本命であるPW1200は、本当に客先に納入する段階で間に合えばいいのです。

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しかし、MRJの開発遅れの本当の理由は、エンジンではないと私は考えます。

部品点数が90万個という大型装置を計画通りに集めて、順番に組み立てる生産管理技術が決定的に欠けているのではないか?

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飛行機は部品点数が多い機械です。 乗用車なら数万点(24万個)であり、昔のゼロ戦もそのくらいですが、それに比べるとMRJは桁違いに多いのです。

たかだか数万点の部品を組み立て、そのかわり何万台も生産する自動車のシステムはそのまま使えません。 それなのに、MRJは自動車の生産方式をまねようとしたのではないか?

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同じ失敗はボーイングもしています。ボーイングもトヨタのカンバン方式をまねて、大失敗したのです。ボーイングの工場は、広い床がそのままゆっくりと動くコンベアになっているそうで、動きながら、機体を組み立てていくのですが、部品が揃わないと、ラインは停止してしまいます。

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なぜ失敗したかといえば、営業戦略もあって、世界中から部品を調達する方針を採用したからです。 世界中の部品サプライヤーの中にはジャストインタイムやカンバン方式を理解しない企業も多い訳です。 もっと言えば、みんなが日本企業ほど納期管理に神経質な訳ではありません。

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納期遅れが大問題となったB-787の場合、チタン製のリベットという、重要かつ大量に使用する部品を、海外から調達したために、それが足を引っ張りました。

そしてそれと同じ失敗を三菱MRJが繰り返しそうです。

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もともと、国産初のジェット旅客機ということで、国産比率を最大限に高め、日本政府からも援助を受けて進めているプロジェクトなのに、いつのまにか国産比率が低下しています。

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三菱航空機は社長がころころ替わりますが、そのたびに部品調達先を変更し、国産化率を下げています。これは理解に苦しむところです。

海外の航空部品メーカーを用いるのは、実績のある会社を選ぶという面と、安価調達という面、海外での販売を有利にするという、3つの理由によるものですが、マイナス面もあります。

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国内の航空機産業を育成するという大義名分は失われます。忘れてはいけないことですが、MRJのプロジェクトには巨額の国費が使われています。T1と呼ばれる一次下請けだけでなく、T2,T3という二次、三次の下請けも本来、日本企業であるべきです。 例えば、MRJの客席のシートは、自動車用のシート製造で実績のある日本メーカーに発注され、デザインに優れ、軽くて薄いシートが開発・搭載される予定でしたが、突然外国メーカーに切り替わりました。 当時、絶望的な円高が進行している環境下で仕方なかったとも言えますが、何のためのMRJか?ということになります。

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そして、日本のサプライヤーを斬るということは、為替リスクと納期遅れのリスクを背負うことになります。 海外から部品を購入するということは、ただでさえ遠隔地からの取り寄せになりますが、世界で最も納期順守を重んじるサプライヤーを斬るということになります。 そして部品点数は、自動車の10倍以上なのです。 

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三菱航空機の親会社である三菱重工は、やはり部品点数が多い、大型船舶や、製鉄機械、プラントなどを手がけてきました。 しかし、それらの多くは、部品メーカーの多くが日本企業だったり、別の信頼できるメーカーがモジュールにして納めるという形で、

航空機ほど、生産管理に苦労する訳ではありません。

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昔から造船出身者と航空機出身者の派閥争いが語られる三菱ですが、もしMRJが失敗したら、航空機部門出身者には厳しい風当たりが待っています。プラントや造船出身者からは、「たかだか90万点の部品をまとめて製品を完成させることもできないとか?」と言われるかもしれません。 

ところで堀越二郎だか、堀辰雄だかが、零戦を開発した時の部品は何点だったのかね?・・と思ってしまいます。 たしか23万点だったかな?


【 飛ぶかMRJ 再び その1】 [航空]

【 飛ぶかMRJ 再び その1】

 

いささか旧聞ですが、三菱航空機のMRJの完成が遅れに遅れています。

大前研一氏が指摘していますが、このように遅れては、仮に開発に成功しても、事業の見通しは暗く、ひょっとしたら事業そのものが空中分解するかも知れません。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20130902/363544/?ST=business&P=1

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新型機の完成が遅れるのは、何もMRJに限りません。世界最大の旅客機エアバスA380も初飛行まで随分時間がかかりました。同じく鳴物入りで開発されたボーイングB787も初飛行が大幅に遅れ、しかも初飛行後もトラブルに見舞われて、飛行中止に追い込まれたりしたことは周知の通りです。

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ジェット旅客機が登場してから、60年以上経つのに、新型機の開発が計画通りいかないのは、いかなることか? むしろ逆であるべきではないのか?と、私などは素朴に考えます。

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一般に工業製品は、基本的な技術がこなれてくれば、新型モデルの開発に要する期間は短縮されます。「開発の習熟化」による影響です。

典型的なのは、自動車や自動二輪、家電製品の世界です。パソコンも同様です。厳しい競争に晒されている業界では、開発期間の短縮は至上命題なので、ある意味で当然ですが、開発ノウハウの積み重ねが期間短縮を実現します。

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しかるに、飛行機だけが逆である・・というのは不可解です。その点について考えます。今、奇妙なアニメ映画「風立ちぬ」で急に有名になった堀越二郎氏の場合はどうでしょう?彼は三菱でまず「七試戦」を設計し、その後「九六艦戦」を設計し、有名な「ゼロ戦」を設計していますが、その間に開発技術は次第に習熟していきます。

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そして「七試戦」は大失敗、「九六艦戦」はそこそこ成功、「ゼロ戦」は大成功で名機の誉れ高い機種です。その過程は「風立ちぬ」ではなく、柳田邦夫の「ゼロ戦燃ゆ」に詳しく述べられています。

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しかしその後、堀越氏のグループは、局地戦闘機「雷電」の開発に取り組み、非常に苦労します。全体としてゼロ戦の時ほど開発に時間はかかっていませんが、開発中に発生したトラブルをなかなか解決できません。習熟した技術、完成度が高くなった製品だけに、より一段進んだ画期的な製品にしようとすると、とたんに難しくなるという理屈でしょう。 開発技術の習熟だけでは説明できない問題も確かにあります。

 

今回のMRJについては、ゼロ戦時代の戦闘機の設計とは全く違うので、単純に比較はできません。 細部の設計は最新のCAD技術で合理化され、計画遅れをもたらす原因にはなりません。

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では何が原因なのでしょうか?

三菱航空機が、開発の遅れを正式にアナウンスしていますが、その原因は文面からは理解できません。

http://www.mrj-japan.com/j/news/news_130822.html

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多くの人が憶測で、遅れの理由について、海外調達する部品の納期管理ができていないとか、米国に意地悪されたのだとか、新型エンジンの開発がサボタージュにより遅れたとか、推理しています。

米国の意地悪については、随分前に初飛行したホンダジェットがいまだに米国の型式証明が取れていない事実からも、いかにもありそうな話です。

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MRJの工場では、しびれをきらしたマスコミに、何とか写真に写るものを見せなければ・・とばかりに、組立途中の胴体だけを公開しました。その姿は、エンジンが無い事が一種異様に見え、エンジンの調達遅れが図らずも強調された形です。

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新型エンジンのギヤードターボファンについては、新技術ですから、遅れることはありうるのですが、三菱が求めているPW1200よりも高性能な新型エンジンPW1500が、既にライバルであるボンバルディアに引き渡されているとの話もあり、意図的に三菱いじめがあるのではないか?と勘ぐってしまいます。

http://www.pw.utc.com/News/Story/20130917-1000

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その気配を察したのか、エンジンメーカーのプラット&ホイットニーは、すぐさま、遅れの原因は、新型エンジンの開発ではなく、エンジン開発は予定通りに順調に進んでいる・・と強調しています。

http://www.pw.utc.com/News/Story/20130820-1045/2013/Commercial%20Engines

しかも、7月に発表したアナウンスメントを、三菱が計画遅れを発表した直後の8月に再度、繰り返して発表する念の入れようです。

http://www.mrj-japan.com/press_releases/news_130822.html

これは全く異例の事で、プラット&ホイットニーも相当神経質になっていると言えます。

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三菱のプロジェクトに参加し、新型エンジンを供給できることを誇りに思う・・と慇懃な文面ですが、内容は「繰り返しになるが、遅れが生じたのは、我々の責任ではない」という強い口調のものです。

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果たして何が真実なのか?

私の意見を述べれば、下記の2点です。

1.プラット&ホイットニーが三菱向けよりもボンバルディア向けを優先させたのは、事実。

2.しかし、それを以て三菱いじめとか、日本の航空産業への妨害というのはあたらない。

エンジンを製造する民間企業の経営者の目で見れば、明らかです。

三菱は大企業ですが、旅客機の製造については実績が全くなく、新規参入者です。

一方、ボンバルディアは新興企業ですが、旅客機の生産・販売の実績はボーイングやエアバスに次ぐものです。エンジンメーカーとしてどちらを重視し優先すべきかは明らかであり、三菱が繰り言を言っても仕方ありません。

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ではどうすべきなのか? 三菱MRJの問題の本質は何なのか?

これについては次号で述べます。


【 泣くことは権利か? 】 [航空]

【 泣くことは権利か? 】

 

先日、搭乗していた飛行機の中で、不意に赤ん坊が泣き出しました。そこで先日ネット上で話題になったある女流漫画家のブログを思い出しました。

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ご記憶の方も多いでしょうが、内容を話しますと、飛行機の客席で赤ん坊が泣き出し、その騒音に堪えきれなくなった女流漫画家が、着陸コースに進入中でベルト着用サインが出ていたのに、立ち上がって、母親のもとに行き「嬰児を連れて飛行機に乗るのは慎むべきだ」と文句を言い、返す刀で客室乗務員に対して「日航は、泣きじゃくる赤ん坊と母親を隔離する空間を機内に設けるべきだ」と文句を言ったのだそうです。

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なぜ、それが話題になったかと言えば、彼女自身がブログで発表したからで、当然ながら、ブログは炎上しその話題でネットは賑わいました。

大多数の意見は、その漫画家を非常識であると非難するものでした。

曰く、「ベルト着用サインを無視して立ち上がる自分の方が非常識」、

「赤ん坊は泣くのが仕事。泣く権利がある」

「母親にも誰にも、赤子を泣き止ませる術はなく、泣かせるなというのは無理難題」

「赤子連れにも飛行機に乗る権利はある」 等です。

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インターネットでは議論は盛り上がりますが、誰も論点を整理しません。

皆が言いっ放しで、勝手なことを言うので、結論はなかなかでません、もっとも結論を求めるのがインターネット上の議論ではないのですが・・・・。

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笑うオヒョウでは、問題点を整理します。

前提となるのは、下記の事柄です。

1.  泣き続ける赤ちゃんに責任はない。

2.  泣いている赤ん坊を泣きやませる確実な方法は無い。

3.  飛行機の中で泣かれると五月蠅いのは事実で、しかも逃げ場が無いので困るのは事実。

4.  現在、航空会社は泣き続ける赤ん坊に対して、何ら措置を講じていない。

5.  乳児連れだって飛行機に乗らざるをえないこともあり、それを制限する事はだれにもできない。

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でもこれらの前提は疑う必要があります。そして、私は別の観点から考えます。

 

1.誰が悪いのか?

 

多くの人は、子供が泣くのは仕方ない、親子に責任は無い・・としますが、それでいいのでしょうか? 一つのポイントは、誰が原因者であり加害者なのか?ということです。

赤ん坊は泣くことが仕事さ・・と鷹揚に構えるのも一つの考えですが、仮に泣くことは権利であっても、他人に迷惑をかけることは権利ではありません。 飛行機の中で騒音を出す権利は無いはずです。母親はなるべく子供が泣きやむように努力し、迷惑を掛けないように努める義務があるはずです。それを怠るなら、その母親は非難されるべきですし、逆に一生懸命赤ん坊をあやし、周囲には済まなそうにしている様子が伺えれば、それ以上、母親を責めるのは酷というものです。

 

2.解決策または改善策はあるのか?

 

ネット上の多くの意見は、赤ん坊を泣きやませる方法は無い・・と断じています。

しかしそうでしょうか? 乳児の場合と、3歳児の幼児の場合では異なりますが、子供が泣くのには、それなりに理由があります。

1.  空腹でおっぱいが欲しい。

2.  おむつが濡れていて気持ち悪い。

3.  発熱や頭痛、腹痛等、体調が不良。あるいは不安。

4.  蒸し暑い、寒い、空気が薄い等、環境が不快である。

5.  眠たいけど、騒音があり眠れない。

6.  その他の愁訴。

 

大人には分からない事情もありますが、母親ならピンと来ることもあるはずです。

赤ん坊にお乳を与えたくても、飛行機の中は不自由です。粉ミルクを溶くにしても、液体の持ち込みが禁止されている以上、客室乗務員の手助けが必要です。まして母乳で育てている母親には、機内でお乳をふくませることもためらわれます。

一方、これはおむつの交換を求めているのだな・・と分かっても、機内では対処が難しいのです。機内のトイレにはおむつ交換台があるものもありますが、狭いのは事実です。一部の飛行機では、座席の最前列のスクリーンの前におむつ交換台を設け、最前列には赤ん坊連れのお客を優先している航空会社もあるようです。しかしおむつ交換には必然的に臭いの問題があります。

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飛行機の中で乳児が泣きだし、そしてその原因が分かっているのに、どうにもできないとしたら、泣きたいのは母親ということになります。でもそれなら解決策はありそうです。

今、普通に公共施設で見かける授乳室やおむつ交換用の隔離したスペースを設ければいいのです。通常のトイレより少し大きめの部屋を設置するだけで、トイレのような水回りの設備が不要ですから安価に改造できるはずです。

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それによって、エコノミークラス3席分くらいの空間がつぶれるかも知れませんが、赤ん坊連れのお客に評判になって搭乗率が上がれば、しめたものです。

子連れの母親に非寛容なヒステリー女性として女流漫画家は非難されましたが、彼女が考える建設的な意見を無視するのは不適当です。

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しかし、私は全く別の観点からこの問題を考えます。

結局、騒音問題とは人の感情の問題なのだから、人々を和ませ、寛容にさせる方法があればいいということになります。そこで重要なのは母親の態度です。前述しましたが、彼女が必死に子供をあやし、周囲に気兼ねしている様子がありありとしていれば、誰も咎めません。むしろ自分の子育て時代を思い出したり、自分の赤ん坊時代を思い出したり(これは無理)、親子に同情したくなります。なんとなく周囲の雰囲気も和んで暖かくなります。

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これが、子供が泣いていることなど知らんぷりで、母親がゲームをしたり携帯をいじっていたりしたら問題です。文句のひとつも言いたくなります。それにこれには子供の教育という問題が絡みます。赤ん坊が泣いても、他人に迷惑をかけても、気にしない母親のもとで育った子供は、他人に迷惑をかけることに鈍感になるかも知れません。

ひょっとしたら、新幹線の通路を走り回ったりしている子供は、そうして育てられたのかな?と思ったりします。 3歳児以上は、躾で泣き止ませることが可能ですが、それ以下の子供に対しても、泣いている時には何らかのはたらきかけが必要だと私は思います。

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極論すれば、すべての迷惑行為は感情の問題です。原因者、加害者に対して共感を持てれば、あるいは同情の心が持てれば、被害感情は軽減されます。

いっそ、子供連れ優先、赤ちゃん連れ優先というフライトを作ってはどうでしょうか?

赤ん坊が泣いてもお互い様、お母さんは大変だけれども、周囲に気兼ねせずに飛べる飛行機があれば喜ぶ人は多いでしょう。

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実はLCC(格安航空会社)の先駆けであるアメリカのサウスウェスト航空は、そんな雰囲気の飛行機を飛ばしています。乗り込むと、家族連れ、特に子供が多いことに驚きます。客室乗務員も、地上の係員も子供相手にパフォーマンスを見せることに余念がありません。 本当はLCCとは、値段が安いだけでなく、赤ん坊が泣いても許されるアットホームな雰囲気が売り物の航空会社であるべき・・と私は思うのですが、日本の場合、そうはなっていません。単に運賃が安いことがすべてになっています。残念ですが・・。

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それが嫌な客は、ビジネスクラスオンリーの飛行機に乗ればいいでしょう。

全日空などは、ミャンマー便など、およそ家族連れが乗らない出張者相手の便は全席ビジネスクラスにしています。 人々の飛行機の利用は急速に大衆化が進み、これからは棲み分け、乗り分けの時代になりつつあります。

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そうは言っても、諸般の事情でビジネスクラスに乗れないオヒョウはどうすべきか?

でも私は大丈夫なのです。泣く子も黙るこの顔を見せて、ニコッと笑えば大抵の赤ちゃんは泣き止むことを経験済みですから。


【 9月の風 その6 】 [航空]

【 9月の風 その6 】

 

空港で搭乗する予定だった飛行機が突然キャンセルされ、唖然とした私ですが、ふと冷蔵庫に入れるまでの時間制限がある明太子のお土産の事を思い出しました。

罵声が飛び交う、カウンターの前で、私は素っ頓狂な声をあげました。

「そうだ、お土産に買った明太子をどうしてくれるんだ!」

その瞬間、殺伐とした現場で、ちょっと笑い声があがりました。

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なぜか、私がまじめな時、まじめな発言をすると、周囲にはひょうきんに聞こえる事があるようです。明太子のことは、私には重要な問題です。

私は現場を離れ、数十m離れた日本航空のカウンターに行きました。

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カウンターにはかなりベテランの女性職員が一人いて、笑顔で私を迎えてくれました。

すでに、その日の便は終了しており、カウンターは閑散としています。

「明日の便のご予約でございますね?」

彼女にはJ社のカウンターの騒動が聞こえているはずですから、内心ニヤニヤしているのかも知れません。

「朝一番の成田行きをお願いします」

「早速お取りします。では窓際の席ということで・・」

「いや、窓側の席でお願いします」

「はあ。それでは、左側のA席をお取りします。富士山がご覧になれます」

この接客応対の態度は、ごく一部を除いて完ぺきです。やはり新参の格安航空とは違うな・・・。

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しかし、お値段を見ると、ウームとうならざるを得ません。まあ直前の購入ですから、割高になるのは仕方ありません。

出張旅費の節約のために、格安航空を採用したのに、裏目にでてしまった。申し訳ない・・・。トホホ。

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その次は一夜の宿探しです。 早速家内に電話すると、彼女はパソコンの前に座っていたらしく、すぐに博多駅付近で空室のあるホテルを何軒かリストアップして教えてくれました。その中で最も安く、かつ駅に近いTインにしようと私は考えました。

家内は、私のスマホですぐ予約すれば?と言いますが、私はスマホをうまく使えません。 「どうせ博多は近くだから、現地に行ってその場でチャックインするよ」と言って、私は地下鉄のホームに降りました。しかし、福岡空港の国内線の離発着が終わった後は本数が少なく、なかなか電車が来ません。

やがて、ホームには人が集まりだしました。 よく見ると、カウンターで列を作っていた人達です。やれやれ、彼らとホテルの確保で競争をしなければならないのか?

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「ああ、カウンターで質問していた方ですね」と右側から声がかかります。

若い二人組の男性が、ニコニコというか苦笑いの顔で立っています。彼らは私が罵声を浴びるのを後ろで見ていた人達です。

「さっきは災難でしたね。 それにしても、格安航空はこれがあるから困ります。僕らは熊本から電車で来て、J航空で東京へ行って遊ぼうと思っていたのですが、予定を変更して、中州で遊び、博多に泊ります。そのあと熊本へ帰りますが、中州で遊ぶというので、女房がえらい不機嫌ですわ」

「全く災難です。私もこれから博多へ出て、宿をとり、明朝東京へ帰ります」

「服装からみて、出張の帰りですか?仕事にはなかなかこの飛行機は使えませんね。僕らみたいに遊びに行くのだったら、多少のハプニングもいいんですけどね」

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ようやく来た電車に乗り、博多駅で「それじゃ気を付けて」と二人組と別れ、私は家内に教えられた方向へ向かい、Tインに入りました。

しかし、カウンターの女性は 「申し訳ありません。たった今、満室になりました」

家内に電話すると、インターネットでも、ちょっと前に満室になったとのこと。

しまった、やはり地下鉄に乗る前に予約すべきだったか?

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「次の候補は何ホテル、そこも塞がったから、次は何ホテル、次の交差点をまっすぐ」と矢継ぎ早に、家内からのアドバイスが入ります。 J社の飛行機のキャンセルでホテルが奪い合いになったのか、もともと博多のホテルの室数が足りないのか、それは分かりません。 そんな事を考える余裕はありませんでした。 しばらくして、駅から遠くないホテルで、キャンセルが1室発生したとの情報を、家内が確認して予約をいれ、私はやっとチェックインすることができました。

すでに、明太子の保冷時間は過ぎていましたが、私はホテルの部屋のペルチェ効果を利用した小型冷蔵庫にそのお土産を放り込みました。

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シャワーを浴びて、寝床に入り、考えてみます。

「欠航の原因は何だろうか?」

J航空は、費用節約のために、整備士を成田にしか置いていません。もし他の空港で飛行機に不具合が生じた場合、その整備士は他社の便に乗って駆けつけます。

故障発生時刻が遅くて、他社の最終便が出た後は、自動的に翌日まで飛べなくなります。

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しかし、本当にそうなのだろうか?

通常、飛行機は、安全上重要な設備の系統は複数用意されており、1系統が故障しても問題なく飛行できます。目的地の位置や方角を示すINSの様な重要設備は3系統あり、各系統で示す値が違う場合は、多数決で判断することもあります。

複数ある系統の一つが故障したままで飛行することをキャリーオーバーといい、昔から日本航空も全日空も行っています。 今回のトラブルではJ社はキャリーオーバーをできなかったということでしょう。

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飛行機に不具合が発生した場合、モジュール化した部品のユニットを交換して対処することが多くありますが、その交換部品の在庫がどこにでもあるとは限りません。だからキャリーオーバーすることになりますが、キャリーオーバーできない場合は、飛行機を止めて、部品を緊急で取り寄せることになりますが、その運搬にも他の便が必要になります。部品の在庫を持ち、供給を受け持つ日本フリートサービス社の社員が直接運ぶこともあります。

J社は飛行機が故障した際に、迅速に部品を取り寄せて交換する仕組みがまだ無いのではないか?

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もっとも、部品交換にしても、交換の必要があるか否か、およびどの部品を交換すべきかの判断は、資格を持った整備士でなければできません。つまりどう転んでも、J社の飛行機は福岡に1泊しなければならなかった訳です。

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しかし、それはおかしいぞ? J社の飛行機はポピュラーなエアバスA320です。全日空にもこの機体の整備士はいますし、ひょっとしたら福岡空港に部品在庫もあるかも知れません。 それでも、彼らはJ社に協力してくれないのでしょうか?

私は、全日空が冷淡でさえなければ、J社は便をキャンセルせずに済んだのではないか?と思います。

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話が飛躍しますが、大地震で岸壁クレーンが破壊された製鉄所では、阪神・淡路の時も東日本の時も、他社からクレーンの融通を受けています。提携関係にある会社は勿論、ライバルの会社からも貸してもらいます。「武士はあいみたがい」という言葉の通りです。 それに比べると、既存の大手エアラインは、格安航空に冷淡だなぁ・・・。

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それにしてもJ航空は、お金をかけるべきところにかけていないなあ。整備士は、パイロットや客室乗務員のように、お客の目の前に登場する仕事ではありません。だから余計に数を減らしたりしてはいけないのです。 お客の目に触れる部分だけにお金をかけて体裁を繕い、目に触れないところをコスト合理化するというのは、お客に対する欺瞞です。 安全や定時運行という、最大のサービスは、おもに目に触れない人によって確保されています。そこでの手抜きというのは、経営方針がお粗末であることを示します。

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日本では、たぶん「安かろう悪かろう」の商売は、製造業であろうとサービス業であろうと、受け入れられません。 勿論価格は安い方がいいのですが、安さだけが取り柄で他の特性が犠牲になった商品は、最初は受けても、やがて否定されます。日本の消費者は王様であり、わがままなのです。 必ず質を求めます。

格安航空は、あと2,3年したら経営方針の見直しを迫られるかも知れない・・・。

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翌朝の日本航空の飛行機は、定刻で離陸し、成田に到着しました。

しかし、カウンターの女性が配慮してくれた富士山は雲の中で見ることができませんでした。

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そして、その翌日、私は、J社から返金されるはずの復路の航空運賃とホテルの領収証と電車代、それにFAX代を加えて、請求額と振り込み先の口座をJ社にFAXで送りました。しかし、ひと月経過した現時点でも、J社からは何の連絡もなく、入金もされていません。


【 CATIAとSolid Worksの呪縛 】 [航空]

【 CATIASolid Worksの呪縛 】

北京から成田空港に到着した全日空のB-767がハードランディングして機体を損傷したという記事が報道されています。 そして問題の着陸時の様子がTVカメラに写されており、関心を呼んでいます。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120621-00001220-yom-soci

実は私もこの便に乗ることがあり、ちょっと興味があるのですが、TVニュースを見る限りでは、いろいろと不思議な点があり、不可解なインシデントと言えます。

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第一に、機体の4カ所に亀裂が入り、胴体外板にしわがよるという、大きな損傷なのに、TV映像ではそれほど激しい着陸には見えないことです。 そしてパイロットの「確かに衝撃はあった」との証言を取り上げていますが、乗客の声を聞いていません。

これは機体損傷が判明したのが着陸から相当時間がたってからなので、乗客の声を聞けなかったということなのでしょうが、そもそもこれだけの衝撃が機体にかかったのなら、乗客はそれに気づいて大騒ぎになったはずです。

乗客は誰も気づかず、普通の着陸だと思ったのでしょうか?

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フジTVのニュースでは、機体重量130tで着陸した時、主脚と首脚の間の胴体部に70tの荷重が発生して、損傷したと言いますが、これも理解できません。

胴体に曲げの力がかかり塑性変形したのですから、この場合問題となるのは荷重ではなく曲げモーメントのはずです。 注目すべき物理量の次元が異なるのです。

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ボーイングB-767の機体については、注目すべき点が幾つかあります。この機体の製造にあたっては、本格的な世界分業がなされました。 胴体中央部は日本のメーカーが製造し、それをボーイングの工場で他のブロックと結合させて組み立てていました。

TVで見る限り、その結合部付近で損傷が起きているように見えます。

ただその位置について確信はありませんし、結合部だから応力集中したり、強度が足りなかった・・とも断定できません。 もともと主翼の真上の部分は頑丈にできており、それを外れた部分で損傷が起こったとも考えられるからです。

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そして私が考えるのは、まったく別のことです。

それは、3次元CADであるSolidworksのことです。

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かつて、飛行機のデザインには、その設計者の特徴というか、ポリシーが表れていました。 機体の頑丈さを特に重視する設計者、逆に軽量化に主眼を置く設計者・・。

最終的には、高性能の航空機を開発する・・という共通目標があっても、設計者によって、そのアプローチ手法はさまざまです。

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例えば、有名な海軍のゼロ戦を設計した堀越二郎氏の設計思想は徹底した軽量化です。それによって高い運動性と長い航続距離を得ましたが、急降下した際に翼にしわがよるとか、防弾性能が貧弱だ・・という問題がありました。

一方、同じ時期に陸軍の三式戦飛燕を設計した土井武夫氏の設計思想は正反対でした。機体強度を十分に確保するという発想で、飛燕が急降下した時は音速を超えても機体はびくともしなかったそうです。 一方でその機体に対応できる液冷エンジンの信頼性が低く、また機体の剛性を優先した結果、操縦士からの後方視界が悪いといった問題がありました。

土井武夫氏は、戦後国産旅客機YS-11を設計していますが、その堅牢な機体は50年を経過してまだ十分な強度があります。土井流の設計と言えます。

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堀越、土井といった日本の設計者だけでなく、外国にも名物設計者がいて、飛行機の形を見れば設計者が分かった・・という時代がありました。

とにかく細身でスマートな機体にこだわったソ連のツポレフ爺さん。とにかく尖がった機体で超音速にこだわった、アメリカのクラレンス・ジョンソンといった人たちも個性的な設計者です。 それが・・この30年ほどは、個性的な設計者がいません。 あえて言えば、天才バード・ルータンぐらいです。

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特に旅客機は、どの会社のどの機種も形状が似通ってきました。設計者の名前も顔も思い浮かびません。 それはなぜか?

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ひとつの理由は航空機の設計が、技術的に成熟してきて、最適化を求めるとどうしても旅客機の形状が似通ってしまうことです。

そしてもうひとつの理由は3次元CADであるSolid WorksCATIAの登場です。

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ご承知の方も多いでしょうが、CATIAはフランスの航空機メーカーであるダッソー社が開発したCADソフトですが、単なるCADではなく、航空機を自動設計できるという優れもの・・というより人工知能というべきものです。

そしてCATIAは航空機設計だけでなく、航空機生産に於いて革命をもたらしました。

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今、ボーイングの旅客機もエアバスの旅客機も国際分業で設計・製作されます。

その際外国のメーカーとの共通言語はCATIAとなり、図面のやり取りは全てCATIAファイルの送受信で行われます。 エアバスの場合、会社創立の時点から国際分業が当たり前でした。 ボーイングの場合は、国際分業は、B-767以降で本格化しています。防衛需要が漸減していく日本の航空機産業は、B-767の下請けにありつけなければ存続し得なかったかも知れません。 その意味でB-767は救世主です。

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国際分業の道具として使われるCATIAは、実際にはVersion4の時代に爆発的に普及しており、B-767の時点ではCATIAは存在していません。 その前のSolid Worksの時代でした。B-767の胴体設計にはSolid Worksが用いられています。 

www.vsgc.odu.edu/src/.../Paper%20-%20M.%20Youssef.pdf

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問題はその3次元CADが自動設計してしまうことです。

必要なパラメーターを入れれば部品のディメンジョンを自動的に計算してしまいます。

必要な強度が、一定の安全率を乗じて自動計算されてしまうのです。そこには設計者の思想や勘、経験や個性が入り込む余地はありません。

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その結果、何が起こるかといえば、経験と知識の乏しい技術者にも航空機設計ができてしまうのです。しかし、そこには最小限の安全率しかみてありません。

ベテランの設計技師が「ここは脚を少し強くしなくては・・」とか「経験上リブを入れた方が確実だ・・」と思って対処していた設計のコツが全て失われてしまったのです。 航空機設計とは、本来、経験と勘、ノウハウの塊のはずなのですが、CATIAはそれを否定します。 無論Solid Worksも同じです。

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一方で、航空機は世代を重ねるごとに高性能化を要求されます。

より低燃費で、より遠くまで、より高速で、より静かに、より快適に・・・

それらの課題の半分はエンジンの改良でもたらされますが、機体の材料の開発はそう簡単ではありません。毎回新しい改善のネタがある訳ではありません。いきおい、安全率の絞込み・・と言うか最適設計化に走ります。

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かつてジェット旅客機の運用経験やノウハウが未蓄積だった時代には大きめにとらざるを得なかった安全率を、知識の蓄積で、だんだん小さい値に変更する・・というのが最適設計です。 それによって航空機はどんどん高性能になるのですが・・・、その際、決して譲れない部分を判断するのが技師の才能です。 しかし、今はそれがSolid WorksCATIAで自動的になされるのです。

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設計技術者に、その設計図面の根拠を尋ねても、返答は得られないでしょう。

自分で考えて計算した訳ではなく、コンピューターが自動設計しただけですから。

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しかし、機体が強風に煽られて、地面に叩きつけられた時にかかる曲げモーメントや必要な強度まで、コンピューターが考えているとは、とても思えません。 ベテランの設計技師なら考えたかも知れませんが・・・。

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極限までスリム化した安全率でCATIAが設計することの弊害は、既に随所に現れています。

例えば、エアバスの巨人機A-380は完成まで2年も遅れました。 ボーイングのB-787も完成までに3年以上遅れています。 三菱のMRJ1年以上遅れていて、初飛行の予定が見えません。

既に完成しているはずの自衛隊の新型対潜哨戒機も次期輸送機も、なかなか完成せず、制式採用に至りません。 

理由は様々ですが、CATIAで最適設計というか限界設計してしまったために、実際に製作してみると、随所に強度不足が見つかったということもあります。

ダッソー社の設計技師だって完璧な技術を持ってはいないのですから。

本当は人間が計算して設計した方が良かったのではないか?

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もう一つの弊害は、技術者が育たないことです。

かつて、先輩から教えられ、自分で経験して設計ノウハウを積んだ技術者が、今は単なるCADオペレーターになっています。ノウハウはコンピューター側がブラックボクスの中に持っている・・ということになり、そこには技術の伝承も技術者の成長もありません。 日本では航空機の開発は滅多にありませんから、以前、設計に携わった先輩から若い技術者が教えてもらえる機会もありません。 CATIA頼みで設計し、不都合が発生しているのです。

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B-767の胴体強度が不足して損傷が発生したとは、現時点で断定できませんし、それを3次元CADのせいにするのも、牽強付会にすぎるかも知れません。でも私は心配なのです。

航空機業界だけではありません。 問題は拡散しています。

すでにトヨタなどの自動車業界もCATIAを標準にしています。愛知県の求人広告には「CATIAを操作できるオペレーター求む」の文が並びます。 しかし一方で「設計技師を求む」という求人広告は無いのです。


【 空を飛ぶもの 】 [航空]

【 空を飛ぶもの 】

飛行機がデュッセルドルフに向けて降下していく途中、「ただ今、ボッヘム上空を通過中」という表示が示されました。 私はこれまでに何度もデュッセルドルフの空港に来ましたが、ほとんどが西側のロンドンかパリもしくは南側のフランクフルトからです。東側からドルトムント、エッセンの上空を通ってデュッセルドルフに着いたのは今回が初めてです。ボッヘムはエッセンの近くです。

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そのボッヘム上空を通過している時、眼下の雲が途切れ、緑色一色になった初夏のドイツの地面が現れました。 その中に滑走路が見えます。面白いことに、2本並んだ滑走路の内、1本はコンクリート舗装され、今まさに、単発の小型プロペラ機が飛び立ちました。もう1本は、緑色のターフの滑走路で、ちょっと見たら滑走路にも見えません。

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そしてそこに、まさに白い細長い機体がゆっくりと着陸していきます。しかし私自身が乗る旅客機ははるかに高速ですから、その滑走路と機体が見えたのは一瞬で、すぐに視界から消えました。でもたった一瞬でも私の目にははっきりと見えました。

「アレキサンダー・シュライハーだ!(機種は把握できませんでしたが)」

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非常に大きなアスペクト比を持ち(つまり、細くて長い翼を持ち)、優美な胴体と、スマートなT尾翼を持つこのグライダーは、ドイツの誇る傑作です。 私はこのグライダーをイギリスで見たことがありますが、もう10年以上前です。

日本でもたくさん飛んでいますが機会がなく、見た事がありません。私は久しぶりに優雅な機体を見ました。

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デュッセルドルフに到着してから、ドイツ人にその話をすると、彼は「ボッヘムには飛行場は無いよ。ドルトムント空港かな?」とのことです。あとで、ドルトムントのタワーからドルトムント空港を眺めたのですが、空から見たのは、もっと小さい飛行場のようで、ちょっと違うみたいです。

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ジェネアビと呼ばれる、一般航空やグライダーの飛行場として名高いのは、この付近ではアーヘン飛行場ですが、これはフランスとの国境に近く、デュッセルドルフからは逆の方角です。 多分違うでしょう。 ちなみにアーヘンには有名なアーヘン工科大学があり、私の学校時代の先輩や同級生、製鉄会社時代の同僚も多く留学しています。 だから、その名前を聞くと、今でもちょっと羨ましくなる土地です。

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結局、飛行機から見えたのは、名もなき滑空場だったのだろうと思いますが、それにしてもシュライハーは美しい名機です。 私の出た学校も日本ではグライダー界の草分けと言われ、三田式という傑作機を生み出し、今もそのグライダー部は日本のトップクラスです。 でもドイツには負けるなぁ。

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もともと、滑空に適した草原やなだらかな丘陵が多いヨーロッパは、グライダーには適した場所です。多くの人がグライダーを趣味にします。その中でもドイツがグライダー王国であるのには理由があります。 第一次大戦に敗れたドイツはエンジン付きの航空機の研究開発や製造を禁止された時期があるのです。

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いきおい、人々はエンジン無しのグライダー開発に力を入れ、その分野でトップに立ちます。 やがてドイツにナチス政権が誕生し、戦勝国との約束を反故にすると同時に、培われたグライダー技術はすぐに軍用航空機の研究に活かされ、たちまち優れた戦闘機や爆撃機を開発しました。 そして再び無謀な戦争を始め、敗れました。

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ポッペンハウゼンにある、アレキサンダーシュライハーの工房もその波乱の歴史を経験しているのですが、同社は依然グライダー界の巨人です。

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私オヒョウが、一度は乗ってみたい・・と思いながら、実現していない航空機は数多いのですが、実はグライダーもその一つです。 

きっかけは「空の王子たち」という岩波少年文庫の児童小説を読んだことですが、そこに登場するフランスのグライダー少年(少女)は実に活き活きとしていました。同時期に、アーサーランサムの「ツバメ号とアマゾン号」も読み、ヨットにも乗りたいな・・などと思ったのですから、まあいろいろと興味があった子供だったのです。

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あたりまえですが、グライダーにはエンジンがありません。上昇気流と風だけが頼りの凧のような頼りなさがありますが、エンジンの騒音からは解放され、燃料切れとも無縁です。 エンジンが止まると石のように落下する飛行機とは違います。

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ジェット機だとか、ヘリコプターというのは、自らが空に浮かぶために一生懸命というかあくせくしているように思えてなりません。自分の人生に例えると、ちょっとなんだかなぁ・・という気持ちになります。

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この感覚は、鳥を見ても同じことです。トンビなどのワシタカの仲間は上昇気流を利用して、はばたかなくても、長時間滞空できます。アホウドリやオオミズナギドリも同じです。 まさにグライダーです。

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その一方で、スズメなどは、1秒間に20回もはばたかなくては空を飛べません。まさにご苦労なことで、無理やり長時間飛ばせると疲労で死ぬそうです。中国では文化大革命当時、毛沢東がスズメを殺せ・・と発言したために、紅衛兵達はスズメを脅かして着陸させず、死なせたそうです。 確かに今でも中国にスズメは少ないのですが・・。 

おそらく、さらに小型のハチドリのはばたき回数はさらに多く、高い体温を保ち、頻繁に高カロリーの蜜を吸わなければ燃料切れで死んでしまうのでは?と思います。

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小動物と大型の動物の心拍数と寿命の関係を調べた学者がいて、「ゾウの時間、ネズミの時間」という本を著しています。 大型の動物はゆっくり心臓が動き、そして寿命も長いが、小型の動物はその逆だという訳です。同様に、鳥類については、固体の大きさと、はばたき回数、そして寿命に関係がありそうです。 はばたき回数が多くあくせくとした小型の鳥類は短命で、はばたかずに滑空する大型の鳥類は寿命も長いのではないか?

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もちろん、根拠の乏しい仮説であり、検証するのは容易ではなさそうですが・・・。でも昔の人は、大型の鳥と小型の鳥を比べ、後者を軽蔑しています。

「燕雀、いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」

あくせくとジェット機で出張に出かけるサラリーマンには、優雅にグライダーで空を飛ぶ趣味人の気持ちを理解できるはずもない・・・・と現代語に訳せそうです。

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「 何を言っているのだ、オヒョウ君。 君は鳥ではなくて蝙蝠だろう? 技術屋のいない商社に入って、技術屋のフリをしているところなど、鳥のいない里で鳥のフリをして飛んでいる蝙蝠そのものではないか… 」

たしかに蝙蝠は小型の鳥類以上にあくせくとしています。 

この私がグライダーに乗れるのは何時になるのか・・・、ちょっとわかりません。


【 B-787 】 [航空]

【 B-787 】

先日、ある機会を得て弥富市にあるK重工の工場を見学する事ができました。

この工場では、最新鋭機B-787の前部胴体を製作しています。

実は、伊勢湾の奥にはK重工やM重工の宇宙航空機の製造部門が並んでおり、ちょっとした航空機産業のメッカなのです。

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特別のご厚意によって実現した見学ですが、内部は企業秘密の塊まりですから、本当に重要な部分は見せてもらえません。勿論写真もダメです。B-787用に建設された新工場の中は入れず、旧工場の方だけの見学となりましたが、それでも驚きの連続です。

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この会社の工場は、その昔、B-767の胴体の生産を開始した時に、それ用に作られました。

その後、B-777用の新しいラインを設け、そして最新のB-787用に新しいラインを設けています。 新工場はB-787専用工場とのことですが、旧工場の中にもB-787の製造工程があり、それを見学できたのです。防衛省向けの需要が先細りの中、宇宙航空機部門の社運を掛けて建設した新工場ですからB-787の完成が3年も遅れた事は経営上、かなりの痛手だったに違いありません。

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それはともかく三世代の機体の製造ラインを比べる事ができるのは、幸運です(もうB-767の製造ラインは無くなっていましたが)。 多くの発見がありました。

第一には、B-777B-787の製造ラインには共通性がなく、それぞれの製造ラインは完全にその機種専用になっていることです。

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飛行機の胴体は、円形の断面を支えるフレームと、前後方向を結ぶストリンガーが、縦横に組み合わされます。それが障子のサンのようになって機体を支え、スキンと呼ばれる壁が外側に貼られます。 その構造自体は、B-777B-787も同じですが、フレームやストリンガーの形状は全く違います。第一、素材が違います。 B-777はアルミ合金ですが、B-787は複合材料です。

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でも胴体の基本的な構造が同じなら、組立工程には共通点があり、兼用できる設備もあるだろう・・と素人の私は思います。しかし実際は違います。

まず何より素材の違いが重要です。

リベットの種類も接合方法も、非破壊検査の方法も全く違います。

孔を開けるための切削加工の方法も異なります。だからB-777B-787で、胴体の製作工程に共通点は無いのです。

B-787はちょうど素材が金属から複合材料に転換する大変革の時期の機体であり、この次の新型機も複合材料が多用されると思われます。それならその機体の組立には、現在のB-787の生産ラインが使えるのではないか?という期待もありますが、そう簡単ではないようです。 

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胴体直径が違えば、多くの装置が流用できないのです。

胴体の組立は、「八つ橋」と呼ばれる反りのある長方形の部材を、マンドレルと呼ぶ円筒形の架台に貼り付ける形で行われます。 これはB-777B-787も同じですが、胴体の直径が違います。 B-787も2本通路の機体ですが、B-777ほど大きくありません。 次に開発される機体がB-787と異なる胴体直径であれば、同じマンドレルは使えません。

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マンドレルだけではありません。リベット作業をするロボットも非破壊検査の装置もB-787の胴体直径に合わせて作られています。

世界最大と思われるオートクレーブ(複合材料を熱処理する設備)もB-787の胴体直径に合わせています。

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つまり、多くの設備はB-787専用になっており、約1000機と思われるB-787の生産だけで投資を回収せねばなりません( 今後受注機数が増える可能性はありますが)。 これは大きな問題です。

今、自動車産業をはじめ、多くの組立産業では多品種対応が課題になっています。

単一品種を大量に効率よく組み立てるのではなく、多品種が工程に混在しても、段取替えのロス時間を最小限にして、最適な生産計画を実行するのが常識です。

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それなのに、部品点数が自動車よりはるかに多く、一方で生産台数がはるかに少ない航空機産業で、単一品種固定生産のスタイルを取っているのは不思議です。

ボーイングのやり方でしょうが、ちょっと理解できません。

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生産ラインを機種毎に専用化するということは、一度生産を終了したら、生産再開が容易ではない事を意味します。 専用設備を撤去・廃棄してしまえば、もう生産できません。設備を復活させるには、莫大な費用と時間がかかるはずです。

これも大きな問題です。実際に起こっている例を挙げます。

1.B-767は既に生産を終了しており、追加生産はできませんが、日本の航空自衛隊は、B-767をベースにした早期警戒機や空中給油機を小数ずつ導入しています。将来それらの機体が消耗した場合、追加発注して補填したいところですが、既にB-767の生産ラインを閉じているので現実には不可能です。

2.日本のF2戦闘機は、先の大震災の津波で多くの機体が失われました。その分を新規に製造して補充したいところですが不可能です。なかなか決まらない次期主力戦闘機の穴を埋めるためにF2戦闘機を増やす事も考えられますが、それもできません。 既に生産ラインを閉じているからです。

3.次期主力戦闘機FXの候補として、以前日本で最有力視していたのは米国のF-22でした。しかし、米国の議会はそれを認めず、生産ラインも閉鎖してしまいました。

その為、F-22の採用は完全に不可能になってしまいました。

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航空機の生産ラインを固定し、柔軟性を持たせない方式には様々な問題があります。そして、かつて世界中に数多くあった航空機メーカーが、倒産や合併によって、わずか数社に集約されていった背景にはこの生産システムがあると、私は思います。

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そして、もう一つの問題は、非常に進歩した生産ラインのロボット化や自動化です。

これは品質のばらつきを無くすためには最適の方法であり、トレーサビリティの観点からも適切な方法です。

しかし、設備さえあれば、誰でも製造できるという事であり、どの国の工場でも設備を据え付ければ製造できるという事です。 一方で日本の製造業が強みとするのは、熟練した作業者の技能や、品質管理についての厳密な考え方です。

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生産ラインのロボット化、自動化は、日本の特長を殺す方向を目指すものであり、この導入には注意する必要があります。これがボーイングの意向であるとすれば是非もありませんが、そうなると、ご近所で純国産のジェット旅客機MRJを開発するM重工はどうなのか?と考えてみたくなります。

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MRJは胴体の一部を複合材料からアルミ合金に戻すなど、設計の見直しが進んでいますが、部品調達は全世界から考えており、日本企業固有のノウハウや技術には興味を持たないのかも知れません。

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短時間の工場見学でいくつもの疑問が湧きましたが、ご好意で見学させていただいた手前、不躾な質問もできません。

最後に戻った工場の入口には、B-787B-777の窓の付近の実物が展示されています。

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見学者はそれぞれ手にとって、複合材料製の部品が軽い事に驚いていましたが、私は全く別の事を考えました。ご承知の通り、B-787の窓はかなり大きいのです。

B-787の窓は大きい。これなら、万一上空で窓が割れた時、窓側に座っている人は吸い出されるかも知れない・・・」

窓が割れて、乗客が吸い出されるという戦慄すべき事故は、過去に発生しています。

被害者はかなり小柄な男性だったのだろうと思いますが、B-787ならかなり大きな人でも吸いだされる可能性があります。

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「この窓の大きさは危険かも知れませんね?」と尋ねる私に、

「窓が割れる可能性は非常に低いです。それにもし割れても、オヒョウさんなら、この窓から吸い出される可能性はないでしょう。 しかし詰まる可能性はありますね」

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実は私にはそれが一番怖いのです。自分が壊れた窓を塞ぐ形で、機内の与圧状態を維持できるなら本望ですが、自分は多分助からないでしょう。 それどころか窓に詰まった私の体がどうにも抜けなくなるという、みっともない事態だけは避けたいのです。

B-787では少なからず、その可能性があると私は思うのです。


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