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【 飛ぶかMRJ 再び その1】 [航空]

【 飛ぶかMRJ 再び その1】

 

いささか旧聞ですが、三菱航空機のMRJの完成が遅れに遅れています。

大前研一氏が指摘していますが、このように遅れては、仮に開発に成功しても、事業の見通しは暗く、ひょっとしたら事業そのものが空中分解するかも知れません。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20130902/363544/?ST=business&P=1

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新型機の完成が遅れるのは、何もMRJに限りません。世界最大の旅客機エアバスA380も初飛行まで随分時間がかかりました。同じく鳴物入りで開発されたボーイングB787も初飛行が大幅に遅れ、しかも初飛行後もトラブルに見舞われて、飛行中止に追い込まれたりしたことは周知の通りです。

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ジェット旅客機が登場してから、60年以上経つのに、新型機の開発が計画通りいかないのは、いかなることか? むしろ逆であるべきではないのか?と、私などは素朴に考えます。

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一般に工業製品は、基本的な技術がこなれてくれば、新型モデルの開発に要する期間は短縮されます。「開発の習熟化」による影響です。

典型的なのは、自動車や自動二輪、家電製品の世界です。パソコンも同様です。厳しい競争に晒されている業界では、開発期間の短縮は至上命題なので、ある意味で当然ですが、開発ノウハウの積み重ねが期間短縮を実現します。

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しかるに、飛行機だけが逆である・・というのは不可解です。その点について考えます。今、奇妙なアニメ映画「風立ちぬ」で急に有名になった堀越二郎氏の場合はどうでしょう?彼は三菱でまず「七試戦」を設計し、その後「九六艦戦」を設計し、有名な「ゼロ戦」を設計していますが、その間に開発技術は次第に習熟していきます。

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そして「七試戦」は大失敗、「九六艦戦」はそこそこ成功、「ゼロ戦」は大成功で名機の誉れ高い機種です。その過程は「風立ちぬ」ではなく、柳田邦夫の「ゼロ戦燃ゆ」に詳しく述べられています。

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しかしその後、堀越氏のグループは、局地戦闘機「雷電」の開発に取り組み、非常に苦労します。全体としてゼロ戦の時ほど開発に時間はかかっていませんが、開発中に発生したトラブルをなかなか解決できません。習熟した技術、完成度が高くなった製品だけに、より一段進んだ画期的な製品にしようとすると、とたんに難しくなるという理屈でしょう。 開発技術の習熟だけでは説明できない問題も確かにあります。

 

今回のMRJについては、ゼロ戦時代の戦闘機の設計とは全く違うので、単純に比較はできません。 細部の設計は最新のCAD技術で合理化され、計画遅れをもたらす原因にはなりません。

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では何が原因なのでしょうか?

三菱航空機が、開発の遅れを正式にアナウンスしていますが、その原因は文面からは理解できません。

http://www.mrj-japan.com/j/news/news_130822.html

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多くの人が憶測で、遅れの理由について、海外調達する部品の納期管理ができていないとか、米国に意地悪されたのだとか、新型エンジンの開発がサボタージュにより遅れたとか、推理しています。

米国の意地悪については、随分前に初飛行したホンダジェットがいまだに米国の型式証明が取れていない事実からも、いかにもありそうな話です。

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MRJの工場では、しびれをきらしたマスコミに、何とか写真に写るものを見せなければ・・とばかりに、組立途中の胴体だけを公開しました。その姿は、エンジンが無い事が一種異様に見え、エンジンの調達遅れが図らずも強調された形です。

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新型エンジンのギヤードターボファンについては、新技術ですから、遅れることはありうるのですが、三菱が求めているPW1200よりも高性能な新型エンジンPW1500が、既にライバルであるボンバルディアに引き渡されているとの話もあり、意図的に三菱いじめがあるのではないか?と勘ぐってしまいます。

http://www.pw.utc.com/News/Story/20130917-1000

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その気配を察したのか、エンジンメーカーのプラット&ホイットニーは、すぐさま、遅れの原因は、新型エンジンの開発ではなく、エンジン開発は予定通りに順調に進んでいる・・と強調しています。

http://www.pw.utc.com/News/Story/20130820-1045/2013/Commercial%20Engines

しかも、7月に発表したアナウンスメントを、三菱が計画遅れを発表した直後の8月に再度、繰り返して発表する念の入れようです。

http://www.mrj-japan.com/press_releases/news_130822.html

これは全く異例の事で、プラット&ホイットニーも相当神経質になっていると言えます。

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三菱のプロジェクトに参加し、新型エンジンを供給できることを誇りに思う・・と慇懃な文面ですが、内容は「繰り返しになるが、遅れが生じたのは、我々の責任ではない」という強い口調のものです。

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果たして何が真実なのか?

私の意見を述べれば、下記の2点です。

1.プラット&ホイットニーが三菱向けよりもボンバルディア向けを優先させたのは、事実。

2.しかし、それを以て三菱いじめとか、日本の航空産業への妨害というのはあたらない。

エンジンを製造する民間企業の経営者の目で見れば、明らかです。

三菱は大企業ですが、旅客機の製造については実績が全くなく、新規参入者です。

一方、ボンバルディアは新興企業ですが、旅客機の生産・販売の実績はボーイングやエアバスに次ぐものです。エンジンメーカーとしてどちらを重視し優先すべきかは明らかであり、三菱が繰り言を言っても仕方ありません。

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ではどうすべきなのか? 三菱MRJの問題の本質は何なのか?

これについては次号で述べます。


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夏炉冬扇

今日は。
面白かったです。なーるほど。
by 夏炉冬扇 (2013-09-26 18:01) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様
コメントありがとうございます。返信に遅れて申し訳ありません。
最近ドタバタとして、夏炉冬扇様のブログにもなかなかお邪魔できておりません。

またお伺いしますのでよろしくお願いします。
by 笑うオヒョウ (2013-10-07 07:58) 

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