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【 三菱対兼松 ?】 [航空]

【 三菱対兼松 ?】

 

兼松がボンバルディアの小型旅客機の販売に乗り出したことが、新聞に小さな記事で出ています。 

シングルアイル(つまり単通路)で 乗客は110160程度の飛行機で、これから世界中で売れると思われる機体です。

http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1120131226aaai.html

記事にはありませんが、新型機の名前はCS100CS300です。

そして、このことは、日本の商社の世界でちょっとした波風を起こすかも知れません。総合商社の多岐にわたるビジネスの中で、航空機の販売またはリースといった事業が必ずしも魅力的なものとは限りません。

しかし、民間航空機はハイテク製品の代表でもあり、国際的な商品で、かつ見栄えのする商品ですから、各社とも航空機ビジネスを宣伝します。唯一、例外としてロッキード事件とダグラス・グラマン事件の時は総合商社のスキャンダラスな部分を示す形となりましたが、過去の話です。

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酣燈社の雑誌「航空情報」の裏表紙などには、三井物産、双日、といった航空機ビジネスを手掛ける各商社の広告が載っています。

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ところで、兼松が扱う飛行機(CS100CS300)の絵を見ていて、あれっ?と思うところがあります。三菱航空機が開発中の国家プロジェクトMRJとシルエットがそっくりです。(正確には操縦席の窓の辺りの形は違いますが・・)。

そして仕様を見れば、こちらも似ています。乗客定員が10人~160人というのも似ていますし、何より「従来機より燃費が20%」も良いという宣伝文句がそっくりです。

よくよく見れば、プラットアンドホイットニー社(P&W社)の最新型ギヤードターボファンエンジンを採用して燃費を良くした・・とのこと。 三菱と同じ説明です。それに加えて複合材料を機体に用いたので軽量化に成功したという説明も、三菱MRJとそっくりです。

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これは、以前の私のブログで紹介した、新型エンジン採用問題の対抗機種だったのです。 http://halibut.blog.so-net.ne.jp/index/3

題名は【 飛ぶかMRJ再び その1 】です。 三菱はMRJの完成が遅れに遅れて、弁解に追われています。 正式なコメントにはありませんが、P&W社の新型エンジンの納入が遅れているのが原因だという情報が流されています。 無論P&W社は反論し、エンジン開発はスケジュール通りだとホームページで主張しています。

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しかし、三菱より後からP&Wにギヤードターボファンエンジンの提供を要請したボンバルディアは、三菱より早くエンジンを手に入れ、新型機の開発を完了しました。 

http://www.pw.utc.com/News/Story/20130917-1000

世の中の航空機ファンはそのことを知っています。

そして、そのボンバルディアの新型機こそ、今回兼松が販売権を獲得したCRJ機なのです。実に因縁浅からぬことです。

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国家プロジェクトであるMRJに逆らってライバル機を使うとは兼松は何を考えているのか? と考えながら、三菱航空機のホームページを見ると、三菱商事が10%、三井物産と住友商事が5%ずつ、出資しています。つまり三菱のMRJは国家プロジェクトであるだけでなく、財閥系の総合商社連合のプロジェクトでもあるのです。

つまり、兼松は三井、三菱、住友の総合商社連合と競争する道を選んだのです。

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根本にある問題として、三菱重工/三菱航空機とボンバルディア、MRJCRJを比較してみます。 三菱重工は、重工業界の巨人であり、老舗でもあります。一方、ボンバルディアはスノーモービルの開発から始まった新興企業ですが、旅客機の製造に関しては三菱重工よりずっと実績があります。

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日本でボンバルディアと言えば、故障続きの信頼できない飛行機というレッテルが貼られていますが、これはDHC(デハビランドカナダ)というプロペラ機のメーカーの系列であり、カナデア系列のジェット機とは違う系譜です。

小型ジェット旅客機のメーカーとして高い実績があり、旅客機のメーカーとしては今や、ボーイングやエアバスに次ぐ存在です。

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そして、その新型機がMRJと真正面からぶつかるライバルになる訳で、兼松は敢えて、そちらの側についたのです。

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向こう20年間の旅客機需要は調査した会社によって数字が違いますが、中小型機が5000機以上売れるのは確実です。 これは、21世紀に入って急に台頭してきたLCC(格安航空会社)の需要が見込めるからです。LCCは長距離便も飛ばしますが、小型機で短距離を頻繁に飛ぶビジネスモデルを考えており、CS100CS300はそれに適しています。(三菱MRJもです)。 兼松がそれに賭けたのは当然です。

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日本が独創的な飛行機を開発したのに、外国の実績のある航空機メーカーがそっくりの飛行機を売り出し、商売では負けてしまう・・という事はこれまでもありました。

戦後初の国産旅客機YS-11を開発した時、ほぼ同時期に英国のホーカーシドレーがよく似た旅客機(ホーカーシドレー74/アブロ748)を開発・販売し、YS-11は多くのお客を奪われました。同じことが、三菱MRJでも起こるのです。

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ホーカーシドレーは、英国の名門航空機メーカーでしたが、ボンバルディアは前述のとおり、新興企業です。そこに三菱は悩まされるのです。航空機のサプライヤーは、かつては一部の先進国の大企業に限られていたのに、今は違います。コモディティ商品化したとまでは言えませんが、価格の勝負の時代に入ってきました。

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お客のエアラインもかつては、その国を代表するナショナルフラグキャリアーが中心でしたが、これからは、新興のLCCが主体です。 航空機と航空の業界で下剋上が進行しているなら、総合商社についても、下克上があって然るべきかも知れません。

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日本の総合商社の場合、最上位に旧財閥系の3社(三井物産、三菱商事、住友商事)が御三家として君臨し、それに続く存在として、伊藤忠、丸紅があり、その後に双日や兼松が続く序列がありました。 しかし21世紀の現代、財閥系か否かは本質的な問題ではありません。 巷では売上高と経常利益額で、伊藤忠が住友商事を追い越した記事がながれています。 商社も航空機産業や航空業界と同じく、下克上の時代なのかも知れません。

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その中で、兼松が、財閥系の3商社が売る三菱MRJのライバル機を敢えて販売するというのは、象徴的な出来事です。 そしてこの問題は商社だけに留まりません。

前述のとおり、三菱MRJとボンバルディアCS100は、同じ新型エンジンを取り合った訳ですが、エンジン以外でも、同じサプライヤーが両社に部品を提供する例が幾つかあります。 例えば、両方とも、素材である炭素繊維は東レから、ギャレーやトイレはジャムコから、降着装置は住友精密から調達します。 これらの日本の会社は、ボンバルディア向けを優先すべきか、三菱向けを優先させるか・・でハムレットのように悩む事になります。 航空機ビジネスとしてはボンバルディアの方が大事ですが、日本の企業としては国家プロジェクトで三菱が進めるMRJが大事です。

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その中で、大手総合商社の兼松がボンバルディアを取ったとなると、他の会社もボンバルディアの方になびく可能性があります。 いまから10年ほど経った時点で振り返り、「そういえばMRJプロジェクトが失敗したのは、兼松がボンバルディアを取ったのがきっかけだったね・・・」という事にならなければいいのですが・・。


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