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【 Notre- Dame de Paris 】 [フランス]

【 Notre- Dame de Paris

 

今は昔、昭和の時代、私が北陸のある町の高校生だった頃です。英語の樫本先生が夏休みに行かれた欧州旅行の話を授業中にされていました。英国、フランスが主ですが、中でもパリの話題が多かったのです。中年の男性教師が初めての海外旅行の話をするあたり、「チップス先生さようなら」を彷彿とさせますが、樫本先生は、ちょっとイメージが違います。背筋をピンと伸ばして、ロボットの様に教室を歩かれる先生です。

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樫本先生は、訪れたノートルダム寺院の荘厳さに感心されたようで、その感想を熱く語られた後、最後に奇妙な事を言われました。

「でも、僕はカシモトであってね、背むしではないのですよ」と言って、ただでさえまっすぐな背をさらにピンとされました。

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このダジャレを咄嗟に理解できた生徒はほとんどいないようでした。

ただ一人、学年一の美少女と噂されたNさんだけが、クスリと笑ったのを私は見落としませんでした。彼女にはこのダジャレが分かったのかな?

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その後、Nさんは筑波大学の仏文科に進学し、そこで知り合った男性と結婚しました。新婚旅行はパリだったとのこと。

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私は、その後、ビクトル・ユーゴーにはまった時期があり、学校の勉強もせず、幾つかの作品を読み漁りました。「1793年」「レ・ミゼラブル」「ノートルダムドパリ」。一連の作品を読んで、これはやっぱりパリに行かなくては、とても本当の事は分からないな・・と思いました。私は無性にパリに行きたくなったのです。

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余談ですが、外国の小説を読んでその舞台の国に行きたいと思ったことは、そう多くありません。アーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」を読んで、英国の湖水地方に行きたいと思ったぐらいです。

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話が脱線しましたが、「ノートルダムドパリ」を読んで、やっと樫本先生のダジャレが分かりました。主人公はせむし男「カジモド」で名前が似ていたのです。分かってみれば単純なダジャレでした。そうか、Nさんはあの小説を読んでいたのかな?

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私がパリで実物のノートルダム寺院を見ることができたのは、それからずっと後の平成の時代です。そして、その欧州時代、私はドイツのブレーメンにある鉄鋼会社を訪問しました。クレックナー(Klöckner)という会社です。この会社は川鉄(当時)と関係が深く、Q-BOP式転炉も導入しています。だからライバル会社の私の訪問は歓迎されるかな?と心配したのですが、それは杞憂で歓待されました。仕事を終え、会食会場に移動するために町を歩いていると、Klöcknerという単語を書いたポスターを見かけました。ポスターには「Der Klöckner von Notre-Dame」とあります。

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「これは御社と関係があるのですか?」とくだらない質問をすると、Klöcknerの担当者は一瞬キョトンとして、それから大笑いしました。

「これは今、映画館で上映しているディズニーアニメの題名ですよ。Klöcknerとは鐘撞男(Bell Man)つまり「背むし男」のカジモドの事です」。彼は言いませんでしたが、「背むし」という身体的特徴をあげつらうような題名は、ディスニー映画にはふさわしくなく、「ノートルダムの背むし男」から「ノートルダムの鐘撞男」と名前を変えたみたいです。

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「では貴社は鐘撞男が始めた会社なのですか?」と私が再びくだらない質問をすると、彼はあまり上手でない英語で、「創始者の名前がKlöcknerだったのです。先祖は確かに鐘撞男だったのかも知れませんが、今ドイツではKlöcknerは一般的な姓です。たまたま、ディズニーアニメの名前と重なりましたが無関係です」と面白そうに語りました。

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しかし、私は名作「Notre Dame de Paris」がディズニーアニメ(つまり子供向けの作品)になる事に強い違和感を持ちました。そしてちょっと暗い気持ちになりました。アニメを見る子供たちに、この小説が本当に理解できるのだろうか? 下手をしたら、醜いけれど心の美しい男性が、美少女に憧れる・・という平板なストーリー展開になりはしないか・・・?

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世の中の小説には、映画化に適した作品とそうでない作品があります。概ね長編小説は映画に向きませんが、ビクトル・ユーゴーの作品はその最たるものかも知れません。

日本では内田吐夢監督がレ・ミゼラブルを元に「ああ無情」を制作し、高い評価を受けていますが、あの重厚で複雑で奥行きのある作品を短時間の映画にするというのは、私には冒涜にさえ思えます。映画でそうなら、ミュージカル「レ・ミゼラブル」などなおさらです。

もっとも、観てもいないのに、貶す資格は私にはありませんが・・・・。

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私の母が生前に言っていましたが、作品が映画になり、映像を見るとイメージが固定されてしまいます。活字で小説を読み、自分でイメージを膨らませた方が、より自由で豊かな世界を想像できて、感動するし、感情移入もできる・・というのです。私などは作品のヒロインの顔は、全て当時憧れていた女生徒の顔に置き換えてイメージしていました。(断っておきますが、Nさんではありません)。

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実際、パリに行った事の無かった頃の私が、ユーゴーの小説を読んでイメージしていた世界は、本物のパリとはかなり違ったのですが、それはそれで良かったような気がします。残念ながら、私がノートルダム寺院を見た時、樫本先生ほどの感動は覚えませんでした。

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実際に目で見るパリの街並みやノートルダム寺院、一方、小説を読み、空想でイメージするパリの街並みやノートルダム寺院、どちらが私にとって存在感があるか?

 

ああ、しかしそんな比較をしようにも、実物のノートルダム寺院は火事で焼け落ちてしまい、もはや皆さんの記憶の中に存在するだけになってしまいました。がっかりです。

 

形あるものは何時かは壊れる・・と言いますが、あの荘厳な寺院がなくなるとは・・・。

私に言わせれば、「ああ無情!」ならぬ「ああ無常!」です。

しかし、このくだらないダジャレは、樫本先生のダジャレには到底かなわないなぁ。

 

おそらくNさんも、クスリとも笑わないでしょう。

 

(今回は、他人のプライバシーにも触れましたが、まあ、昭和の時代の話なのでお許しください)。


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【 後悔などあろうはずもない? 】 [雑学]

【 後悔などあろうはずもない? 】

 

いささか旧聞ですが、平成時代を代表する野球選手であるイチローが引退しました。

もっとも、日本よりも米国での活躍が目立ったイチローとしては、日本の元号で時代を区切られることに違和感があるかも知れませんが・・。

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この偉大な選手について語りたいことは山ほどありますが、今回は彼の引退会見での一言にこだわります。

記者が「後悔はありますか?」と質問したのに対して、「後悔などあろうはずもない」と答えたのです。

https://www.asahi.com/articles/ASM3P7GBXM3PUTQP02M.html

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私が「あれっ?」と思ったのは、質疑応答の齟齬です。記者は「決断に後悔は?」と訊いています。「ここで引退すると決めたことについて後悔は無いのか?」という意味でしょう。一方、イチローは、これまでの野球人生全般について後悔はないか?と質問されたと解釈したようです。

だから「今日の球場の様子を見れば分かる通り、後悔などあろうはずもない」と答えたのでしょう。これは記者の質問の仕方が悪かったと言えます。

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ただ単に「後悔はありません」と言えばいいのに、「後悔などあろうはずもない」という、もってまわった大袈裟な表現を用いたのは、イチローのひとつの癖で、質問者(記者)を小馬鹿にする時に用いるパターンです。

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しかし、私が考えるのは「後悔は無い」というその発言です。

同じように、かつて「我事に於いて後悔せず」と記した人物がいます。あの宮本武蔵です。勝負師としての在り方、求道者としての生き方を考えると、何となくイチローに重なります。武蔵は、晩年に著した「独行道」でそう語っています。

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この一文については、多くの解釈がなされているようです。

https://view.cafe/monopoly/a-new-day/6480

勿論、自分はこれまでの人生で、一度も失敗や判断ミスをしなかったという浅薄な自慢話ではないでしょう。しかし、同じく武蔵が著した「五輪書」では、「我生涯に六十余度戦いて一度も負けず」と自慢話を書いていますから、やっぱり単なる自慢話かも知れません。

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これを「倨傲ではないか?」と、噛みついたのは、昭和の天才棋士の一人、升田幸三九段です。升田九段がまだ存命だったころ、NHKの歴史番組で、「宮本武蔵は本当は弱い人物だったのではないか?」と語っています。

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即ち、本当に強い人物だったら、武蔵は自分の人生を振り返り「いつ、どこどこで、辛き(からき)目に遭いけり」と、自分の失敗談や不名誉な記憶を正直に語ったはずだというのです。それができなかったのは、彼の弱さであり、強がりであろうと升田九段は語りました。 本物の勝負師だった升田九段だからこそ言える話です。

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実際の宮本武蔵の人生には、失敗と後悔が溢れています。関ケ原では負け組の西軍に付いた(真偽は不明)し、島原の乱では老骨を鞭打って参戦するも、負傷・気絶するという不名誉を体験しています。あまり出世もしていません。巌流島の決闘だって自慢できる勝ち方ではなかったという話もあります。それなのに、武蔵は、「生涯負けなし」と書き、「我、事に於いて後悔せず」と書きます。嘘つけ。

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だから、私は「後悔は無いです」という人の言葉を素直には信じません。

イチローの長い野球人生は、栄光に満ちていて、余人にはまねのできない素晴らしいものです。しかし、そこに失敗は何もなかったのか?後悔すべきことは何も無かったのか?と彼に尋ねたい思いにかられます。

イチローは本当は弱い人物だったのではないか?

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むしろ、「自分は、過去の事にくよくよしたり振り返ったりせず、常にこれからの未来を考える前向きな人間なので、だから後悔はしない」と答えた方が、よっぽどイチローらしく返答として適切だったのではないか・・と私は思います。

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言うまでもないことですが、引退会見は、それまでの野球人生に幕を下ろす宣言であると同時に、新しい人生を始める宣言でもあるからです。

これからのイチローの長い第二の人生で、彼が何をしようとしているのか、まだ発表はないのです。 ひょっとして「野球五輪の書」でも書くのかな?

 

東京オリンピックで野球も復活することだし。


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【 LとR 】 [政治]

【 LR 】

 

私は英語の発音のLRの使い分けが苦手です。時々、聞き間違えるし、自分が話す時もLRの発音がゴッチャになります。でもそれは私だけでなく、日本人の多くが苦手とするようです。

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映画「チャイナタウン」には、日本人の発音をからかう場面があります。

水不足のカリフォルニアで、各家庭の庭の池には淡水でなく海水を引いていますが、これが芝生には良くない訳です。日系移民の庭師が「海水はgrass=草(芝生)には良くない」とぼやく訳ですが、それを聞いた主人公の探偵(ジャック・ニコルソン)は、「海水は眼鏡(glass)に良くないのか?」と言いながら、海水の池をのぞき込み、底に沈む殺人の被害者の眼鏡を発見し「ああ、海水は眼鏡に良くないのだね」ともう一度言います。

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また、私は知りませんが、日本人をからかうギャグでは、わざとLRを逆にして発音するそうです。ちょっと不愉快です。しかし英語の発音でLRを混同してしまうのは、日本人だけではないようです。中国人も韓国人も少し苦手にしているようです。

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そんなことを思い出したのは、新しい元号が「令和」と決まったからです。アルファベットの頭文字で表すとRになるそうで、令和18年はR18だ・・と外国人を代表してデーブ・スペクターが言っています。成人向けの映画のコードに掛けて揶揄しているようで、ちょっと不愉快です。

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でもそこで待てよ?と言いたくなります。令和のアルファベットの頭文字はRなのか?日本のローマ字ならRしかありえませんが、漢字の故郷である中国語のピンインでは、令はlingとなります。だから、国際的にはLが妥当なのではないか? でも漢字の故郷だからといって、敢えて中国語に合わせる必要は無いかな? そもそも、中国でもLRの識別はあまり厳密ではないから・・・と、私は混乱するばかりです。

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ここで、LRの話題から離れて、別の観点から「令和」を考えます。

もともと、日本の元号に反対の朝日新聞は、系列の週刊朝日やAERAを使って、令和を貶す記事を出しています。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190409-00000016-sasahi-pol

ダイヤモンド誌もそれらの意見を取り上げています。

https://diamond.jp/articles/-/198757

しかし、内容は実に幼稚で、教養人の発言とは思えないものばかりです。もっとも、発言しているのは、教養人や文化人というより芸能人と呼ぶべき人が多いようですが・・。

いわく、令は命令の令だから、権力が上から押さえつける時代を象徴するというのです。

また、令は零につながり、令和は、ゼロをいくら足してもゼロだと、中国人が嗤っているというのです。これはおそらく嘘というより捏造でしょう。

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簡体字を用いる中国では多くの字が簡略化されていますが、零と令は明確に区別されます。

中国語の「零」には、少ないもの、小さいもの、ちっぽけなものというネガティブな意味があります。部品は中国では零件となります。そして勿論、数字のゼロも零です。一方、令には整ったもの、しっかりしたものというポジティブな意味があります。令夫人や令弟という単語にも表れています。だから令と零を混同することは、繁体字の台湾だけでなく、簡体字の大陸中国でもありえないのです。だからこれは日本人の捏造でしょう。

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そういえば、昔、朝日新聞の投書欄に、小学生(?)の投稿で、「中国を支邦と呼ぶのは失礼。「日本」には本があるから本店、「支邦」に支があるから支店みたいで、日本が中心に見えるから」という噴飯ものの文章がのりました。しかも、それを読んだらしい、王毅駐日大使(当時)までが同じ発言をして、支邦呼称問題をけん制しました。

しかし、中国語で本店は総公司、支店は分公司です。本店、支店という呼び方は普通しません。朝日新聞の捏造と言うべき、幼稚な言説でした。

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令和を以て、「ゼロをいくら足してもゼロになる」と、中国人が語ったという話には同じ臭いがします。

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庶民が、上から示される元号を揶揄するのは、結構だと思います。しかし、そこには何等かのユーモアというか、頓智がなければつまりません。

有名な戯れ歌に、「明治明治と上から言うが、治まるめいと下からは読む」というものがありますが、それくらいのウィットは無いものか? 

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「命令の令だ!」と騒いでいる社民党のレベルでは、後世の令和の人々に軽蔑されるだけです。


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【 アルツハイマー病の特効薬 】 [医学]

【 アルツハイマー病の特効薬 】

 

いささか旧聞ですが、325日、製薬会社のエーザイの株がストップ安になったと、お昼のニュースが伝えています。

https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=4523.T&d=1m

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42787030S9A320C1TJC000/?n_cid=DSREA001

どうして?と調べると、321日に同社が発表したアデュカヌマブのPhaseⅢの試験を中止したというニュースが発端のようです。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-21/POPUR3SYF01S01

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42751620R20C19A3TJC000/

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190409-OYTET50017/

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そうか・・・、皆さんが期待していたのにやはりだめだったか!という落胆の思いが株価に反映したものです。

エーザイはアルツハイマー病治療薬では、日本で先駆者的な存在です。アリセプト(ドネベジル)を世に出して以来、研究の先端を走っていたと聞きますが、ここで大きな蹉跌を味わうことになりました。

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アデュカヌマブとは、ヒトモノクローナル抗体を用いた治験薬で、軽度のアルツハイマー病に有効ではないか・・と期待された薬品です。 期待された効果とは、脳内に沈着するアミロイドβ(ベータ)を洗い流す効果です。治験薬番号ban2401ですが、banとは禁止するという意味ですから、そもそも名前が悪かった。

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実は少し前に、同じくアルツハイマー病の薬として期待されたソラネズマブもPhaseⅢの段階で要求項目を満たせず、途中で開発が断念されました。

PhaseⅢとは、薬の研究開発の最終段階で、ここをクリアーすれば、承認・市販の段階に進めたのに・・。

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ご記憶の方は少ないでしょうが、私はちょうど3年前に、この2つの薬品について、ブログで取り上げていました。差別用語として今は使われない言葉を題名にした【バカに付ける薬】です。

https://halibut.blog.so-net.ne.jp/2016-04-11-2

私の駄文では、アルツハイマー病の研究にアミロイドβ蓄積原因説とτ(タウ)タンパク質原因説の2つがあり、どちらが正しいか一種の競争になっている・・と、新薬開発の現状を面白がった書き方をしたのです。アミロイドβ説を裏付ける有力な2つの新薬が脱落したことで、τタンパク質説が優勢になったかというと、そうでもないようです。

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/btomail/17/10/30/00322/

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今回の中止は必ずしも、アミロイドβ蓄積説を否定するものではないようです。

ではそもそも、なぜPhaseⅢまでいきながら、プロジェクトは断念されたのか?

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アルツハイマー病の新薬開発が急速に進んだのは、脳内に蓄積するアミロイドβを定量的に把握できるようになったからだそうです。その定量したアミロイドβがアルツハイマー病のアミロイドβと異なる種類だったのか?それとも定量する方法が間違っていたのか?外野席にいる私は想像するしかありません。

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新薬の効果は、アミロイドβの数値で議論されます。一方、臨床的にアルツハイマー病の治癒効果や進行抑制効果を判断するのは、定量的な、つまり数字で表せる事象ではないようです。ここに問題があります。

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理工系の学問では、結論は主に数字で議論されます。客観性、再現性、蓋然性、多くの性質を担保するのに数字での議論は好都合です。

一方、医学には違う面もあります。精神科などの診断では、数字では表しにくい部分もあります。同じ患者について、医師によって診断が異なり、処方する薬が正反対だったりすることもあるそうです。どうやら、普通の自然科学とは少し違うのかな?

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だから、PhaseⅢで有効性を確認するには、PhaseⅡまでとは異なる手法が必要だったのかも知れません。だいたいアデュカヌマブが狙っていたのは、アルツハイマー病の初期の段階での薬効です。認知症が進行した状態や神経細胞のネットワークが破壊された段階なら確認することも容易でしょうが、初期段階では効果があるのかどうか、簡単には判断できないはずです。認知症と言ったって、病的なものもあれば、老化に伴って普通に現れる病気とは言えないものもあります。認知能力は、中年後期あるいは老年期に入れば、個人差も大きくなってきます。

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余談ですが、最近は、後期高齢者には、運転免許の更新の際に、認知症か否かを調べるテストがありますが、すこぶる評判が悪いそうです。「俺が耄碌したと言うのか?」とばかりに、自尊心を傷つけられて怒ることもありますが、こんないい加減なテストで自分の脳みその能力を推し量られてたまるか!という憤りもあります。どうせ、テストをするなら、大学入試のレベルの問題を出せよ!と言いたい人もいるでしょう。

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誰だって、自分が衰えたとは思いたくありません。初期のアルツハイマー病か否かを調べると言われれば、痛くもない腹を探られたくはありませんし、「自分は正常で認知能力に衰えはない!」と訴えたくなります。

そう思うであろう多くの被験者を対象にしたPhaseⅢの試験は難しいはずです。

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多くの被験者のデータを集めても、従来の統計解析の手法では、果たしてアルツハイマー病の治療や進行抑制に効果があったのか、判断に苦しむはずです。

私見ですが、このような数値化の難しい現象の解析手法は多くあります。従来の因子分析の理論に、ファジイ推論の手法を融合させた新しい解析手法を用いれば、この問題はクリアーできると私は思います。

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もし私が仕事に忙殺される身の上でなく、修士課程の学生だったら、ぜひトライしてみたいテーマです。でも63歳の私の脳みそでは、もう無理かな? 

ああ、早く頭を良くする薬に登場して貰いたいものです。

 

「遅かりし由良之助!」ならぬ、「遅かりしアデュカヌマブ!」になってしまうかも知れません。 でもゆっくりと老いて、認知能力の衰えを噛みしめなら穏やかに生きていくのもまた幸せかも知れません。 私にはよくわかりませんが。


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【 24時間働けますか? その2 】 [雑学]

【 24時間働けますか? その2 】

 

ではブルーカラーの生産性はどうなのか?と考えると、こちらはむしろ日本以下でしょう。トヨタの生産方式などと比べると、ドイツの工場は遅れていますし、働いている人は外国からの出稼ぎだったり移民だったりするので、なかなか生産性はあがりません。

(もっとも、これは自動車の組み立てラインの話ですが)。

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余談ですが、現場の生産ラインの効率はまだまだ改善の余地があると、ドイツ人は考えたのでしょう。近年インダストリー4.0という生産効率を上げるための方策を打ち出してきました。ITをとことん活用して、省力化や自動化を追求し最大効率を目指すことになります。

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そのドイツで慌てたことがあります。週末をデュッセルドルフのホテルに留まって過ごした時です。ご存知の方も多いでしょうが、日曜日はありとあらゆる店が閉店してしまい、食べ物にあり付けなくなります。私は空腹を抱えて月曜日の朝を待つ羽目になりました。 これは勿論、店員を日曜日に休ませるためです。

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「日本のサービス業で日曜日が休みなんて考えられない!みんな教会にでも行くのかな?」と思いますが、必ずしも協会に行く人ばかりではないようです。郊外の家庭菜園で土をいじる人もいれば、趣味やスポーツに興じる人もいます。自分の時間は自分の為に使うのです。

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「しかし、日曜日に全ての商店がお休みなんて・・・。皆がキリスト教徒という訳ではないはずだ。安息日が異なるユダヤ教徒やイスラム教徒はどうなのだ?」と考えても仕方ありません。近くにはユダヤ教徒の街もイスラム教徒の街も見当たりませんでした。

( 日本ならコンビニがあるのに・・ )

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ドイツ人が見れば、1365日、24時間開いている日本のスーパーやコンビニ、ファーストフード店は、驚異でしょう。「まるで高炉のある製鉄所みたいだ!」

( さすがのドイツでも、高炉は36524時間稼働しています )。

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日本ではそこまで顧客の利便性に配慮しなければ、商売はなりたたないのか? 「お客様は神様です」というけれど、サービスする側の人はそこまで卑屈にならなければならないのか? 店員の方の人権はどうなるのか? とドイツ人は思うはずです。

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その日本でも、24時間営業を強いる本部に対して、一部のコンビニ店が、反旗を翻し始めました。もはや消費者は王様ではなく、消費者の利便性が最優先される時代ではなくなるのです。今回の反乱は単に人手不足に対応できないからですが、その先には長時間労働の是正や人間らしい働き方の追求があります。20年前から叫ばれていた、サービス業に従事する人に、人間的な生活を保障する勤務体系が実現しつつあるのです。もっとも実態は下記の記事のように前途多難ですが。

https://citrus-net.jp/article/78949

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我々はドイツを範とし、ドイツのスタイルに近づこうとしているのか? それもいい事だと思います。サービスをする側や店員の側に立ってルールを作ることには大賛成です。

でも、それだけではだめです。片手落ちです。

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ドイツをまねるなら、お店の営業時間だけでなく、限られた時間内のホワイトカラーの生産性を上げる必要があります。ドイツ人の働き方は、短時間に集中して、成果をあげるスタイルです。日本の一部のオフィスのように、くつろいだ雰囲気はありません。冗長で非効率な会議もありません。

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今ならさしずめOAを駆使したデスクワークが求められます。グループウェアをベースにして、紙の書類は追放されます。 全員が一同に揃う会議も不要です。必要ならインターネットのTV会議で十分です。ドイツのインダストリー4.0の日本版です。

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商店ならキャッシュレス化は常識となります。AIを駆使し、顔認証や籠の中の商品を瞬時に数えて計算する仕組みも必要となります。 商品を棚に並べるのはロボットです。 そうしなければ、勤務時間の短縮も難しいでしょうし、「働き方改革」は実現しません。

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かつて、日本では長く続いた低成長期の間、経営者側は「賃上げは生産性向上の範囲内」と言われてきました。しかし実際には生産性の伸びは低く、賃上げ率も低かったのですが。

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今度こそ、生産性を極限まで上げて、時短を勝ち取り、夜間と休日は誰もが休める仕事を目指すべきです。もっと発達した自動販売機とキャッシュレスのレジが並び、顔認証で会計が済む時代になれは、生産性はあがり、人間はもっと人間らしい仕事ができます。労働時間も短くできます。

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あれ?でも、無人化したりロボットを活用するお店なら、何も夜間に閉店する必要はありません。むしろ24時間操業のお店が増えてくるかもしれません。必ずしもドイツと同じようにはいきません。

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すると結局、無人化・ロボット化した24時間商店に対抗すべく、零細な有人型の商店も長時間操業を強いられることになります。ではその店舗の経営者と店員には、どうやって補償すればよいのか? 過渡期の問題ではありますが、これは課題です。

 

さしずめ、健康ドリンクのリゲインでも配りますか?

(30年前のCMですが)


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【 24時間働けますか? その1 】 [雑学]

【 24時間働けますか? その1 】

 

昔話で恐縮です。20年ほど前、ロンドンにいた頃です。まだEUは通貨統合をせず、各国が自国通貨を持ち、自国の経済政策を行っていました。出張でドイツのデュイスブルグにあるティッセン社の本社を訪れ、ミュッシェンボーン博士と打ち合わせをした時です。午後に到着し、世間話から始めようとすると、少しソワソワした様子で、「本題を話そう。5時までに打ち合わせを終わらせる必要があるのだ」と言います。

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そこで会話の内容を極めてビジネスライクなものにして、5時前に切り上げました。では「この続きはデュッセルドルフの日本料理店で・・」と言って別れ、夜の会食を待ちました。

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現れた彼は「先ほどは失礼した。我々に残業は許されないのだ。定時に仕事を切り上げないと罰を受けるのだ。だから会議も短時間で終え、仕事の密度を上げなければいけない」と話し始めました。 定時以降も会社に残っていると罰を受けるとは、どういうことか?

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それだけでなく、与えられた有給休暇も確実に消化しなくてはならないのだそうです。

そして55歳になると早期退職が始まります。同社の場合、退職すると一生、現役時代の収入の80%の年金が保証されるということ。

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理工系の人々の高学歴化が進んだドイツでは、多くの学生が大学院まで進み、博士号を取る人も多くいます。そうなると、25歳~30歳の間に就職し、そして退職は55歳となると、会社員で働いている期間は30年程度しかありません。それで一生暮らせるのかな?

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日本企業に勤める私からみると夢のような話です。でもどうしてそこまで労働時間を減らせるのか?或いは減らさなくてはならないのか?理由はドイツの高い失業率にありました。

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ドイツは第一次世界大戦後の天文学的なインフレを経験しています。その悲惨な経験からどうしても経済政策をデフレの方向に舵取りします。その結果ドイツマルクはひたすら強くなりますが、失業率も高くなります。 サラリーマンの場合、リストラする際、経験年数の短い人から馘首されます。年配の人は既得権を守り、若い人はわりをくいます。ドイツでは慢性的に若い人の失業率が高かったのです。それに加え、東ドイツを統合吸収した後だったので、多くの人が東ドイツから職を求めて豊かなウェストファーレン州に来ていたのです。失業率が高いといっても、ドイツ人は汚れ仕事は嫌がります。高学歴の若いドイツ人はホワイトカラーを希望し、就職は狭き門になります。3Kの仕事はトルコや旧東ヨーロッパからの出稼ぎ労働者が受け持つのです。

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ドイツ人の技術者の多くが大学院に行き、博士号を持つのも、実は就職難が背景にあります。「だから、職にありついた人は長時間働いて仕事を独り占めせず、皆に機会を与えなければならないのだ」というのが彼の説明です。当時、ワークシェアリングという言葉があったか忘れましたが、つまりそういうことです。

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日本人の私には分からないことです。

ロンドンに帰ると、先輩のMさんがフィナンシャルタイム紙を読んでいます。「面白いねぇ。ドイツでは年間労働時間が1500時間以下なのに、英国は1600時間以上ある。だからドイツ並みに労働時間を年間1500時間以下にすべきだという論調だよ」横から、Kさんが「日本なんて年間1800時間以上も働いているぜ。英国どころじゃない。もっと時短しなきゃ軽蔑されるぜ」

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当時、日本はもっとゆとりを持つべきだ・・という風潮で、職場で「時短」が叫ばれ、学校教育は「ゆとり教育」が標榜されました。

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私は、「でも香港じゃ年間の労働時間が2000時間以上ですぜ。日本どころじゃないやな」Kさんはちょっとムッとして「香港を参考にしてどうなる。我々は西欧のゆとりを見習うべきだろう」

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ちょうど、香港が中国に返還される少し前でした。経済が低迷する英国本土に比べ、香港には活気があり、英国内で就職できなかった英国人が敢えて、香港に行って就職したりしていました。

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「労働時間が長すぎるのも困りものだけれど、やはり活気があった方がいいなぁ。労働時間を短くすると、国際競争に勝てなくて、経済は伸び悩むのでは?」と私は思いました。

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それにしても、あれだけ労働時間が短く、言い換えれば、遊んでいるドイツ人が、あれだけ豊かなのはなぜかな?・・・・ あくせくしている日本人が貧しいのはなぜかな?

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答は明らかです。多くのドイツ人のホワイトカラーは、勤務中は仕事に集中します。だらだらした時間潰しのような会議はしませんし、執務中は雑談もしません。そして定刻までに仕事を終えます。その効率の良さというか生産性の高さには感心します。

そして工業製品には高いブランド力があります。例えば自動車ですが、ベンツ、BMW、ポルシェ、アウディ、オペル・・多くは高級車です。同じ4つのタイヤを履いたセダンでも、韓国車の3倍の値段で売れます。つまり、同じ工数を掛けて1台の自動車を作っても、売り上げは韓国の3倍なのです。或いは同じフォルクスワーゲンを製造しても、ドイツ製と他国製では価格が違います。ドイツ製は高く売れるのです。つまり人気があるからですが、それなら豊かになるはずです。

 

以下 次号


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【 意趣返し その3 】 [雑学]

【 意趣返し その3 】

 

韓国は、日本への嫌がらせのために、慰安婦の少女像を世界中にばらまいています。北朝鮮は昔から金日成や金正日の巨大な銅像で知られる銅像大国ですが、韓国もまた銅像が好きなようです。日本の在外公館の前に置くのは、大使館や領事館を侮辱してはいけないというウィーン条約に明らかに違反していますが、韓国人にとっては国際条約より、自分たちの感情が優先します。もっと言えば、怒りと恨みに基づく行動が最優先となります。

・・・・・・

警察当局は「民間が置いた設備を公権力は動かせない」などと、これ以上の詭弁はないくらいの詭弁を弄して、撤去をサボタージュします。

それなら、私たちもやりましょう。

「どうぞ、日本国内にも少女像をたくさん建てて下さい」とお願いしましょう。東京にある韓国大使館の前にも少女像を建ててもらうのです。アメリカなど、他の国の公的施設の前にも建ててもらいましょう。

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そして、その横に今度は日本人が銅像を建てるのです。

ニンマリと笑ってお札の数を数える父親の像です。 父親の姿は(白丁)パクチョンが着る韓国の民族衣装に帽子です。そしてその父親の横に長煙管で煙草を吸ってずるがしこく笑う、同じく韓国衣装の女衒の銅像も建てるのです。

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もし韓国人が抗議してきたら、こう言ってやりましょう。「私有物なので、我々公権力は撤去できないのですよ。それにこれはウィーン条約にも違反していませんしね。それより早く、財団に拠出した10億円を返してくださいよ。韓国の少女像を撤去しないのならね」                                


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【 意趣返し その2 】 [雑学]

【 意趣返し その2 】

 

次はモノです。

日本から輸出を制限して、韓国経済に大打撃を与えることができる物質は実にたくさんあります。最初はフッ酸です。フッ酸は半導体の製造に欠かせません。私の専門分野で言えば、ステンレスやチタンの製造にも欠かせない重要戦略物資です。しかし一方で、フッ酸はガラスをも溶かす特殊な酸でしかも猛毒です。タンクローリーから少し漏れただけで、運転手が死亡するといった悲惨な事故が時々発生します。

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そして、そのフッ酸の供給を韓国はほとんど日本に頼っています。日本が供給をストップするだけで、韓国経済を支えるサムスンの半導体は生産できなくなります。

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しかし、その作戦がうまくいく保証はありません。フッ酸は蛍石から製造しますが、その蛍石は中国で取れます。日本もまたフッ酸を中国に頼っているのです。だから日本からの供給を絶たれた場合、韓国は中国からの輸入に切り替えるでしょう。

猛毒の危険物質であるフッ酸の場合、流通経路を変えるだけでも大変ですが、中国からの輸入に切り替えるのは単に時間だけの問題です。

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それ以外にも、半導体製造に用いる露光装置、材料となるシリコンウェハー、研磨装置や切断に用いる糸鋸などを韓国は日本に頼っており、その供給を絶たれると、DRAMの製造ができなくなり、サムスンの経営は悪化し、もっぱら財閥の稼ぎに頼っている韓国経済は破綻します。しかしその場合、日本の産業も相当の返り血を浴びます。

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次に韓国への輸出禁止で効果があるのは軽油です。不思議なことに、日本は韓国からガソリンを輸入し、一方で軽油を輸出しています(どちらも少量ですが)。これは韓国の製油所の事情によるものだそうですが、日本から軽油の輸出をストップすれば、韓国はその分を他国から輸入せざるを得ませんが、すぐには無理でしょう。スポットのかなり高い軽油を買わざるを得ません。そうなると、冷え込みつつある韓国の景気をさらに冷やします。

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しかし原油や石油製品の禁輸は最後の手段です。かなり追い詰められた時の手段です。みだりに使うべきではありません。実際、米国からの石油輸出がストップしたため、やむを得ず、南方の油田を求め、太平洋で戦争を始めた国が過去にあります。

そして、韓国の産業を支える戦略物資を抑えた場合、日本経済への跳ね返りも大きいのです。さらに言えば、輸出制限という作戦は韓国の人々の日本への恨みをますます増大させることになり慎重にならざるを得ません。

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私がロンドンにいた1990年代、英国がアイルランドに謝罪するということがありました。一体何のことかと言えば、150年も前、アイルランドで大飢饉が発生した時に英国が助けなかったことを謝ったのです。 アイルランド人の主食であるジャガイモのエキ病が大流行して収穫できなくなり、多くの餓死者がでました。飢えを逃れて新大陸(つまりアメリカ)に移住した人も多いのですが、残った人は飢餓に苦しました。その時、隣国の英国は冷淡で食糧援助に消極的でした。それが今でも遺恨となって、両国の関係をギクシャクとしたものにしています。物資の供給停止は長期にわたる恨みの元になります。

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日本が戦略物資の供給をストップしても、それで韓国が自国の非を認めたり、天皇陛下への謝罪要求が非礼で行き過ぎだったと反省する訳はなく、逆に日本憎しの思いが募るばかりです。小人(しょうじん)とは自らを省みず、ひたすら逆恨みする存在なのです。モノの制限は難しいかも知れません。

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では、その次に考えるのは、カネです。

誰もが考えるのは、「もう二度と韓国との通貨スワップはしないぞ!」ということです。

ご承知の通り、韓国の外貨準備高は多くありません。 昨年夏の時点で日本の1/3程度ですが、実はその多くがすぐに現金化できない有価証券なので、対外債務の支払いなどには使えません。一方で対外債務は巨額です。もし支払いが滞れば、通貨ウォンは信用を無くして下落し、加工貿易のもとになる原材料や部品が買えなくなり、経済は破綻します。

日本では輸出産業を守るために、意図的に円安に誘導したりしますが、韓国では自国通貨が信用を無くし、ウォンが暴落することこそが悪夢なのです。

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日本は、外貨の乏しい韓国とスラップ協定を結んで何度か韓国を助けてきましたが、韓国はそれに恩義を感じていません。スワップ協定は相互的なもので、我々が日本を助けた場合もある・・などと荒唐無稽なことをのたまい、挙句に、日本が頼み込んできたからスワップをしてやった・・などと言ったりします。

ここはスワップの申し込みがあっても拒否し、誰が誰を助けてやっているのかを明確にすべきでしょう。

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失礼ながら、文政権にまともな経済政策を考える人はいないのかも知れません。もしいれば、後先無しに最低賃金の猛烈な引き上げをしたり、愚かな財閥潰しの政策を出したりしないでしょうから。やがて韓国で再び信用危機が起こり、債務不履行となる可能性があります。

その時、スワップ協定の重要性を知り、日本に甘えてくる可能性が大です。

このスワップ協定拒否の制裁はその時まで取っておくべきです。

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それ以外にも、ワールドカップ日韓共催の時に、日本から貸したお金の返済を求めるとか、いろいろ督促すべきお金はあります。しかし韓国は返済する気は無いでしょう。慰安婦財団のために日本が拠出した10億円以外は・・・。

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ではどうすべきか? ヒト・モノ・カネの制限は確かに有効ですが、かえって韓国の恨みを買ったり、日本側にも負担がでるなど、副作用も大きいのです。

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そこで私が考えるのは韓国の作戦を逆手に取ることです。

以下、次号


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【 意趣返し その1 】 [雑学]

【 意趣返し その1 】

 

韓国の反日活動が止まりません。2国間で揉め事があった場合、普通は政府当局が、過激に走らないようブレーキをかけたり、火消しに走るものですが、韓国政府は、反日活動を鎮めるどころか煽る一方です。徴用工問題にしてもいわゆる慰安婦問題にしても、大統領自身が確信犯として扇動している状況ではとてもブレーキはかかりません。

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相手国(つまり日本)は冷静に見過ごすのが大人の対応と言えますが、個々の民間企業の資産が差し押さえを受ける事態となっては静観できません。日本から外圧をかけて反日活動にブレーキをかける必要がありますが、あまり気持ちのいい仕事ではありません。

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やられたらやり返す仕返し、或いは報復という概念は、しばしば幼稚な対応とされ、紳士たるべき先進国の外交ではありません。しかしここまで来ると、もはややむをえません。

では韓国に対してどういう制裁を行うべきか?

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仕返しの手段を考える時、人々はしばしば暗い情念にかられます。制裁や復讐の手段を考えるとき、密かに喜びを覚える時すらあります。私は喜びを感じることはありませんが、韓国政府に対してどういう制裁が可能で適当かを考える意味はありそうです。

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国と国の境を無くし仲良くなる場合、ヒト、モノ、カネの移動を自由化し垣根を無くすのが普通です。ヨーロッパでEUが存在感を強めた1990年代、マーストリヒト条約やシェンゲン協定を通じて、EU域内のヒト、モノ、カネの移動を自由化していきました。逆に、今脱退する英国はその垣根を再び構築するその手続きに悩んでいます。日本と韓国も関係が冷却化し、日本から制裁を加えるとなると、ヒト、モノ、カネの往来に制限をかけることになります。

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日本のマスコミも政治家も、ヒト、モノ、カネのそれぞれで規制をかけることを考えています。

まず、ヒトの往来について考えてみます。

政府が考えるのは、マルチビザや短期滞在型ビザの発給の厳格化・制限です。あるいは日本からの渡航自粛です。これはすぐに実行でき効果てきめんです。

しかし、問題も多くあります。韓国人の多くは、必ずしも反日ではありません。反日なのは、韓国政府と一部の過激思想の持主だけで、彼らが蛇蝎の如く日本を嫌い憎んでいるだけです。敢えて日本に来ようという人は必ずしも反日ではなく、彼らを苦しめてどうするのか?ということになります。人の往来に制限をかけることは必ずしも得策ではありません。

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もうひとつの対策は日本で不法就労する韓国人の炙り出しと強制送還です。これは現在の法律を厳格に適用するだけで実行できます。

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紳士淑女の読者諸兄はご存知ないでしょうが、日本の風俗産業(つまり売春業界)で働く女性の相当数は韓国人です。これには理由があります。以前韓国で売春が徹底的に取り締まられた際、多くの春をひさぐ女性達は海外に逃れました。一部は米国に行き、一部は日本に来ました。米国の西海岸では、当局が定期的に売春婦狩りをしますが、捕まる女性の多くは韓国人です。

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日本の場合は・・・どこにいるのか私は知りませんが、風俗産業にたずさわる韓国人を摘発すれば、相当数になるはずです。彼女達の行為は当然違法であり、ビザの種類によらず、強制送還の対象となります。 そして彼女達を摘発することは、いかに韓国人売春婦が多いかを世界に知らしめる効果があります。即ち、従軍慰安婦なるものの多くが、実は従軍売春婦だったのではないか?と気付かせる効果があります。

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アメリカなどには、今でも、アフリカの奴隷狩りのように、済州島で日本の官憲が両家の子女を一斉に拘束して無理やり慰安婦にしたと信じている人がいます。当時、韓国では売春婦がありふれた存在で、ふんだんに供給されたのなら、どうして堅気の少女を拘束して慰安婦にする必要があるのか?という疑問がわきます。従軍慰安婦は強制された存在ではなかったのではないか? と聡明な人々に気付いてもらえるかも知れないのです。

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しかし、これにも問題があります。

風俗産業で働く人にも人権があります。彼女達には韓国の家族に仕送りをしている人もいるでしょうし、皆必死に働いて生活しているのに、国と国の仲が悪くなったからといって、彼女達を追い返していいのか?と思います。違法行為とはいえ、彼女達が働いて日本で稼ぐということは、日本の社会に需要があり、役立っているということでもあります。そう考えると、これも上策とは言えません。

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次はモノの行き来をストップする作戦です。これについては次号で。


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【 夜光杯(イェゴンペイ) 】 [中国]

【 夜光杯(イェゴンペイ) 】

 

電車通勤をしていたころ、車中で、スマホを使い、NHKのラジル★ラジルの聞き逃し番組を聞いていました。その中に、「カルチャーラジオ 漢詩を読む」があります。テキストを読まずに聞くだけなのですが、頭の中で漢字を探しながら、漢詩を追いかけるのはちょっとした頭の体操になります。

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講師は國學院大學の赤井益久学長で、韻文の解説なのに、情緒的にならず、たんたんと大学の講義のように解説されるのが面白く、電車の中でも思わず聞き入ってしまいます。

また落ち着いた加賀美幸子氏の朗読も大好きです。

その講義の中で、ひとつ引っかかったことがあります。

それは赤井先生が夜光杯について簡単に説明された時です。取り上げたのはあの有名な王翰の「涼州の詞」です。日本人が大好きな「葡萄の美酒、夜光の杯」で始まる詩です。

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葡萄の美酒は分かるけれども、夜光の杯とは何だろう?と最初に読んだ人は不思議に思います。そこで赤井先生は、夜光の杯とは玉の一種で作られた玉杯である・・と解説されました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9C%E5%85%89%E6%9D%AF

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確かに夜光杯は玉杯の一種なのですが、少し引っかかります。中国で言うところの玉とは、宝石というより、貴石または半貴石で、装飾品や食器、杯、彫刻などに使われる材料全体を指しますが、主にヒスイ(実は翡翠にも複数の種類があるのだそうですが)を指します。本物のヒスイは立派な宝石なので、玉と言えない場合もありますが・・。

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しかし、夜光杯はヒスイではありません。実は夜光杯にも複数の種類があり、やや複雑なのですが、私が西安のホテルの土産物店で見たものは乳白色や暗緑色の不透明な地色の中に薄墨というか黒い帯状の模様が広がっているもので、全体的には暗く黒い杯です。決して夜に光を透過して輝くという石ではありません。かなり薄く磨き込んであり、玉をここまで磨くのは大変だろうな・・と思わせる労作でした。

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甘粛省などの西域で生産され、決して光を放つまばゆい存在ではない夜光杯がもてはやされ、人気があるのは、ひとえに王翰の漢詩が日本で人気があるからです。そしてもうひとつ、夜光杯が磁石にくっつくという面白い性質があるからです。ご承知の方も多いでしょうが、気の利いたお店には磁石が置いてあり、杯を寝かせて磁石の方に転がる様を見せます。「何で磁石が必要なの?」と店員が怪訝な顔をする店は偽物の夜光杯を置いている店です。

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ではなぜ磁石にひっつくのか?と言えば、石の中に磁鉄鉱が含まれるからです。磁鉄鉱は砂鉄と同じ黒色の鉄の酸化物です。黒錆とも呼ばれます。化学式ではFe3O4となります。つまりこれはスピネル構造です。スピネル構造とは遷移金属の原子3個に対して酸素原子4個が結合して、M3O4の形をとる結晶構造です。この結晶はしばしば斉一で透明度が高く、そして美しく、コバルトスピネルなどは宝石として扱われています。磁鉄鉱はひたすら暗くて不透明ですが・・・。そしてスピネルは電磁的にはしばしば特異的な性質を示します。

鉄の酸化物の中で、磁鉄鉱は特に磁性が高いのです。

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磁鉄鉱Fe3O4はたたら製鉄の原料にもなりますが、それほど科学的に安定ではありません。500℃以上の酸化性の雰囲気の中に長時間置くと、赤鉄鉱(Fe2O3)になってしまいます。つまり赤錆で、これは美しくなく、そして磁性を持ちません。

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夜光杯の面白いのは、他の結晶の中に、あまり安定でないスピネルが閉じこまれていることです。ヒスイもアルミニウムなどの酸化物および水酸化物ですが、スピネル構造ではありません。ヒスイの中にはスピネルの磁鉄鉱は存在しないでしょう。つまりヒスイは磁石にひっつかない・・というだけのことですが、だから何なの?となります。

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石の外観を見れば、鮮やかな碧色で透明度も高い派手なヒスイの方が、ひたすら暗くて地味な夜光より遥かに貴重に思えます。敦煌あたりの中国人の中にはなぜ夜光杯がここまで日本人の間で珍重されるのか分からない・・という人もいるでしょう。

一方、日本人の中には薄墨を流したような独特の文様に美を見出す人もいるでしょう。

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日本人が夜光杯を好む思想の根底には、中国の玉というものに対する憧れがあるのではないか?と思います。歴史を見ると、日本でも早くからヒスイが採取されています。また水晶も多く取れています。またベリルと総称される、ルビーやサファイヤのような宝石もごくわずかですが産出します。しかし、中国で珍重される玉とは何なのだろうか?夜光とは何なのだろうか? 日本では採取されないものなのだろうか?と思ったかも知れません。

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その疑問は憧れでもあります。矢野勘治作詞の旧制一高の寮歌「嗚呼玉杯に花うけて」では冒頭に「嗚呼玉杯に花うけて、緑酒に月の影宿し」とあります。

おそらく矢野勘治は、王翰の涼州の詞にインスパイアされたのでしょう。

夜光杯の代わりに玉杯、葡萄の美酒の代わりに緑酒としたのです。

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しかし、緑酒とは何か? オヒョウの乏しい知識ではアブサンかメロンリキュールぐらいしか想像できません。昔の一高生はアブサンなんか飲んでいたのかな?一説では、あれには毒があり、強烈に悪酔いするという話だが・・。

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昔の日本人が葡萄の美酒とは何ぞや?と思ったのと同様、現代の私は緑酒とは何か?と考えてしまいます。

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赤井先生が、夜光杯について詳しい説明を省略されたのは、詩の本質とは関係ないと判断されたからでしょう。また夜光杯について語りだすと、切りがないと判断されたのでしょう。

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でも日本と中国で落差のある、夜光杯の評価について、もう少し解説されてもよかったのでは?と思います。 果たして、中国での夜光杯の評価はどうなのか?

これを確認するには、中国の全ての財宝が集められたとも言われる故宮博物館に行くべきです。実際、故宮博物館には素晴らしいヒスイの芸術品がたくさんあるそうです。果たして、故宮博物館に夜光杯はあるのか? それとも夜光杯は卑なるものとして博物館にはないのか?

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残念ながら、私が訪れた北京の故宮博物館にはろくな宝物がありませんでした。宝石や玉、多くの芸術品は台湾の故宮博物館にあるのです。果たして夜光杯は台湾の故宮博物館にはあるのか?

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敦煌の日本人観光客向けの土産物店にある夜光杯ではなく、中国の皇帝も愛でた夜光杯が、もし台湾の故宮博物館にあるのなら、是非見てみたいものです。

 

「いつか、台湾を訪問したいな・・・」赤井先生のラジオの講義を聞きながら、そんなことを考えました。


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