【 アルツハイマー病の特効薬 】 [医学]
【 アルツハイマー病の特効薬 】
いささか旧聞ですが、3月25日、製薬会社のエーザイの株がストップ安になったと、お昼のニュースが伝えています。
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=4523.T&d=1m
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42787030S9A320C1TJC000/?n_cid=DSREA001
どうして?と調べると、3月21日に同社が発表したアデュカヌマブのPhaseⅢの試験を中止したというニュースが発端のようです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-21/POPUR3SYF01S01
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42751620R20C19A3TJC000/
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190409-OYTET50017/
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そうか・・・、皆さんが期待していたのにやはりだめだったか!という落胆の思いが株価に反映したものです。
エーザイはアルツハイマー病治療薬では、日本で先駆者的な存在です。アリセプト(ドネベジル)を世に出して以来、研究の先端を走っていたと聞きますが、ここで大きな蹉跌を味わうことになりました。
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アデュカヌマブとは、ヒトモノクローナル抗体を用いた治験薬で、軽度のアルツハイマー病に有効ではないか・・と期待された薬品です。 期待された効果とは、脳内に沈着するアミロイドβ(ベータ)を洗い流す効果です。治験薬番号ban2401ですが、banとは禁止するという意味ですから、そもそも名前が悪かった。
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実は少し前に、同じくアルツハイマー病の薬として期待されたソラネズマブもPhaseⅢの段階で要求項目を満たせず、途中で開発が断念されました。
PhaseⅢとは、薬の研究開発の最終段階で、ここをクリアーすれば、承認・市販の段階に進めたのに・・。
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ご記憶の方は少ないでしょうが、私はちょうど3年前に、この2つの薬品について、ブログで取り上げていました。差別用語として今は使われない言葉を題名にした【バカに付ける薬】です。
https://halibut.blog.so-net.ne.jp/2016-04-11-2
私の駄文では、アルツハイマー病の研究にアミロイドβ蓄積原因説とτ(タウ)タンパク質原因説の2つがあり、どちらが正しいか一種の競争になっている・・と、新薬開発の現状を面白がった書き方をしたのです。アミロイドβ説を裏付ける有力な2つの新薬が脱落したことで、τタンパク質説が優勢になったかというと、そうでもないようです。
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/btomail/17/10/30/00322/
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今回の中止は必ずしも、アミロイドβ蓄積説を否定するものではないようです。
ではそもそも、なぜPhaseⅢまでいきながら、プロジェクトは断念されたのか?
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アルツハイマー病の新薬開発が急速に進んだのは、脳内に蓄積するアミロイドβを定量的に把握できるようになったからだそうです。その定量したアミロイドβがアルツハイマー病のアミロイドβと異なる種類だったのか?それとも定量する方法が間違っていたのか?外野席にいる私は想像するしかありません。
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新薬の効果は、アミロイドβの数値で議論されます。一方、臨床的にアルツハイマー病の治癒効果や進行抑制効果を判断するのは、定量的な、つまり数字で表せる事象ではないようです。ここに問題があります。
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理工系の学問では、結論は主に数字で議論されます。客観性、再現性、蓋然性、多くの性質を担保するのに数字での議論は好都合です。
一方、医学には違う面もあります。精神科などの診断では、数字では表しにくい部分もあります。同じ患者について、医師によって診断が異なり、処方する薬が正反対だったりすることもあるそうです。どうやら、普通の自然科学とは少し違うのかな?
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だから、PhaseⅢで有効性を確認するには、PhaseⅡまでとは異なる手法が必要だったのかも知れません。だいたいアデュカヌマブが狙っていたのは、アルツハイマー病の初期の段階での薬効です。認知症が進行した状態や神経細胞のネットワークが破壊された段階なら確認することも容易でしょうが、初期段階では効果があるのかどうか、簡単には判断できないはずです。認知症と言ったって、病的なものもあれば、老化に伴って普通に現れる病気とは言えないものもあります。認知能力は、中年後期あるいは老年期に入れば、個人差も大きくなってきます。
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余談ですが、最近は、後期高齢者には、運転免許の更新の際に、認知症か否かを調べるテストがありますが、すこぶる評判が悪いそうです。「俺が耄碌したと言うのか?」とばかりに、自尊心を傷つけられて怒ることもありますが、こんないい加減なテストで自分の脳みその能力を推し量られてたまるか!という憤りもあります。どうせ、テストをするなら、大学入試のレベルの問題を出せよ!と言いたい人もいるでしょう。
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誰だって、自分が衰えたとは思いたくありません。初期のアルツハイマー病か否かを調べると言われれば、痛くもない腹を探られたくはありませんし、「自分は正常で認知能力に衰えはない!」と訴えたくなります。
そう思うであろう多くの被験者を対象にしたPhaseⅢの試験は難しいはずです。
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多くの被験者のデータを集めても、従来の統計解析の手法では、果たしてアルツハイマー病の治療や進行抑制に効果があったのか、判断に苦しむはずです。
私見ですが、このような数値化の難しい現象の解析手法は多くあります。従来の因子分析の理論に、ファジイ推論の手法を融合させた新しい解析手法を用いれば、この問題はクリアーできると私は思います。
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もし私が仕事に忙殺される身の上でなく、修士課程の学生だったら、ぜひトライしてみたいテーマです。でも63歳の私の脳みそでは、もう無理かな?
ああ、早く頭を良くする薬に登場して貰いたいものです。
「遅かりし由良之助!」ならぬ、「遅かりしアデュカヌマブ!」になってしまうかも知れません。 でもゆっくりと老いて、認知能力の衰えを噛みしめなら穏やかに生きていくのもまた幸せかも知れません。 私にはよくわかりませんが。
【 日本脳炎と西ナイル熱 】 [医学]
【 日本脳炎と西ナイル熱 】
一時期、異常気象があると、何でも地球温暖化と結び付けて語る人がいました。報道ステーションのキャスターだった古館某は、雨が降っても、洪水が出ても、猛暑日が続いても、全て地球温暖化のせいで、それは先進国が野放図に温室効果ガスを排出したためだ・・と指摘していましたが、その因果関係についての説明はありませんでした。
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一方、熱帯性の伝染病が温帯の地域に広がっていく世界的な現象については、地球温暖化と結び付けて結論を急ぐおっちょこちょいはいないようです。近年、蚊が媒介する熱帯地域の伝染病であるジカ熱やデング熱が日本でも話題になりますが、日本の気候が熱帯に近づいたから・・・とは限りません。日本の夏は昔から熱帯と同じくらい暑かったのです。
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日本では戦後間もない時期にマラリアが流行し、デング熱も発生しました。これは南方から罹患した兵隊が復員し、日本国内に病原体をもたらしたからです。国内の衛生環境も良くなく、国民の栄養状態が悪かったことも理由ですが、最大の理由は南方からの復員兵です。その後、日本の復興とともに適切な対策がとられ、マラリアもデング熱も終息しました。
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今日、世界的に熱帯の伝染病が流行りだしたのも、地球上を多くの人が高速で移動する時代だからだ・・と私は推測します。しかし、理由はどうあれ、熱帯の病気がそれまで無かった涼しい地域に広まるのは困った事態です。でも蚊が媒介する伝染病については何等かの対策がありそうです。
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外国で話題になるのは、かつてはアフリカの一地域の風土病だった西ナイル熱が米国や欧州に広まりつつあることです。米国では既に西ナイル熱は大きな問題ですし、最近ではギリシャやイタリアで死者が発生しています。
http://news.livedoor.com/article/detail/15145481/
西ナイル熱は日本脳炎と似たウイルスが起こす病気で、コガタアカイエカが媒介する点も似ています。違うのは、日本脳炎の場合、増幅宿主が主に豚なのに対して、西ナイル熱では中間宿主が鳥やコウモリだという点です。
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家畜である豚ならば、管理も対策も可能ですが、空を飛ぶ野生の鳥やコウモリではそうはいきません。対策の難しさという点では日本脳炎より西ナイル熱の方が難しそうです。太平洋を越えて飛んでくる鳥が少ないためか、この病気は日本では報告されていませんが、私は日本で発見されるのも時間の問題だと思います。鳥でもコウモリでもコガタアカイエカでもなく、ウイルスを持った人間が空を飛んで日本に来るだろうからです。
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日本では忘れられつつある日本脳炎も軽んじていい病気ではありません。いったん罹れば、死亡率も高く、重い後遺症が残る場合もあります。そして驚いたことに、北海道出身者は、日本脳炎の予防注射(ワクチン接種)を受けていなかったのだそうです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53776
看護師の坂本氏が指摘されているのは全くもっともで、人の移動が盛んな現代、日本国内で、本州以南は日本脳炎の流行地域、北海道は非流行地域として、区別するのはナンセンスです。日本脳炎の恐ろしさを人々は思い出すべきです。
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病名または病原体の名前に「日本」が付く疾病は幾つかありますが、いずれも日本国内の感染者の数は激減しています。それが「日本は清潔な国」と評価される理由の一つですが、名前は「日本何とか」でも、日本だけの病気とは限りません。日本脳炎については、東南アジアと東アジアに広く分布しています。以前のブログでも紹介しましたが、中国では「日本脳炎」と言わずに「乙型脳炎」と呼んでいます。中国では多くの豚を飼っており、日本脳炎は広く存在するのです。だから日本国内だけ始末しても、海外から日本脳炎が逆輸入される可能性は常にあります。
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日本脳炎の場合、鹿児島や沖縄、千葉など養豚が盛んな地域での防疫対策が重要ですが、豚と蚊が接触する機会を減らし、さらに蚊の絶対数を減らすことが有効です。日本脳炎も西ナイル熱も、熱帯では複数種の蚊が媒介しますが、温帯ではコガタアカイエカが中心になります。コガタアカイエカを減らせば、日本脳炎だけでなく西ナイル熱の予防にも役立ちます。
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では蚊をどうやって減らすか? 従来の蚊取り線香や蚊帳は、人間の居住空間に蚊が入らないようにするもので、いわば人間と蚊の共存を目指すものです。しかし、これからは屋外の蚊を減らす対策が重要になります。蚊の絶対数を減らす必要があるからです。
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しかし、ピレトリンのような薬剤を大量に散布するのは、環境への影響や費用面で問題があります。ピレトリンは哺乳類や鳥類への毒性は少ないと言われますが、ピレスロイド耐性の蚊の出現も考えられます。化学物質を用いて、ある生物種の跋扈を抑え込むことには、やはり抵抗を感じます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89
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私が提案したいのは、以前のブログでご紹介した、レーザー光線で蚊を撃墜する装置の普及です。
https://tabi-labo.com/162527/mosquito-laser
荒唐無稽と思われていますが、この装置は量産化すれば50ドルくらいで販売できるそうです。開発者はマラリア対策として、途上国での普及を考えているようですが、価格を考えると最初に先進国で採用して、価格的にこなれた後に途上国に持っていく方が現実的です。
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最初に日本でコガタアカイエカ対策として実験的に導入することも可能です。特に養豚場の周囲にこのレーザー光線の装置を設置し、豚とコガタアカイエカを接触させないようにすることで、日本脳炎ウイルスを駆逐できるかも知れません。そうなれば、日本脳炎ワクチンを打つ必要もなくなります。
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そう簡単には・・・多分いかないでしょうが、コガタアカイエカを減らせれば、近い将来予想される西ナイル熱の日本上陸を遅らせることができるかも知れません。
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次の段階として、インドネシアなどの東南アジアの諸国にこの装置を提供して、養豚場の周囲などに設置し、本格的に日本脳炎Japanese encephalitisの撲滅作戦を展開することを提案します。
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まだ人類が成功したウイルスの撲滅作戦は、天然痘ウイルスだけです。この作戦に成功すれば、歴史的な勝利となります。
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でもひとつだけ理解できない事があります。日本脳炎が今でも猖獗を極めるとされるインドネシアのバリ島は、イスラムの世界です。養豚場は・・多分無いはずなのですが・・どうして日本脳炎が多いのでしょうか? まあ、どうでもいいことですが。
【 問診のAI化 】 [医学]
【 問診のAI化 】
昨今は、3Kだけでなく、あらゆる職場で人手不足が深刻です。医療現場もそのようで、マンパワー不足がサービスの低下につながらないように、各種の努力がなされています。
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特に重要なのは、医療現場の核となる医師の業務の負担をどうやって分担・軽減するか・・・です。医師の業務には、医師しかできない専門的な作業が多くありますが、それ以外に、非専門的な作業もあります。それらの医師以外でもできる事務的な作業は医師以外の人に委ねるべきです。その方が業務を効率化でき、コストも下がります。
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実際、下記の記事によれば、多くの医師はかなりの時間を電子カルテなどの書類作成に追われているようです。でも患者として傍で見ていて、キーボードの入力作業が速い医師はあまりいません。(まあ、プロのタイピストみたいな訳にはいきませんが)。
そこで、その書類作成業務をロボットやAIに委ね、極力簡略化する研究が進んでいます。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24712960V11C17A2TJE000/
具体的には、診察を受ける前の事前アンケートの結果をあらかじめ電子カルテに記入するという作業が自動化されつつあります。ポイントは患者へのQ&Aで使われる平易な一般的表現を医学専門用語に変換することと、AIを駆使して予想される疾病を推測することです。
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普段、クリニックの待合室で書かされるアンケートには、薬のアレルギーは無いか?とか既往症は?といった基礎的な設問が並びますが、AIの事前問診では、それに加えて、従来、医師が尋ねていた専門的な項目も質問し、それが電子カルテに自動的に記載されるようです(推測です)。
全ての人に同じ質問をするのではなく、設問の答えに応じて次の質問の内容を変え、疑われる疾病を絞り込んでいき、医師が診察する前に、予想される病名を予測しておく・・というものです。
しかし、素人の私は、そんなことできる訳ないさ・・と思います。
例えば、患者が右下腹部の痛みを訴え、熱が38℃だ・・というだけで、病名が絞り込めるものなのか? 病気の診断は、膨大で多様な選択肢の中から、多くの情報を元に、病名を絞り込むことから始まります。その多くの情報の中には、かなりファジイな(つまりあいまい表現の)情報もあります。この判断ロジックをプログラム化するのは、プログラム言語のLISPでもProLogでも、困難な作業です。AIといっても・・果たしてどこまでの知能があるのか?
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日本語の痛みの表現では、ズキズキ痛む場合、シクシク痛む場合、チクチク痛む場合で、患者が訴えたい症状は違うのですが、最新のAIはそれが区別できるのでしょうか?
患者は、自分なりに、なるべく詳しく、正確に症状を説明して、正しい診断結果を得たいと思っています。だから、ファジイな擬態語を使った表現であっても、なるべく医師には正確に伝えたい・・・と必死に考えます。その際、相手が、自ら歯痛や頭痛を経験したことがある、人間の医者ならば、分かってくれるはず・・という期待を持ちます。
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ところが、相手がロボットではそうはいきません。さて、患者はどこまでロボットの問診を信頼し、期待するのでしょうか? まあそう言っても、従来、人間の医師が行っていた知的な判断業務の一部を機械(AI)が代替できるのなら、これは画期的なことで、評価されるべきことです。
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しかし、待合室に「客寄せパンダ」のロボットであるPepperを置くのは茶番というか、おふざけでしかありません。人型ロボットというよりスピーカー付きの人形であるPepperは、最初は携帯電話のショップに置かれ、客に話題を提供していましたが、最近は方々の薬局でも見かけるようになりました。しかし、薬剤師の処方を代行する訳でも、会計業務をしてお釣りを出す訳でもなく、ただ挨拶して会釈するだけです。つまり「玩具」です。そして個人経営のクリニックの待合室にもこの玩具は置かれています。
そして、上記のAIの問診に使用されるというのです。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/012800017/030800007/?ST=health
https://robotstart.info/2016/09/14/shanti-aiai.html
果たして、AIの問診に、お人形を遣う必要があるのでしょうか?
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そのPepperが富山大学の大学病院の眼科に置かれ、医療スタッフの肩代わりをしているというのです。具体的にはインフォームドコンセントを担当しているというのです。
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1606/20/news014.html
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いったい富山大学(旧富山医科薬科大学)の眼科では、どういう使い方をしているのか?
TVニュースで見た限りでは、白内障の手術を受ける患者に、白内障がどういう病気で手術の内容がどういうものかを説明しています。でも万人向けの家庭の医学(赤い表紙のベストセラー)に書いてある以上の説明はしないようです。(なんだ、やっぱりただのスピーカー付きの人形か)。
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本来は、患者ひとりひとりで異なる病状や、条件に応じて、ひとりずつ異なる説明となり、患者の理解度や心情に応じて、説明の仕方も変える必要がありますが、pepperの説明は通り一遍です。
本当にこの愛玩ロボットは医療現場の人手不足解消に役立っているのか?ただの話題作りではないのか?
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医療現場でのロボット活用やAI活用は、時代の流れであり、重要なことです。そしてそこで求められるのは、人間の医師にも難しい高度な業務を代行したりサポートする機能です。具体的には手術を行うロボットのダビンチや、最新の医学情報に基づいて推論を行う診断サポートAIです。患者の玩具ではありません。
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人間である私が将来眼科のお世話になる時が来ても、インターフェースがロボットだったらいやでしょうね。
「アナタノ疾病ハ老人性ノ白内障デス。手術ヲオ勧メシマス」なんてロボットに言われても反発したくなります。
「目の無いロボットのお前に白内障の何が分かるか? 老人性だと? ロボットのお前に年をとるという意味が分かるのか?分かってから言え」と言いたくなります。
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更に言えば、人間である患者も医師も看護師も、医療行為の先には生死の問題を、やがて来る死を見据えて、考え、行動しています。人間の死を理解しないロボットには永久に不可解な事柄です。
眼科はともかく、生死の問題をあずかる医療現場にあるPepperに訊いてみたい。
「お前に、人が年老いていくことや、やがて訪れる死の意味が分かるのかい?」
多分Pepperは
「それは電池切れとどう違うのですか?」と答えるでしょう。
【 2017年の壺坂霊験記 】 [医学]
【 2017年の壺坂霊験記 】
医用工学をやっている人に聞くと、工学的な面から、障害のある人を支えて、なんとかハンディキャップをなくしてあげたい・・という思いが強いそうです。その思いはいろいろな分野で結実しています。陸上のトラックの上を高速で走れる高機能の義足。紙コップに牛乳を注いで飲むことができる筋電義手。腎臓の機能を機械が行う人工透析もその一種でしょう。
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勿論、視覚障碍者や聴覚障碍者が、そのハンディキャップを感じなくて済む世界も近づいています。聴覚障碍者については人工内耳の研究が進んでいます。
ただ、これは聴覚の神経が生き残っている人が対象になります。
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聴覚に比べるとはるかに情報量が多い視覚の方は、もっと難しいかも知れません。
視覚障碍者を工学的に補助するとなると、アイボみたいなロボット犬の盲導犬を開発するとか、AIを備えた高機能の白い杖を作ればいい・・と私などは思いますが、理想を追求する人は、本物の「画像」を障碍者の脳に見せようとします。
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TVが発明され、イメージオルシコンやビジコンという撮像管が開発されると、頭蓋の皮膚に電気信号を送ったり、脳に電極を埋めて電気信号を送ることで”目が見える“ようにする実験が行われました。ずいぶん乱暴な実験ですが、一部に全盲の人に”ものが見えた“という実験結果もあるそうです。しかし、何等かの刺激を感じたとしても、それが”見えた“と言えるかどうかはなはだ疑問です。
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しかし、今回、富士通とQDレーザーが開発した装置は、本当に“目が見える”ようになる装置です。CEATECでは、経産大臣賞を受賞しています。ただし、対象は全盲の人ではなく、弱視の人(資料ではLow Visionの人という表現を用いています)で、網膜の機能が残存している人です。
http://www.qdlaser.com/index.html
http://journal.jp.fujitsu.com/2016/12/13/01/
http://journal.jp.fujitsu.com/2016/12/22/02/
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ごく微弱なレーザー光線を直接網膜に当てて、視覚を機能させるというアイデアは面白いのですが、4つ気になる点があります。
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ひとつは本当に安全なのかな?ということです。網膜に当てても大丈夫な弱いレーザーだというのですが、それでも何十年も当て続けたら、網膜はいたむのではないか? ただでさえ機能が衰えた弱視の人にレーザー(つまり、コヒーレントで単色の光)を継続的に照射することの安全性を私は危惧します。
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次に気になるのは、「色収差の処理はどうするのだろうか」ということです。
私の母が子供の頃に買ってもらった古い顕微鏡で、ダニを見たことがあります。するとなぜかその小動物の輪郭は虹色にぼやけていたのです。子供向けの、凸レンズが接眼レンズと対物レンズの2枚だけの顕微鏡では色収差が処理されず、輪郭が虹色に見えたのです。
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ご承知の方も多いでしょうが、色収差とは、光の波長によって屈折率が異なることで起こる現象です。もともと、屈折とは、媒体によって光速が異なるために、直進する光が境界で折れ曲がることですが、媒質ごとに決まる光速は波長によっても変わることがあるのです。(光速が秒速30万Kmで一定なのは真空中だけです)。
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度数の高いレンズで色収差を解消するのはレンズ技術の大きな課題であり、高級なカメラは何枚ものレンズを重ねることで解消しています。あるいは屈折率の割に色収差が小さい特殊な物質(例えばホタル石)を使う方法もあります。
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人間の眼球の場合、水晶体はレンズとしてほぼ単体と言え、色収差の問題は残ります。しかし、私達が色収差を意識せずに済んでいるのは、脳内で演算して虹色の輪郭を補正しているからではないか?と私は考えます。 この辺り、文献で確認した訳ではないので、オヒョウの無責任な推理ですが・・。
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今回の、レーザーアイウェアと呼ばれる装置の場合、水晶体の屈折を利用せず、直進したレーザーが網膜上をスキャンすることになりますから、逆に色収差はありません。そうなると脳は混乱するのではないか? と私は懸念します。
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次の問題は盲点の処理です。通常我々は2つの眼球からの情報を処理してひとつのイメージを作り出しますから、そこで盲点は意識しなくてもよくなります。
しかし、隻眼のレーザーアイウェアで、しかも精密に網膜をスキャンすれば視野の中央にブラックホールが出現することになります。開発者はこの問題をどう処理するのか? 興味深いところです。
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最後の疑問は、白内障などで水晶体などが白濁し透明度が下がった眼球の場合、網膜に鮮明な画像を提供する光線が届くのか?という点です。前回申し上げたチンダル現象があれば、いかに細いレーザー光線でも難しいかも知れません。
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しかし、気になる点が幾つかあるとしても、そこに拘泥するのは重箱の隅をつつくのと同じです。目が見えるようになるという素晴らしい福音に比べれば、色収差も盲点も些末なことです。特に糖尿病などで後天的に視力を失った方には朗報でしょう。
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私は、昔、大崎にあるソニーの本社でレーザー光線をスキャンする方式のプロジェクターを見学したことがあります。三原色の細くて輝度の高いレーザー光線がスクリーンを走査して映像を出す訳です。日亜化学が窒化ガリウムで青色の発光ダイオードを開発して間もなくソニーも青色の半導体レーザーを完成させており、それから暫く経った頃でした。
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まだハイビジョンしかなく、4Kも8Kも無かった時代ですが、その鮮明さに驚いた記憶があります。ただし光線が目に入ると危険なのでスクリーンに近寄ってはいけないと言われましたが・・・。あの時の記憶に基づけば、レーザースキャン方式なら非常に精細な画像が得られると確信します。
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やがて、レーザーアイウェアにもバリエーションができて、「僕のは4K対応だ」とか、「僕のは8K対応だ」とか、「赤外線対応なので夜でも見えるよ・・・」という具合に裸眼の晴眼者以上の視力をロービジョンの人が自慢できる時代が来るかも知れません。
盲導犬ロボットやAI付きの白杖の場合、最低限、駅のホームの白線と電車の入り口を感知できれば・・と思っていましたが、レーザーアイウェアはその先を行きます。
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秋の夜の冴えわたる満月も眺めることが可能になります。もう名月の夜に座頭の妻が泣く必要はないのです。
むしろ泣きたくなるのは、仕事が忙しくなって悲鳴をあげる眼科医かも知れません。
【 透明な組織 】 [医学]
【 透明な組織 】
私の長男が帯広に赴任する前に、「ハオルチアに興味があるなら、池袋に多肉植物の専門店があるので行ってみたらいいよ」と私にアドバイスしました。その店にはまだ行っていませんが、私はハオルチアが好きです。特に面白いと思うのは、レンズのように透明になった組織です。これを氷砂糖に例える人もいますし、レンズと考える人もいます。
その透明な塊に、緑色やオレンジ色の斑(ふ)が幾何学的な模様が入るのが、面白く、かつ美しいのです。例えるならば、砂漠の水晶です。
https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-993
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では、なぜ一部のハオルチアには、透明な塊ができるのか?これは私には分かりません。透明な組織をレンズにして集光し、光合成の効率を上げるという考え方もありますが、納得できません。レンズの奥に特に葉緑素が集まっている様子はありませんし、原産地の砂漠は光に溢れており、無理をして集光する必要もありません。砂漠で貴重な水を貯えるため・・という考えもありますが、水タンクは透明である必要はありません。普通のサボテンと同じように緑色でいいのです。
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動物にも透明な組織や器官はあります。そしてこちらは目的もわかります。熱帯魚のグラスフィッシュは内臓と骨以外は透明です。ほかにも水中に棲息する動物には透明な組織を持つ種が多くあります。これは多分、天敵に見つかって捕食されないための、光学迷彩というやつでしょう。
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そして多くの動物が持つ眼球の水晶体や硝子体も透明ですが、これは網膜に結像させるためのレンズだからでしょう。ちなみに、硝子体を専門家は「しょうしたい」と発音します。一方、素人は「ガラス体」と発音します。水晶体にガラス体もあるのならダイヤモンド体というのもあるかも・・と子供の頃に思いましたが・・・、ありませんでした。
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話は脱線しましたが、動物が透明な組織を作る場合、植物の場合とは違う難しさがあります。なぜなら体中に透明ではない血液が流れているからです。血管を排除せねばなりません。
例えば、まだ目が無いembryo(胚)に目を作る時、網膜を作る一方で、透明になる予定の部位から血管を排除する必要があります。それを退縮というのだそうですが、そのメカニズムがわかりませんでした。そのメカニズムを慶応大学のグループが明らかにしたのだそうです。
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/medical_info/science/201701.html
これは退縮がうまくいかなった場合に発生する先天性の目の病気の治療法に寄与する研究だそうです。
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しかし、私は別のことを考えます。この研究で、目の発生メカニズムについて脊椎動物と軟体動物の比較がより詳しく調べられるのではないか?ということです。
以前のブログでもご紹介しましたが、イカやタコなどの軟体動物が持つ目は脊椎動物の目に似て、高度な機能を持っていますが、生命の系統樹でいえば、脊椎動物の先祖と軟体動物の先祖が分かれたのは、目を持たなかった頃です。つまり両者は目の無かった時代に分かれて、それぞれが独立して目という器官を発達させた訳ですが、結果的に非常に似た器官ができた訳です。それはなぜか? 高校時代の生物学の恩師玉鉾先生は、「それは、光あふれる星に生まれた動物が、それぞれに目を持ちたいと必死に願ったからではないか?」と言われました。自然科学の授業で突然、科学的でないコメントが登場したことに驚いたことを覚えています。
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実際には、人間の目とダイオウイカの目が似ているとしても、おおもとは違います。脊椎動物の場合、目は神経が変化したものなのに対し、軟体動物の目は皮膚が変化したものだとか。
でも眼球の生成過程でやはり透明な組織は必要で血管の排除も不可避です。ちなみにイカの血は青い色だそうですが・・。
動物がどのようにして透明な組織を手にいれたのか、興味は尽きません。
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透明にこだわるのは、薄型ディスプレイの世界も同じです。技術者は明るく鮮やかな画面を追究しますが、その場合、足をひっぱるのは電極や配線の問題です。TFTのトランジスタを並べた液晶や有機ELの場合、電極がどうしても画面上に現れ、その比率が大きいほど画質は劣化します。また、スマホなどのタッチパネルの場合、画面上に透明電極を敷き詰める必要がありますが、それに使うITO(インジウムとスズの酸化物)には問題があります。
1.希少金属のインジウムを用い、スパッタリングで膜生成するため高価。
2. 導電性と透明度がトレードオフの関係にあり、大電流や高電圧に対応させる場合、画面が暗くなる。
3. 硬くて脆いため、破損しやすいし可撓性も無い。
だからディスプレイ業界では、ITOに代わる透明電極素材を探していますが、なかなかいいものがありません。直近ではカーボンナノチューブが有望だそうで、これが技術的にうまくいけば、一挙に薄型TVの性能が向上すると同時に価格が下がる可能性があります。
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植物も動物もIT業界も透明な組織にあこがれて進歩してきましたが、しかし、何と言っても“透明な組織”が求められるのは政治の世界です。一強体制に胡坐をかき、驕り高ぶれば、民主主義の本分を忘れ、周囲を気にせず、やがて密室でものごとを決めるようになります。透明性を欠いた政治です。 さらにその傲慢さがつのれば、有権者の支持を失い、選挙で大敗することになります。
「そんな簡単なことも見通せないとは、この国のリーダーの目玉はビー玉か?」と言いたくなります。 うーむ、ビー玉か・・・
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やっぱり“ガラス体”でいいや。彼の場合は。
【 アニサキスが一杯 】 [医学]
【 アニサキスが一杯 】
先日、東京駅横のクリニックで胃の内視鏡検査を受けた際、事前のアンケートに「胃の中にアニサキスが見つかった場合、除去しますか?」という質問項目があり、驚きました。
そんな寄生虫が見つかれば、すぐに取ってほしいと思う人が大半でしょうが、若干の出血を伴うので、迷う人もいるのでしょうか?
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そもそも、アニサキスが胃壁に噛みつくと七転八倒の痛みだそうですから、内視鏡で見つけるまで自覚症状なしというのは、現実にありうるのでしょうか?
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それにしても、前回受診時にはこんな質問項目は無かったはずです。アニサキスも有名になったものだ・・と思います。私がこの寄生虫の名前を知ったのは、今は亡き森繁久彌のインタビュー番組です。ある時、彼は急に猛烈な胃の痛みに襲われ、医者に担ぎ込まれたとのこと。内視鏡で胃を見てみたら、小さな虫が胃壁にかじりついており、それを内視鏡のピンセットで取り除いた途端、ケロッと痛みはおさまったというのです。原因は?といえば生魚を食したことだそうで、よくよく聞いてみるとこれは彼のグルメ自慢でした。
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普通は生で食べないお魚、あるいは珍しい料理をいただいた結果、とんだ災難にあったと言いますが、なんのことはない、ちょっとした自慢話だったのです。昭和の大美食家であった魯山人が生肉を食したためにジストマ(古い名前です)に罹っていたようなものです。
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しかし、最近はなぜかアニサキスの話題をよく聞きます。お笑い芸人のおなかの中には8匹もアニサキスがいた・・とのこと。大変な痛みだったろうに・・と思う反面、これもやっぱり大変な目にあったというお笑い芸人の自慢話だな・・と気づきますが、それだけアニサキスが人々に知られてきたということで、それはなぜだろうか?とくだらないことを考えます。
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理由の一つは胃カメラというか内視鏡の普及です。
明治時代までなら、強い胃痛を感じても原因不明のままでした。「持病の癪が・・」という症状の幾らかは、小さな寄生虫が原因だったかも知れません。
もう一つの理由は冷蔵技術の発達や輸送技術の発達で生魚あるいはそれに近い魚を食べる機会が増えた事です。
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話は飛躍しますが、私は駅弁として有名な富山の「鱒の寿司」が大好きです。感覚的には、もう少し酢が薄い方がおいしく頂けると思うのですが、そうは問屋が卸しません。衛生上の理由であまり酢を薄くできないのだそうです。「鱒の寿司」はそのギリギリの線でおいしく、かつ衛生的な食品となっているのだそうです。しかし、酢で〆ることでサナダムシなど他の寄生虫は殺せても、アニサキスはそうはいきません。何と言っても、pH=1.0~1.5の胃酸の中でも元気なアニサキスですから、酢飯ぐらいでまいるはずはないのです。
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ではアニサキスを防ぐにはどうすればいいのか? 高温で処理するか、冷凍で4時間以上保持するしかありません。だから「鱒の寿司」では敢えて、マスを冷凍してから使用しています。本当は生の方がもっとおいしいのでしょうが・・・。
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「鱒の寿司」はともかく、生の食品を尊び、なるべく火を加えずに食べる方がおいしいのだという考え方は根強くあります。前述しましたが、昔は無理だったけれど、今は輸送方法や保存方法の発達で珍しい生の料理が食べられるようになり、それがアニサキス増加の原因だとする説があります。
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なまじ、技術が発達したために、寄生虫が生き残って悪さするというのは皮肉な話ですが、外国人から見れば、生魚など食べるからだ・・ということになります。 このまま行けば、伝統的な日本のお刺身文化や寿司文化が危機にさらされます。
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しかし、私は別のことを考えます。アニサキスの増加は、内視鏡の普及や生魚を食べる機会の増加以外にも原因があるのではないか? 誰も言いませんが、私が思うのはクジラの個体数の増加です。以前、調査捕鯨で捕らえて解体したクジラの胃の内壁にビッシリとアニサキスが付着していたという話を聞いたことがあります。そのクジラはさぞかし胃痛に悩んだろうな・・なんてことを考えますが、もっと大きな問題があります。実はアニサキスはクジラやイルカの消化器の中で繁殖し、その糞便とともに海洋に排出されるのです。
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商業捕鯨が禁止され、クジラの個体数が増えているのは事実です。しかし、その弊害について報告するのは、なぜかタブーのようです。サンマのような回遊魚の漁獲量の急減の理由の一つは、クジラによる捕食の増加が考えられます。またオキアミの減少もクジラの増加によると思われ、オキアミを捕食する魚類もその影響を受けて減少したと思われます。
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それに加えて、アニサキスを撒き散らすクジラの増加は、日本人のアニサキス症を増やしているのではないか?と私は思います。クジラの糞便は、一種の海洋汚染です。それに加えてクジラのオナラは、温室効果ガスを大気中に放散することになります。クジラの増えすぎは、環境に大きな影響を与えるのです。
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反対する国も多いのですが、日本は調査捕鯨を続けるべきです。クジラの個体数の増加がもたらす影響を詳しく調査すべきです。 そして捕獲した個体を調べる時には、胃袋の中のアニサキスの有無も必ず確認すべきです。
これは、クジラを食べるか否かではなく、日本の素晴らしいお刺身文化と寿司文化を守るためです。 そう考えれば、胃痛を抱えて亡くなったクジラも浮かばれるというものです。
【 エキノコックスについて考える 】 [医学]
【 エキノコックスについて考える 】
我が家の愛犬に予防接種をする際に考えます。既に老犬であるし、病を得ているので、以前と同じように、狂犬病、ジステンパー、フィラリアの3種類を接種するのは体の負担が大きいのではないか?と思うのです。
中国で暮らしていた私は、かの地では狂犬病が今も脅威として存在するのを知っています。しかし、日本ではもう何年も発病が報告されていません。どこかの時点で、政府が狂犬病は制圧されたと宣言して予防接種を廃止してもいいのではないか?と思うのです。
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そして狂犬病の予防接種の代わりに、駆虫薬プラジクアンテルを与えてはどうか?とボンヤリと考えます。それは致死性の寄生虫病であるエキノコックス症を考えるからです。
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1980年代、私は旅行で礼文島に行きました。そこで民宿の宴会に参加したのですが、地元の古老に「エキノコックスはどうですか?」と尋ねました。その瞬間、笑顔だった老人の表情は凍り付いたようになり、「もう長い間、エキノコックスは発見されていない。礼文島をエキノコックスの島であるかのように言うのは止めて欲しい」実際、礼文島のエキノコックスは駆除されたようです。しかし実態は北海道全土に拡散したという見方もあります。その後、根釧地方でエキノコックスが発見されているのです。
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エキノコックスについての説明は省略しますが、この致死性の寄生虫病は、今も中国の西域で猛威をふるっていますし、欧州でも大問題です。政治的にも大きな摩擦の原因になっています。
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エキノコックスの島として有名だったアイスランドでは、一時期、対策として犬を飼うことを全面的に禁止し、犬の輸入も禁止しました。 それは世界一の愛犬国を自認する英国のプライドを傷つけました。 英国の犬も持ち込み禁止になったからですが、英国の飼い主にとって、エキノコックスに感染していると疑われることは受け入れがたかったはずです。
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英国とアイスランドはもともと仲が悪いのですが、タラの漁場を争ったタラ戦争や、第二次大戦中の英国軍によるアイスランド侵攻と並んで、エキノコックス騒動は両国間の関係を悪化させたのです。現在、アイスランドのエキノコックスが完全に制圧されたかは不明です。この寄生虫は、飼い犬だけでなく、野生のイヌ科の動物(キツネも含む)や齧歯目の動物に広く寄生し、駆除完了を確認するのが難しいからです。
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日本の場合、礼文島のエキノコックスは制圧したものの、北海道全土に広がってしまいました。余談ですが、帯広に赴任した私の長男はかわいいキタキツネを見かけるそうですが、決して触らないそうです。しかし、本当はそれだけでは不十分で、北海道名物の馬糞風を避ける必要もあります。
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その北海道の風土病が近い将来、本州に広がる可能性があります。以前、ムツゴロウの動物王国が経営破綻し、飼育していた動物を関東地方に移動した際、専門家から懸念が示されました。 十分な管理がなされていなかった犬を本州に連れてくるのは危険だ・・という意見です。ムツゴロウ側がどう反論したかは忘れました。
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その指摘が正しいか否かは不明ですが、それ以前に青函トンネルが問題です。キタキツネがトンネルを通って本州に来るかどうかは不明ですが、野ネズミぐらいなら、本州に来る可能性は高いといえます。 彼らは電線のケーブル被覆を齧りながら移動します。北海道で生まれ、エキノコックスを宿す小動物が既に本州に入っている可能性は否定できません。
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今のところ、本州に暮らす人がエキノコックス症を発症したというニュースは、まれにありますが、あまり信用できません。なんでも、エキノコックスの症状は肝吸虫(昔風に言えば肝ジストマ)などに似ており、簡単には識別できないからだそうです。
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本州の野生動物にまでエキノコックスが広がった場合、その防疫対策の要になるのは獣医師です。動物の段階で食い止めなければ人間に被害が及ぶのです。のんびりと、獣医の数は足りているから、新たな獣医学部は必要ない・・などとは言っておれなくなります。 口蹄疫や鳥インフルエンザと並んで、エキノコックスは「今ここにある危機」」なのです。
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それでも日本の場合はまだましです。この問題で頭が痛いのは中国です。
中国政府は、漢民族以外の少数民族を慰撫するため、一種のAffirmative Actionを行っています。インフラ投資も、小数民族の省に手厚くし、名門大学への入学定員も少数民族には多く割り当て、倍率が低くなるようにしています。 インフラ整備を通じて、公衆衛生面でも、少数民族地域の環境改善を図っている訳ですが、実際はそううまくいきません。地方の少数民族の地域の方が疫病も多く、死亡率が高いそうです。
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むりやりチベットを併合したのはいいものの、チベット族では結核が流行っています。漢民族より劣悪な環境で劣悪な暮らしを強いられているからだ・・と私は思いますが、中国政府には都合の悪い現実です。
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そして同じく小数民族の地域である青海省や新疆ウイグル自治区では、エキノコックスが流行っています。最前線で奮闘する医師(こちらは人間相手の医師)が嘆いています。「エキノコックスを駆逐できるのは、小さな島だけで、大陸の大平原でエキノコックス対策をするのは無理だ」
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO16738850T20C17A5000000/
無理だと言っても、抑え込まなければ、災厄は全世界に及ぶ訳で、ここは、技術とお金と人手を集中的に投入する必要があります。 でもはっきり言って狂犬病すら対応できない中国政府にはエキノコックス撲滅は無理です。
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経済成長を遂げた中国には、もはや金銭面での援助は不要です。しかし、この国に欠けている民生の為の技術、あるいはプロジェクトを遂行するノウハウを日本から援助することは可能だし、必要でもあります。そして、そのプロジェクトには人間用の医学と獣医学と農学・生物学が協力して取り組む必要があります。
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しかし、近代化してから歴史が浅い中国の学会は学際分野のプロジェクトが苦手なのです。その分野こそ、日本が得意で協力できる分野です。かつて日本から中国への技術協力は産業界に偏り、日本のライバル企業に塩を送る結果になったものが少なからずあります。 またハイテク技術を供与すると軍事利用される懸念もありました。
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しかし、辺境の地域の風土病対策、寄生虫対策にはそれらの問題はありません。そして現地の人々には確実に歓迎されます。中原に暮らす漢民族の中国政府には煙たがられるかも知れませんが・・・。
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日本も一種のAffirmative Actionとして、ウイグル族やチベット族、回族などの留学生を受け入れ、寄生虫駆除対策の研究を指導すべきです。 現在、日本の獣医学は、獣医学部だったり、農学部獣医学科だったり、畜産学部だったり、その扱いもまちまち(というよりでたらめ)です。 ここは人間の医学部医学科のように獣医学部獣医学科に統一して入学定員も確保すべきでしょう。
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どうです? 獣医学部の定員増の必要性を見いだせなかったとうそぶく元エリート官僚の前川さん、あなたはどう思いますか?
【 転失気 について考える その2 】 [医学]
【 転失気 について考える その2 】
看護師は「気分はどうですか?」と尋ね、「そうですか。ガスは出ませんか。後半は体内に吸収されやすいガスにしましたので、やがて吸収され、張りは解消するかも知れません」とのことです。
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ガスによって吸収度合いが違うのは、体液への溶解度の差なのか、気体分子の粘膜の透過率の差なのか・・ちょっと気になります。ではこの場合のガスの吸収はヘンリー則に則るのかラウール則に則るのか・・・と、その昔学んだ化学を思い出します。
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製鉄所にいた頃、溶鋼の水素の吸収についてヘンリー則を適用して計算したら、東北大の院を出た新人スタッフに「違いますよ。ヘンリーの法則ではなく、この場合はジーベルツの法則を適用します。オヒョウさんは金属学を専攻した訳でもないのに知ったかぶりをしないでください」とたしなめられました。苦い記憶ですが、インテリにやり込められて、なんだか寅さんになった気持ちでした。
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それにしても、腸の吸収が効率的なら、これを有効活用できないものか?とおなかを撫でながら考えます。通常は経口投与されている薬でも、経腸投与することで、メリットが出るのではないか? 例えば硫酸アトロピンを座薬にできないか?
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私は呉の座禅道場の会話を思い出します。座禅道場では、眼科の専門医のお二人に、散瞳剤であるアトロピンの作用機序について、少し教わりました。アトロピンは眼科では主に点眼薬か軟膏だそうです。
しかしムスカリン受容体に拮抗する薬として考えた場合、アトロピンは眼科だけの薬ではありません。有機リン系の毒薬(サリン等)の解毒剤になりますし、消化器官の痙攣や運動亢進や消化液の分泌過多の抑制にも使われます。それらの場合は、注射か経口投与だそうです。 それならアトロピンを経腸投与する方法もあるのではないか?腸で吸収されれば、作用は迅速に現れるだろうし、必要最小限の量で済むなら副作用も限定的だ・・。 妄想は続きます。
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じっとしていると、荒唐無稽なことばかり考えてしまうのは私の悪いくせです。そしてもうひとつの悪い癖は、専門家(特に医師)に対して、つい知ったかぶりで、知識をひけらかしてしまうところです。そう言えば、くだんの広島の眼科の先生方にも、いろいろな話をぶつけて、ご迷惑をかけてしまったなぁ。大いに反省しなくては・・・・。
しかし、それにしても医師に対して雑学をひけらかすというのは、潜在的に何らかの対抗意識を持っているからなのかなぁ? それとも一般的にインテリに対する反発やコンプレックスがあるのかなぁ。そうすると、これはフーテンの寅さんと同じです。寅さんが恋敵の医者に言った「てめぇ、さしずめインテリだな?」というセリフを思い出します。やれやれ、私は、検査中はゾウになった気分でしたが、検査を終えた後は、トラさんになった気分です。
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そこまで考えたところで、私のお尻から、一発、おなら、もとい転失気がでました。雷鳴というほどの大音量ではありませんが。 私はその瞬間、誹風柳多留のもう一つの川柳を思い出しました。
「屁をひれど、おかしくもなし 独り者」
どうやら私には俳句よりも川柳の方が向いているかも知れません。
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あ、ところで余談ですが、私の大腸検査の結果は問題なく、健康体でした。素人の私が観てもきれいなおなかの中でした。
実際、オヒョウくらい、腹黒さと無縁の男はいないのです。
【 転失気 について考える その1 】 [医学]
先日、5年ぶりの大腸内視鏡検査を受けました。レガシーというか、前回受診したクリニックで検査を受けるのが良かろうと思い、今回も東京駅の横のクリニックで前回と同じ先生にお願いしました。
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内視鏡と一緒に相当量のガスを腸内に送り込み、おなかはカエルのそれのように膨らみます。鏡はないけれど、もしあれば、自己嫌悪に陥る見苦しい様であったに違いありません。筑波山のガマガエルなら脂汗を流すところです。
3人の看護師が私のおなかをさすりながら、「苦しかったらガスを出してください」と声をかけてきます。しかし、なぜかおならは出ません。若い女性4人を前にしておならをすることに無意識に抵抗があるのか、出口を内視鏡に塞がれているためか、よく分かりませんが。
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以前も思ったのですが、放屁は何時から羞恥の対象となったのか?と考えます。日本の場合、少なくとも江戸時代以前からです。
誹風柳多留には「嫁の屁は五臓六腑をかけめぐり」 という川柳があります。当時から、放屁が人を憚るものであったことは間違いありません。とりわけ、嫁ぎ先でおならをするなど、若い女性には堪えられないことで、おならを我慢するのに苦しんだのだろうと推測されます。人々は文化的になった結果、おならを慎むようになったのかも知れません。だとしたら不自由なことです。
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かつてオランダでは国王がおなら解禁令を出し、フォーマルな席でもおならをしてよいことになったそうです。つまり、何時でもどこでも、おならをしてよいことになり、国民はその結果、大変健康になったとのことです。(本当かね?)
後述しますが、おならを我慢した場合、いずれガスは体内に吸収されるようです。おならに含まれる成分は、食べ物と一緒に飲み込む空気(窒素と酸素)、消化器官での発酵によるメタン、CO2、硫化水素、インドールやスカトールなどです。硫化水素やインドール、スカトールが体内に吸収されれば、健康にいいとは思えませんが、体内にそれほど強力な毒ガスがあるとも思えません。オランダでおならを解禁した結果、国民が健康になったというのは、ストレスから解放された精神衛生面に拠る部分が大きいのではないか?・・・・。おならを待ちながらそんなことを考えます。
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「ご気分はいかがですか?」とC医師。抜群の記憶力を誇る読者諸兄であれば、前回も同じ質問をされた私が「ドジョウになった気分です」と答えたことをご記憶かも知れません。今回はドジョウでもカエルでもなく、インド象になった気分でした。
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東武動物園の名物園長であった西山登志雄氏は、動物園日記を残していますが、その中に便秘になったインド象の話がでてきます。
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象用の浣腸液などありませんから大量の石鹼水をバケツに用意し、それを獣医師がサイホンの原理でゴムホースを通して肛門に注ぎ込みます。一方で数人の飼育係が象のおなかの下に入り、全力で腹をマッサージする訳です。やがて雷鳴かと思う大きな音とともにガスが放出され、それと同時に大量の排泄物が、あわれな飼育係たちの頭上に降り注いだとのことです。
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考えてみれば、象のおなかの下に入って刺激するというのは大変危険な作業です。浣腸で排泄物を浴びただけで済んだのは幸運だったのかも・・・。
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「うーむ、なかなか屁が出ません」と言おうとして、一瞬私は迷いました。若い上品な女性達を前にして、「屁」だの「おなら」だのという下品な言葉を言うのは失礼ではないか?そこで私は消え入るような声で「テンシキが出ません」と答えました。「テンシキ?」
・・・・・・
古典落語の傑作「転失気」は、気取った言い回しが誤解されドタバタを招くというストーリーです。無粋を承知でそのあらすじを述べれば・・・・・、
和尚を診察した医師が、「おならは出ますか?」と尋ねるところで、「テンシキはありますか?」と尋ねました。相手がインテリで上品な僧侶なので、「屁」だの「おなら」だのというのをためらい、難しい表現である「転失気」を用いたのです。しかし、和尚はその意味を知らず、こっそり小僧に調べさせます。すぐに屁の意味だと分かりますが、それを和尚は屁ではなく瓶(へい)だと勘違いして、またそこで滑稽なやりとりになって大爆笑するという噺です。
・・・・・・
古典落語の主要なテーマのひとつはインテリと非インテリの対峙です。普通はインテリの代表は大家さん、非インテリの代表は八つぁん熊さんですが、「転失気」では両方ともインテリです。そして、知ったかぶりを茶化すことで、インテリを嗤ってやろうという趣向です。その複雑なテーマを「転失気」というわずか一つの単語に凝縮した作家は見事です。
・・・・・・
この構図は、古典落語をおおいに参考にした映画「男はつらいよ」のフーテンの寅さんにも登場します。この作品の初期のテーマの一つはインテリと非インテリの対立です。作品の中に小林桂樹扮する考古学者と、渥美清の寅さんが、樫山文枝を争って恋のさや当てをする話があります。相手がインテリだと判ると、反射的に拒絶反応と対抗意識を示す寅さんは、相手の知識を試そうとします。そこで「屁のことを英語で何て言うんだい?」と尋ねます。例えとして下品な言葉しか思い浮かばないところに非インテリの悲しさがある・・と山田監督は思ったのかも知れません。
・・・・・・
しかし、小林桂樹は「英語ではファーだ。中国語ならピーだ。ドイツ語なら、フランス語なら・・・」と説明し「どうだ参ったか?」と寅さんをやり込めます。
・・・・・・
寅さんはグウの音も出ませんが、見ている人には小林桂樹の方が大人気ない・・と映ります。インテリは同情されないのです。おならという意味の外国語を知っていても、果たして自慢になるものか?
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検査は終わりましたが、おなかは膨満感があるままです。おなら、もとい「転失気」は出ません。休憩の椅子にいると、そこに看護師が現れました。
以下、次号
【 Smart Contact 】 [医学]
【 Smart Contact 】
世はなべてスマート時代です。ここでいうスマートとは「賢い」とか「判断できる」とか「情報処理できる」というぐらいの意味です。本来、情報処理機能を持たない単なる道具にマイコンなどが取りつけられると、“賢い機械”という意味でスマート何とかという名称に切り替わるのは、ご承知の通りです。単なる携帯電話にコンピューターに近い機能が付与されるとスマートホンになりますし、時計に簡易的なパソコンの機能を付ければスマートウォッチです。それ以外にもスマート何とかと付く道具はたくさんあります。
・・・・・・
そういえば、最近の家電製品は賢くなったおかげか、いろいろしゃべったり警告音をだしたりします。「お風呂が沸きました」とか「ご飯が炊けました」とか、「録画を予約しました」とかうるさいほどです。なんでもアメリカには、扉を開けると「食べ過ぎです。太りますよ」と警告してくれる冷蔵庫があるとか? 本当ですかね?本当ならちょっと欲しいな・・いや、やっぱり要りません。
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建設機械も流行りのIoTを具体化したスマートコンストラクションとかで、ブルドーザーにコンピューターが付き、しかも人工衛星を介して、司令部と連絡し、自動で作業する仕組みができたそうです。地形はドローンが測定し、図面通りの掘削作業を機械が自分で行うのです。ブルドーザーとはもともと、機械化で牛が不要になり居眠りする・・・という意味ですが、スマートコンストラクションでは、人間が不要になります。
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コマツでそれを開発したK君は私の高校の同級生ですが、「コンピューター付きのブルドーザーさ」と説明するのを聞くと、「やっぱり、そのブルドーザーは新潟弁のダミ声でしゃべるのかな?」と考えてしまうのは、私が昭和男だからです。
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しかしまあ、建設機械などはどうでもいいのです。もっと身近な、身体に装着できるセンサーとテレメーター(通信装置)の方が私達には重要です。
実は身に着ける衣服や医療器具もどんどんスマートになっていきます。最近ではコンタクトレンズにマイクロチップを仕組み、健康診断してくれる、スマートコンタクトが登場しました。
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2014/022169.php
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2014/021249.php
涙を分析して、含まれる糖度を測定して報告するというものですが、素人の私には不可解です。実は私も工作機械の切削液濃度を調べるために糖度計を利用したことがありますが、それは液体の屈折率を利用したものです。コンタクトレンズにそんなカラクリを付けることはできませんし、一体どんな方法で糖度を測定するのか? それに涙には塩分も含まれ、複合的な水溶液です。どうやって糖度情報を抽出するのか?気になります。
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体に装着する測定装置のポイントは、センサー、テレメーター、バッテリーの3つをいかに小型化できるか?です。後者の2つはなんどかなるでしょうが、センサーをどう工夫しているのか?おおいに興味があります。
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もう一つ考えるのは、涙を分析するなら糖分以外にも測るべきことがあるだろう・・ということです。プロポーズを受けた喜びの涙と、別れを告げられた別離の涙では成分や温度は違うのか? 武器として使う時の女性の涙は、本当の泣き顔の涙と成分が違うのか? チャップリンの映画で観客が流す涙は、どんな味なのか? スマートコンタクトで分析して欲しいところです。
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超小型センサーが使えるなら、眼圧を測定し緑内障の防止や治療に応用できないか?と思っていたら、やはりありました。米国ミシガン大学は、超小型の眼圧測定コンピューターを体内にいれ、連続的に眼圧を測定して緑内障を診断する技術を開発しました。
ミシガン大学は、この超小型のコンピューターというかセンサーをM3と呼んでいますが、時代はもう「ミクロの決死圏」です。
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そういえばミシガン大学は、かつて自動車の安全工学の分野で世界をリードしていました。Cadaver(実験用の死体)を用いた自動車の衝突試験は日本ではできないもので、ミシガン大学の研究成果に人々は注目していました。その頃からミシガン大学は医学部と工学部の連携が密だったのですが、今はマイクロマシンの世界で、それを実現させているようです。
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身に着けるセンサーの発達は、それ以外にもあります。
先日、私の次男が仙台ハーフマラソンに参加したのですが、鹿嶋にいる私の家内が、パソコンの画面を見ながら応援しています。どういうことか?と訊くと、靴に装着したGPSから位置情報が送られ、どの選手が今どこを走っているかを、リアルタイムに地図上で把握できるというのです。家内はその情報をパソコンで確認しており、もう少しで中継カメラの前に差し掛かると言います。果たして中継カメラの画像をパソコンに映すと、黙々と走る息子が画面に現れました。
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「へえー大変な時代になったものだ」と昭和人の私は驚嘆します。やがてトイレの便器に座れば、体重だけでなくもろもろの健康状態が調べられ、警報や注意報が出されるかも知れません。 はては、線虫のセンサーが尿に反応してガンの診断もしてくれるかも知れません。 靴や服には当然のようにGPSが付き、どこでどう道草をしたかが、全て知られてしまうことになるかも知れません。
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便利で嬉しい反面、気安く外出もできませんし、落ち着いてトイレで座ることもできません。 私の場合、私よりずっと賢いTOTOの便器がこう言うかもしれません。
「コノ体重ハ重スギマス。便器ハ人工知能デ“スマート”ダケド、アナタハチットモ“スマート”デハナイ」。