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【 インターネット情報をどう扱うか その2 】 [インターネット]

【 インターネット情報をどう扱うか その2 】

 

米国では医師や医学研究者により、インターネット情報を検証したり、それを鵜呑みにすることの危険性を訴えるキャンペーンが進んでいるそうです。

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きっかけはAIDSの潜伏期間についてのインターネット情報が不正確で、それを鵜呑みにして、AIDSに感染したのにしていないと錯覚するおそれがあることを、ある医師が指摘したことです。

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米国では、依然AIDSの問題は深刻です。いや、逆説で考えると、深刻に考えていない日本の方が実態は深刻かも知れません。先進国でHIV陽性の人が増加傾向にあるのは日本だけだそうです。一方で検査を受ける人の数は少ないままで、把握されていない感染者はさらに多そうです。

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しかし、一方で、増加しつつあるのはAIDSだけでなく、梅毒などの他の性感染症も増加傾向にある・・という指摘もあります。 他の性感染症も増えているのだから、AIDSの増加だけを特別に扱うのはおかしい・・という奇妙な意見もあります。 でもやっぱりAIDSは大きな、そして不気味な問題です。

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話を元に戻します。

アメリカで問題となったAIDSの潜伏期間の情報は、現在、医療関係のインターネットの主要サイトでどのように説明されているか?と思い、調べてみたら、以下の状況です。(私も暇ですね・・)。

 

wiseGEEK                   1月~6ヶ月

WebMD                    2週間~6ヶ月

eHow                      ~10

Arkansas Department of Health  6週間~6ヶ月

PubMed                40日~60

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これではあまりにバラつきが多すぎて、どの情報を信用すればいいのか困ります。

しかし、よく見ると、Arkansas のように、ある説明は、HIV検査が陽性になるまでの期間を示しており、ある説明はAIDSの症状が発症するまでの期間を示しているなど、潜伏期間(the incubation period)の定義もまちまちです。

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どうやらどの説明もそれなりに根拠があって正しいようですが、私のような素人が見ると混乱してしまいます。 切実な事情があってAIDSの潜伏期間を知りたい人(つまり思い当ることがある人)が、インターネットでそれを調べた際に、誤解してしまう可能性は確かにあります。 これらは質の悪い情報と言うべきでしょう。

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では、AIDSの潜伏期間を誤解し、感染しているのに感染していないと錯覚し、その為に治療開始が遅れたり、あるいは他の人に感染させてしまった場合、誰が責任を取るのでしょうか? 考えてみると、著者が特定されず、料金も徴収しないインターネット情報に責任を求める訳にはいきません。

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アメリカはご承知の通り、訴訟社会で何事についても責任追及の厳しい社会です。しかし相手が特定されなければ、訴えることもできませんし、弁護士も動きません。

一方、責任を伴う、署名された情報については、いつ訴えられるか分かりません。だから情報は厳密・正確になりますが、同時に有料になり、煩わしく高価なものとなります。

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しばしば「日本人は、安全と水を無料だと考えている」と揶揄されますが、考えてみると「人々は情報を無料だと考えている」と言うこともできそうです。これは日本人に限らず、目に見えないものにお金を払いたがらない多くの人に言えますが・・・。 「本来情報とは高価なもので、知的財産権も蔑ろにしてはいけないのだ」と権利意識に敏感なアメリカ人は言うかも知れません。

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しかし、それではあまりに窮屈だということで、無料のWikipediaが、有料情報のアンチテーゼとして登場したのだと思います。 でも責任を伴わない情報供給には、やはり限界があります。Wikipediaにも問題がありますが、医学情報をまとめたキュレーションサイトにはさらに問題があります。今回のWELQの閉鎖は多くの意味で象徴的です。

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第二次大戦後、一貫して日本の産業は工業製品や農産物、サービスの質の向上に取り組んできました。 経済発展と工業製品の質の向上は、車の両輪のように回っていました。 しかしその間、情報の質はあまり上がっていません。平気で嘘を垂れ流すマスコミ、誇張し偏った情報で世論誘導を図るマスコミ、専門知識を持たない人が、著作権を無視して不正確な医学情報を流すインターネット・・・・は、まだ存在します。

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かつて工業製品の品質向上活動が成功したように、何時か無料情報の品質も向上しようという社会運動が始まれば、質の悪い情報は淘汰され、世の中には信頼できる情報だけが溢れるでしょう。それは、正しい情報を求める多くのガン患者とその家族には歓迎されるでしょう。 その時、南場智子氏の慚愧の涙は報われるのかも知れません。

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その頃、いい加減な記事を書き飛ばしている「笑うオヒョウ」はとっくに淘汰されているでしょうが・・。


【 インターネット情報をどう扱うか その1 】 [インターネット]

【 インターネット情報をどう扱うか その1 】

 

先日、ある病院で私はMRIの検査をしてもらうことになりました。担当の医師からは「造影剤を注入しますが、その了解をお願いします」とのコメントです。MRIの造影剤? とっさに理解できなかった私は「それはどういうものですか?」と尋ねました。

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ご承知の通り、MRI(核磁気共鳴)とは、回転磁場をかけて、原子核の磁気双極子モーメントと共鳴させ、磁場を消した後の緩和時間の差から、主に水素原子の濃度分布を調べて、画像として取り出すものです。水素原子の濃度差を画像化するので、骨などでない柔らかい組織の検査に向いています。 

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XCTなら、バリウムなどの放射線を遮る物質、或いは自身が放射線を出すラジオアイソトープなどが造影剤になりますが、MRIの場合に造影剤などあるのだろうか? 

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私が尋ねると若い医師は「ああ、造影剤ですか?ガドリニウムですよ。ラジオアイソトープではありませんし、短時間で体外に排泄されることが確認されています。ご心配なら、ネットで確かめてください」と言って、パソコンの画面を私に向けて、自身でガドリニウムを検索して、説明するサイトを見せてくれました。

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「まあ、本当はインターネット情報がどこまで信用できるか・・という問題はありますが、この記事についてはまず大丈夫でしょう」。先生は自分が説明するより、患者が文字を追う方が早いということを認識しています。

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私は造影剤の性質と体への影響について確認した後、二三、先生に質問してから造影剤使用に同意し書類に署名しました。しかし、医師が漏らした、「ンターネット情報がどこまで信用できるか・・」という点は、心にひっかかりました。

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インターネットは素晴らしい情報検索手段です。特に自分の専門外のことを浅く広く調べるには適しています。百科事典として考えると実に便利で安価です。

しかし、その情報は玉石混交です。昔の出版社の紙の百科事典は、高価でしたが著者名が記載されており、内容は信用できました。逆に信用ある事典や辞書の著者に名前が登場するから・・という事で研究者が信用されたりもしました。

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一方、インターネットはそこが心配です。Wikipediaは多くの人の善意に基づいて編纂されていますが、著者は不明です。真偽は確かめようもなく、虚偽の記載であっても誰も責任を取りません。

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造影剤の説明をした若い医師は、「インターネット情報は手軽で便利だけれど、それを使いこなすには、真贋を見抜く力量というか専門知識が必要だ。ここは、医師である私が検索して責任を持って、ネット情報を提供しましょう」と言いたかったのでしょう。

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Wikipediaの記事に誤謬があっても、大きな問題ではありません。 専門家の中には自分の専門分野でWikipediaの記載内容の間違いを発見して喜ぶ人がいます。あまり上等な趣味ではありませんが、私も一つ発見したことがあります。

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しかし、医療関係の情報を伝達するキュレーションサイトの記載内容が杜撰なら、これは罪深いことです。なにせ人の命に関わることですから・・・。

そもそもキュレーションサイトなるもの、胡散臭さの塊です。キュレーションサイトとは方々のサイトにある情報をつまみ食いして編集者の個人的見解で要約したものですが、必ずしも専門家が要約するとは限りません。 作成者に大きな問題があります。

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実はある情報群が存在する場合、それを要約するのは非常に難しい仕事であり、全体を見渡す知識を持ち、総合判断できる専門家でなくてはできません。 それを素人が行う事自体危険です。

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利用する側にも問題ありです。 自分で調べて考えるのが億劫な人が、横着をするためのサイトがキュレーションサイトですが、そもそもそんな横着をする人は、情報の真贋を確かめる労力も惜しむでしょう。

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運営する側も胡散臭さの塊です。情報検索者が専門のサイトに直行したり、正統な論文にアクセスするのを妨害するかのように、キュレーションサイトに誘導することがあります。これは一種の詐欺に近い行為です。

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そして、それが医学・医療関係の情報であれば、情報を必要とする患者本人やその家族に間違った情報が伝わり、最悪の場合は命に関わります。

私は医学・医療関係のキュレーションサイトは、医師のみが作成・編集に当たるべきであり、著者と編集人・発行人の名前を記載すべきだと思います。

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そしてDeNAの杜撰なキュレーションサイトWELQが問題として指摘され、それらを閉鎖することになりました。南場会長というか前社長も記者会見に登場し、神妙かつ沈痛な表情です。 あれっ?これはどういうことだ?

http://www.sankeibiz.jp/business/news/161210/bsj1612101612001-n1.htm

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彼女はマッキンゼーでは大前研一の一番弟子で、自分の会社DeNAを成功させ、横浜ベイスターズのオーナーとしては、今年Aクラスいりを果たすなど、順風満帆・得意満面なはずです。それなのに憔悴しきった表情です。それは記者会見の2日前に、長くガンを患っていた夫を亡くしたからだ・・と、報道で知りました。彼女が憔悴していたのは、DeNAの不祥事ではなく、看病していた夫の死が原因だったのです。

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それなのに、会見に列席した気丈な彼女に残酷な質問が飛びます。

「ガン患者の家族として、キュレーションサイトWELQの情報を活用したか?」

彼女の答えは、「医学論文を読んだり、ガン患者やその家族のブログは読んだが、WELQは見なかった。後で内容を知り愕然とした」

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これは正直な回答であると同時に、彼女の聡明さを示すものです。彼女なら専門的な医学論文も読解できるでしょうし、現実に病と闘っている人のナマの情報の貴重さも分かるでしょう。正しく価値のある情報を知っているのです。一方で無責任で怪しげな情報を見抜き、それに近づかない・・・というのも、一つの知性です。

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彼女が理性的で合理的な情報収集をしている・・ということは分かりますが、自分の会社の商品とも言うべきWELQの情報に愕然とした・・という表現は、自分の会社を否定し引導を渡すことを意味します。 彼女は夫を失い、そしてわが子のようなDeNAの一部を葬ったのです。

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こと、医学については、インターネット情報の問題は大きい・・と私は思います。

そこでふと考えます。

「米国の事情はどうだろうか?」

IT関連の問題や動きは、日本より先に、米国で発生します。この種の問題は当然、既に米国で発生しているはずです。

 

次回は、それについて管見を述べたいと思います。

 


【 さらば新聞少年 】 [インターネット]

【 さらば新聞少年 】

私と同世代で、かつてパソコン黎明期に活躍した人物に西和彦氏がいます。出版を初めとして、パソコンビジネスで強い影響力を持ったアスキーの創業者で、当時はソフトバンクの孫正義氏と並び称された人物です。

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その彼が1980年代に面白いことを言っています。ちょうど電話回線を利用したファクシミリ(FAX)が普及しだした頃で、彼は「すぐに一家に一台FAXが普及するであろう。そうすれば情報伝達のかなりの部分はFAXで賄われ、宅配の新聞もFAXで受信するようになり、新聞配達は要らなくなるであろう」と予言したのです。

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結果はどうであったか? 2016年の現時点でも紙の新聞は配達され、新聞配達の仕事は無くなっていません。 新聞がFAXで宅配されることはなかったのです。しかし、インターネットや電子書籍が発達しだして、事情は徐徐に変わりつつあります。紙の新聞ではなく、インターネットで配信される新聞を読む人が増えだしたのです。例えば通勤電車の中を見てください。昔は、新聞を広げる人がたくさんいましたが、今はほとんどいません。その代わりに、皆さん、それぞれに様々な液晶画面を眺めています。

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その中には、新聞の電子版も含まれます。つまり、新聞の宅配は次第になくなりつつあるのです。

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昭和の時代、毎朝、各家に配達されるものの代表は新聞と牛乳でした。利用者の家の玄関まで届けてくれるのですから、これは便利なサービスです。でも労働集約型で非効率なシステムでもあります。だからいずれ無くなるだろうと予想されました。

新聞配達と牛乳配達、どちらが先に姿を消すか? 鋭い人は予想を立てたはずです。

西和彦は新聞の宅配がなくなるだろうと予測したのですが、実際には逆で牛乳配達の方が先に姿を消しました。(まだ、一部の地域では牛乳配達も残っています)。

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なぜ、牛乳配達は姿を消したか? この理由は幾つかあります。

牛乳配達はガラス瓶のリユースを前提としていて、重たく嵩張る空き瓶を回収して再使用することになります。そのガラス瓶のハンドリングの煩わしさがネックでした。

一方、プラスチックの軽い容器や、紙パックに入っているヤクルトの方は宅配が続いています。

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やがて牛乳が紙パックになると、リユースは不要になり、回収しなくてもよくなります。(正確にはリサイクルの対象ではありますが・・・)。そうなると、人々は宅配に頼らず、スーパーなどの小売店で牛乳を買い求めます。今でもガラス瓶の牛乳が残っているのは、銭湯の脱衣場や学校給食など、特定の場所で飲まれ、瓶の回収が容易な場所が多いようです。

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一方、新聞は紙の宅配制度が残っています。 これはいろいろな理由がありますが、最大の理由は新聞社側の事情です。もし宅配制度がなくなれは、新聞の発行部数は激減するはずです。それを防ぐために、新聞社は石にかじりついても、宅配制度を守ろうとします。

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人間は横着な存在です。朝、新聞受けにあるいは玄関に新聞が届いていれば、それなりに読みますが、朝届いていなければ読まないでしょう。敢えて、コンビニエンスストアや駅の売店まで足を運んで読もうという人は少数派です。

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換言すれば、本当は不要な新聞を、家に届けてもらうというサービスのお蔭で、惰性で読んでいる・・という消極的な読者が多い訳です。本来、新聞の価値とは書かれている情報が全てです。しかし、実際には商品の価値とは無縁の、宅配制度が購読者を確保しているのです。新聞社はそのことに気づいていますが、敢えてそれを伏せて宅配制度の死守を訴えています。

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現代人は、新聞以外から多くの情報を得ます。新聞は速報性ではTVやラジオに負けます。相互アクセス性というか、インタラクティブ性ではインターネットに遥かに負けます。新聞の利点といえば、一つのニュースを深く掘り下げた活字の文章の説得力ですが、それがどうも怪しくなっています。

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新聞記者の不勉強があまりにひどいのと、特定の思想に基づいた“上から目線”の解説記事のうさん臭さが問題です。 例えば先日、こんなことがありました。

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先日、私の勤務先にとって重要な取引先である、某製鉄所で爆発事故がありました。

爆発事故発生の直後からインターネット上では、それに関する情報が溢れたのですが、会社からの正式発表があった訳ではありません。従来型のメディア(新聞やTV)にはその情報はなかなか流れません。

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その事故から1日半たった朝のミーティングで、私が上司に「例のA社の爆発事故の件ですが・・」と話しかけると、なんとその上司は爆発事故の事を知りませんでした。そして

「オヒョウ君の情報はインターネット情報ばかりで、いま一つ信憑性に欠けるね。 ここは新聞発表を待って判断しようじゃないか」との発言です。

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やがて、朝日新聞には、「鉄を溶かす加熱炉で爆発事故」という記事が登場しました。

これは理解に苦しむ文章です。 加熱炉は鉄を溶かしません。 鉄を溶かすのは溶鉱炉(高炉)や電気炉です。 A社に高炉はありませんから、鉄を溶かすのは電気炉です。 爆発したのは果たして電気炉なのか加熱炉なのか・・・。

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実は電気炉なのか加熱炉なのかは重要な違いで、私達にとっては大問題です。インターネット情報では、爆発したのは加熱炉と思われましたが、大新聞の記事はそうではありません。我々は混乱しました。最終的に判明したのは、爆発したのは加熱炉だという事実です。 多くの人が信頼できる活字メディアとして評価している大新聞の情報が一番間違っていたのです。新聞記者が無知だったためです。

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森羅万象に通じた人など、新聞社にも大学にもいません。だから新聞記事も当てにならない訳です。 一方、インターネットには、多くの人がアクセスし、多くの人が書き込みます。誤った情報、無責任で出鱈目な情報も数多いのですが、その道の専門家が書き込む、深くて正しい情報もあります。多くの書き込みの中で、真実、或は信頼に足る情報を見つけ出すのは読者の眼力です。それができれば、インターネットは新聞以上に信頼に足る情報源になります。

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今、人々の情報選択能力は昔と比べて高くなっています。新聞の嘘を見抜き、インターネット上で、正しい情報を見出す能力は、年々高くなっています。その人達に従来型の新聞は不要です。 そしてあくまでインターネットで入手できる情報の一つとして、電子版の新聞が残る事になります。

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西和彦氏は、FAXが新聞少年を、朝の苛酷な仕事から解放すると言いました。その予言は完全に外れましたが、今、全く別の理由で新聞の宅配制度は廃れようとしています。 インターネットの普及はその理由の一つですが、もっと次元の高い理由、つまり読者の情報選択能力の向上によって新聞の宅配が終わろうとしています。

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では、外国はどうなのか?新聞や牛乳以外の宅配は、むしろこれから盛んになるのではないか?・・・というお噂は、稿を改めて申し上げます。


【 仮面舞踏会 】 [インターネット]

【 仮面舞踏会 】

このブログを書いていて、時々お叱りを受けることがあります。ある種のオピニオンというか主張を書く時、匿名で書くのは卑怯ではないか・・というご指摘です。「笑うオヒョウ」では、時に特定の個人を攻撃する事もありますが、その際も匿名で非難するのは不適切ではないか?と言われます。なるほど。

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確かにその通りです。私が誰かに非難されるとして、その相手が匿名だったら、不愉快なことです。 ハンドルネームを用いるブログ固有の問題かも知れません。匿名を使う場合は、他人を攻撃したり非難することは控えるべきかな・・とも思います。

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でも私のささやかなブログの場合、読者も限られており、1件あたりのアクセス件数は、100件程度です (たまに数千件に及ぶものもありますが)。何万人ものフォロアーを持つ有名なツィッターやフェースブックとは違います。 そして、その読者諸兄の半分以上は、多分、「笑うオヒョウ」が誰かを知っています。それに加えて、私は、何度か私の名前や顔写真をブログに公開しています。(お見せするのも恥ずかしい肥満体の男ですが)。

注意深くお読みになれば、この中年男はバレバレなのです。 つまり弊ブログについては、匿名性はとっくに失われているのです。(あまり弁解にはなりませんが)。

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そして私の拙文の中には、頻繁に楽屋落ちというか、仲間内の話題が登場します。そこで悩むのです。私をご存知の方には理解できる話でも、私をご存知でない方にはチンプンカンプンの話が登場します。それらの話題は、私をご存知ない方には失礼ではないか? という悩みです。

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ではプライベートな話題は避けるべきか・・・?となると、本来、ブログとは私小説または身辺雑記ですから、これも矛盾をきたすことになります。

そんなに問題が多いのなら、そしてオヒョウが誰なのかを、皆さん知っておられるのなら、ハンドルネームなど止めて実名で書いたらどうだ? とも考えます。なぜ、ブログではハンドルネームを使うのが当たり前なのか?

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日本では中世の文学作品には、作者不明のものが多くあります。また作者名が記されていても、偽名だったり、別人だったりします。「竹取物語」の著者は不明ですし、「平家物語」の作者も信濃前司行長とされていますが、実際は不明です。紀貫之の「土佐日記」は作者を女性と偽っています。この作者名を敢えて隠す発想はブログのハンドルネームの発想に似ています。

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日本だけではありません。 中国の「水滸伝」の作者は羅貫中なのか施耐庵なのか不明です。 英国ではシェークスピア偽者説があります。 シェークスピア自身は実存する人物ですが、あまり教育を受けておらず、とても高尚な文学作品を執筆できる人物ではなかったとのこと。 一部の研究者は、膨大なシェークスピアの戯曲を著したのはベーコンではないか?と考えています。

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これらの作品で、作者名が伏せられたのは、時の権力者に対して警戒したとか、奥ゆかしさ、或いは韜晦趣味による遠慮・・・ということもありましょうが、ある種の匿名性の面白さを考えてのことでしょう。

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近代の小説でも、自分自身を投影した主人公に一人称で語らせる作品で、名前を伏せる例があります。 作者名は明らかなのですが、仮託される主人公の名前が伏せられます。漱石は、「我輩は猫である」の中で、自分を珍野苦沙弥として登場させています。芥川龍之介は自分を「或る阿呆」としたり「侏儒」としたりしています。 いずれも仮面を付けた主人公です。

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作者(或いは主人公)が誰なのかバレバレなのに、敢えて他人の振りをして、作品を客観的に他人に語ったりする遊びを楽しんだのではないか? 聞く方も、相手が作者であることを知りながら、知らないそぶりで、応対する・・という遊びがあったのではないか? これは前近代の西欧で流行した「仮面舞踏会」の一種です。

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昔の小説も、現代のブログも、全て仮面舞踏会=マスカレードです。

仮面舞踏会では、人々がマスクをして集まり、表向きは、相手が誰なのか分からない状況で、ダンスをしたり、談笑したりする、一種の無礼講のパーティが開かれます。

しかし仮面は付けていても、相手が誰なのかはバレバレです。でも敢えて知らない人(stranger)として扱うのです。そのアナロジーとしてブログの世界を考えた場合、弊ブログに登場する方々もコメントを下さる方々もバレバレです。夏炉冬扇様、Yusai-zenji様、霍去病様、シカゴ様、誰が誰かは皆分かるのですが、そこは知らない素振りです。

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顔に付けるマスク(マスカレード)は、あくまで仮面であり、お面ではありません。和辻哲郎が「面とペルソナ」で解説したお面またはペルソナは、自分を他の人格に切り替える為の記号です。 一方、仮面=マスカレードは、人格を消す・・・つまり「顔無し」にするものです。 アニメ「千と千尋」に登場する「顔無し」は仮面の下に化け物がいました。

仮面舞踏会の顔無しは、仮面の下に、人格がありますが、仮面の上は知らない人というお約束です。

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19世紀頃に西欧で流行った仮面舞踏会は、近年は流行りません。なぜかは分かりませんが、その趣向を面白がる人は今も多いはずです。 今インターネット上で流行るブログには、仮面舞踏会(マスカレード)と共通する面白さと楽しみが多分にあります。 それがツィッターやフェースブックと少し違うところです。

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いっそ、ブログの匿名性を強調する形で、「笑うオヒョウ」の名前を変更しましょうか?

例えば「仮面の告白」とか・・。

でもそうすれば、読者諸兄から「お前が三島由紀夫の真似をするなど、ずうずうしいにも程がある」というお叱りのコメントが殺到するでしょうね。いろいろなハンドルネームの方から。


【 只ほど高いものはない 】 [インターネット]

【 只ほど高いものはない 】

携帯電話用ゲームの供給大手のDeNAが公正取引委員会の立ち入り調査を受けました。名目は、取引先のゲーム開発者やゲームメーカーに対して同業他社への供給をしないよう圧力をかけた疑いですが、誰もそれだけが理由とは考えていません。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101225-00000535-san-soci

TVのスポットコマーシャルで「無料です」と紹介しているゲームを提供するサービスが、実は無料とはほど遠い物で、ゲームにはまった子供が高額の請求書を送りつけられて親が驚くという事態が発生し、社会問題化しているのです。 これはゲーム提供各社とも同様ですが、この業界は極端な寡占であり、モバゲーやグリーなど、TVコマーシャルで見かける数社だけです。 逆にそれだけに競争も熾烈なようですが、儲かるビジネスである事は間違いないようです。

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この事態を公正取引委員会が放置するとはいかなることか?と思っていたら、やがてTVCMでは、「無料です」というアナウンスと同時に、ごく一瞬だけ小さな文字で、「一部有料なコンテンツがあります」と表示される様になりました。なんだか、余計に詐欺みたいです。しばらくすると、その有料を示す文字は少し大きくなりました。 公正取引委員会に睨まれた業界は、今度は「無料です」というアナウンスを消すそうです。

なるほど怪しげな業界です。

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実は、無料と思わせて有料の部分に誘導し、あとで高額の請求書を送るというのは、以前からインターネットの業界にはよくある手口で、特に閲覧する側にいくばくかのやましさがあるアダルトサイトなどで見かける手口だ(そうです)。

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DeNAの女性社長は、マッキンゼーで大前研一氏の薫陶を受け、更に米国のビジネススクールで学位を取った才女で、最初に起業したネット通販の会社では鳴かず飛ばずでしたが、新しいビジネスモデルとして始めた携帯電話向けのゲーム提供で大成功した・・とマスコミは喧伝しますが、何のことはない、古典的なペテン師だったのです。

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しかし、マスコミは彼女を賛美するばかりで、このスキャンダルを報じません。 でも考えてみればそのはずです。携帯電話ゲーム各社は膨大な量のスポットCMTVに流しており、TV局にとっては大変なお得意様なのです。

悪口を言うはずがありません。

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報道ステーションで古舘がウィキリークスとその創始者のジュリアンアサンジのビジネスを紹介する際「彼等は何の権力にもおもねっていません。それに比べて我々は何をしていたんだ。という思いを禁じえません」などと偽善の極みのセリフを語りました。 そして、その直後にグリーのCMが入り、次にトヨタのCMが入りました。それを見て、オヒョウは報道ステーションでは決して携帯電話ゲームの怪しげなビジネスを追究する事はないだろうと確信しました。

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ついでに言えば、トヨタ車のクレーム・リコール問題が発生した時もマスコミは一様にトヨタに対して好意的でした。米国トヨタがクレームを隠そうとした事には触れず、多くの事故は運転者のアクセルとブレーキの踏み間違いだったとの説を強調し、さらには日本対アメリカの経済摩擦の問題に、論点をすり替えていきました。

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その少し前に経団連の会長(当時)の奥田碩が「マスコミが批判するならCMスポンサーを降りるぞ」と恫喝した事も影響しているかも知れません。

CMの量が、トヨタより遥かに少ない三菱自動車のクレーム隠しの時は極悪非道の会社として非難したマスコミは、トヨタに対しては好意的でした。

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古館がどのように格好をつけようと、地上波の民放は視聴者からはお金を取らず、彼のギャラも制作費も全てスポンサーが賄っています。その環境下で彼が求める正義の報道とは一体何でしょうか?

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私は無料で得られる情報には自ずと限界と問題があると思います。だから入手する時は、その限界と問題を意識した上で、上手に利用すればいいのだと思います。

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携帯電話ゲームが登場する前からインターネットの世界やパソコンの世界には、無料のサービスが溢れていました。

高価なアプリケーションソフトを買わなくても、気の利いたフリーウェアを利用すれば、事足りる場合が多くあります。

Officeだって、その気になれば無料のソフトがありますし、日本語変換ソフト(FEP)も無料のものがあります。 サンマイクロシステムズはJAVAを無料で公開していますし(その結果か経営不振でORACLEに吸収されましたが、トホホ)、ウィルス対策のワクチンソフトも無料、高額な有限要素法解析プログラムもCalculixなら無料です。 音声認識エンジンJuliusも無料です。・・・でもなぜ無料なのか?

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無料ソフト、つまりフリーウェアがお金を取らないのには複数の理由があります。

1. まだ完成前のβ版であり、支障が生じた時に責任が取れないから。

同時に、ユーザーの評価を無料で受け取り、製品化の参考にしたいから。

2. リーダーやビューアーなどの閲覧ソフトを無料で配り、Acrobat WriterやPowerPointという作成ソフトの方を高額で売りたいから。

3. ブラウザの様に、利用者が増える事で他の収入が期待できるから。

4.  非営利目的の研究などで製作したため、販売するとややこしくなるから。また実際に使うには、相当のカスタマイズが必要でユーザーフレンドリーではないため、有料にできないから。

5. 無料バージョンは、一部の機能を割愛しており、やがてユーザーが有料版を購入するようにしむけるため。

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ですから、無料ソフトを使用する場合は、なぜ無料なのかを疑って、納得してから使うべきであるとオヒョウは考えます。

以前、オヒョウが中国にいた頃、通信費の節約の為に無料電話Skypeの使用を提案した事があります。 しかし、本社のシステム担当の部長は、頑迷な人でした。

「そもそも無料で電話サービスが成立するはずがない。何か罠があるに違いない・・」と奇妙な事を言います。 オヒョウがSkypeが通話料無料でも成立するビジネスモデルである事を説明しても、哀しいかな理解できないようです。                 「俺の友人でNTTにいた男が、Skypeなんて怪しげなサービスは止めておけと言った。オヒョウ君の言う事よりも信用できる・・」なんて無茶な事を言って反対します。

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「無料電話サービスなのだから、NTTにとっては脅威な訳で、彼等は悪口言うに決まっているではないですか。そんな事も分からないのですか?」とオヒョウも喧嘩腰になってしまいました。

今、競争の激しい携帯電話業界では、不倶戴天の敵であったSkypeを取り込むことで通話無料化を実現した電話会社が現れました。K部長が聞いたら目をシロクロさせるかも知れません。

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それはともかく、インターネットの無料サービスやパソコンのフリーウェアは普通、大々的な宣伝をしません。薄利多売だったり非営利だったりするので、CM費用は捻出できませんし、CMの必要もないからです。

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それなのに、(無料と称する)携帯電話ゲームのCMはうるさいくらい、多く流れます。

「これは相当胡散臭いという事ではないか?」とまともな人なら思います。

それに紹介するゲームが奇妙です。 魚釣りやクロスワードパスルなら普通ですが、なかには、憧れのキャバクラ嬢になって、ナンバーワンになるのを競う・・なんていう下品なゲームがあります。

ご存じない方に言えば、キャバクラ嬢とは、キャバレー・クラブに勤務する水商売の女性の事で、ゲームでは高価なコスチュームや濃いお化粧をして、お客を何人獲得し、幾ら稼ぐかを競うのです。

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職業に貴賎はないし、水商売もかなり認知されてきたこの頃ですが、キャバクラ嬢という職業が憧れ・・というのは理解できません。そもそもこの言葉自体が下品です。

しかも、それを詐欺まがいの方法で売るというのですから、このビジネスモデルはある意味で反社会的です。

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パソコンのフリーウェアの世界は、長年にわたって善意の開発者によって築かれてきました。金儲けとは違う価値観に基づき、多くのパソコンユーザーが楽になるようにと提供されてきたソフトウェアの宝庫です。

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それなのに、その対極にある金儲けの為のビジネスが「無料」を騙り、法外な利益を上げているとしたら、糾弾すべきでしょう。                           しかし民放の報道にそれを期待する事はできません。 なぜなら所詮無料の地上波TVだからです。








【 旧来メディアの夜郎自大 】 [インターネット]

【 旧来メディアの夜郎自大 】

尖閣の漁船衝突事件あるいは、ビデオ流出事件に対する、新聞各紙のコメントの歯切れが悪いようです。ある程度読者に迎合しなければ、部数は伸びませんし、一方で中国様のご機嫌を損ねる事はご法度だし・・、どうしてもどっちつかずの表現になります。

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その中で朝日新聞は、思い切った署名論説を発表しました。それも写真付きです。 5人の人に意見を述べさせています。

http://webronza.asahi.com/politics/2010111000003.html

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まず一人目、高成田享は以下の様に語ります。

ビデオ流出は、知る権利とは無関係なただの愉快犯的な犯行であり、その不真面目さの故に厳罰に処するべきだ。 もし、本当に人々に真実を伝えたいなら、既存の権威あるメディア(朝日新聞のこと?)に持ち込むはずであり、そうせず無責任なインターネットに流したのは、深く考えない愉快犯的犯行であった証拠。

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二番目の中国人 肖宇生は、中国人の目には、巡視船の方が漁船にあてさせたと見えると語っています。 そもそも船の大きさや性能が全く違う漁船が自分から巡視船に当てるなど常識的に考えられないとしています。

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3人目の藤原秀人は、尖閣は中国にとって「核心的利益」なのだからビデオを流しても、中国の態度が変わるはずがない。だからビデオ流出は無意味であり、怪しからん犯罪 と語ります。

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4人目の桜田淳は、対中国の過大な配慮は、日本の危険なナショナリズムに火を点けるのでよくない。その延長線上として、同様に日本人のナショナリズムを刺激するので、ビデオ公開もいけない犯罪であると語ります。

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5人目の谷田邦一は、日中もし戦えばという空想物語を語り、全く意味不明です。

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結局、ビデオ流出をよくやったという、国民の大半の声は無視され、ビデオ流出は怪しからんという、仙谷に阿るような意見ばかりです。

肖某は、中国人の立場を明確にしている分、ある意味正直ですが、他の4人もどこの国の人の言葉なのか全く不明な言い方です。まるで中国人のようです。従って、中国を非難する意見は皆無で、心配なのは日本側の危険なナショナリズムの台頭という具合です。

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オヒョウの目にはナショナリズムが沸騰しているのは、どうみても中国側なのですが、いつの間にか日本側の問題にすり替えられています。

奇々怪々ですが、こんな新聞を読めば「健全な国民はビデオ流出の犯人の処罰を望んでいるはず・・」などというトンチンカンな官房長官の発言も出ようというものです。

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それにしても、高成田享とは・・・なんと愚かな男でしょうか。

「誠意ある行動であるなら、既存のマスコミに情報をタレ込むはずだ・・」とはまさに新聞記者が、驕りがネクタイをした存在である事を示す意見です。

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いったいどこに信頼するにたるマスコミがあるというのか?

サンゴ事件や、教科書事件で捏造報道をばら撒き、常に偏った立場で報道する朝日新聞を信頼せよというのか?

朝日新聞の記事をそのまま受け取れば、林彪はまだ生きています。

ポル・ポトは大虐殺せず、優しいアジアの社会主義国を建設しています。

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新潟県の海岸で発生した北朝鮮による拉致事件では、早くから朝日新聞に情報が持ち込まれたのに、同社は「北朝鮮がそんな事をする訳がない」と金正日が認めるまで、拉致を否定し続けました。

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多分、冗談でしょうが、ある人が福知山線脱線事故に関する情報を朝日新聞に持ち込んだら、「我社は宝塚線の脱線事故については関知しているが、福知山線脱線事故など知らぬ」といって突っ返されたとの事。

そんな新聞社に映像を持ち込んだらどう料理されるか分かったものではありません。

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あるいはビデオ画像だから・・ということで、TV局のTBSに持ち込めと言うのでしょうか? あのオウム真理教に取材映像を見せて、坂本弁護士一家殺害の原因を作り、あまつさえ、そのこと隠し続けて、多くのテロ事件を招いたあのTBSに?

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現在の日本では、真実を報道するにはインターネットを用いるのが一番です。情報提供者は真実を加工される事を嫌います。ちょうど漁師が最高の魚を釣り上げた時、煮魚や焼き魚ではなく、生の刺身で食べて欲しいと思うように。

つまり、ありのままで編集されない映像を視聴者に提供し、判断は視聴者に委ねる・・という形が理想です。

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Sengoku38はどのような形で情報を流すか悩んだに違いありません。その結果、オヒョウの考えと似たような理由でYou Tubeを選んだのでしょう。

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米国では、インターネットと旧来のマスメディアの争いは終結しています。従来の新聞やTVは、敗北を認め、しかしインターネットを内側に取り込む形で、新たなメタモルフォスを進めています。

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インターネットを信用できない無責任な情報の集まりとし、人々を扇動する右翼に利用される危険な存在として非難するだけの日本のマスコミは己を知るべきです。

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やがて、Sengoku38You Tubeにリークした動機や考え方がマスコミに発表され報道されるでしょう。 その時、朝日新聞は捏造情報として、Sengoku38は愉快犯として深い思慮なしにリークしたと報道するかも知れません。実際、高成田の後輩のいる新聞社なら、その可能性はあるとオヒョウは思います。




【 電脳世界の谷間 】 [インターネット]

【 電脳世界の谷間 】 

先日、勤務先の同僚からある事を頼まれました。その人は高周波焼き入れを担当する人ですが、

「 オヒョウさん、何か高温の鉄(鋼)に水をかけて冷やす技術について、全体をまとめた、教科書的な本はないでしょうかね? 」

 彼には、とりあえず、日本機械学会が出した『伝熱工学資料』と日本鉄鋼協会が出した『鋼材の冷却』という書籍を手渡し、「水冷却について、根本から知りたいのなら甲藤好郎先生の『伝熱概論』がいいよ」と薦めました。

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オヒョウがあの本を見たのは30年近く前ですから・・・、今は多分絶版でしょうが、古本ならあるかも知れません。早速インターネットで調べてみれば、 やっぱり絶版でしたが、古本を探すと、甲藤好郎著 「伝熱工学」養賢堂 5000円とあります。ああ、よかった・・と思う反面、 あれっと思う事に気付きました。

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理工系の学生は、勉強する過程でバイブルともいうべき教科書にであう事があります。 解析学を学ぶ学生でしたら 高木貞治の『解析概論』、そして熱伝達や鋼材の冷却という分野を研究する人でしたら、甲藤好郎の『伝熱概論』という具合で、なぜか『・・・概論』が多いのです。かくいうオヒョウにもささやかなバイブルというべき教科書があり、それはもうボロボロになっています。初学者向けの本であり、ちょっと恥ずかしいので、ここでは触れませんが。

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畑違いの門外漢のオヒョウが製鋼技術室に配属になり、熱い鋼の固まりに水をかける仕事を始めたとき、上司から紹介された本が、この甲藤先生の本です。 思わず「こ・・こうふじせんせい?」と発音して、「オヒョウ君、君は甲藤(カットウ)先生も知らないのかい?」と言われたものです。東大名誉教授の甲藤先生は 「水掛け論」の世界の大御所でした。

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しかし、ネットで検索すると、甲藤好郎先生があまりヒットしないのです。わずかに『伝熱概論』という著作に関連した記事と、追悼のブログがヒットするだけです。 これはどういうことだ?

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過去に多大な業績を上げ、有名でもある研究者が、インターネットの検索エンジンでひっかからない・・という事が時々あります。インターネットでの露出度や、検索エンジンでのヒット数と、研究者の業績は必ずしも比例しないのですが、特定の人の業績や論文だけがポロッと欠落していると、検索エンジンの信用にかかわります。それはなぜか?

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一つの鍵は、その研究者や学者の没年です。 インターネットが普及する直前、またはその黎明期に、世を去った人達の業績はサーバーに収録されないままになっているかも知れません。

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オヒョウの恩師も本格的なインターネット時代の到来の前に世を去られました。 研究室はなくなり、オヒョウの書いた卒論も修論もインターネット上で紹介される事はありません(まあ、その方が恥じを書かなくて済みますが・・・)。 学会発表についてもインターネット時代の前の分は、ネットで検索しても発見できません。逆にインターネット普及後に作成したものは、つまらない特許でも、全て閲覧できます。

大きな学会・組織の場合、順番に、インターネット以前の頃の発表も遡って収録しているようで、次第に過去分も検索できるようになりつつあります。 また大学の研究室が残っていれば、過去の論文も収録される様で、オヒョウの兄の大昔の卒論なども確認できます。

しかし、全ての発表案件が過去に遡って収録される訳ではなさそうです。

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最近の20年間の間に長足の進歩を遂げた技術を3つ挙げろと言われたら、オヒョウは筆頭にWEB上の検索エンジンを挙げます。この技術の進歩には目を見張るものがあります。

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昔、学校にいた頃、オヒョウは図書館で文献カードを見て必要な論文を探す事に、多大の時間を費やしました。そして時間をかけて取り寄せた論文が、実は自分の研究に無関係の内容だった・・・という事はよくありました。

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会社に入ると、文献検索システムJICSTが図書室と結ばれており、オンラインで検索できます。 それとは別に、ロッキード社が提供する検索システムDIALOGがあり、文献検索は、非常に高速になりました。でも高価でしたし、本文の取り寄せには、それなりに時間がかかりました。

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それがインターネット時代になると、オンラインで本文まで閲覧できます。しかもヒット率(希望した情報だけを抽出する率)も年々向上しています。初期のGOPHERMOSAIC Netscape Navigator )に比べると、yahoogoogleは格段の進歩です。

文献検索や一般情報検索だけではありません。 

特許検索システムも格段に進歩しています。オヒョウが、特許班の仕事を見始めた時、特許検索は紙の情報でやりとりしていました。特許公報も紙でした。 やがて、定期的に発行されるCD-ROMを使って、最新情報を検索するようになり、これは便利だと思ったのですが、わずかその1年後には、オンラインシステムでの検索になりました。

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将来、人々が検索し入手する情報の大半は、インターネットからになるでしょう。 初対面の人がどういう人物か、予めネットで検索して、過去の著作や専門分野、過去の実績を調べ上げる事は容易です。アニメの「攻殻機動隊S.A.C.」の世界です。

因みに、オヒョウの家族・知人の名前をネットで検索すると、殆どの人が引っかかります。 しかし、その状況下で、ネットに自分の情報がなかったら、その人の存在は無視される事になります。 これは困ります。

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前述の通り、過去一流の研究者であった人でも、インターネット時代の到来の前に、現役を退けば、痕跡が残らないかも知れません。もっと前の人なら、探す人は、最初からネットでの検索は諦めて、紙の資料をあたるでしょう。 しかし、ちょうどネット時代直前の端境期の人々が、消えてしまうミッシングリンクの現象が起こってしまいます。これは大問題です。

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これを無くすためには、過去の文献・資料を遡ってこつこつとデジタル化を進め、ネットにアップする活動を行う必要があります。これは後ろ向きの仕事であり、あまり人はやりたがらないでしょう。

でも、時間が経っても色褪せない普遍性のある研究については、或いは時代が代わっても存在感を保つ研究者については、電子復刻をお願いしたいものです。 

具体的には甲藤先生の研究成果・・などです。勿論、オヒョウの卒業研究などは、埋もれたままで結構ですから。


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