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【 インターネット情報をどう扱うか その1 】 [インターネット]

【 インターネット情報をどう扱うか その1 】

 

先日、ある病院で私はMRIの検査をしてもらうことになりました。担当の医師からは「造影剤を注入しますが、その了解をお願いします」とのコメントです。MRIの造影剤? とっさに理解できなかった私は「それはどういうものですか?」と尋ねました。

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ご承知の通り、MRI(核磁気共鳴)とは、回転磁場をかけて、原子核の磁気双極子モーメントと共鳴させ、磁場を消した後の緩和時間の差から、主に水素原子の濃度分布を調べて、画像として取り出すものです。水素原子の濃度差を画像化するので、骨などでない柔らかい組織の検査に向いています。 

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XCTなら、バリウムなどの放射線を遮る物質、或いは自身が放射線を出すラジオアイソトープなどが造影剤になりますが、MRIの場合に造影剤などあるのだろうか? 

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私が尋ねると若い医師は「ああ、造影剤ですか?ガドリニウムですよ。ラジオアイソトープではありませんし、短時間で体外に排泄されることが確認されています。ご心配なら、ネットで確かめてください」と言って、パソコンの画面を私に向けて、自身でガドリニウムを検索して、説明するサイトを見せてくれました。

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「まあ、本当はインターネット情報がどこまで信用できるか・・という問題はありますが、この記事についてはまず大丈夫でしょう」。先生は自分が説明するより、患者が文字を追う方が早いということを認識しています。

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私は造影剤の性質と体への影響について確認した後、二三、先生に質問してから造影剤使用に同意し書類に署名しました。しかし、医師が漏らした、「ンターネット情報がどこまで信用できるか・・」という点は、心にひっかかりました。

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インターネットは素晴らしい情報検索手段です。特に自分の専門外のことを浅く広く調べるには適しています。百科事典として考えると実に便利で安価です。

しかし、その情報は玉石混交です。昔の出版社の紙の百科事典は、高価でしたが著者名が記載されており、内容は信用できました。逆に信用ある事典や辞書の著者に名前が登場するから・・という事で研究者が信用されたりもしました。

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一方、インターネットはそこが心配です。Wikipediaは多くの人の善意に基づいて編纂されていますが、著者は不明です。真偽は確かめようもなく、虚偽の記載であっても誰も責任を取りません。

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造影剤の説明をした若い医師は、「インターネット情報は手軽で便利だけれど、それを使いこなすには、真贋を見抜く力量というか専門知識が必要だ。ここは、医師である私が検索して責任を持って、ネット情報を提供しましょう」と言いたかったのでしょう。

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Wikipediaの記事に誤謬があっても、大きな問題ではありません。 専門家の中には自分の専門分野でWikipediaの記載内容の間違いを発見して喜ぶ人がいます。あまり上等な趣味ではありませんが、私も一つ発見したことがあります。

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しかし、医療関係の情報を伝達するキュレーションサイトの記載内容が杜撰なら、これは罪深いことです。なにせ人の命に関わることですから・・・。

そもそもキュレーションサイトなるもの、胡散臭さの塊です。キュレーションサイトとは方々のサイトにある情報をつまみ食いして編集者の個人的見解で要約したものですが、必ずしも専門家が要約するとは限りません。 作成者に大きな問題があります。

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実はある情報群が存在する場合、それを要約するのは非常に難しい仕事であり、全体を見渡す知識を持ち、総合判断できる専門家でなくてはできません。 それを素人が行う事自体危険です。

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利用する側にも問題ありです。 自分で調べて考えるのが億劫な人が、横着をするためのサイトがキュレーションサイトですが、そもそもそんな横着をする人は、情報の真贋を確かめる労力も惜しむでしょう。

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運営する側も胡散臭さの塊です。情報検索者が専門のサイトに直行したり、正統な論文にアクセスするのを妨害するかのように、キュレーションサイトに誘導することがあります。これは一種の詐欺に近い行為です。

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そして、それが医学・医療関係の情報であれば、情報を必要とする患者本人やその家族に間違った情報が伝わり、最悪の場合は命に関わります。

私は医学・医療関係のキュレーションサイトは、医師のみが作成・編集に当たるべきであり、著者と編集人・発行人の名前を記載すべきだと思います。

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そしてDeNAの杜撰なキュレーションサイトWELQが問題として指摘され、それらを閉鎖することになりました。南場会長というか前社長も記者会見に登場し、神妙かつ沈痛な表情です。 あれっ?これはどういうことだ?

http://www.sankeibiz.jp/business/news/161210/bsj1612101612001-n1.htm

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彼女はマッキンゼーでは大前研一の一番弟子で、自分の会社DeNAを成功させ、横浜ベイスターズのオーナーとしては、今年Aクラスいりを果たすなど、順風満帆・得意満面なはずです。それなのに憔悴しきった表情です。それは記者会見の2日前に、長くガンを患っていた夫を亡くしたからだ・・と、報道で知りました。彼女が憔悴していたのは、DeNAの不祥事ではなく、看病していた夫の死が原因だったのです。

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それなのに、会見に列席した気丈な彼女に残酷な質問が飛びます。

「ガン患者の家族として、キュレーションサイトWELQの情報を活用したか?」

彼女の答えは、「医学論文を読んだり、ガン患者やその家族のブログは読んだが、WELQは見なかった。後で内容を知り愕然とした」

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これは正直な回答であると同時に、彼女の聡明さを示すものです。彼女なら専門的な医学論文も読解できるでしょうし、現実に病と闘っている人のナマの情報の貴重さも分かるでしょう。正しく価値のある情報を知っているのです。一方で無責任で怪しげな情報を見抜き、それに近づかない・・・というのも、一つの知性です。

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彼女が理性的で合理的な情報収集をしている・・ということは分かりますが、自分の会社の商品とも言うべきWELQの情報に愕然とした・・という表現は、自分の会社を否定し引導を渡すことを意味します。 彼女は夫を失い、そしてわが子のようなDeNAの一部を葬ったのです。

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こと、医学については、インターネット情報の問題は大きい・・と私は思います。

そこでふと考えます。

「米国の事情はどうだろうか?」

IT関連の問題や動きは、日本より先に、米国で発生します。この種の問題は当然、既に米国で発生しているはずです。

 

次回は、それについて管見を述べたいと思います。

 


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