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【 さらば新聞少年 】 [インターネット]

【 さらば新聞少年 】

私と同世代で、かつてパソコン黎明期に活躍した人物に西和彦氏がいます。出版を初めとして、パソコンビジネスで強い影響力を持ったアスキーの創業者で、当時はソフトバンクの孫正義氏と並び称された人物です。

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その彼が1980年代に面白いことを言っています。ちょうど電話回線を利用したファクシミリ(FAX)が普及しだした頃で、彼は「すぐに一家に一台FAXが普及するであろう。そうすれば情報伝達のかなりの部分はFAXで賄われ、宅配の新聞もFAXで受信するようになり、新聞配達は要らなくなるであろう」と予言したのです。

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結果はどうであったか? 2016年の現時点でも紙の新聞は配達され、新聞配達の仕事は無くなっていません。 新聞がFAXで宅配されることはなかったのです。しかし、インターネットや電子書籍が発達しだして、事情は徐徐に変わりつつあります。紙の新聞ではなく、インターネットで配信される新聞を読む人が増えだしたのです。例えば通勤電車の中を見てください。昔は、新聞を広げる人がたくさんいましたが、今はほとんどいません。その代わりに、皆さん、それぞれに様々な液晶画面を眺めています。

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その中には、新聞の電子版も含まれます。つまり、新聞の宅配は次第になくなりつつあるのです。

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昭和の時代、毎朝、各家に配達されるものの代表は新聞と牛乳でした。利用者の家の玄関まで届けてくれるのですから、これは便利なサービスです。でも労働集約型で非効率なシステムでもあります。だからいずれ無くなるだろうと予想されました。

新聞配達と牛乳配達、どちらが先に姿を消すか? 鋭い人は予想を立てたはずです。

西和彦は新聞の宅配がなくなるだろうと予測したのですが、実際には逆で牛乳配達の方が先に姿を消しました。(まだ、一部の地域では牛乳配達も残っています)。

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なぜ、牛乳配達は姿を消したか? この理由は幾つかあります。

牛乳配達はガラス瓶のリユースを前提としていて、重たく嵩張る空き瓶を回収して再使用することになります。そのガラス瓶のハンドリングの煩わしさがネックでした。

一方、プラスチックの軽い容器や、紙パックに入っているヤクルトの方は宅配が続いています。

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やがて牛乳が紙パックになると、リユースは不要になり、回収しなくてもよくなります。(正確にはリサイクルの対象ではありますが・・・)。そうなると、人々は宅配に頼らず、スーパーなどの小売店で牛乳を買い求めます。今でもガラス瓶の牛乳が残っているのは、銭湯の脱衣場や学校給食など、特定の場所で飲まれ、瓶の回収が容易な場所が多いようです。

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一方、新聞は紙の宅配制度が残っています。 これはいろいろな理由がありますが、最大の理由は新聞社側の事情です。もし宅配制度がなくなれは、新聞の発行部数は激減するはずです。それを防ぐために、新聞社は石にかじりついても、宅配制度を守ろうとします。

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人間は横着な存在です。朝、新聞受けにあるいは玄関に新聞が届いていれば、それなりに読みますが、朝届いていなければ読まないでしょう。敢えて、コンビニエンスストアや駅の売店まで足を運んで読もうという人は少数派です。

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換言すれば、本当は不要な新聞を、家に届けてもらうというサービスのお蔭で、惰性で読んでいる・・という消極的な読者が多い訳です。本来、新聞の価値とは書かれている情報が全てです。しかし、実際には商品の価値とは無縁の、宅配制度が購読者を確保しているのです。新聞社はそのことに気づいていますが、敢えてそれを伏せて宅配制度の死守を訴えています。

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現代人は、新聞以外から多くの情報を得ます。新聞は速報性ではTVやラジオに負けます。相互アクセス性というか、インタラクティブ性ではインターネットに遥かに負けます。新聞の利点といえば、一つのニュースを深く掘り下げた活字の文章の説得力ですが、それがどうも怪しくなっています。

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新聞記者の不勉強があまりにひどいのと、特定の思想に基づいた“上から目線”の解説記事のうさん臭さが問題です。 例えば先日、こんなことがありました。

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先日、私の勤務先にとって重要な取引先である、某製鉄所で爆発事故がありました。

爆発事故発生の直後からインターネット上では、それに関する情報が溢れたのですが、会社からの正式発表があった訳ではありません。従来型のメディア(新聞やTV)にはその情報はなかなか流れません。

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その事故から1日半たった朝のミーティングで、私が上司に「例のA社の爆発事故の件ですが・・」と話しかけると、なんとその上司は爆発事故の事を知りませんでした。そして

「オヒョウ君の情報はインターネット情報ばかりで、いま一つ信憑性に欠けるね。 ここは新聞発表を待って判断しようじゃないか」との発言です。

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やがて、朝日新聞には、「鉄を溶かす加熱炉で爆発事故」という記事が登場しました。

これは理解に苦しむ文章です。 加熱炉は鉄を溶かしません。 鉄を溶かすのは溶鉱炉(高炉)や電気炉です。 A社に高炉はありませんから、鉄を溶かすのは電気炉です。 爆発したのは果たして電気炉なのか加熱炉なのか・・・。

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実は電気炉なのか加熱炉なのかは重要な違いで、私達にとっては大問題です。インターネット情報では、爆発したのは加熱炉と思われましたが、大新聞の記事はそうではありません。我々は混乱しました。最終的に判明したのは、爆発したのは加熱炉だという事実です。 多くの人が信頼できる活字メディアとして評価している大新聞の情報が一番間違っていたのです。新聞記者が無知だったためです。

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森羅万象に通じた人など、新聞社にも大学にもいません。だから新聞記事も当てにならない訳です。 一方、インターネットには、多くの人がアクセスし、多くの人が書き込みます。誤った情報、無責任で出鱈目な情報も数多いのですが、その道の専門家が書き込む、深くて正しい情報もあります。多くの書き込みの中で、真実、或は信頼に足る情報を見つけ出すのは読者の眼力です。それができれば、インターネットは新聞以上に信頼に足る情報源になります。

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今、人々の情報選択能力は昔と比べて高くなっています。新聞の嘘を見抜き、インターネット上で、正しい情報を見出す能力は、年々高くなっています。その人達に従来型の新聞は不要です。 そしてあくまでインターネットで入手できる情報の一つとして、電子版の新聞が残る事になります。

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西和彦氏は、FAXが新聞少年を、朝の苛酷な仕事から解放すると言いました。その予言は完全に外れましたが、今、全く別の理由で新聞の宅配制度は廃れようとしています。 インターネットの普及はその理由の一つですが、もっと次元の高い理由、つまり読者の情報選択能力の向上によって新聞の宅配が終わろうとしています。

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では、外国はどうなのか?新聞や牛乳以外の宅配は、むしろこれから盛んになるのではないか?・・・というお噂は、稿を改めて申し上げます。


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