【 インターネット情報をどう扱うか その2 】 [インターネット]
【 インターネット情報をどう扱うか その2 】
米国では医師や医学研究者により、インターネット情報を検証したり、それを鵜呑みにすることの危険性を訴えるキャンペーンが進んでいるそうです。
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きっかけはAIDSの潜伏期間についてのインターネット情報が不正確で、それを鵜呑みにして、AIDSに感染したのにしていないと錯覚するおそれがあることを、ある医師が指摘したことです。
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米国では、依然AIDSの問題は深刻です。いや、逆説で考えると、深刻に考えていない日本の方が実態は深刻かも知れません。先進国でHIV陽性の人が増加傾向にあるのは日本だけだそうです。一方で検査を受ける人の数は少ないままで、把握されていない感染者はさらに多そうです。
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しかし、一方で、増加しつつあるのはAIDSだけでなく、梅毒などの他の性感染症も増加傾向にある・・という指摘もあります。 他の性感染症も増えているのだから、AIDSの増加だけを特別に扱うのはおかしい・・という奇妙な意見もあります。 でもやっぱりAIDSは大きな、そして不気味な問題です。
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話を元に戻します。
アメリカで問題となったAIDSの潜伏期間の情報は、現在、医療関係のインターネットの主要サイトでどのように説明されているか?と思い、調べてみたら、以下の状況です。(私も暇ですね・・)。
wiseGEEK 1月~6ヶ月
WebMD 2週間~6ヶ月
eHow ~10年
Arkansas Department of Health 6週間~6ヶ月
PubMed 40日~60日
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これではあまりにバラつきが多すぎて、どの情報を信用すればいいのか困ります。
しかし、よく見ると、Arkansas のように、ある説明は、HIV検査が陽性になるまでの期間を示しており、ある説明はAIDSの症状が発症するまでの期間を示しているなど、潜伏期間(the incubation period)の定義もまちまちです。
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どうやらどの説明もそれなりに根拠があって正しいようですが、私のような素人が見ると混乱してしまいます。 切実な事情があってAIDSの潜伏期間を知りたい人(つまり思い当ることがある人)が、インターネットでそれを調べた際に、誤解してしまう可能性は確かにあります。 これらは質の悪い情報と言うべきでしょう。
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では、AIDSの潜伏期間を誤解し、感染しているのに感染していないと錯覚し、その為に治療開始が遅れたり、あるいは他の人に感染させてしまった場合、誰が責任を取るのでしょうか? 考えてみると、著者が特定されず、料金も徴収しないインターネット情報に責任を求める訳にはいきません。
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アメリカはご承知の通り、訴訟社会で何事についても責任追及の厳しい社会です。しかし相手が特定されなければ、訴えることもできませんし、弁護士も動きません。
一方、責任を伴う、署名された情報については、いつ訴えられるか分かりません。だから情報は厳密・正確になりますが、同時に有料になり、煩わしく高価なものとなります。
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しばしば「日本人は、安全と水を無料だと考えている」と揶揄されますが、考えてみると「人々は情報を無料だと考えている」と言うこともできそうです。これは日本人に限らず、目に見えないものにお金を払いたがらない多くの人に言えますが・・・。 「本来情報とは高価なもので、知的財産権も蔑ろにしてはいけないのだ」と権利意識に敏感なアメリカ人は言うかも知れません。
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しかし、それではあまりに窮屈だということで、無料のWikipediaが、有料情報のアンチテーゼとして登場したのだと思います。 でも責任を伴わない情報供給には、やはり限界があります。Wikipediaにも問題がありますが、医学情報をまとめたキュレーションサイトにはさらに問題があります。今回のWELQの閉鎖は多くの意味で象徴的です。
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第二次大戦後、一貫して日本の産業は工業製品や農産物、サービスの質の向上に取り組んできました。 経済発展と工業製品の質の向上は、車の両輪のように回っていました。 しかしその間、情報の質はあまり上がっていません。平気で嘘を垂れ流すマスコミ、誇張し偏った情報で世論誘導を図るマスコミ、専門知識を持たない人が、著作権を無視して不正確な医学情報を流すインターネット・・・・は、まだ存在します。
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かつて工業製品の品質向上活動が成功したように、何時か無料情報の品質も向上しようという社会運動が始まれば、質の悪い情報は淘汰され、世の中には信頼できる情報だけが溢れるでしょう。それは、正しい情報を求める多くのガン患者とその家族には歓迎されるでしょう。 その時、南場智子氏の慚愧の涙は報われるのかも知れません。
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その頃、いい加減な記事を書き飛ばしている「笑うオヒョウ」はとっくに淘汰されているでしょうが・・。
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