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【 重ねて思う、世襲・門閥主義の弊害 その2 】 [政治]

【 重ねて思う、世襲・門閥主義の弊害 その2 】

 

残念ながら、現代の日本社会は、世襲と門閥のオンパレードです。近年、人手不足で売り手市場だから目立ちませんが、一度就職難の時期を迎えれば、コネの有り無しが大きく影響します。社会をリードする地位を争うとなると、もっとひどい状況です。

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嘘だと思うなら、今の政治家を見てください。2世、3世ばかりです。安倍晋三は、岸信介の孫、あるいは安倍晋太郎の息子でなければ、首相はおろか政治家にすらなれなかったはずです。石破茂も2世の政治家、麻生副総理は吉田茂の孫、鳩山由紀夫にいたっては4代目の政治家です。世襲政治を批判した菅直人はこっそり息子の源太郎を政治家にしようとして、失敗しました。

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芸能人も2世、3世ばかりです。明らかに親と比べて見劣りする芸能人が、脚光を浴びるのを見ると、視聴者のTV離れが進むのも道理です。

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病院経営者はどうでしょうか? 医者の世界は最も世襲制のひどい世界です。開業医の子息のために私立医大を設立し、不公平な入学試験をしてでも、開業医の息子を医師にするシステムが出来上がっています。昭和の時代、医師会会長の武見太郎に阿諛追従する医事評論家だった水野肇は「医師の子供が医師になるのは自然であり、医師以外の家庭の子が医師になるよりずっといい」と公言していました。

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大学教授や学校教員・・という学問の世界も、やはり親のコネや学閥で、採用が決まります。そもそも研究テーマが異なる研究者の実績や能力を、客観的に評価し優劣をつけることなど至難です。だから、誰を選ぶかとなると学閥やコネがものを言います。

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そのうち、過度な競争を厭い、「子供は親の職業を継ぐのが、一番平和で無難だ・・・」という奇妙な考えが世の中にはびこります。恵まれた人達は、ひたすら既得権の維持を考え、恵まれなかった人達は、「カエルの子はカエルさ」と言って、一つの諦念の中で納得しようとします。それはそれで平和ですが、社会の活力は失われます。それに憤る人もでます。

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憤るのは、有能でありながら機会を得られなかった人、そして親のコネと金で医者になった藪医者に診療される気の毒な患者たちです。

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だから、人々は門閥や世襲と無関係な完全実力主義の世界に一つのカタルシスを感じます。基本的に、個人の能力が全てである、スポーツの世界や、頭脳競技の世界がそれですが、角界については、奇妙な門閥制度があることを前回、ご報告しました。

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しかし、面白いことに、頭脳競技の世界にも門閥制度があるのです。

将棋のプロ棋士になるには、奨励会に入る際、必ず誰かの弟子になる必要があります。お師匠さんを戴くという点では、古典芸能や落語、お茶、お花の世界と似ています。

今をときめく藤井七段の師匠は、「鷺宮定跡」の使い手の杉本七段で、その師匠は早世した板谷進八段、その師匠は父親の板谷四郎九段で、東海地方の名門板谷道場の門下生となります。

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囲碁でも同じように、師匠と弟子の関係があります。昭和の時代、木谷道場の門下生達が圧倒的に強く、日本棋院を席巻したのを記憶される方も多いはずです。

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しかし、昔は重要だった師匠と弟子の関係ですが、若手が技術を磨くという点では、あまり意味が無いようです。 最近はだいぶ様子が変わってきました。

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将棋では、同門だろうが、違う師匠の門下生だろうが関係なく、研究会を開き、そこで腕を上げます。 違う一門だから研究仲間に入れないということはなく、実力があれば歓迎、実力が無ければお呼びでない・・という、ある意味、別の厳しさがあります。囲碁では孤高の天才棋士、藤沢秀行が秀行塾を開き、集まった院生達を分け隔てなく指導しました。同じ師匠を戴く門下生同士でなければ修行できない時代ではありません。

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そして重要なのはインターネットとコンピューターの活用です。インターネット対局を活用すれば、遠隔地にいても、他の道場にいても対局し研究できます。また人間同士で対局しなくても、コンピューターを相手に研究すれば、そちらの方が、効率的に棋力が上がるという意見もあります。

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もはや、師匠と弟子の関係は実力を上げるためのものではなく、悩める天才青年達の人生の指南役として師匠が機能する時代なのです。そんな存在なら、門閥は要らないのではないか?と私は思います。

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前述した内容の繰り返しになりますが、人々は、しがらみがなく実力だけで勝敗が決まるスポーツや頭脳競技に憧れ、応援します(それだけではありませんが)。それなら、門閥システムは止めた方が良いのではないでしょうか?

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話は換わりますが・・・、NHKの大河ドラマには2つの時代しか登場しません。幕末から明治維新にかけての時代か、戦国時代から安土桃山時代の2つです。以前は源平の戦いや忠臣蔵の時代なども登場しましたが、やはり無難なのは、戦国時代と明治維新のようです。

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なぜ、この時代が視聴者に好まれるか?といえば、抽象的な表現ですが、時代に躍動感があり、無名の人が活躍した時代だからです。庶民が活躍し、英雄が登場し、既存の権威を破壊し、新しい世界を築けた時代だからです。

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前回、書きましたが、日本経済が発展したのも、明治維新後と第二次大戦後の復興から高度成長期です。では外国はどうか?と考えると、大体似ています。

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韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる高度成長の後、今、景気の曲がり角を迎えています。いろいろな理由があるでしょうが、朝鮮戦争後に一代で財閥を築いた名経営者が引退し、子供の代になって、成長力が衰えた・・・のが理由です。儒教文化で家を大事にする韓国では、公共の存在であるべき企業も、家族のものであり、個人商店の延長です。当然、経営者も世襲です。

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その結果、サムスンなどの大財閥ですら、創業者の子息が後を継いで経営者となるのが当たり前です。しかし、その子供達に経営者としての資質がないために、いろいろな問題がでて、スキャンダルが発生しています。

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サムスンの息子は、大統領に巨額の賄賂を贈り、ロッテグループは兄弟で骨肉の争いを演じ、大韓航空のお姫様は、袋入りのナッツに激怒して飛行機を戻します。

大財閥だけでなく、中小企業も、経営者は子供達に後を継がせます。その結果、韓国経済の成長が遅くなり、競争と活気がない社会になります。

一方で、継ぐべき会社もない、一般の人達は、大変な就職難に見舞われます。

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中国もほぼ似ていますが、少し違います。

中国が改革・解放政策により、高度成長が始まり、今も大発展しているのは、ご承知の通りですが、これは文化大革命の混乱と破壊の後、門閥に頼らない逸材が活躍できたからです。しかし、一代で企業を興し、財産を築いた人達ですが、そろそろ引退し後継者にバトンタッチする時期です。そこで誰が後を襲うかが、重要です。

優秀な人は個人商店の使用人になるのを潔しとせず、かといって中国国内にチャンスが無いと知れば、外国に脱出するでしょう。人口は多いけれど、経済発展に尽くす人は意外に少ない・・ことになります。日本にある意味で似ています。

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私が今、注目しているのは引退を表明した中国一の成金で、アリババの創業者であるジャック・マー氏の後継者です。 若くして実業界を去り、福祉と慈善事業に力を入れるという生き方は、ビル・ゲイツに似て、実に恰好いいのですが、もし後継者に自分の子息や親戚をあてるのなら、あまり尊敬できません。そして中国の実業界も所詮、世襲さ・・となると、皆が元気をなくし、中国の経済成長はやがて息切れします。

もし、赤の他人に経営を委ねるのなら、これは大人物です。中国の経済成長も続くかも知れません。

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日本では戦後の高度成長期に発展した会社で、無能な息子(某家具屋の場合は娘)を後継者にした例がいくつもあります。 (実名を挙げると、差し障りがあるので言いませんが)。 あるいは、歴史のある会社で、いまだに学閥に拘っている会社が多くあります。それらの一種の公私混同を経営者が行うことで、どれだけ経済の活力が削がれ、多くの有意の人材がやる気を失い、そしていかに多くの富が失われたかを考えるべきです。

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160年前に福沢諭吉先生が「門閥主義は親の仇で御座る」と言われた言葉は今も通用するのです。


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【 重ねて思う、世襲・門閥主義の弊害 その1 】 [政治]

【 重ねて思う、世襲・門閥主義の弊害 その1 】

 

一時代を画した昭和の大横綱だった貴乃花親方が相撲協会と対立し、引退(辞職?)しました。もともと奇矯な行動が多かった人物ですが、かつての大横綱がこんな形で角界を去るのは残念なことです。

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しかし、その理由を聞いて改めて思うことがあります。貴乃花曰く、「弟子への暴行事件の訴えを取り下げなければ、現在6つある「一門」に身を置くことは許されない と圧力を受けた。どこかの「一門」に籍を置かなければ、相撲部屋を持つことはできないが、自分の筋を曲げることはできないので、やむなく自分は引退し部屋を解散することとした」とのことです。

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相撲協会側は、「貴乃花に退職を迫ったことはない」と否定しますが、「一門」にいられなくなる・・というのは退職の強要と同じことです。狡猾なやり方だな・・と思います。それにしても、角界の一大勢力だった「二所ノ関一門」の中心にいて、時間が経てば理事長職も見えていた貴乃花です。伯父さんは理事長も務めた初代若乃花、実父は初代貴乃花という名門中の名門に生まれ、角界のサラブレッドだった貴乃花が、門閥主義に苦言を呈して、角界を去るというのは、実に皮肉です。

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門閥主義を蛇蝎のごとく嫌ったのは福沢諭吉先生です。お坊ちゃん学校のように言われる慶應義塾ですが、その創始者である福沢諭吉先生は、「福翁自伝」の中で、「門閥制度は親の仇で御座る」と言っています。

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豊前の中津藩の下級武士であった福沢諭吉の父親は、大阪の蔵屋敷に勤務しており、福沢先生も大阪で生まれています。その後、父親の死によって中津に行き、そこで少年時代を過ごすのですが、下級武士の子供として一種の閉塞感の中で育ちます。そこで彼は、全く凡庸もしくは無能な上級武士の子弟が、高位顕官に就くばかばかしさを嫌というほど見ています。だから「門閥制度は親の仇」です。

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身分の差、階級の差を克服するには、学問を修めるしかない・・という発想で、彼は大阪の適塾で蘭学を学びます。それ以降の福沢先生については、いろいろ書くべきことがあるのですが・・・、それは別稿に譲ります。

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評論家の山本七平だったかが「福沢諭吉ほど、有名なのに読まれない思想家はいない」と語っていますが、まさにその通りでしょう。

福沢先生の著作で最も有名な「学問ノススメ」の冒頭には、あの人口に膾炙した「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らずといへり」の一文がありますが、それを多くの人は曲解します。その部分のみを取り上げて、福沢諭吉は絶対的な平等主義者だと、早合点する訳ですが、実は全く逆で、彼は人というより人格の上下の差を認めています。

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彼が言わんとするのは「もともと生まれた時には、人間に上下の差は無いはずなのに、大人になると上下の差が存在する。それはなぜなのだろうか? それはひとえに学問のありなしにかかっており、それで身分差が生じるのだ。だから、諸君、学問に励みたまえ」というのが「学問ノススメ」なのです。「その学問・知識だって、仕事のために必要とされる知識は尊敬に値しない。人格を評価するに値するのは、教養(Liberal arts)である」と彼の説明は続くのですが、そこはさておき、身分の上下を認める福沢先生に対し、絶対平等主義者は反発するでしょう。

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それでも福沢諭吉にしてみれば、生まれた時の境遇、親の地位で身分の上下が固定される門閥制度よりは、自分の努力が反映される学問・教養で身分が決まる時代の方がよっぽどいいではないか?」となります。今風の表現で言えば、結果平等ではなく機会平等です。

「門閥制度は親の仇」と「天は人の上に人を作らず・・・・」は同じことを言っています。

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福沢先生のこの思想は、明治時代の四民平等と庶民に教育の機会が与えられた事への賛歌と言えますが、門閥制度を無くし、全ての人にイコールチャンスが与えられる時代は、経済面でも、刺激になります。

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日本の経済が特に発展したのは、明治維新後の文明開化の時期と、第二次大戦後の高度成長期の時期です。いずれも、それまでのエスタブリッシュメントが崩壊し、全ての人々にチャンスが与えられた時代です。そのタイミングに事業を興し、経済人として成功した人もたくさんいます。つまり、財閥の初代の人たちです。生まれた時の境遇からは考えられなかった地位や役職に就き、富を得、世界を動かした人もいます。

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しかし、その後時間が経ち、安定の時代に入ると、世襲、門閥のシステムができあがります。

経営者も2代目、3代目となると、先代の事業を引き継ぐだけで、創業者の心意気はありません。既得権者はギルド化し、後発の参入者を排除します。お金持ちや権力者の2代目、3代目に生まれなかった人は、激動の時代の人達よりはるかに高い壁を越えなければなりません。

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自由主義を信奉し、法律で人々の平等をうたう日本ですが、平成も終わりの現代、社会は世襲化と門閥主義の跋扈が、かなり深刻な状況です。裸一貫、実力だけで地位が手に入るはずの角界でさえ、門閥が意味を持つとするなら、それ以外の社会では窒息してしまうではないか?と思います。

 

では実際のところどうなのか?それについては次号で。


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【 日章旗 江華島事件 軍艦旗 その2 】 [政治]

【 日章旗 江華島事件 軍艦旗 その2 】

 

他の戦争と比較し、あまり語られない江華島事件ですが、多くの注目すべき点があります。まず、背景に李氏朝鮮の非常識な外交姿勢があります。日本の明治新政府は、政府が成立した後、挨拶の意味で李氏朝鮮に何度も国書を送っていますが、全て朝鮮は受け取りを拒絶しています。国書や親書の拒絶というのは、戦争中の相手国でもほとんどなく、私は他に聞いたことがありません。そういえば李明博大統領は安倍首相からの親書の受け取りを拒否していますが、それぐらいです。

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しかも、拒絶の理由というのが不可解です。華夷秩序(中国を最上位に置いて、周辺諸国が順番に並ぶという東洋の文明序列)に於いて、劣位に位置する日本が、他の東洋諸国より先に西洋かぶれするとは何事か!という「上から目線」のもので、使者が洋服を着ていたとか、蒸気船に乗ってきたから西洋かぶれで怪しからん・・というバカげた理由です。また清国の属国根性が抜けず、清国の皇帝だけが使う「皇」の字を日本が使うのが怪しからんとも言っています。

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その結果、日本政府の中に、「朝鮮は無礼で生意気だ。朝鮮討つべし」という声が澎湃として起こったのも、ある意味理解できます。一方で失業した士族を救済するための方策が必要でした。士族を開拓農民にすることを考えた大久保利通に対し、西郷隆盛は韓国征伐の兵力として士族を活用しようと考えた訳です。

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世のリベラル派の人達は、嫌韓論やヘイトスピーチが最近登場したかのように語りますが、なんのことはない、150年前から嫌韓論は存在し、一方で朝鮮半島には反日思想が存在したのです。

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そんな中、雲揚号は平和的に朝鮮半島沿岸を訪れていました。江華島への接近も真水の供給のためです。実は江華島は江華島事件の前にも米国の艦船にも砲撃を加え、逆に攻撃されて砲台を占拠されています。だから接近する外国の軍艦に神経質になっていたという説がありますが、事件後の事情聴取での朝鮮側の証言はデタラメで、その説も信用できるものではありません。それにしても懲りない砲台です。

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ところで脱線しますが・・、19世紀の時代、陸上砲台と水上艦との交戦は、どちらが有利か・・・、よく分かりません。下関戦争では陸上砲台の方がコテンパンにやられました。薩英戦争では55分かなぁ? 動き回れる分だけ軍艦側が有利ですが、大砲の命中精度は揺れない陸上の方が高いとも言えます。しかし、当時の性能の劣る陸上のカノン砲では、アームストロング速射砲などの高性能の艦砲に負けた可能性があります。だから、陸上砲台の方が全体としては不利です。

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パリには、下関戦争の戦利品として連合国の艦隊が持ち帰った長州藩の青銅製の大砲が展示してあります。基督像ならともかく、兵器・武器に青銅とは・・と、驚くばかりですが、金属に詳しい友人は、「近代製鉄法以前(韮山の反射炉以前)、日本には高品質な鋳鋼を製造する技術はなく、脆くて弱い鋳鉄を使うくらいなら、青銅の方がましだったかも」。

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19世紀の時代、良質な金属材料が得られない国は必ず戦争に負けたのです。江華島の砲台の大砲が何でできていたのかは寡聞にして知りませんが、雲揚号の前には非力な存在でした。武力衝突の後、日本側は、「雲揚号は国際法に則って、国旗を(それも3枚も)掲揚していたのに、攻撃してきた」と主張しており、国際的に認められました。

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それに対し朝鮮側は「旗は確認できなかった」と証言したり、あるいは「米艦だと思った」「日章旗ではなく黄色い旗だった」と証言したり、説明はバラバラで支離滅裂だったそうです。そして「もしちゃんと国旗を掲揚してくれたら攻撃しなかったのに・・・」と非が日本側にあるごとく語っています。

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繰り返しになりますが、江華島を訪問した雲揚号は決して砲艦外交をした訳ではありません。19世紀、大型の軍艦を派遣して威圧する砲艦外交が流行りましたが、日本には大型軍艦もなければ、外洋を遠くまで派遣する実力もありませんでした。雲揚号はあくまで平和的に訪問したのです。

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江華島事件は悪いことばかりではありません。 武力衝突で彼我の力の差を目の当たりにして、ようやく李氏朝鮮は重い腰を上げ、攘夷主義を止めて、日本との外交関係樹立に向けて動き出しました。華夷秩序で格下の日本などと対等の外交関係が結べるか・・と言っていた訳ですが、現実路線に転換せざるを得なかったのです。

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外交関係樹立に動き出したことにより、日本の征韓論者も根拠を失い、西郷隆盛は下野しました。征韓論が下火になることで、明治政府は予算を文明開化のインフラ整備に充てることができ、北海道の開拓事業も進みました。西南戦争は不幸な事態でしたが・・・。

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私は、江華島事件の際、日本が3本も掲げたという国旗が日の丸だったのか、軍艦旗(旭日旗)だったのかが気になります。

当時の絵は複数残っていますが、それには、「日の丸」と「軍艦旗」の両方があります。

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画家が江華島の現場に居合わせた訳ではなく、想像なので、真実は分かりません。

もし軍艦旗の方だったのなら、韓国人の軍艦旗アレルギーは、150年前の江華島事件の遺恨なのかも知れません。 もっとも、前述の通り、朝鮮側は日本の国旗は見ていない・・とも証言しているのですが・・・。

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うーむ、江華島事件のトラウマとして韓国人が旭日旗を嫌うのなら、これは仕方ありません。さてどうしたものか・・と考えていたら、内閣改造で小野寺防衛大臣は交代し、岩屋防衛大臣になりました。さて、岩屋氏は韓国からのこの難癖にどう対応すべきか?

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私は、岩屋防衛大臣にこう提案したい。

ここは韓国の顔を立てて、軍艦旗(旭日旗)をいったん降ろしましょう。そして軍艦ではない商船のルールに則り、艦尾に日の丸の国旗を掲げ、中央のマストに訪問先である韓国の国旗(太極旗)を掲げ、敬意を表しましょう。

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しかし、日の丸と太極旗は似ており、遠目には区別がつきません。日本の船だか韓国の船だか分からなくなるのは困ります。 ここは太極旗を元のデザインに戻して、強調・差別化するのが適当です。すなわち、大清国属国高麗国旗の文字を書いて、昔の太極旗にするのです。

 

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それを見て、韓国の人がどう思うかは分かりませんが、若い人は漢字が読めないから意味も分からず、単純に喜ぶかも知れませんね。


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【 日章旗 江華島事件 軍艦旗 その1 】 [政治]

【 日章旗 江華島事件 軍艦旗 その1 】

 

佳境を迎えたNHKの大河ドラマ「西郷どん」ですが、気になることが一つあります。

明治維新後、西郷隆盛は征韓論を唱えて政府内で対立すると、下野して鹿児島に帰り、西南戦争を始めたことは、ご承知の通りです。韓国・朝鮮とデリケートな関係にある日本は、主人公の国民的ヒーローに征韓論を唱えさせていいのか? と外野席のオヒョウは考えます。視聴者や外国政府以前に、在日の人が多い放送業界や芸能界で、征韓論を持ちだすのはかなり冒険です。 ひょっとして、ドラマでは明治維新後の西郷隆盛には触れないつもりなのか?でもそれでは描かれる西郷隆盛は偽物となります。

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今の日本で、征韓論について語ることは一種のタブーのようですが、一度考えてみる必要があると思います。

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そうこうするうちに、済州島を訪問する海上自衛隊の護衛艦に対し、「旭日旗を掲げるな」という無茶な要求が韓国から出されました。

https://www.asahi.com/articles/ASL9W5284L9WUHBI02V.html?iref=pc_extlink

小野寺防衛大臣(当時)が拒否すると、今度は韓国で旭日旗を禁止する法律を検討し始めました。

https://www.asahi.com/articles/ASLB24SRCLB2UHBI017.html

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自衛隊の艦船が、艦首に日章旗を、艦尾に軍艦旗(旭日旗)を掲げるのは、国際法上、認められた行為であり、かつ慣習として実績のある行為です。逆に、旗を掲げずに入港すれば、海賊とみなされて攻撃されても文句が言えませんし、軍艦が国旗や国旗に準じる旗を敢えて降ろすのは、降伏の意味を持ちます。いくらなんでも自衛隊の護衛艦にそんな非常識なことはさせられません。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%B9%E9%A6%96%E6%97%97

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韓国が国内法で旭日旗を禁止したとして、国際法(もしくは国際慣習)と韓国の国内法のどちらが優先されるのか、私には分かりません。それにしても、自衛隊ができてから60年以上経過し、韓国と国交が正常化してからも50年以上が経ちます。昔は、海上自衛隊の艦船が韓国の港に入る時、軍艦旗(旭日旗)に対して、何も言わなかったのに、何で最近言い出したのでしょうか?

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海上自衛隊の幹部だったNさんに尋ねると、確かに昔は韓国の人は旭日旗を何とも思っていなかったそうです。しかしここ数年は、拒否反応を示すようになったとのこと。今になって、日本軍国主義の象徴だとか、戦犯旗だとか言い出したのはなぜか?例によって朝日新聞が焚き付けたのかな?でも朝日新聞の社旗こそが軍艦旗だし・・・。

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今から10年以上前、中国では、戦前戦中に日本や日本人から受けた理不尽な行為や悪徳行為を探し集めて発表せよ・・・という通達が出ました。とにかく日本を非難し、優位に立って文句が言える材料を探していたのです。 同時期、韓国でも反日のネタを探していました。日韓の国交正常化以降、韓国は、教科書問題、慰安婦問題、徴用工問題・・と、日本に言いがかりをつける材料を定期的に探しています。しばしば日本のマスコミもそれに加担してデッチアゲを行う訳ですが、その一環として旭日旗に言いがかりを付ける方針を決めたのでしょうか?

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しかし理解できません。豊臣秀吉の朝鮮出兵以降、日本が朝鮮に対して面と向かって戦争をしたことはありません。むしろ、第二次大戦では朝鮮半島出身の将兵が旭日旗のもとに日本軍人として参戦していたのです。韓国がどうして被害者側になるのかな? と考え、一つだけ思い当たりました。

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それは明治8年の江華島事件です。ご承知の方も多いでしょうが、これは明治以降、日本海軍が最初に外国と交戦した事件です。 完全に国際法に則り、平和裏に漢江の入り江に接近した日本海軍の雲揚号に対して、突如、江華島の砲台から発砲し、正当防衛の形で雲揚号が反撃し、江華島の砲台を破壊して沈黙させ、さらに島に上陸して砲台を占拠した事件です。

 

ではこの事件がなぜ、征韓論や軍艦旗(旭日旗)を連想させるのか・・については次号で申し上げます。


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【 北海道のブラックアウト その3 】 [雑学]

【 北海道のブラックアウト その3 】

 

北海道の地震でもうひとつ問題だったのは、通信手段が麻痺して、その復旧が遅れたことです。携帯電話の中継設備の電源が失われたこともありますが、急増した通信需要に設備容量が追い付かなかったことも原因です。

なぜそうなったか?と言えば、人々の通信がインタラクティブになったからです。カタカナ英語は苦手なので、日本語に言い換えれば、人々が使う情報伝達手段が双方向になったから ということです。

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かつて、一般の人は受け身の立場にあり、情報とは放送や新聞によってもたらされるものでした。皆が同じ情報を同時に受けとりますが、逆に自らが発信することはありません。つまり一方通行の情報です。 通信手段としては、最小限度のAMラジオとアナログの固定電話があれば十分でした。例え停電しても、乾電池で動くトランジスタラジオは、停電時も使えました。

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乾電池がなくても、鉱石ラジオやゲルマニウムラジオを使えば電源なしで聞こえます。

台風接近も、ラジオで知ります。天気概況の「御前崎 西の風 風力3・・・」といったアナウンサーの声で、自分で天気図を書いたりしました。

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今はそうではありません。圧倒的な情報量が押し寄せます。スマホの画面を押せば、気象衛星の雲の画像や、気圧、降水量、気温のパターンが現れます。通信量は膨大です。

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それだけではありません。人々は情報の発信者になりつつあります。 地震や台風の現場の状況は、普通の人々がスマホで撮影してインターネットにアップします。以前は、インターネット情報を無責任で質の悪い情報だとして嫌っていたマスコミも、視聴者が撮影した携帯やスマホの映像をそのまま使います。

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それに加えて、地震や台風の災害が発生すれば、人々は家族・友人・知人の安否を確認するために、電話します。あるいはLINEで通信します。通信の主役は双方向の通信になります。全員が情報の発信者になれば、飛躍的に通信量は増え、回線はパンクします。今、インターネットの回線の性能を言う時、必ず上りと下りの通信速度が表示されますが、昔の電話回線には上りも下りも無かったのです。時代はインタラクティブです。

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かつて固定電話しか無かった頃、回線がパンクして電話がかからなくなっても、人々は辛抱しました。 今、携帯電話が通じなければ、その不便さは堪えられるものではありません。 我々が我儘で贅沢になったのか、それともそれが当たり前なのか?

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では、どうすればいいのか?

災害発生時などの緊急事態に、通信量が増えてしまうのは、ある意味仕方ないことです。皆さん、家族や知人の消息を知りたい訳ですから。 しかしその場合でも、通信量を節約することは可能です。

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長い文章は不要です。長い会話も不要です。動画もいらないでしょう。ただ生きているということを示すために、笑顔の自撮り画像を一枚送信すれば、全てを物語ります。実際には家が壊れたり、怪我をして泣きたい気持ちであっても、にっこり笑って自分の顔を送りましょう。それだけで、心配してくれている人達は安堵します。

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通信は、長時間かけて送信しても冗長になるだけで本当の意味での情報量が増えない場合があります。むしろ短時間に送る限られた情報が、とりわけ笑顔の顔写真が、全てを物語る場合もあるのです。

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20世紀の後半、パロアルト研究所の所長だったネグロポンテ博士は、「やがて有線の通信手段は無線になり、無線の通信手段は有線になる」というネグロポンテスイッチを予言しました。21世紀の初め、実際にそうなりましたが、2010年代はさらに変化しています。 高速インターネットは既に、幹線部分は光ファイバーになり、抹消部分はWiFiBluetoothの無線を用いる複合型になっています。通信もハイブリッドの時代です。無線は5Gの時代になりつつありますが、光ファイバーの性能もさらに向上するでしょうから、ハイブリッド型通信はこれからも続くでしょう。

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そこで、地震や台風、洪水や停電に強い通信システムは?と訊かれても、門外漢の私には分かりません。 でもとにかく回線の数を増やし、冗長性を持たせる事が重要だと思います。 それも、単に変調方式を工夫して、1本のケーブルの中の回線数を増やすのではなく、物理的にケーブル(ファイバー)の本数を増やすことが重要です。

また長時間の停電時に中継地点の機能を失わないために、長時間の放電に耐えるマグネシウム電池など、多様な非常電源装置を持つことも重要です。

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通信量の急増に対してパンクしないシステム、停電や災害に対して強いシステム、停電し、電話が通じない静寂の中で、そんな事を考えるのもいいかも知れません。


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【 密かに語る沖縄独立論 その4 】 [政治]

【 密かに語る沖縄独立論 その4 】

 

別の民族だから、別の国家であるべき・・という独立論者の論理は詭弁です。日本をはじめ、多くの国家は多民族国家です。 むしろ単一民族で構成される国家の方が少数派であり、国境を隔てる理由は肌の色より思想信条や宗教の方が多いと言えます。

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マスコミは、これまで政治家が日本を単一民族国家と言おうものなら、すぐに揚げ足を取り、噛みついてきました。「虐げられたアイヌを忘れるな」、「沖縄の人々を忘れるな・・」という訳です。 その影響を受けた鳩山元首相などは、「日本は日本人(日本国籍を有する人々)だけのものではない」という、理解に苦しむ発言をしています。

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それが最近は風向きが変わってきました。これまで挙げてきたように、中国は「沖縄は日本のヤマト民族とは異なる民族であり、だから琉球は日本から独立した国家だ」 と主張しています。 これは50以上の民族を束ねていることを誇る中国の主張とは思えないのですが、日本の中に、その主張に賛同する人が多くいます。

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北方領土を返したくないロシアは、「南クリル諸島(北方四島)に、もともと暮らしていたのは日本人ではなくアイヌ人であり、これらの土地は日本に帰属しない」と主張しています。そして日本の親ロシア勢力、および左派系の言論人は、それを受けて北方領土は日本のものではない・・と言いだしています。

http://userweb.alles.or.jp/tariq/pirika/gogo-nothandominon2002.html

ロシアは従来 「それまで誰が住んでいたかではない。血を流した戦争の結果が、国境線だ」と言っていましたが、アイヌの人々の主張を聞いて、主張を180度変えたようです。全く要らぬ知恵を付けたものです。

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沖縄独立論者、北方領土返還反対論者が拠り所とする、「ひとつの民族は自分の国家を持つべきだ・・」という主張は、大きな矛盾を含むと同時に、混乱の要因となります。それらの人々が強いシンパシーを感じている中国もロシアも代表的な多民族国家ですが、それについては言及しません。

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少数民族つまりマイノリティは、しばしば迫害され、不利益を被る・・というのは事実です。だから中国、米国など各国は少数民族を優遇したり慰撫したり、なんとか公平の実現を図りますが、あまり成功していません。でもそれだけ苦労しても、国家の分裂を避けるべきだ・・というのが、一般的な国家の理念です。

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北方領土は日本に返還すべきではなく、ロシアに帰属させるかあるいはアイヌ共和国として独立させ、沖縄は琉球国家として独立させるべきだ・・というのは、一種のアナーキズムに近い訳ですが、本当は沖縄独立ではなく、中国の属国を目指すとなるとこれは別の問題です。

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マスコミは、玉城デニー氏が何時首相や官房長官と面会するかに注目していますが、私は玉城デニー氏が何時中国を(密かに)訪問するかに注目しています。


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【 密かに語る沖縄独立論 その3 】 [政治]

【 密かに語る沖縄独立論 その3 】

 

自然現象を観察していると、小さな存在が大きな存在に呑み込まれる現象によく出くわします。その方が、エントロピーが大きくなるので自然だとも言えます。

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例えば、高温の溶融金属の冷却過程がそうで、生成した微細結晶(エンブリオ)はやがて大型化していきますが、その過程で周囲の小さな結晶を取り込んでいきます。オストワルド成長と呼ばれる現象ですが、別に金属結晶でなくても一般的に観察できます。例えばビールの表面に浮かぶ泡は時間の経過とともに、微細な泡が合体して大きな泡になっていきます。小さな泡が呑み込まれる瞬間に「長いものには巻かれろ」とつぶやくのが聞こえますが、もちろん気のせいです。

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中国のように、大陸にあって、数千年の歴史を持ち、国境とはその都度移動するものだと考える国は、国家もオストワルド成長して当然だと考えています。つまり中国の周辺に存在する小国は、中国に呑み込まれて当然だと考えています。かつてのソ連もそうでした。

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その中国の目の前に独立国家琉球国が登場すれば、瞬時に呑み込まれます。現時点で沖縄の人は中国語を話しませんから、属国あるいは自治領として扱います。そして中国語教育を徹底したあとは、中国の一部として取り込むのです。しかし、琉球の民は本当の中国国民にはなれず二級市民として扱われます。

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別の国ですが、プエルトリコは何時までたっても、米国の自治領で、州に昇格できません。プエルトリカンは二級市民で差別の対象です。州になれない理由のひとつは、公用語がスペイン語で、英語ではないから・・ということです。

中国は、チベットでの北京語教育に全力を挙げ、チベット語の抹殺におおわらわです。ほどなく、チベット語は地上から姿を消すでしょう。そしてチベット族は差別されます。玉城デニーが目指す沖縄の将来も中国との同一化だとすれば、愚かなことです。

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すると、必ず反論がでてきます。「大国の隣に小国があるのはアジアだけではない。欧州の例はどうなのだ?」と言われます。確かに、欧州にも小国は存在します。サンマリノ、アンドラ、リヒテンシュタイン、モナコ、バチカン、ルクセンブルク・・・。

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金属の結晶も、結晶粒界に窒化アルミのように硬い金属間化合物が析出したりしますが、それと似て、欧州の大国の周辺に小国が存在します。しかし、優雅に見えるそれらの小国では独立を維持するために、必死の努力をしています。

隣の大国からの有形・無形の圧力に堪えながら、自己のアイデンティティというか、独立を維持しています。多くの場合、国家元首と言うか、国の象徴となる家系(モナーク)を有し、それを維持することが鍵になっています。

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ずいぶん昔の話ですが、フランスは、豊かで風光明媚な地中海沿いの小国であるモナコ公国を自国に取り込みたくて仕方ありませんでした。様々な圧力をかけ、もしモナコのレーニエ大公と妃のグレースケリーの間にお世継ぎの王子が生まれなければ、モナコ公国はおとり潰しで、フランスに併合するという厳しい条件が付きつけられました。

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モナコ国民は、第一子の誕生を、固唾を飲んで見守り、王子が生まれたと聞いて、大喜びし、そして安堵したとのことです。一見ほほえましいエピソードですが、そんな江戸時代の幕藩体制みたいな前時代的なことが20世紀の先進国でもあったのです。

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沖縄が独立しても、その独立を維持するのは、日本からの独立よりも難しいでしょう。国家と国民の象徴として、旧琉球王朝を担ぎ出す方法もあるかも知れませんが、それは止めた方がよいでしょう。象徴となる王の政治利用は、日本でもタブーです。琉球王朝の先祖は、タマウドゥン(玉陵)の中に静かに眠らせておくべきでしょう。

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実際のところ、現代の中国が昔の琉球王朝に敬意を払い、併合をためらうとはとても思えませんから・・・。

 

以下 次号


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【 密かに語る沖縄独立論 その2 】 [政治]

【 密かに語る沖縄独立論 その2 】

 

大国から小国が分離独立することは稀にありますが、アジアの場合、その理由には2種類あります。第一には、国内での地域差別、いじめが酷く、それから逃れるために独立する場合。第二には、背後に大国が存在してその思惑で分離する場合です。

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第一の例として、私の記憶に残るのは、東パキスタンが西パキスタンと分かれてバングラディッシュになった例があります。その前、西パキスタンは東パキスタンをほとんど植民地化して、搾取していました。それに反発したアワミ連盟が、東パキスタンを独立させてバングラディッシュにしたのですが・・・相変わらず最貧国のままです。

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マレーシアから分離独立したシンガポールも、リー・クアン・ユー氏の「私の履歴書」によれば、マレーシアから冷たく放り出される形で独立した・・とのことですが、経済的繁栄はシンガポールの方が先に享受しています。

インドネシアから東チモールが分離独立した際も、インドネシアからの迫害を逃れて独立・・と日本のマスコミが紹介しましたが、実態はかなり違うようです。東チモールについて書くと長くなるし、本題から外れるので書きませんが、日本のマスコミの説明はだいぶ実態からずれています。

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日本の左派系のマスコミは、中国やロシアに都合のいい独立運動なら、迫害を逃れるための正義の独立としますが、中国やロシアにとって都合の悪い独立運動ならこれを反乱として扱います。例えば、チェチェンがロシアから独立しようとした時、日本のマスコミは極めて冷淡でした。ウィグルやチベットでの独立運動は、無視するか過激派の暴力行為とされます。

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民主化の女神であるアウンサンスーチー氏が率いるミャンマーがロヒンギャ族を虐待しても、彼らに同情して独立運動につなげる発想はありません。一方イラク政府やトルコ政府と対立するクルド人は正義の人達で、パレスチナ独立政府を守るパレスチナ人も正義の人達です。分かりやすいと言えば、分かりやすいのですが、左派系のマスコミの白黒の付け方は単純でかつ愚かです。

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では沖縄の場合はどうか? 玉城デニー氏や翁長氏が考える沖縄独立論は、第一のケース、つまり一方的に虐げられる立場からの脱出です。しかし、それは妥当なのか?沖縄は第二次大戦で筆舌に尽くしがたい困難を経験した悲劇の島であることは事実です。また多くの米軍基地を引き受けているのも事実です。しかし、それをあまりに強調し、日本本土から虐げられている被害者という立場から議論するのはナンセンスです。

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特ア三カ国がそうであるように、過去に被害者であったことや、現在被害者であることを、あまりに強調し、同情をひこうとしたり、物理的な利益を得ようとするのは下品です。私はそれを「当たり屋のふるまい」と呼びます。私の母は「傷痍軍人のふるまい」と呼んでいました。

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沖縄を語るストーリーでは、ヤマトンチュウ(本土の日本人)は、加害者で無責任な悪者であり、アメリカ人は極悪人の犯罪者、ウチナンチュウ(沖縄人)は善良で気の毒な被害者という構図が一般的です。あまりにステロタイプですが・・。

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話を単純化したいマスコミは、日本の米軍基地の7割が小さな沖縄に集中していると言います。しかし、それは本当か?

7割という説明の横に小さな字で、「米軍だけが使用する基地では」とあります。

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先日、私は横須賀の軍港に行きました。この軍港は太平洋沿岸では米国のサンディエゴと並ぶ大規模なもので、もちろん沖縄にはそれに匹敵する軍港はありません。その大半を米軍が使用しますが、自衛隊も一部使用しているので、7割の計算の分母には含まれません。

佐世保の海軍基地も同様です。

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厚木には東洋最大で、米国のミラマーと並ぶ海軍航空隊の基地がありますが、これも計算に入りません。自衛隊が少しだけ使っているからです。岩国にある海兵隊の航空基地も同様です。同じ米国の海兵隊でも、普天間飛行場は計算に入り、岩国基地は除外されるように巧妙に工夫されているのです。三沢の空軍基地も同様です。嘉手納や横田(これは本土)の空軍基地は計算に入れるのに、三沢は入れないのです。

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もし自衛隊や民間航空も共用する基地も計算に入れれば、沖縄に集中する米軍基地は、50%以下になります(面積ベースで)。(それでもかなりの集中度ですが)。しかも沖縄の米軍占有地には広大なヤンバルの演習地が含まれ、これを米軍基地とみなすべきか・・やや疑問です。つまり、7割が沖縄に集中すると声高に語る人達は、沖縄が被害者で米軍と日本政府が加害者であるという構図を強調したいがために、不自然な数字を用いているのです。

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これはつまり、トランプが語るところのフェイクニュースです。沖縄の本当の未来は、過大な被害者意識から脱却するところから始まります。せっかく知事に就任する玉木デニー氏にはそれを期待したいのですが・・・

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では、小国の独立は現実的なのか? それについては次号で考察します。


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【 密かに語る沖縄独立論 その1 】 [政治]

【 密かに語る沖縄独立論 その1 】

 

私は、選挙が終わるまでは、候補者や政治思想についてブログで語るのを慎んでおります。今回の沖縄県知事選挙についても開票が終わるまでは、このブログをアップできませんでした。今、選挙結果が確定し、玉城デニー氏が当選した訳で、それにケチをつけるのは気が進みませんが、私がぼんやりと感じている問題点を下記します。

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世のマスコミは選挙の争点は、辺野古沖への普天間飛行場移転の是非だったと言います。それに賛成か否かで候補者の意見は分かれ、沖縄県民の意思も分かれます。

言うまでもなく、辺野古移設推進派は佐喜真氏で、移設反対派の代表は玉城デニー氏です。

それは確かにそうなのですが、移設反対派については、その根底には別の考えがあります。本当の問題は単に辺野古沖への基地移転問題ではないのです。

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当然ながら、辺野古移転反対派も普天間飛行場の現状がそのままでいいとは思っていない訳で、日本政府がもくろむ、辺野古への移設による基地の近代化と固定化を阻止した後は、普天間飛行場の廃止と跡地の日本への返還を考えている筈です。しかし、それにとどまらず、やがては沖縄からの米軍の全面的な撤退までを視野に入れているのでしょう。

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自国内に外国の軍事基地があるなど、どう考えても不自然で不愉快な事ですから、その気持ちは素朴なものとして理解できます。しかし、その先には、別の思いが透けて見えます。

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以前のフェイクニュースに関する弊ブログで、故翁長沖縄県知事と中国の関係が不明だと語りました。彼が中国政府と何等かの連絡をしていたのは事実ですが、その内容は、彼が墓場まで持って行ってしまいました。でも推測する根拠はあります。

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翁長氏は中国を複数回訪問した後に、ニューヨークの国連総会で演説しています。その内容は、本来沖縄の民族と、日本本土(という言い方も変ですが)に暮らす民族は異なり、別の国であったのに、それが日本に征服され日本の一部に組み込まれている。・・という被害者意識に基づいた説明であり、沖縄独立論を匂わせるものでした。(日本国内では演説の内容はほとんど報道されませんでしたが・・・)。

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この主張は、本来沖縄(琉球)と日本は別の国家・民族であり、沖縄は独立すべきだ・・という中国の主張に沿ったものです。一方、日本政府の考えとは異なり、全く不愉快な演説だったに違いありません。

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本来、国連加盟国の一自治体の首長が、国連総会で演説することなどありえません。太平洋の島国の代表が、例えば、地球温暖化による国土の水没を訴えたり、核実験後の後遺症問題を訴えたりすることはありますが、それは国家の代表として発言するものです。一自治体である沖縄の県知事が、しかも政府の見解と異なる主張の演説をすることなどほとんどありえません。それができたのは、強力な後ろ盾、つまり安全保障理事会の常任理事国である中国が後押ししたからでしょう。

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翁長知事は、その事情を説明しないまま、この世を去りましたが、翁長氏の後継を自ら名乗り、「最低でも県外」と根拠なく提案した鳩山元首相に共鳴した玉城デニー氏ですから、沖縄独立論をこれから展開するでしょう。それは中国にとって極めて好都合なことであり、日本の左派系のマスコミもそれを歓迎するでしょう。

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選挙期間中にデニー氏は、「一国二制度」という」驚くべき制度に言及しています。すでに中国に使嗾されているということでしょうか?

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一国二制度を、実際に採用しているのは中国です。周辺の別の国家を吸収併合した時に激変緩和措置として、2つの政治制度を残す、あくまで便宜的で過渡的な措置です。香港、マカオ、台湾について適用しましたが、チベットやウィグルでは適用せず、中華人民共和国のルールを押し付けました。

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香港を返した英国や、香港市民は、一国二制度は恒久的なものだと信じたようですが、中国はどんどん香港の中国化を進め「あれは過渡的なものさ」と語ります。「だまされた」と気づいても、もう遅いのです。いくら傘をさしてデモしても、民主主義は弾圧され、人民解放軍は送り込まれ、書店の主人は拉致されて行方知れずになるのです。共産主義の中国では民主主義は唾棄すべき存在です。

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その様子を見ている台湾は「その手は桑名の焼き蛤だ」と考えていますが、中華民国政府の存続はだんだん難しくなっていきます。台湾危うし!

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話が脱線しましたが、一国二制度というのは、前述の通り、分離独立する際ではなく、吸収統合する場合の便宜的処置です。玉城デニー氏は、沖縄を独立させたいのでしょうが、その場合に二制度とは?理解に苦しみます。一体何をしたいのか

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天皇を象徴とする現行憲法を廃したいのか? 通貨を日本円でなく沖縄人民元にしたいのか?公用語を北京語にしたいのか?それともひょっとして自動車を右側通行に戻したいのか?

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確実に言えることは、幾つかあります。まず日本を離れたら、その瞬間に沖縄はド貧乏国になります。日本政府からの地方交付税がなくなる分を、新たに徴税することはできません。米軍基地の見返りとして政府から支給される予算もなくなります。米軍基地を追い出せば、米軍から落ちるお金も入りません。

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沖縄は日本への施政権返還以降、他の都道府県より多くの予算が注ぎ込まれましたが、しかし県民の生活はあまり豊かになりません。県民所得が一番少ないのは沖縄県、失業率が一番高いのは沖縄県、高校進学率、大学進学率が一番低いのも沖縄県、医学部が最後まで無かったのも沖縄県、人口当たりの医師数が一番少ないのは沖縄県・・・・。一体、多くの予算を貰いながら、これまで沖縄県の行政は何をしていたのか? 県知事は、米軍基地反対を叫ぶだけで、建設的な政治・行政を何もしてこなかったのか?観光以外にめぼしい産業が無いのはなぜか?

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おそらく、玉城デニー氏も米軍基地反対だけを叫び、他の事はしないでしょう。しかし、仮に、彼とその支持者が望む、一国二制度の仕組みの後、沖縄独立が実現したとしても、そのままでは済みません。軍事力と政治力の空白ができたら、その瞬間に入ってくる国があります。それは中国です。これは単に中国が周辺の国を取り込む膨張主義だからではありません。宮古島の海峡は、中国海軍が太平洋に進出するために通らざるを得ない海峡であり、また波照間島や与那国島は、台湾進攻に必要な存在です。中国は沖縄が欲しいのです。

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それに迎合する玉城デニー氏は、中国とどうつきあうのでしょうか?

 

それについては次号で・・。


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【 北海道のブラックアウト その2 】 [雑学]

【 北海道のブラックアウト その2 】

 

原発再稼働の問題はさておき、今、日本全体で発電所が足りないのは、東日本大震災後の原発全停止の経験にもとづくもので、余裕がないカツカツの状態でもなんとかやれるじゃないか・・という楽観論が登場したからです。「新しい発電所はいらない。たかが電気のために環境を犠牲にするな」と唱えた音楽家もいました(本人はアメリカ在住でしたが)。

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ちょっと脱線しますが、原発完全廃止論の小泉元首相が、「現にあの時、原発ゼロでもちゃんと社会は機能し、生活はできたじゃないか。だから原発ゼロでも何ら問題は無い」と語ったのを聞いた時、私は耳を疑いました。この文系の元首相は、何も理解していない・・・。電力不足がどれだけ人々を苦しめ、国力を疲弊させたか・・。

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東日本大震災の後、原発ゼロになった瞬間、一部の地域では強制停電を強いられました。停電でなくても、全国で節電が叫ばれました。TVでの大相撲観戦が、生活の楽しみだった老夫婦が、促されてTVを消し、暗い部屋で冷たいコタツに入っている映像が流されました。3月~6月だったからよかったものの、もし今年の8月のような酷暑の時期だったとして、エアコンを使用するな・・と、政府は号令をかけたのでしょうか?

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あの時、本来なら休止して定期点検し部品交換を行うべきだった、蒸気タービン式の火力発電所や、ガスタービン発電所もフル稼働しました。またLNG発電を増やすために、世界中のガス田で天然ガスを買い付けましたが、完全に足元をみられ、他国に比べて法外に高い価格で買わざるを得ませんでした。化石燃料の輸入代金の増加で、年間数兆円ものお金を日本は失ったのです。景気の悪化と節電の要請で第二次産業はシュリンクし、工場の操業は止まり、あのトヨタでさえ赤字で税金も払えないという事態になりました。

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あの非常事態はあくまでも一時的なもので、永久に続けられるものではありませんでした。事情を知る人なら「原発がなくても問題なかったじゃないか」とは口が裂けても言えないはずです。もっとも「では原発があればいいのか?」と訊かれると、返答に窮するのですが。

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東日本大震災後に、定期点検と部品交換を先延ばしした発電設備はいたみ、寿命を相当短くした可能性があります。それによって、ブラックアウトの危険性は増大したのです。ブラックアウトの遠因は、東日本大震災後の電力政策にあると私は考えます。

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では、どうして苫東厚真の発電所は停止したのでしょうか?蒸気漏れや破損・火災が見つかったのは、ボイラーとタービンの両方だとのことですが、私に言わせれば、それは超々臨界圧型だったからです。

普通、外燃機関の火力発電所は、再熱再生ランキンサイクルという方法で発電しますが、言うまでもなく、水蒸気をより高温高圧にした方が、熱効率がよくなります。では高温・高圧化を図る上でのネックは何か?と言えば、ボイラーチューブやタービンブレードのクリープ現象です。

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クリープとは、高温環境下で金属などが、負荷によって緩慢に塑性変形する現象で、変形が大きくなれば、交換する必要があります。なるべく高温・高圧にしたい超超臨界圧のボイラーでは、ボイラーチューブも最高級品が使われます。しかし、それでも持たないのです。私の後輩が所長をしている発電所で交換後の飴のように曲がってしまったボイラーチューブを見て、超超臨界圧とはすごいものだと感心しました。タービンブレードも同じで、強烈な遠心力の環境下でクリープが発生しますし、ベアリングも痛みます。

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金属材料の限界付近で操業している現代の発電所は、当然地震のような負荷には弱くなります。昔の効率が低かった頃の発電所は、温度も圧力も低く、耐震性にも余裕があったかも知れません。あくまで仮定ですが、苫東厚真が超々臨界圧でなければ、震度7でも故障しなかったかも・・・と思います。

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奇妙な話ですが、原発ではこの問題はあまりありません。沸騰水型軽水炉の場合、原理的に蒸気をそれほど高温にはできません。熱効率は悪いのです。そしてタービンブレードやボイラーチューブのクリープ問題は、化石燃料を燃やす火力発電所ほど深刻ではないのです。

「それなら、原発の方が火力発電所よりも地震に強いのか?」と言われると、それも違うので、答えに困ります。必要なのは多様な発電手段で、多くの発電所を維持し、電力供給に余裕を持つべきだ・・ということです。予想だにしない自然災害に備えるにはそれしかありません。そしてその場合、電力料金の値上げは、ある程度覚悟する必要があります。

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北海道の場合、電力供給が苫東厚真の石炭火力に集中しすぎており、音別のガスタービン発電や奈井江の石炭火力、京極の揚水発電、石狩湾の新港発電所が、停電抑止に役に立たず、知内の石油火力発電所が間に合わなかったことが原因です。

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蓄電設備であるレドックスフロー電池やNAS電池を活用すべきだという人もいますが、

これらは補完的な貯蔵設備であり、揚水発電所と同じです。絶対的な発電能力の不足を解消するものではありません。太陽光と風力は重要ですが、地滑り的というか雪崩のようなブラックアウトには、ほぼ無力です。

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便利な電気はふんだんに使いたい。しかし発電所は必要最小限にして新設には反対・・・という我儘はやがて大自然にしっぺ返しされます。

米国でエンロン事件があり、カリフォルニアで大停電があった時、日本人は嗤いました。「日本じゃあんな間抜けなことは起きないよ」しかし、今は誰もアメリカを嗤えません。日本で発電所の建設が遅れている現状を見ると、まさに「お先真っ暗」です。 

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ああ、なるほど「お先真っ暗」のことを英語でブラックアウトと言うのかな?

 

以下 次号

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