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【 重ねて思う、世襲・門閥主義の弊害 その2 】 [政治]

【 重ねて思う、世襲・門閥主義の弊害 その2 】

 

残念ながら、現代の日本社会は、世襲と門閥のオンパレードです。近年、人手不足で売り手市場だから目立ちませんが、一度就職難の時期を迎えれば、コネの有り無しが大きく影響します。社会をリードする地位を争うとなると、もっとひどい状況です。

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嘘だと思うなら、今の政治家を見てください。2世、3世ばかりです。安倍晋三は、岸信介の孫、あるいは安倍晋太郎の息子でなければ、首相はおろか政治家にすらなれなかったはずです。石破茂も2世の政治家、麻生副総理は吉田茂の孫、鳩山由紀夫にいたっては4代目の政治家です。世襲政治を批判した菅直人はこっそり息子の源太郎を政治家にしようとして、失敗しました。

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芸能人も2世、3世ばかりです。明らかに親と比べて見劣りする芸能人が、脚光を浴びるのを見ると、視聴者のTV離れが進むのも道理です。

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病院経営者はどうでしょうか? 医者の世界は最も世襲制のひどい世界です。開業医の子息のために私立医大を設立し、不公平な入学試験をしてでも、開業医の息子を医師にするシステムが出来上がっています。昭和の時代、医師会会長の武見太郎に阿諛追従する医事評論家だった水野肇は「医師の子供が医師になるのは自然であり、医師以外の家庭の子が医師になるよりずっといい」と公言していました。

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大学教授や学校教員・・という学問の世界も、やはり親のコネや学閥で、採用が決まります。そもそも研究テーマが異なる研究者の実績や能力を、客観的に評価し優劣をつけることなど至難です。だから、誰を選ぶかとなると学閥やコネがものを言います。

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そのうち、過度な競争を厭い、「子供は親の職業を継ぐのが、一番平和で無難だ・・・」という奇妙な考えが世の中にはびこります。恵まれた人達は、ひたすら既得権の維持を考え、恵まれなかった人達は、「カエルの子はカエルさ」と言って、一つの諦念の中で納得しようとします。それはそれで平和ですが、社会の活力は失われます。それに憤る人もでます。

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憤るのは、有能でありながら機会を得られなかった人、そして親のコネと金で医者になった藪医者に診療される気の毒な患者たちです。

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だから、人々は門閥や世襲と無関係な完全実力主義の世界に一つのカタルシスを感じます。基本的に、個人の能力が全てである、スポーツの世界や、頭脳競技の世界がそれですが、角界については、奇妙な門閥制度があることを前回、ご報告しました。

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しかし、面白いことに、頭脳競技の世界にも門閥制度があるのです。

将棋のプロ棋士になるには、奨励会に入る際、必ず誰かの弟子になる必要があります。お師匠さんを戴くという点では、古典芸能や落語、お茶、お花の世界と似ています。

今をときめく藤井七段の師匠は、「鷺宮定跡」の使い手の杉本七段で、その師匠は早世した板谷進八段、その師匠は父親の板谷四郎九段で、東海地方の名門板谷道場の門下生となります。

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囲碁でも同じように、師匠と弟子の関係があります。昭和の時代、木谷道場の門下生達が圧倒的に強く、日本棋院を席巻したのを記憶される方も多いはずです。

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しかし、昔は重要だった師匠と弟子の関係ですが、若手が技術を磨くという点では、あまり意味が無いようです。 最近はだいぶ様子が変わってきました。

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将棋では、同門だろうが、違う師匠の門下生だろうが関係なく、研究会を開き、そこで腕を上げます。 違う一門だから研究仲間に入れないということはなく、実力があれば歓迎、実力が無ければお呼びでない・・という、ある意味、別の厳しさがあります。囲碁では孤高の天才棋士、藤沢秀行が秀行塾を開き、集まった院生達を分け隔てなく指導しました。同じ師匠を戴く門下生同士でなければ修行できない時代ではありません。

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そして重要なのはインターネットとコンピューターの活用です。インターネット対局を活用すれば、遠隔地にいても、他の道場にいても対局し研究できます。また人間同士で対局しなくても、コンピューターを相手に研究すれば、そちらの方が、効率的に棋力が上がるという意見もあります。

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もはや、師匠と弟子の関係は実力を上げるためのものではなく、悩める天才青年達の人生の指南役として師匠が機能する時代なのです。そんな存在なら、門閥は要らないのではないか?と私は思います。

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前述した内容の繰り返しになりますが、人々は、しがらみがなく実力だけで勝敗が決まるスポーツや頭脳競技に憧れ、応援します(それだけではありませんが)。それなら、門閥システムは止めた方が良いのではないでしょうか?

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話は換わりますが・・・、NHKの大河ドラマには2つの時代しか登場しません。幕末から明治維新にかけての時代か、戦国時代から安土桃山時代の2つです。以前は源平の戦いや忠臣蔵の時代なども登場しましたが、やはり無難なのは、戦国時代と明治維新のようです。

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なぜ、この時代が視聴者に好まれるか?といえば、抽象的な表現ですが、時代に躍動感があり、無名の人が活躍した時代だからです。庶民が活躍し、英雄が登場し、既存の権威を破壊し、新しい世界を築けた時代だからです。

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前回、書きましたが、日本経済が発展したのも、明治維新後と第二次大戦後の復興から高度成長期です。では外国はどうか?と考えると、大体似ています。

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韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる高度成長の後、今、景気の曲がり角を迎えています。いろいろな理由があるでしょうが、朝鮮戦争後に一代で財閥を築いた名経営者が引退し、子供の代になって、成長力が衰えた・・・のが理由です。儒教文化で家を大事にする韓国では、公共の存在であるべき企業も、家族のものであり、個人商店の延長です。当然、経営者も世襲です。

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その結果、サムスンなどの大財閥ですら、創業者の子息が後を継いで経営者となるのが当たり前です。しかし、その子供達に経営者としての資質がないために、いろいろな問題がでて、スキャンダルが発生しています。

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サムスンの息子は、大統領に巨額の賄賂を贈り、ロッテグループは兄弟で骨肉の争いを演じ、大韓航空のお姫様は、袋入りのナッツに激怒して飛行機を戻します。

大財閥だけでなく、中小企業も、経営者は子供達に後を継がせます。その結果、韓国経済の成長が遅くなり、競争と活気がない社会になります。

一方で、継ぐべき会社もない、一般の人達は、大変な就職難に見舞われます。

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中国もほぼ似ていますが、少し違います。

中国が改革・解放政策により、高度成長が始まり、今も大発展しているのは、ご承知の通りですが、これは文化大革命の混乱と破壊の後、門閥に頼らない逸材が活躍できたからです。しかし、一代で企業を興し、財産を築いた人達ですが、そろそろ引退し後継者にバトンタッチする時期です。そこで誰が後を襲うかが、重要です。

優秀な人は個人商店の使用人になるのを潔しとせず、かといって中国国内にチャンスが無いと知れば、外国に脱出するでしょう。人口は多いけれど、経済発展に尽くす人は意外に少ない・・ことになります。日本にある意味で似ています。

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私が今、注目しているのは引退を表明した中国一の成金で、アリババの創業者であるジャック・マー氏の後継者です。 若くして実業界を去り、福祉と慈善事業に力を入れるという生き方は、ビル・ゲイツに似て、実に恰好いいのですが、もし後継者に自分の子息や親戚をあてるのなら、あまり尊敬できません。そして中国の実業界も所詮、世襲さ・・となると、皆が元気をなくし、中国の経済成長はやがて息切れします。

もし、赤の他人に経営を委ねるのなら、これは大人物です。中国の経済成長も続くかも知れません。

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日本では戦後の高度成長期に発展した会社で、無能な息子(某家具屋の場合は娘)を後継者にした例がいくつもあります。 (実名を挙げると、差し障りがあるので言いませんが)。 あるいは、歴史のある会社で、いまだに学閥に拘っている会社が多くあります。それらの一種の公私混同を経営者が行うことで、どれだけ経済の活力が削がれ、多くの有意の人材がやる気を失い、そしていかに多くの富が失われたかを考えるべきです。

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160年前に福沢諭吉先生が「門閥主義は親の仇で御座る」と言われた言葉は今も通用するのです。


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