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【 駆逐艦フィッツジェラルドの悲劇 】 [雑学]

【 駆逐艦フィッツジェラルドの悲劇 】

 

海難事故では、どちらに回避義務があったか、どちらに責任があったかの、検証は非常に難しいのだそうです。古くは瀬戸内海で、紀州藩の船と坂本竜馬率いる亀山社中の船が衝突した際、亀山社中側に非があった可能性が高いのに、坂本竜馬の印象操作やプロパガンダが功を奏して、紀州藩が莫大な賠償金を払った・・というエピソードがあります。

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そして印象操作と言えば、海上自衛隊の艦船と民間船舶が衝突した時のマスコミ報道ぐらい偏ったものはありません。事情が明らかになる前から自衛隊が悪い・・という前提で記事が書かれます。

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広島の沖合で自衛隊の護衛艦「おおすみ」と遊漁船が衝突した際は、各マスコミは、両船の位置関係も知らないうちから自衛艦に責任があるという論調が目立ち、存在しない第3の船舶まで繰り出して、自衛隊側の非をならしました。しかし、それらの自衛艦原因説の報道は、ある日、ピタリと止みました。事故当時の海上の船舶の位置と走る方向・速度が明示されるレーダー情報であるAIS情報が開示されたからです。

http://halibut.blog.so-net.ne.jp/2015-02-24

結果として朝日新聞らが唱えた艦船の位置関係はデタラメでした。そして今は、誰でもこの情報にアクセスできます。インターネットのマリントラフィックというサイトにアクセスすればよいのです。

http://www.marinetraffic.com/jp/ais/home/centerx:-12.0/centery:25.0/zoom:4

もはやマスコミに印象操作はできません。

もっとも、この図面を見ても、素人には即座にどちらの船に責任があるかは断定できません。やはり海難審判の専門家の意見を聞くしかありません。

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今回のイージス駆逐艦フィッツジェラルドとフィリピン船籍のコンテナ船の衝突について、私のみたところでは、どちらかと言えば、イージス艦側に非がありますが、コンテナ船が優速でイージス艦を追い越そうとしていたなら、コンテナ船により多くの非があります。

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しかし、どうでも米軍を叩かなければ気が済まない朝日新聞の論説委員は、米軍をSNSで揶揄しました。「イージス艦 なにやってんの?」とからかうような揶揄するような・・というか「上から目線」の冷やかしです。

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新聞紙面という言論の武器を持つ言論人(というより新聞屋、いやただの捜狐者)が、新聞紙面を使わず、SNSという非公式な場で意見を述べること自体、姑息な印象がありますが、その内容は事実関係に立脚したものではなく、単なるアメリカ軍への悪口でした。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20170620-OYT1T50060.html?from=ytop_main2

https://www.stripes.com/news/scale-of-fitzgerald-tragedy-revealed-in-reports-from-lost-sailors-hometowns-1.474266

これでは、航海中に落命した7名の乗組員に対して失礼ではないか?と思うのですが、では実際に亡くなった7人はどんな人だったのでしょうか?

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米国のStars and Stripes誌にはかなり詳しく記載されています。

https://www.stripes.com/news/navy/remains-of-7-sailors-killed-in-us-ship-collision-sent-home-1.474449

年齢的には37歳もいますが、多くは10代か20代の水兵で、写真を見ると童顔です。士官はいないようです。それぞれの紹介文を読むと、祖父が太平洋戦争時代の海軍軍人だったから自分もあこがれて海軍に入隊したというエピソードがあります。沖縄出身で、日本人とアメリカ人のハーフもいます。

一人ひとりの出身地や出身高校が書かれていますが、出身大学は書かれていません。もう少しで任期が終わり除隊する予定だった水兵も何人かいます。

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では除隊した彼らはどこへ行くつもりだったか? 多分、多くは海軍の奨学金を貰って大学へ行く予定だったのです。米国の大学にも、親に学費を出してもらって進学する学生はいますが日本ほど多くはありません。かなりの学生が奨学金で進学したり、自分で働いて貯めたお金で進学します。高校卒業後に軍隊に入って、除隊後に軍隊の奨学金を貰うというのはごく一般的です。最近、日本でも言い出したリカレント型教育の一種です。

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今回、殉職した水兵さん達は、そういう希望をもって未来を切り開いていく人たちだったのです。

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では日本の自衛隊に奨学金制度はあるか?と調べてみると、こちらもあります。しかしそれは除隊後の大学進学を助ける仕組みではなく、自衛隊入隊を条件に現役の学生に貸与するものです。

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その違いは何か・・と言えば、日米の大学の違いです。日本では多少の浪人はあるにせよ、高校卒業後、ほぼ同じ年齢で大学に入学するのが当たり前です。入学前に長いブランクがあると、卒業後の就職も難しくなります。一方、米国の大学では入学年齢はまちまちです。働いて学費を貯金してから入学する人、働いて奨学金の資格を得てから入学する人もいます。

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もう一つの違いは、日本の自衛隊はそれ自体が教育機関であり、除隊後の進学を考える必要がない・・という発想です。自衛隊は有事に於いては戦力ですが、平時は一種の教育機関とも言えます。ただし文科省の監督下にある学校のシステムには組み込まれませんが・・。

従って自衛隊の中でも高度な教育が受けられるという前提で、除隊後の大学進学を考えていないのかも知れません。

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話題がそれましたので戻します。ではなぜ、イージス艦フィッツジェラルドは横須賀に所属し、静岡県沖を航行していたのか? 一言でいえば極東の軍事バランスのためです。もっと言えば、北朝鮮から飛来するかも知れないミサイルに対応するためです。日本の安全保障にも寄与していました。言葉を換えれば、日本を北朝鮮や中国から守る為でもあります。すでにフィッツジェラルドを欠くために、対北朝鮮のシフトに狂いがでているとの報道があります。

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日米安保を問題視し、極東の米軍は日本を守るためにいるのではない・・と主張したい朝日新聞とその論説委員は、それを認めないかも知れません。朝日新聞はなんと60年以上前の安保闘争と、その犠牲者となった樺美智子さんを懐かしんでいます。日本にいる米軍がいまだに憎いのでしょうが、一体読者の何割が樺美智子さんを知っているのでしょうか?

http://www.asahi.com/articles/ASK6K4QNJK6KUEHF00F.html?ref=wmailm_0623_11

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北朝鮮からのミサイルに備えて展開している日米のイージス艦ですが、あえてそれを日本の為の行動ではない・・と考える人もいるでしょう。

では、それなら、これはどうでしょう。

東日本大震災の時、イージス艦フィッツジェラルドは。原発が爆発した直後の福島県沖に展開し、被災地の救援、支援を行いました。自らの被曝を顧みずに敢行したトモダチ作戦です。今回の犠牲者にその時の乗組員がいたかどうかは分かりませんが。

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そのフィッツジェラルドに向かって「なにやってんの」と揶揄したのが、朝日新聞の小滝ちひろ論説委員だったのです。やんぬるかな。


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