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【 エキノコックスについて考える 】 [医学]

【 エキノコックスについて考える 】

 

我が家の愛犬に予防接種をする際に考えます。既に老犬であるし、病を得ているので、以前と同じように、狂犬病、ジステンパー、フィラリアの3種類を接種するのは体の負担が大きいのではないか?と思うのです。

中国で暮らしていた私は、かの地では狂犬病が今も脅威として存在するのを知っています。しかし、日本ではもう何年も発病が報告されていません。どこかの時点で、政府が狂犬病は制圧されたと宣言して予防接種を廃止してもいいのではないか?と思うのです。

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そして狂犬病の予防接種の代わりに、駆虫薬プラジクアンテルを与えてはどうか?とボンヤリと考えます。それは致死性の寄生虫病であるエキノコックス症を考えるからです。

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1980年代、私は旅行で礼文島に行きました。そこで民宿の宴会に参加したのですが、地元の古老に「エキノコックスはどうですか?」と尋ねました。その瞬間、笑顔だった老人の表情は凍り付いたようになり、「もう長い間、エキノコックスは発見されていない。礼文島をエキノコックスの島であるかのように言うのは止めて欲しい」実際、礼文島のエキノコックスは駆除されたようです。しかし実態は北海道全土に拡散したという見方もあります。その後、根釧地方でエキノコックスが発見されているのです。

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エキノコックスについての説明は省略しますが、この致死性の寄生虫病は、今も中国の西域で猛威をふるっていますし、欧州でも大問題です。政治的にも大きな摩擦の原因になっています。

http://www.vet.kagoshima-u.ac.jp/kadai/V-PUB/okamaoto/vetpub/Dr_Okamoto/Zoonoses/Zoonoses%20in%20Humans/EU%20Echinococcus%202014.pdf

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エキノコックスの島として有名だったアイスランドでは、一時期、対策として犬を飼うことを全面的に禁止し、犬の輸入も禁止しました。 それは世界一の愛犬国を自認する英国のプライドを傷つけました。 英国の犬も持ち込み禁止になったからですが、英国の飼い主にとって、エキノコックスに感染していると疑われることは受け入れがたかったはずです。

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英国とアイスランドはもともと仲が悪いのですが、タラの漁場を争ったタラ戦争や、第二次大戦中の英国軍によるアイスランド侵攻と並んで、エキノコックス騒動は両国間の関係を悪化させたのです。現在、アイスランドのエキノコックスが完全に制圧されたかは不明です。この寄生虫は、飼い犬だけでなく、野生のイヌ科の動物(キツネも含む)や齧歯目の動物に広く寄生し、駆除完了を確認するのが難しいからです。

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日本の場合、礼文島のエキノコックスは制圧したものの、北海道全土に広がってしまいました。余談ですが、帯広に赴任した私の長男はかわいいキタキツネを見かけるそうですが、決して触らないそうです。しかし、本当はそれだけでは不十分で、北海道名物の馬糞風を避ける必要もあります。

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その北海道の風土病が近い将来、本州に広がる可能性があります。以前、ムツゴロウの動物王国が経営破綻し、飼育していた動物を関東地方に移動した際、専門家から懸念が示されました。 十分な管理がなされていなかった犬を本州に連れてくるのは危険だ・・という意見です。ムツゴロウ側がどう反論したかは忘れました。

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その指摘が正しいか否かは不明ですが、それ以前に青函トンネルが問題です。キタキツネがトンネルを通って本州に来るかどうかは不明ですが、野ネズミぐらいなら、本州に来る可能性は高いといえます。 彼らは電線のケーブル被覆を齧りながら移動します。北海道で生まれ、エキノコックスを宿す小動物が既に本州に入っている可能性は否定できません。

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今のところ、本州に暮らす人がエキノコックス症を発症したというニュースは、まれにありますが、あまり信用できません。なんでも、エキノコックスの症状は肝吸虫(昔風に言えば肝ジストマ)などに似ており、簡単には識別できないからだそうです。

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本州の野生動物にまでエキノコックスが広がった場合、その防疫対策の要になるのは獣医師です。動物の段階で食い止めなければ人間に被害が及ぶのです。のんびりと、獣医の数は足りているから、新たな獣医学部は必要ない・・などとは言っておれなくなります。 口蹄疫や鳥インフルエンザと並んで、エキノコックスは「今ここにある危機」」なのです。

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それでも日本の場合はまだましです。この問題で頭が痛いのは中国です。

中国政府は、漢民族以外の少数民族を慰撫するため、一種のAffirmative Actionを行っています。インフラ投資も、小数民族の省に手厚くし、名門大学への入学定員も少数民族には多く割り当て、倍率が低くなるようにしています。 インフラ整備を通じて、公衆衛生面でも、少数民族地域の環境改善を図っている訳ですが、実際はそううまくいきません。地方の少数民族の地域の方が疫病も多く、死亡率が高いそうです。

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むりやりチベットを併合したのはいいものの、チベット族では結核が流行っています。漢民族より劣悪な環境で劣悪な暮らしを強いられているからだ・・と私は思いますが、中国政府には都合の悪い現実です。

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そして同じく小数民族の地域である青海省や新疆ウイグル自治区では、エキノコックスが流行っています。最前線で奮闘する医師(こちらは人間相手の医師)が嘆いています。「エキノコックスを駆逐できるのは、小さな島だけで、大陸の大平原でエキノコックス対策をするのは無理だ」

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO16738850T20C17A5000000/

無理だと言っても、抑え込まなければ、災厄は全世界に及ぶ訳で、ここは、技術とお金と人手を集中的に投入する必要があります。 でもはっきり言って狂犬病すら対応できない中国政府にはエキノコックス撲滅は無理です。

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経済成長を遂げた中国には、もはや金銭面での援助は不要です。しかし、この国に欠けている民生の為の技術、あるいはプロジェクトを遂行するノウハウを日本から援助することは可能だし、必要でもあります。そして、そのプロジェクトには人間用の医学と獣医学と農学・生物学が協力して取り組む必要があります。

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しかし、近代化してから歴史が浅い中国の学会は学際分野のプロジェクトが苦手なのです。その分野こそ、日本が得意で協力できる分野です。かつて日本から中国への技術協力は産業界に偏り、日本のライバル企業に塩を送る結果になったものが少なからずあります。 またハイテク技術を供与すると軍事利用される懸念もありました。

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しかし、辺境の地域の風土病対策、寄生虫対策にはそれらの問題はありません。そして現地の人々には確実に歓迎されます。中原に暮らす漢民族の中国政府には煙たがられるかも知れませんが・・・。

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日本も一種のAffirmative Actionとして、ウイグル族やチベット族、回族などの留学生を受け入れ、寄生虫駆除対策の研究を指導すべきです。 現在、日本の獣医学は、獣医学部だったり、農学部獣医学科だったり、畜産学部だったり、その扱いもまちまち(というよりでたらめ)です。 ここは人間の医学部医学科のように獣医学部獣医学科に統一して入学定員も確保すべきでしょう。

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どうです? 獣医学部の定員増の必要性を見いだせなかったとうそぶく元エリート官僚の前川さん、あなたはどう思いますか?


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