【 官僚の人事権とゆとり教育 その3 】 [政治]
加計学園の獣医学部新設にあたって首相サイドから圧力があったかなかったかは、これから明らかになるでしょう(ならないかも知れませんが)。 この学校法人に、森友学園に通じるうさん臭さがあるのも事実です。
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しかし、一方で学校設立の許認可の基準を緩和するのも既定路線です。規制緩和は、自民党政権でも民主党政権でも、大いに進めるべしというのが、統一見解です。しかし、官僚の中にはこれに反対する人もたくさんいます。 中央官庁には政策立案型官庁と許認可型官庁の2種類の性格があり、文部科学省はどちらかというと後者の色彩が強い官庁です。そうなると、規制緩和には当然慎重・・もっと言えば反対になります。
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前川前次官は、その思いが特に強いようです。 獣医学部の新設にあたって、既存の他校の獣医学部ではできない点、或は現存の16の獣医学部では対応できない問題が明確に見えなかったので反対したとのことです。
しかし、私に言わせれば、私学の教育とはそういうものではありません。学びたいという学生がいて、教えたいという教授がいて、教育の場が必要だと考えたら、学校は成立するし、必要なのです。あとは、月謝だけで学校が運営できるかという経営上の問題だけです。
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文科省の役人風情が、卒業しても就職先が無いからとか、社会的に需要と供給がバランスしているから新しい学校は不要・・とするのは不遜に過ぎます。
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世の中には、難しい資格を取得した者だけが就ける職業が幾つかあり、それらの人がギルドを構成し、世間からの尊敬と高い報酬を得ているのは事実です。難しく知的な仕事で、社会に貢献する仕事だから尊敬されるという訳ですが・・・。
しかし、畢竟それらは、教育機関や合格者の定員を少なくすることで希少価値を維持しているというのが本当のところです。かつては尊敬され格好いい職業の代表であった、弁護士や歯科医の数が増えた結果、過当競争になり、収入も不安定になりました。
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米国では弁護士はアンビュランスチェイサーと呼ばれます。つまり、救急車が走っていく先には事故があり、訴訟ネタがあるはずだから、そこに行けば仕事にありつけるというさもしさを意味しています。日本もそうなる・・か、どうかは分かりませんが、数が多すぎて過当競争になるのは困ったことです。
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でもその問題は、文部官僚が考えるべきことではありません。前述の通り、本来大学とは、知識を得ようとする者の為にあるのであり、就職予備校ではないからです。入学したい人がいて、教える環境を求める人がいれば、認可するのが筋です。 それが規制緩和の精神であると考えます。
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前川氏は、ここで獣医学部を増設すれば、歯科医などと同じ問題が起きるから、新設に反対だったようですが、果たして獣医の数は足りているのか?不足しているのか?
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前川氏がどういう調査をしてどういう検討を経て、獣医学部の新設は不要と判断したのか不明ですが、専門家でない彼に十分な検討ができたのかはなはだ疑問です。 私も素人ですが、獣医師はこれからさらに必要になり、現在の大学の定員では足りなくなると思います。
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古典的な考え方では、獣医師はペットを相手にする犬猫病院や、牧場の牛の出産幇助、動物園の勤務医といった仕事になりますが、これから変化します。 鳥インフルエンザや口蹄疫が、猖獗を極める事態となった時、最前線で戦うのは獣医です。国際化が進み、海外からの病原体の侵入の機会はさらに増えます。獣医師は足りません。
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そしてもう一つ、今後、医学が進めば、医師と獣医とがオーバーラップする領域が増えてくるのではないか?ということです。 特に公衆衛生学の分野では医師と獣医師そして農学の専門家の連携や協力が欠かせません。
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素人のオヒョウが何を言うか?と叱られそうですが、私はそれなりの理由があってそう思うのです。 その一例として、エキノコックスの問題を次報では取り上げます。
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