【 深川散策 その2 鹿嶋の芭蕉 】 [俳句]
【 深川散策 その2 鹿嶋の芭蕉 】
私は、芭蕉の俳諧にはあまり興味がありません。 しかし、彼が鹿島を訪問した時の作品、「鹿島紀行」に少し興味があります。 深川の松尾芭蕉記念館にその資料があるかどうか、少し気になり、私は川崎のご隠居に誘われ、芭蕉記念館に入りました。
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/akirachan/basyou.htm
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話が飛躍しますが、2020年の東京オリンピックで、サッカーの試合の一部が、茨城県鹿嶋で行われる可能性がでてきました。
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2015/05/15/kiji/K20150515010356120.html
鹿嶋の人々には、サッカーのワールドカップ以来の「おもてなし」の機会となる訳です。
それに対して、鹿嶋のような地方の小都市(失礼)に、ちゃんと「おもてなし」できるのか?という声もありましょうが、心配は無用です。
鹿島には、遠来のお客を歓迎する「おもてなし」の精神が、300年以上前からあるのです。一体なんの事かと言えば、松尾芭蕉の紀行文 「鹿島紀行」に登場するエピソードのことです。
http://www.bashouan.com/Database/Kikou/Kashimakikou.htm
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この「鹿島紀行」には、鹿島の根本時(こんぽんじ)が登場します。臨済宗妙心寺派の古刹ですが、近くの鹿島神宮に比べると実に地味で目立たない存在です(再び、失礼)。私には的確にこのお寺を紹介する筆力はありませんので、他人様のブログを引用させて頂きます。
http://mahoranokaze.com/blog-entry-1170.html
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この寺の仏頂禅師は芭蕉の古くからの友人で、芭蕉は彼を訪ねて鹿島に足を運んだ訳です。その目的は、名月を観ること・・・ですが、それだけではありません。
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根本寺は鹿島神宮と長らく裁判沙汰の争いをしていました。鹿島神宮の知行は佐竹氏から寄進されたものですが、その中から毎年100石ずつ、根本寺に渡すようにという安堵の約束だったのに、それがないがしろにされていたのです。そこで、住職である仏頂禅師はしばしば江戸に赴き、裁判に訴えた訳ですが、その時、松尾芭蕉と親交ができました。 やがて裁判は決着し、根本寺の勝ちとなりました。 芭蕉は、そのお祝いと慰労のために鹿島を訪問し、根本寺に泊まったのです。
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芭蕉は、現代でいえば、京成の成田スカイアクセス線のルートを通って、やがて鹿島に到着しました。しかし、名月を楽しみに来たのに、あいにく雲が出て月は見えません。やがて疲れた芭蕉は床につき、寝てしまいました。 そして真夜中に彼は起こされます。 仏頂禅師は、芭蕉のために夜通し起きていて、雲が切れて月が顔を出すのを待っていたのです。そして雲が切れた瞬間に、芭蕉を起こして、彼に名月を見せたのです。
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ごちそうや美酒をふるまう訳でもなく、歌舞音曲を奏でる訳でもなく、面白い話題で歓談する訳でもなく、しかしそれでも心から相手をもてなすことはできます。相手を「おもてなし」で感動させることはできます。 鹿島の宵の仏頂禅師がその例です。
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自己(subject)と客体(object)の関係を追究することは、禅の重要なテーマだそうですが、詳しいことは私には分かりません。 妙心寺派の仏頂禅師がどういう考えを持っていたかもよく分かりません。 しかし、禅と密接な関係がある懐石料理や茶の湯の世界では、主のお客への思いやりが、非常に重要です。そして300年以上前の鹿島の禅寺で、本当の「おもてなし」が行われたことは事実でしょう。
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芭蕉資料館には、芭蕉と仏頂禅師の友情に関する資料がありました。
しかし、そこには奇妙なことが書かれています。 「やがて二人は師弟以上の関係に発展した」と書いてあるのです。
一体、男同士でどういう関係になったのか? 刎頸の友になったということか?よく分かりません。川崎のご隠居も首を傾げています。
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一人は禅僧、一人は俳諧師ですから、当然相互に教え合う関係が想像できます。片方が座禅を教え、片方が俳句を教えたのかも知れません。しかし、仏頂禅師の俳句は残っていません。あまり上達しなかったのか・・・?
話は飛躍しますが、夏目漱石は、円覚寺で座禅を学び、親友正岡子規からは俳句を学んでいます。そして漱石の俳句もたくさん残っています。しかし、仏頂禅師の俳句は残っていないのです。
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そこで代わりに、オヒョウが駄句を一句。
月三更 ばせをの朝の あくびかな
うーむ、下手くそです。 本来、朝の眠気は春の季語です。 禅の上達は無理としても、俳句をもう少し上手にできないものか? そしてお客をもてなす精神を身に着けられないものか? と、オヒョウは仏頂面で考えます。
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