SSブログ

【 海軍短期現役と主計将校 その1 】 [雑学]

【 海軍短期現役と主計将校 その1 】

 

左派系の論客である佐高信の本がネットに紹介されています。彼については、いろいろと議論したい事があるのですが、その中で中曽根康弘に関連して海軍の主計将校に言及したくだりがあります。

http://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e3%80%8c%e3%81%97%e3%81%9f%e3%81%9f%e3%81%8b%e3%81%a8%e8%a8%80%e3%82%8f%e3%82%8c%e3%81%a6%e4%b9%85%e3%81%97%e3%80%8d%e4%b8%ad%e6%9b%bd%e6%a0%b9%e5%ba%b7%e5%bc%98/ar-AAl87wO?ocid=LENDHP#page=2

「敵を知り、己を知らば」という佐高の新刊の中で引用している、昔の著作「佐高信の斬人新書」の中のエピソードなので、少しややこしいのですが、大和投資顧問の坂田真太郎との対談で、海軍主計将校が最前線を逃げた卑怯者である・・と評しているのです。

・・・・・・

左翼として、中曽根康弘が嫌いなのはともかく、中曽根が海軍主計少佐だったから、主計将校が嫌い・・というのは、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の類で無茶苦茶です。

坂田に至っては、主計になるために経理学校を希望したら下士官に殴られた・・・というエピソードを披露して、個人的な私怨と公憤を混同しているようです。こんな輩が経営者だったのか?

・・・・・・

海軍主計将校は、決して最前線を逃げた卑怯者ではありません。陸軍と違い、船に乗って戦に臨めば、皆さん一蓮托生です。艦長のような高級将校も、主計将校も缶焚き(かまたき)の二等兵も、船が沈めば等しく戦死です。砲弾が飛んで来ない安全地帯にいられる陸軍の高官とは違うのです。

・・・・・・

そもそも、軍隊は合理性を尊びます。入営(入隊)時点で、本人に何等かの取り柄や特技、専門知識があれば、それを活かさない手はありません。医師であれば、軍医にしますし、工学校の卒業生なら工兵や技術将校にします。野球の投手であれば、手榴弾の投擲手にします。数学科の卒業生なら暗号解読班に回します。これは日本だけでなく、各国とも同じです。

・・・・・・

戦時中までの日本では高等教育を受けた青年は少数派でした。文科系の学校を卒業した人、もしくは在学中に応召した青年を、主計将校などの事務仕事に就かせるのはある意味で当然でした。決して逃避ではありません。そして生還した方は戦後もその専門を活かしています。

・・・・・・

ちなみに私が高校で教わった数学の恩師能崎先生は海軍経理学校のご出身、中学校の数学の恩師である藺森先生は海軍兵学校のご卒業です。

・・・・・・

実際に乗っていた軍艦が沈み、危うい目にあった人も多くいます。有名なところでは「戦艦大和ノ最後」を著した、日銀の理事の吉田満氏がそうです。

・・・・・・

そして主計大尉で戦死した人もいます。小泉信三の著書「海軍主計大尉小泉信吉」は、若くして戦死した一人息子についての作品ですが、父親を持つ息子として読んで涙し、そして息子を持つ父親として読んで涙する著作です。これを読めば、主計将校が卑怯者で逃避した存在であるとは、決して言えないはずです。

・・・・・・

ここから話は脱線します。教育者の鑑とも言うべき小泉信三は、昭和の慶應義塾を代表する先生でした。オヒョウ如きが、この伝統ある総合大学を語るのは倨傲に過ぎるのですが、敢えて言えば、この大学は、明治の前(正確には明六社ができる明治6年以前)の私塾であったころの慶應、文明開化に伴い多くの経済人を輩出し北里柴三郎らが医学研究を行った明治・大正期の慶應、経済人や政治家、スポーツ選手や作家、文化人を輩出した昭和の慶應、学部が増え、巨大な学園になって、インターネットやITの先端分野でも業績を上げている平成の慶應で、それぞれ違います。そして明治時代までのシンボルが福沢諭吉先生であるなら、昭和期のシンボルは小泉信三だったのではないか?・・と勝手に考えます。

・・・・・・

それにしても、面白い学校です。理財科で小泉信三は、日本共産党のパイオニアとなった野坂参三と机と並べています。思想・信条が全く異なる学生が、ともに学び、友達でいられた学校が慶應義塾です。決して、ひとつのステレオタイプで語られるブルジョアのお坊ちゃん学校ではないのです。

・・・・・・

佐高をはじめ、今の多くの左翼の論客は、野坂参三に郷愁を感じるのではないか?ところで、そう言えば、佐高信さんよ、あんたも慶応ボーイじゃなかったのかい?

 

ところで、冒頭に挙げた本の中で、坂田と佐高は、最前線に赴かず、苛酷な戦争体験を持たない者に限って、軍隊を懐かしがったり、好戦的だったりする・・と切り捨てています。これについては確かに一理あります。 次回は、その点について考えてみたいと思います。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。