SSブログ

【 糟糠の妻は堂より下さず 】 [中国]

【 糟糠の妻は堂より下さず 】

 

上海の都心にある豫園という庭園を歩いていて、ある建物でガイドさんから説明を受けました。

「これはあるお金持ちの正妻のための住居です。しかし玄関の段を下りて、奥方が地面に立つことはありませんでした」との説明です。昔、高貴な女性は纏足をしており、足が小さすぎて、地面を歩けなかった・・という事情もあるかも知れませんが、「糟糠の妻は堂より下さず」の教えの通り、大切にする女性には土を踏ませなかったということのようです。まあ、本当の糟糠の妻なら纏足はしていなかったと思いますが・・。

・・・・・・

この「糟糠の妻は堂より下さず」という言葉は、若い時に苦労させた妻、或いは一緒に苦労した妻は、成功してお金持ちになった後も特別に大切にしろよ・・という戒めですが、逆説で考えるオヒョウはこう思います。

「つまり、そういう戒めの言葉があるということは、実際には逆で、成功してお金持ちになったとたん、古女房をないがしろにして、若くて綺麗な女性に乗り換える手合いが多かったということだな」

・・・・・・

実際、その通りなのでしょう。中国では共産党の幹部になれば、愛人を持つのが半ば当たり前のようです。いろいろ嫌な噂話を聞きました。また私がいた昆山には台湾の企業から派遣されて、総経理や董事長を務める台湾人がたくさんいたのですが、その中には現地妻というかお妾さんを持っている人が多かったようです。

・・・・・・

中国のようなお妾さんはダメだとしても、古女房と離婚して、地位や財産にふさわしい若くて美しい女性と再婚する男は、洋の東西を問わず、たくさんいるみたいです。

・・・・・・

特にお金持ちになった後に、離婚と再婚をするのは、映画俳優やスポーツ選手に多くいます。成功した後に結婚する相手の美しい女性を、糟糠の妻の反対語として、トロフィーワイフと呼ぶそうです。成功の証ということでしょうか?糟糠の妻とは逆で、なんだか下品な言葉です。女性の人権を全く無視しています。

・・・・・・

話は変わりますが、実は、我が家に残る昔の写真を調べていたら、私の祖父と祖母の金婚式の写真が出てきました。

得三てる金婚式1.JPG

壬辰(みずのえたつ)の年と言いますから1952年、これは私が生まれるよりかなり前の写真です。撮影したのは、当時大学生だった従兄です。そしてその写真の裏に祖父がしたためた漢詩が載っていました。七言絶句の形で、私の駄作と違い、ちゃんと平仄が合っています。一読して、私の心に沁みる詩です。

得三てる金婚式2.JPG

・・・・・・

特に、最後の一行がいいと思います。

「辛酸に報いるに遅く、未だ堂に昇らず」 堂から下さずどころか、まだ堂に上げてもいない。

・・・・・・

私見ですが、漢詩は、起承転結のストーリーの他に、最初の一行で読者を惹きつけ、そして最後の一行でちゃんと締めくくる必要があります。この文はその体裁に則っており、特に最後の一行が心に残るのです。(身内の作品を褒めている訳で、ブログといえども、少しためらいますが)。

・・・・・・

豫園に限らず、中国の家屋には段階と順序があります。 まず堂に昇り、その後に室に入ることになります。論語では、孔子が子路の楽器演奏の腕前を評して、「いいところまで来ているのだが、今一歩だな」という意味で、以下の言葉を語っています。

 

由や堂に升れり。未だ室に入らざるなり

 

私の祖父の場合は、老妻に報いるに、まだその入り口にも入っていないということで、堂より下さずどころではない・・ということになります。 堂と言うほどの家でもなく、富貴になった訳でもない・・という自嘲もあります。その前段にある、室家というのは、家室とも書きますが、これは家屋の部屋のことではなく、家庭という意味です(詩経に登場します)。

・・・・・・

金婚式で糟糠の妻をねぎらい、労に報いていないことを恥じるだけの、たった28文字の文章ですが、それに共感できるのは、私も結婚してから随分時間が経過したからでしょう。 勿論、金婚式にはまだ随分時間がありますが、結婚してからもう30年以上経っています。 ええっと何年だったかな?

・・・・・・

まあいいや。とにかく私にも糟糠の妻はいます。でも私には金婚式に漢詩を作ったりする能力はありません。 妻を上げるための堂というかお屋敷もありません。そのあたりは祖父と同じです。 そして勿論、トロフィーワイフなどとは全く縁がありません。(羨ましいとも思いませんが)。 

・・・・・・

そして私の場合、単身赴任が長く続くと、妻への感謝の気持ちが希薄になるのでは?という懸念もありますが、そんなことはない・・と言いたい気持ちです。実際には、時々忘れますが・・。

 

ぬかみそも、トロフィーもなし、秋の暮れ


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。