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【 芸能人のvulnerability (バルネラビリティ) 】 [雑学]

【 芸能人のvulnerability (バルネラビリティ) 】

今年は、週刊文春のスクープが何かと話題になります。その多くは芸能人のゴシップについてであり、文春砲などとも呼ばれています。 政治家がらみのスクープは、国益にも関係する重要事項といえますが、芸能人のスキャンダルなど、どうでもいいじゃないか・・と思います。しかし、そう思いながら、次回のスクープに期待してしまうのは、オヒョウもかなりゲスな男なのかも知れません。

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その文春砲で特に多いのが、芸能人の不倫(詰まり浮気)の曝露です。不思議なことに、不倫を曝露されても、謝罪会見で謝るだけで許され、芸能界に残れる人と、厳しく断罪され、芸能界を追放される人の2種類がいます。本人の立ち回りのうまさや、好感度その他の要因がありそうですが、よく分かりません。

あるいはもともと好感度が低く、その地位を失いかけていた人が、不倫報道が引き金となってその座を追われたということもありそうです。

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勿論、不倫だの浮気だのは悪いことに決まっていますが、昔はそれほど騒がれず、問題視されなかったように思います。それが芸能人生命を抹殺するほどの大罪になったのは、どうしてでしょうか?

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その昔、戦前まで遡れば、お妾さんを囲うのはそれほど反社会的な行動ではありませんでした。勿論、本妻にとっては不愉快なことに違いありませんが、妾を持つのは男の甲斐性とまで言われて、ポジティブに考える向きもありました。国民の生活の範たる皇室でもお妾さんは存在したのです。また庶民階級では花柳界の女性を相手にする限りにおいては、普通の浮気に比べて罪一等を免じるという風潮もあったようです。

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それが許されなくなったのは、第二次大戦後、女性の人権が尊重されるようになり、一夫多妻制など論外という風潮になったことが大きな理由だと思います。それを率先されたのは、皇室です。 戦前のことですが、謹厳さの象徴とも言うべき昭和天皇は妻妾制度を不潔として拒否されました。これには英国王ジョージ5世の影響もあった可能性があります。そして売春禁止法の施行とともに婚姻関係以外の性的関係をタブーとするピューリタン的な考え方が普及しました。なぜか日本人はお行儀がよくなったのです。

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しかし、戦前派の人達には、その考え方はなかなか通用しないようです。名宰相吉田茂には妻を亡くした後に、こりんさんというお妾さんがいたことは有名ですし、田中角栄にも越山会の女王と呼ばれた愛人がいたことは有名です。住友の名経営者 日向方斎にも愛人がいました。当時、そのことについて怪しからん!とするマスコミもいませんでした。

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時代の流れが変わったのは、神楽坂の芸者を口説こうとしてそれを曝露された、総理大臣の宇野宗佑あたりからで、マスコミは、非難したり失脚させたい政治家がいる場合に、その非難の引き金として、女性関係を利用するようになりました。

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一方、マスコミが支持する革新政党の場合は、追求が甘く、多くは不問に付されます。

愛人とは言いませんが、管直人や細野豪志の不倫は、写真週刊誌がスキャンダルとして取り上げましたが、大きな問題にはなっていません。

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そして芸能人の場合は、政治家よりもお行儀が悪くても許される商売でした。特にお笑い芸人は、女性スキャンダルも芸の肥やし・・という感覚で非常に寛容な業界だったはずです。それがどうしたことか、落語家が愛人を囲っていた・・ということで、記者会見を開いて平身低頭謝っています。お笑い芸人ではありませんが、大看板の歌舞伎俳優も不倫関係を謝っています(相手は芸者さんでしたが)。

逆に手際よく謝らないと、バッシングの嵐で芸能界を追放されてしまいます。

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なぜこうなったのか?なぜ、芸能人はバッシングを受け易くなったのか?いじめられやすさ(Vulnerability)が増大したのか?

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理由のひとつは芸能人の地位が上がったからです。 昔はへりくだってバカバカしい話や仕草で笑いを取っていた人達が、いつの間にか、教養人だったり、文化人だったり、果ては知識人のように扱われるようになり、人々にお説教を垂れたりするようになりました。 犯人はTVのバラエティ番組だと思います。 私などは、なぜ漫才師に世界情勢や国政の行方について、教えてもらわなければならないのか、よく理解できませんが・・・・。

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いずれにしても、社会的地位が上がり、人々が尊敬の目で見るようになると、そこに求められる倫理観や、公徳心も高いものになります。今までは多めに見られただらしない異性関係も、糾弾の対象になります。その変化あるいはギャップに気付かない芸能人が、これまでは大目に見られていたことでも叩かれることになり、うろたえることになります。

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不倫や浮気はいけないけれど、芸能人をやたらに持ち上げる、この倒錯した文化は健全なのか? 政治家や芸能人にピューリタン的な、お行儀の良さを求める背景には、まねのできない庶民のやっかみもあるのではないか? と考えたところで、外国はどうかな?と考えてみます。

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外国でも有名人のスキャンダル(特に男女関係のゴシップ)はタブロイド紙の1面を飾り、人々の関心の的です。 しかし、日本のように「水に落ちた犬は叩け」的に袋叩きにするリンチは無いみたいです。 スキャンダルがばれた時の対応も、威厳のある人は威厳ある態度で、そして威厳の無い人はそれなりの態度で、答えます。

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かつてフランスの大統領ミッテランに愛人と隠し子がいたことが明らかになり、マスコミが注目したことがあります。

それについて記者に質問されたミッテランは、

「ああ、いるよ。 だがそれがどうしたというのだね?」と涼しい顔で答えたとのことです。

歌舞伎の中村橋之助も、

「ああ、愛人ならいるよ。 だがそれがどうしたというのだね?」とでも答えれば良かったのです。

それなら、私も「いよぅ、成駒屋!」と声をかけて、彼のファンになったのですが・・・。


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