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【 太陽光発電と太陽熱発電 その1 】 [雑学]

【 太陽光発電と太陽熱発電 その1 】

今から40年ほど前、太陽からのエネルギーを用いて発電する手段として、太陽光発電がいいか、太陽熱発電がいいか?という議論がなされ、日本の場合、太陽光発電がいいという結論が一応でました。

太陽熱発電とは、太陽光を一旦、熱エネルギーにして発電する方式で、太陽光発電はご存知の通り、ソーラーパネルで太陽光を直接電力に変換する方式です。

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この議論が難しいというか面白いのは、理論熱効率だの、設備費だのという理論的な発電コストだのという、机上の理論だけでは結論が出ず、実際に実験してみて、どれだけ発電できたかを確認しなければならない点です。立地条件が大きくものを言います。

なにせ、自然の気象を相手にするのですから、どれだけお天道様に愛されるかで、発電設備の評価が変わってしまうのです。

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太陽熱発電の可能性を追求する研究者達は、1981年、日本の中では晴天の比率が高い香川県三豊郡仁尾町(現・三豊市)に12MW級の太陽熱発電所を建設し、評価試験を行いました。種類はタワー集光型と、パラボラトラフ型の2種類です。

その結果、期待したほどの電力は得られず、高い評価は得られませんでした。

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その当時、太陽熱発電と太陽光発電は、コスト面では拮抗するとされていたのですが、この仁尾町の実験設備の失敗の後、太陽光発電の方はソーラーパネルの発電効率が徐徐に上がる一方で価格が下がり、今では太陽光発電だけが普及し、太陽熱発電は姿を消しました。

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しかし、いろいろ考えてみると、太陽熱発電を落第としたのは早計ではなかったか?と、私は思います。理由は多くありますが・・・、

http://www.s-innovation.org/gakkaishi/No.5/No.3TSUBAKI.pdf

1. シーロスタットの性能が不十分だった。

シーロスタットとは、地球の自転に伴って移動する天体を追尾するために自動的に天体望遠鏡の角度を変える装置です。 タワー集光式の太陽熱発電所では、この装置を用いて、鏡に反射した太陽光が、全てボイラーに集まるように角度を調節します。

この技術は昔からありますが、何万枚もの鏡を一斉に正確に角度調整することは難しく、調整不足による光の漏れや、動作不良による火災事故も発生しています。

http://www.wired.com/2016/05/huge-solar-plant-caught-fire-thats-least-problems/

この事故は、一部の鏡の角度が狂い、タワーの上部にあるボイラーではなく、その下の電気配線に光が当たってしまい、火事になったとのことです。

ちなみに現在、川崎重工などが研究している最新の太陽熱発電所では、天体観測装置で世界的な評価を得ている三鷹光器がシーロスタットを担当しています。

2. 熱媒体として最適な物質が選択されていなかった。

太陽熱発電には、いろいろな媒体が用いられます。空気、水、合成オイル(ジベンジルトルエン)、溶融塩(塩化カルシウム、塩化カリウム等)です。 

それぞれに、比熱、熱容量、プラントル数(Pr)、ヌッセルト数(Nu)等が異なり、対象となる熱機関に応じて使い分けます。

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選択する場合の考え方として、熱機関の種類や対象とする温度範囲、媒体のタンク容量で考える訳ですが、熱容量が大きい溶融塩は、昔は使えませんでした。 高温で化学的に活性となる溶融塩を通す、高性能の配管やタンクが無かったからです。今は、フランスの配管メーカーが高性能のフレキシブル配管を開発しています。

3. 熱機関の選択肢が限られていた。

当時は、蒸気タービンが普通でした。 しかし、今なら小規模な発電なら、スターリングエンジンの方が合理的です。弊ブログ【真のAIPを目指して】で紹介しました通り、熱機関の理論熱効率が最も高いのはスターリングエンジンです。以前はこのエンジンは実用化できなかったのですが、今は可能です。

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熱機関はどうしても熱力学法則に縛られ、効率に限界があります。だから熱力学法則に縛られない太陽電池(ソーラーパネル)の方が高性能のように見えますが、実際はそうではありません。

タワー型の太陽熱発電所では、熱効率は30%台となります。上記の通り、高性能な外燃機関が採用された事も理由のひとつです。一方、太陽電池は、徐々に性能があがりつつあるものの、量産型では20%がせいぜいです。

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だから、性能や熱効率を考えると、太陽熱発電は太陽光発電に優ると言えます。それに太陽熱発電の場合、媒体を蓄熱タンクに蓄えておけば夜間でも発電できます。日本はもっとこの分野を研究すべきだったのですが・・・、当時のプロジェクトであるサンシャイン計画は中途半端でした。

http://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201106090000/

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今、日本より日射量の多い地域(アメリカのモハーベ砂漠やスペイン、サハラ砂漠、サウジアラビア)では、新型の太陽熱発電が研究されていますが、どうやら、タワー型ではなく、トラフ型や、ディッシュ型、フレネルレンズ型が主体になりそうです。この紙面で、それらのタイプについて、詳しく説明する余裕は無いので、恐縮ですが、下記のWikiで、それぞれについて確認願います。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E7%86%B1%E7%99%BA%E9%9B%BB

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将来有望なのは、高温の溶融塩を流す高性能配管が実現したこともあり、トラフ型(パラボラの反射鏡を直列に並べて、その集光位置に配管を通して熱媒体を加熱する方式)と予想されます。

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しかし・・・、敢えて私は全く別のことを考えます。

太陽熱発電ではどんなに頑張っても、熱機関の理論熱効率の限界があります。 さらに言えば、熱力学第三法則で、太陽表面以上の高温は得られません。太陽表面は6000℃で、十分に高いのですが、効率向上を考えると、上限は無い方がいいのです。それらの制約を無くすなら、直接発電する太陽光発電となるのですが、太陽電池の効率は限られますし、エネルギーの密度も低い状態です。

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そこで考えられたのが太陽光レーザーです。フレネルレンズで集光された太陽光が、レーザー発振器に入り、特定波長のコヒーレントな光(つまりレーザー)になる装置です。開発は大阪大学等です。

http://www.microwave.densi.kansai-u.ac.jp/solarlaser/framepage1.htm

このレーザー光を集光すれば、太陽表面の6000℃を超える温度も可能です。なぜなら熱機関ではなく、熱力学第三法則の制約を受けないからです。

今のところ、レーザー変換効率も数%と低く、マグネシウム循環システムの中のマグネシウム還元装置としての利用ぐらいしか考えられていませんが、この発振効率は今後改善される可能性が高いとされます。将来は発電手段にもなりえます。

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そうなれば、太陽光発電でも太陽熱発電でも無い、第三の太陽エネルギー利用発電方法が確立されるのですが、今のところ、政府も学界も冷たく、この研究を加速しようという熱意がありません。 太陽熱は熱くとも、研究者や開発者に熱意が無ければ、どうしようもない・・・とうことです。

以下、次号


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