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【 おかゆさん 】 [映画]

【 おかゆさん 】

2年前の弊ブログ【 ベネンシアドーラの店 】で、東京にあるシェリー酒の店、バル・デ・オジャリア(Bar de Ollaria)を紹介いたしました。

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オジャリアとはスペイン語で、「お米」の意味であるとは、ご承知の通りです。このお店の看板にもお米の絵が書いてあります(長粒種ですが)。

Bardeollaria001.jpg

そして、スペイン語を勉強中であるという、ベネンシアドーラの女性から、日本語の「オジヤ」は、スペイン語のオジャリアから来たと聞き、へえ?と思いました。「Ollariaの元の単語はラテン語のオリザでしょうから、オジヤの語源が、ヨーロッパ言語だとしても、スペイン語とは限らないではないか?」私はそう思いました。

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そして、全く奇妙なことを考えました。「オジヤがオジャリアだとしたら、おかゆはどうだろうか?」 私がそう思ったのは、20年来の疑問である名作映画「穢れなきいたずら」が気にかかったからです。

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20世紀最良の映画のひとつと言えるこのスペイン映画は、単に子役が可愛いだけではなく、また単なる宗教映画でもありません。奇妙なたとえですが、オヒョウが死ぬ前に、最後にもう一度見たい映画を一つ選べと言われたら、これを挙げるかも知れません。

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ご存じの方も多いでしょうし、この映画のストーリーを申し上げる訳にも行きませんが、これは修道院で育てられる一人の孤児の話です。 12人の修道士(もちろん男性)は実に愛情あふれる接し方で、捨て子の赤ん坊を慈しみ、可愛い少年に育てます。特に養育係となった修道士は炊事係(または厨房係)で、少年マルセリーノは、彼に「おかゆさん」というあだ名をつけます。

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話は脱線しますが、作家曽野綾子は、本物の宗教か偽物の宗教かを見分けるには、教祖や宗教家が質素な生活をしているか否かがポイントだと言っています。この舞台であるスペイン、または元の伝説があったイタリアの修道士はかなり質素な生活をしていて、その主食は、おかゆだったようです。

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この映画のラストシーンでは、準主役ともいえる、その“おかゆさん”の名演技が光りました。最高の“奇跡”を目撃した“おかゆさん”は、顔の表情だけで、もっと言えば見開いた目だけで、驚愕、感動、畏怖・畏敬、悲しみ、の混じった、感情を表現します。驚きのあまり、セリフはありません。演じたのはスペイン人俳優ファン・カルボです。

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仮に、日本人の俳優に、セリフなしで、奇跡を目撃した感動を表現せよ・・と命じたとして、対応できる俳優がいるでしょうか? 多分いないでしょう。 

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凡百のスペイン人俳優なら、とにかく胸で十字を切り、涙を流すだけでしょう。

日本人の普通の俳優なら、合掌して「ナムアミダブツ」と唱えるかも知れません(浄土真宗なら)。ファン・カルボは目と顔だけで全てを表現しました。「おかゆさんは凄い」

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ところが、何年か経って、この映画をTVで見ると、この配役の名前が「台所さん」になっていました。 「あれっ?『おかゆさん』じゃないの?」 

悲しいことに、私が見た「穢れなきいたずら」は、日本語吹き替え版だったのです。元のスペイン語のセリフでどう言われていたかが分かりません。

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どちらでもいいことですが、私は「おかゆさん」の方が好きです。その後、調べてみたところ、 「台所さん」なら、スペイン語ではCocineroとなります。「おかゆさん」なら、スペイン語ではAvena de arrozとなります。ちなみに「オジヤ=スープ粥」ならTienda del tíoだそうです。どちらでも オジャリヤ(Ollaria)とは関係ないみたいです。うーむ、本当のあだ名は何だったのだろうか?

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そして、ついに、この映画の元のセリフを発見しました。

「おかゆさん」または「台所さん」の元の名前は”Fray papillas”でした。 意味はパン粥です。 (そうか、お米のお粥ではなく、パン粥だったのか・・。気づかなかった)

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考えてみれば、この映画の原題はMarcelino Pan y Vino”(マルセリーノのパンとワイン)です。 マルセリーノが台所からくすねて、イエス様に渡すのもパンと葡萄酒です。スペインと言えば、パエリアのイメージがあり、バル・デ・オジャリアの影響もあって、当然お米を食べ、お粥もお米のお粥だと思ったのですが、迂闊でした。

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私はスペイン語が分からず、スペイン文化に疎く、キリスト教を知りません。だから、「おかゆさん」の元の単語に辿りつけなかったのかなぁ・・・。 でもどうしても分かりません。

映画史に残るべき名演(だと私は思う)の配役名を、かってに「おかゆさん」から「台所さん」に替えてしまった、そのセンスが分からないのです。


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