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【 静かなる元寇 】 [雑学]

【 静かなる元寇 】

読者諸兄は、ツマアカスズメバチなる外来種の昆虫が静かに日本国内に侵入しつつあることをご存知でしょうか? 中国南部あるいは東南アジア原産の昆虫ですが、近年になって朝鮮半島に入り、そして最近、対馬経由で九州北部にも出現したと報じられているツマアカスズメバチです。

既に対馬ではツマアカスズメバチが土着化しているようで、ここでの完全な駆除は非常に難しそうです。そこで、人々が真剣に考えているのは、九州北部のツマアカスズメバチだけでも完全に駆逐できないか?ということです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160330-00000049-mai-soci

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これは非常に困った問題です。 このハチ以外にも、既に多くの外来生物が日本に根付き、繁殖・繁茂しています。 そして、その多くはなんらかの形で日本の生態系を乱し、在来種に影響を与えています。 しかし人間の生活にまで深刻な影響を与えることはまれです。 でもツマアカスズメバチの場合はそうではありません。

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ツマアカスズメバチは、日本の在来の大スズメバチやキイロスズメバチより攻撃的で獰猛で危険だそうです。このハチが増えると、人が刺される事故が増えそうです。

また、このハチの主食はミツバチだそうで、このハチが増えれば、養蜂家は大打撃を受けます。養蜂家だけではありません。 ミツバチによる受粉に頼る農作物も打撃を受けます。既にこのハチが定着した対馬では、ミツバチ不足が原因かは不明ですが、奇形の作物が増えたとの話もあります。 そして、もう一つ危惧するのは、西洋ミツバチに追い詰められ、数が減っている日本ミツバチがこの外来スズメバチによって、数を減らし、将来絶滅してしまうのではないか?ということです。

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まったく厄介なハチと言うべきで、これと比較すると、凶悪な在来種のキイロスズメバチですら、可愛く思えてしまうほどです。

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では我々はどうすべきか?

昆虫の一つの種を絶滅することの是非はさておき、具体的な方法は難しいのです。

北九州の人達は、ハチミツの入ったペットボトルの罠というかトラップを使って駆除しようとしていますが、根絶やしにするのは難しいでしょう。文字通り、ハニートラップにひっかかるのは、中国へ出張する鼻の下の長いVIPだけです。

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しかし、日本には、害虫駆除で画期的な成果を挙げた例があります。

南西諸島や沖縄、小笠原諸島に棲息したミカンコミバエやウリミバエの駆除の例です。

ご承知の方も多いでしょうが、この方法はユニークです。まずメスのフェロモンなどの誘引物質を使って、オスを集めます。 私だったら、そこで集まったオスを処分することを考えます。それだけで、世代交代の過程で確実に固体数を減らせるからです。

しかし、このプロジェクトでは、集まったオスに放射線を当てて不妊化します。

そして、そのオスを野に放てば、メスと交尾する訳ですが、卵は孵りません。次の世代の個体は少なくなります。

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これによって、南西諸島・小笠原諸島のミカンコミバエと沖縄のウリミバエの個体数は激減し、ついには絶滅宣言がだされました。今からン十年前、私が新婚旅行で出かけた沖縄からは、生の果物をお土産に持ち帰ることはできませんでした。今は違います。

もぎたてのシークワーサーも生で東京に運ばれ、絞りたてのジュースを飲むことができます。 しかし、これが成功したのは、島嶼部の限られた地域を対象にしたプロジェクトだったからです。世界を見渡せば、特に大陸で、ミカンコミバエやウリミバエは猛威を振るっています。

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余談ですが、シカゴの空港で入国審査を待つ人の列の間を、ビーグル犬が歩きます。犬好きの長男などは喜びましたが、その犬と遊ぶ訳にはいきません。これはオレンジドッグと書いた黄色の服を着た犬で、柑橘類の臭いに反応する特殊な犬です。ミカンコミバエ汚染地域から、生のオレンジを持ち込む旅行者を摘発するための犬で、この土地では生のオレンジは麻薬と同じ扱いを受けるのです。

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しかし、ミカンコミバエにしても、ウリミバエにしても、最初はフェロモンでオスをおびき寄せる訳で、一種の色仕掛けです。 どこかの国のハニートラップと同じであまり潔くありません。 そしてこの方法は、社会性昆虫である、スズメバチには多分通用しません。 ハチの社会でオスが活発に活動するのはハネムーンなどの一時期だけで、あとは女王蜂がひたすら卵を産んで働き蜂の数を増やす訳です。オスを相手にした作戦は「女だけの都」のハチ社会では空振りとなります。

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色気で釣ることができないなら、食い気です。スズメバチだけが罹るウィルス性の病気を発見して、そのウィルスを九州北部の養蜂家に供給してミツバチに塗るのです。ミツバチには気の毒ですが、ツマアカスズメバチに襲われて食べられてもらいます。そしてウィルスはツマアカスズメバチに伝染し、巣全体が死滅する・・という方法しか無いでしょう。 ミツバチには無害でスズメバチだけ(特にツマアカスズメバチのみ)が感染するという病原体はなかなか見つからないかも知れませんが、無ければ遺伝子操作で作ればいいのです(簡単ではありませんが)。

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もう時間的猶予はありません。 ツマアカスズメバチが対馬だけにいた頃なら、有効な対策がありますが、九州本土に上陸されたら、非常にやっかいなことになります。生物農薬については、禁断の方法とする人もいますが、今の時代、生物農薬こそが「神風」となります。

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それで駄目なら、どうしましょうか? 北九州の一部で行っているように、ペットボトルの中に、蜂蜜を入れておびき寄せる罠でしょうか? あるいは、台湾などにいるハチクマという、スズメバチ専門に食べる鷹を導入する方法もありますが、これも難しいでしょう。 在来種の日本のハチも被害を受けることになります。

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それより、なにより、問題なのは、この外来種の獰猛なスズメバチの侵入をマスコミがあまり報道しないことです。中国に対する遠慮なのか、韓国に対する遠慮なのか、分かりませんが、行政もあまり熱心にこの問題に取り組みません。

今、本当に必要なのは、フェロモンでも生物農薬でもハチクマでもなく、この問題と真剣に取り組むリーダー、つまり平成の北條時宗なのですが、今のところ、誰もいません。


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