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【 蓄電池電車の時代 そしてハイブリッド鉄道 】 [鉄道]

【 蓄電池電車の時代 そしてハイブリッド鉄道 】

いささか旧聞ですが、秋田県のJR男鹿線で、蓄電池式の電車が走ることになりそうです。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO94405180V21C15A1L01000/?n_cid=TPRN0011

これは栃木県の烏山線についでの話であり、JR東日本はこの分野に力をいれているようです。新聞報道では、烏山線では確認できない、寒冷地や積雪地帯での問題を確認するとのことです。ということは、最終的にはJR北海道が目標なのか?

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失礼ながら、烏山線も男鹿線も幹線にくっ付いた盲腸のような支線です。

幹線は、電化されており、未電化の区間が少しだけ残っている場合、そのためだけにディーゼルの車輌や、ディーゼル用のインフラを残すのは、ナンセンスです。電化するか、廃線にするか・・という選択の中で、ひとつの解決策として蓄電池式電車の案が出たものと理解します。

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営業キロ数をみると、JR男鹿線は26.6KmJR烏山線は20.4Kmとかなり短く、車輌に搭載する蓄電池(Liイオン電池)で充分賄える距離です。 それぞれ終点の男鹿駅あるいは烏山駅で再度充電して、帰ってくる訳ですが、本音を言えば、もう少し走行距離が欲しいところです。

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鉄道車両の場合、電気自動車と違い、電池がある程度重くても、あるいは嵩張っても許されるという事情がありますが、それでも普通の車輌の床下に設置できる大きさは限られます。 だから容量の大きなLiイオン電池を使っても片道20数キロの区間しか走れない訳ですが、どうも腑に落ちません。

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一足飛びに蓄電池型の電動化もいいけれど、走行距離が限られます。自動車と同じように内燃機関と併用するハイブリッド化がどうして進まないのか? 確かに小海線で細々とハイブリッドカーを走らせているけれど・・・どうして拡大しないのか?

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鉄道は、未電化区間のハイブリッド化、或いは電動化がひどく遅れた業界です。面倒なハイブリッド化や、バッテリーを積んだ電動化をするくらいなら、架線を引いて電化した方が早い・・という事情からですが、それ以外にも事情がありそうです。旧国鉄時代からJRの時代にかけて、日本の鉄道でディーゼル車輛は、とりわけ軽視され、冷遇されてきたのです。

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いろいろな乗り物・・というか輸送機械では、昔からディーゼル電気推進という方法がありました。例えば船舶の場合、内燃機関を発電目的だけに使い、その電力でスクリューを回すディーゼル電気推進の船がかなりあります。 動力を電力に変えて再び動力にする推進方式は、熱効率を考えると、非常に悪く、装置も複雑化します。

しかしそれを上回る、電気モーターの制御性の高さがあります。従って内燃機関の出力をほぼ一定に保てる海上の船舶にディーゼル電気推進は適していました。そして、ハイブリッドなどという言葉が無かった頃から、内燃機関と電気モーターを併用するシステムは存在しました。

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そう、海中では電気モーターに頼る潜水艦です(もちろん原子力潜水艦ではない方です)。 そして、日本は戦前も戦後もこの通常動力型と呼ばれるハイブリッドの潜水艦では、世界一の技術力を誇ります。造船王国日本ではディーゼル電気推進は確立された技術だったのです。 しかし、鉄道では・・・ディーゼルは疎外されています。

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日本のディーゼルカーの歴史を語ると、話が発散してしまいますが、特急用として華々しく登場したのは、東北本線の特急「はつかり」型のキハ80系です。その後、特急「白鳥」型のキハ82系へと引き継がれますが、それらは液体式で、エンジンの出力を流体を用いたトルクコンバーターで動輪に伝える方式でした。 そして、性能はどうしても、「こだま」型の電車特急に劣りました。

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ではディーゼル電気推進の方はどうか?と言えば、動力分散型の列車(要するに機関車を持たない電車やディーゼルカーを複数連結した列車)には向かない・・・という根拠の無い噂がでました。その為に特急列車には採用されません。 するとディーゼル機関車となりますが・・、船舶でディーゼル電気推進の技術力がある三菱重工は、1960年代に既にディーゼル電気推進型の機関車を開発し輸出しています。どこに納めたか・・というとパナマ運河の船舶牽引用機関車に納めています。三相交流型モーターを使用していますが、まだサイリスタやインバーターが本格使用される前で、定速走行を前提とした機関車と思われます。

ちなみに、パナマ運河では、閘門間の船の移動に機関車での牽引を行うそうですが、大勾配を上る箇所もあるそうです。 

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では旧国鉄はどうか?と考えてみると、ディーゼル機関車の代表であるDD51系列は米国の設計を元にした、ライセンス生産で、その後の派生型も米国の設計を下敷きにしており、しかも流体式、つまりディーゼル電気推進ではありません。

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ディーゼル機関車の王国とも言うべき米国ではディーゼル電気推進が一般的なのに、どうしてなのか?不可解です。そして国鉄はどうして自社開発しなかったのか? どうも国鉄では蒸気機関車の後は電動車両という考えで、ディーゼルに冷たかったようです。

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それはともかく、その後のハイブリッド化の為にもディーゼル電気推進は重要です。

平成の時代に入り、乗用車はハイブリッドカーの時代に入りました。最先端のシリーズ型と呼ばれるものは、内燃機関は発電用だけに用い、車体の駆動用には電気モーターのみを使います。 最先端の技術と言いますが、なんのことはない・・・。これはディーゼル電気推進のエンジンとモーターの間に電池を入れただけのことです。このシステムは戦前からイ号潜水艦で採用しています(無論、詳細の技術は全く違います。直流モーターと交流モーター、インバーターのVVVF制御の有無や、電池の種類等、違いは多くありますが・・)。 そしてこのシリーズ型のハイブリッドは自動車よりも鉄道で応用価値があるのです。なぜ利用しないのか?

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シリーズ型は難しいとしても、モーターアシスト方式の簡易型のハイブリッド化は可能ですし、非常に有用です。蒸気機関車の頃に比べれば、ディーゼルカーの排煙はわずかで可愛いものですが、それでも完全無煙化とは言えず、特に駅のホームを発車する時の加速段階では黒煙がでます。乗客や駅の周囲の人には迷惑なことです。これを無くすために、発進時と加速時のみ電動モーターでアシストする方式があります。 既に自動車の世界では、大型トラックやバス、あるいは軽自動車で採用され、当たり前になっている技術です。

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短時間で大電流を放電するには、二次電池よりキャパシター(コンデンサー)の方が適しています。嵩張りますが劣化が少ないのです。停車する際、減速時に回生ブレーキを使ってキャパシターに充電し、発車する際にモーターアシストすれば、黒煙は防げ、騒音振動もなく、燃費も向上します。

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仮にキャパシター充電が使えないとしても、モーターアシスト区間のごく短距離だけ架線を引いてパンタグラフ集電し、電気モーターを動かすことも低コストで実現可能です。

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あるいは黒煙を嫌うトンネル走行中のみ、電池かキャパシターの電力に頼る運転方式もありえます。ちょうど潜水艦が潜航中は電池で走り、海上ではディーセルで走るのと同じです。 これだけでディーゼルカーのイメージは随分向上します。鉄道事業者の方は既存のインフラをそのまま使い、車輛を新しくするだけで対応できます(車輛を新規更新する機会があるならハイブリッドにすべきです)。

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シリーズ型であれ、モーターアシスト型であれ、これは今すぐ活用できる技術であり、特に、未電化の長距離路線が残るJR北海道に適した技術です。トヨタにできるハイブリッドカーがJRや鉄道総研にできない・・とは思えませんが、もし必要ならトヨタの協力を仰いだっていいのです。小海線の一両編成の列車ではなく、長編成の特急列車を開発すべきです。 繰り返しになりますが、動力分散型にはディーゼル電気推進は向かない・・というのは、迷信であり、電池を介さず、しかも直流モーターだった時代の話です。呪縛は解かれるべきです。

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そしてJRが本命と考える蓄電池車両ですが、これは未電化区間の完全無煙化を実現しディーゼルカーを駆逐できる切り札となる技術です。 しかし、前述の通り、走行可能距離が短いのが難点です。でも、工夫次第でどうにでもなります。

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私がこの車輛を使いたいと思うのは、鹿島臨海鉄道の大洗鹿島線とJR西日本の大糸線の未電化区間(糸魚川=南小谷)です。両方とも行き止まりの盲腸ローカル線ではなく、終点で別の鉄道の電化区間に繋がる路線です。そして電化する場合にトンネルの作り直しが必要になるなど、電化が困難な路線です。 そういう路線こそ、蓄電池電車が有効なのです。

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問題は大洗鹿島線で53.0km、大糸線の糸魚川=南小谷間で35.3Kmという長い営業キロ数ですが、これらの路線は単線であり、途中で必ず対抗列車待ち合わせの停車駅があります。 大洗鹿島線の場合は、大洗か鉾田に充電設備を設ければ、長距離走行が可能です。実質的に烏山線や男鹿線と同じ条件になります。

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それで、実績を積めば、次はJR高山線の特急「ひだ」の蓄電池電車化です。そして最後はJR北海道の完全無煙化です。

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話は変わりますが、台湾の高雄市に新しくできる路面電車には架線がありません。各停留所で充電し、次の停留所までは電池で走行するシステムです。全面蓄電池式鉄道の先行実施例です。なぜ台湾にできることが日本にできないのか? (正確には、高雄市の路面電車はスペインの技術だそうですが)。

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えっ?市電の架線を無くせるのなら、JRのローカル線の蓄電池電車化より先に、祇園祭で難儀する京都の市電でこの技術を採用して欲しい・・・ですか? 

なるほど


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