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【 日本の立場、トルコの立場 】 [政治]

【 日本の立場、トルコの立場 】

 

トルコが世界有数の親日国であることは広く知られています。そしてその理由もさまざまに解説されています。そこにはいろいろな説があります。

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例えば、明治時代に和歌山沖で難破したトルコの軍艦エルトゥール号の乗組員の救出に、地元の人達が危険を顧みず、命がけで尽力したことがトルコの人々に感銘を与えたという説。(今度、映画化されて、もうじき封切りになるみたいですね)。

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或いは、長い間、トルコは大国ロシアから圧迫され、露土戦争でも敗北し、悔しい思いをしていたところで、日本が日露戦争でロシアを破り、鬱憤を晴らしてくれたことに対する共感・・という考え方もあります。調べてみると、トルコとロシアは仲が良かった時代はなく、しょっちゅう戦争をしています。露土戦争は第一次から、第五次まであり(第六次までとする考え方もあります)、その内、英国とフランスがトルコに味方したクリミア戦争以外は、全て、トルコが負けているのです。

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トルコとしては、同じように大国ロシアの隣に位置して、圧迫されながら屈服せず、ついにはこれを戦争で負かした日本を見て、おおいに溜飲を下げたはずです。だから親日的なのだ・・と言われると、なるほど・・とは思います。

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でもトルコと日本の共通点は他にもあります。もっと根源的な何かです。私は、19世紀から20世紀にかけて、欧米を目指して近代化に取り組み、成功した非キリスト教国家は、日本とトルコだけではないか?と思います。そして現在、日本とトルコは殆ど、欧米の一員です。その共通点が相互に共感を持つ原点ではないのか?

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「日本が欧米の一員?」と疑問に思われる方もいるでしょう。 しかし、他のアジアの国の人からみたら、いち早く近代化した日本は、アジアではなく欧米に見えた時代があります。 

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相方の外国人のような仕草に「欧米かよ?」と突っ込む漫才がありましたが、中国、韓国の人達からは、日本がアジアを嫌い、欧米の一員になろうとあがいている見苦しい民族に見えたようです。

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西郷隆盛が征韓論を唱えた背景には、明治維新でシステムを近代化した日本に対して、李氏朝鮮が「東洋の文化を放擲して西洋の真似をするとは愚かなこと」と(上から目線で)酷評したことへの反発もあります。

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日本の立場に立って自己弁護すれば、何も好きで西洋カブレした訳ではなく、国家の独立を守るための、必要な手段だったと・・と言いたいです。 当時、科学技術・産業・軍事力・社会システム等の物質文明では、明らかに東洋より西洋の方が進んでいましたし、もし軍事力で弱みを見せれば、阿片戦争で敗れた清国のように、欧米列強に蹂躙されるのは火を見るよりも明らかで、国の存立も危うかったからです。だから生き残りのために近代化が必要でした。

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そして19世紀から20世紀にかけて、近代化するとは、即ち欧米化することだったのです。しかし、東洋人のプライドを持つ、アジアの一部の人は、今でも西洋カブレを軽蔑します。中国では米国留学を経て帰国した、いわゆるウミガメ族の人などが、欧米を礼賛するたびに、彼らを香蕉(バナナ)と言って軽蔑します。

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バナナは、外見は黄色いけれど、一皮向けば、中身は白っぽい訳で、外見は黄色人種だけれど精神は白人・・という人を揶揄する言葉です。日本などは、国家ぐるみで「このバナナ野郎!」と罵られそうです。

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脱線しますが、人形劇「チロリン村とくるみの木」では、純日本的な野菜村であるチロリン村の隣に果物の村があり、バタ臭いというか、西洋的な暮らしをしていました。そこに登場するバナナ君は自家用車を乗り回していました。昭和30年代の半ばです。

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ところで、このバナナ野郎の国がアジアの西にもあります。アジアとヨーロッパの中間にあるトルコです。この国は典型的なイスラム国ですが、日本の明治維新に少し遅れて近代化を図りました。ケマル・パシャこと、ムスタファ・ケマル・アタチュルクが国家の近代化つまり欧米化を強烈に進めたのです。多分、当時の日本とトルコは相互に同士的な親近感を持っていたはずです。

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しかし、両国とも、西欧に近づこうとしても、本当の西欧にはなれません。日本人はその多くがモンゴロイドで仏教徒です。 トルコは人種的にはモンゴロイドにコーカソイドが混血して、外見は白人に近い人もいますが、やはりアジア人です。そしてその多くがイスラム教徒です。 だから、欧米は、トルコをメンバーに加えません。

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第二次大戦後、自分を欧州の一員として認めて欲しいトルコは、イスラム諸国でただひとつNATOに加盟し、米軍に基地を提供しています。 冷戦の間、その基地からU-2偵察機がソ連の監視にでかけ、有名なパワーズ大尉撃墜事件が起こりました。

そのトルコが今度は領空侵犯したロシア機を撃墜したのですから、皮肉なことです。

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NATOの一員として負担を分かち合っても、トルコはEUには入れてもらえません。ドイツに出稼ぎに行く人が多くいるトルコでは、EUの一員になれるか否かは経済面で重要な問題です。しかし、EUはトルコの加盟を拒否します。

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安価な労働力供給源となる国は困るという考えもありましょうし、既にEUの一員であるギリシャの反発もあります。 余談ですが、ギリシャとトルコの仲の悪さはご承知の通りです。ロシア=セルビア=ギリシャと繋がる、オーソドックス(正教)系のキリスト教とトルコ国民のイスラム教は・・とにかく仲が悪いのです。

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アジアの一員として、欧米とは親密な関係を維持したいというだけの日本と、欧州人の一員として仲間に入れてくれというトルコでは立場が微妙に違うのですが、欧州各国は、押しなべてトルコには冷淡です。対ロシア戦略では、便利屋として使いますが・・。

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でも、そろそろ、西欧各国は、トルコの貴重さに気付き、トルコから学ぶべき点が多いと気付くはずです。

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これまで、欧米とはキリスト教徒の国々でした。でもこれからは、多民族・多宗教の混沌の世界にならざるをえません。経済難民、政治難民、出稼ぎ者・・・の多くはイスラム教徒です。その中には自称イスラム教徒のテロリストも混じります。そして欧州は宿命的に難民を受け入れざるをえませんが、生活習慣の違い、人種民族の違い、思想信条の違いから、旧来の住民の拒絶反応はひどく、摩擦は不可避です。

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そこで、イスラム教徒でありながら、社会システムを欧米のそれに合わせて近代化したトルコの知恵が生きるのです。いち早く、一夫多妻を止め、女性も教育を受けて仕事に就き、なにより髪をスカーフで覆わなくてもよい数少ないソフトなイスラムの国を参考にしてイスラム教徒がキリスト教徒と仲良く暮らす方法を模索すべきです。

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決して先鋭的ではなく、寛容で穏やかなイスラム教徒と、排他的ではないキリスト教徒が互いを認め合えば、いろいろな社会の仕組みで妥協点が見つかるはずです。

フランス国内のイスラム教徒は、トルコ方式で女性は髪を隠さないし、一夫多妻も禁止だけれど、モスクでの礼拝は認める・・といった具合です。 これはサウジアラビアやイラン、イラクにはできない芸当です。穏健なトルコだからこそできることです。

そう言えば、トルコを近代化したケマル・アタチュルクは、本当はユダヤ人で、ユダヤ教徒だったようです。実に不思議な国です。


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