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【 大砲とバター、そしてチーズ その2 】 [雑学]

【 大砲とバター、そしてチーズ その2 】

 

TPPでニュージーランドやオーストラリア、米国、カナダの乳製品が津波のように日本に押し寄せてくるかも知れません。 では日本はどう対応すべきか? 国産品の生き残りのためにも、乳製品の消費量を増やすキャンペーンをせねばなりません。

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日本人のチーズ摂取量は西洋人と比べるとまだ少ないようです。これはなぜか?

日本では、四足を食べない仏教の教えの影響で、肉食文化の歴史は浅いようです。でも牛乳は違うはずです。お釈迦様だって村娘スジャータから寄進された牛の乳をお飲みになりましたし、牛乳を飲むことは殺生にはあたりません。 なぜ、日本では動物の乳や乳製品を摂る文化が発達しなかったのか? どうもよく分かりません。

(牛乳を飲むと牛になるという迷信があったから・・という馬鹿げた説は無視します)。日本でチーズの消費量を拡大する余地はあります。しかしそれには時間がかかります。

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私は、その国の食文化を代表するものは麺類と発酵食品だと考えています。どの国に行っても、それなりにおいしい麺類があり、独特の発酵食品があるからです。麺類の方は抵抗なく食べられますが、発酵食品の方は、慣れるのに時間がかかります。

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外国人で日本に長く住む人が、納豆を食べ、フナ鮨のようなナレ鮨に舌鼓を打つようになれば、本当に日本の食文化になじんだのだなぁ・・と感心します。

一方、ベトナムが好きな私ですが、「ニョクマムは好きか?」と訊かれると「いやまだです」と答えざるを得ません。 また、私はチーズ大好き人間を自認しますが、時に強烈な臭気とおびただしいカビの不思議なチーズに出くわすと、食べるのに勇気を要します。その時は落語の「チリトテチン」を思い出し、「発酵と腐敗の違いは何だろうか?」と考えながら、鼻をつまんで口に入れます。 私はまだまだ完全にチーズ食文化をものにしたとは言えないのです。 そして多くの日本人はたぶん私と同じです。

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そういう訳で、外国の発酵食品になじむには時間がかかります。昭和30年代の資料でかなり古いのですが、小学校の学校給食にプロセスチーズを出したところ、児童の好き嫌いに地域差が出たという結果があります。

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都会の子供達はチーズを喜んで食べ、残した子も少なかったけれど、田舎の子供はチーズを嫌い、食べ残しも多かったという結果です。調査レポートでは、都会の子供は洋食に慣れていて、チーズの味にも抵抗が無いけれど、地方はそうではなく、チーズに抵抗を感じた子が多い・・と結論づけています。

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これは50年前の話ですが、繰り返しになりますが、発酵食品がその国の食卓になじむには時間がかかります(例外は韓国のキムチです)。だから、今でも日本ではチーズの消費量が少ないのです。 そして今こそ学校給食にも取り入れ、子供達が積極的にチーズを食べるようにすべきなのです。

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日本の酪農振興策のもう一つの柱は差別化とブランド化です。

幸か不幸か、外国でもチーズは高価な食品として認められています。庶民向けの安価なチーズもあれば、高級レストランのワゴンに納まっている贅沢品まで、さまざまです。 日本が狙うべきは高級品の方です。 伝統を誇る日本の発酵食品工学を駆使して高級チーズを開発すべきです。

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仏教の大般涅槃経によれば、大昔、乳製品には5つの段階があったそうです。

乳から始まり、酪、生酥、熟酥を経て、最終段階は醍醐です。でも今は作られていません。製造技術も消滅しました。 そして日本語の比喩として、世の中で最も美味なるものは、今は存在しない醍醐ということになっています。 酪農や発酵食品開発に従事する者にとって、醍醐の復活こそが醍醐味だと思うのですが、まだ実現していません。

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噂では、醍醐の味とはヨーグルトまたはカルピスのそれに近いということですが、理解できません。 醍醐がヨーグルトだとしても、それよりチーズの方が、味が深いように思うのですが・・。 また蘇(今のチーズ)から製造したという説もあります。

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日本で最初にチーズを食べた人は水戸黄門だと、茨城県人は信じています、彼は蘇(チーズ)の段階までしか、到達しておらず、醍醐の製造には成功していません。 彼が果たせなかった醍醐の復活に、水戸の納豆職人は挑戦しないのか?

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もし醍醐を復活させ、日本オリジナルの至高の乳製品として売り出せば、世界中に輸出できるでしょう。少なくとも大般涅槃経を信奉する仏教国には売れるでしょう。

でもそれはそれで問題があります。 日本で至高の乳製品が製造されるとなったら、その産地を欲しがる国がでてくるかも知れません。

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ご承知の通り、隣の中国では食事の西欧化が猛烈な速度で進行しており、チーズ(芝土)の消費量もウナギ上りだそうです。そしてワインと同様、上等でおいしいものは輸入品に限る・・と、かの国の人は考えています。

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もし、隣国日本で、至高の乳製品「醍醐」が造られると聞いたら、国ごと奪い取ってしまえ! などと乱暴なことを考えるかも知れません。 そんな馬鹿な事はありえない・・と思いたいのですが、世界史には前例があります。

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フランスワインをこよなく愛した英国王は、ワインの産地であるボルドー地方を我が物にせんとして、100年戦争を始めたと言われています(少なくともフランスの人はそう信じています)。

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大砲にお金を費やしてバターが買えなくなるのは困る。だから大砲の代りにTPPに参加した。でもそれで日本の酪農が廃れ乳製品が無くなるのも困る・・ということで、至高の乳製品「醍醐」を開発したら、外患を招いてしまった・・・大砲が必要だ・・・となれば、何とも皮肉ですが、そんな事には多分ならないでしょう。

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「チーズの来た道」の著者、泉下の鴇田文三郎教授なら、苦笑いして「バカバカしい。そんなことは、醍醐を復活させてから言え」と言うかも知れません。

 

【 追記 】

中国語では、チーズを芝土と書きます。中国語では外国由来の名詞には、その意味から漢字を当てたもの(電脳=コンピューター など)と、その発音から当て字したもの(三文魚=サーモン:鮭など)の2種類がありますが、芝土は後者の方です。

酪や醍醐など、乳の発酵食品を意味する漢字がたくさんあるのに、敢えて発音で漢字を選んだのは、下手に既存の漢字を使うと誤解されるからかも知れません。

では英語のチーズではなく、フランス語のフロマージュという単語が中国に入っていたら、どんな漢字を使ったでしょうか? 風麻寿ぐらいでしょうかね?


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