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【 大砲とバター、そしてチーズ その1 】 [雑学]

【 大砲とバター、そしてチーズ その1 】

ご承知の通り、国家予算を軍事に使うか、民生・福祉に使うかという判断にあたって、比喩的に「大砲かバターか?」という言い方をします。実際には、以前のブログに紹介しましたとおり、フランスでは軍の糧食用のバターが不足するという皮肉な事態となり、その代用品としてマーガリンが開発されたのです。今、欧州各国では軍事費が国家予算を圧迫して福祉に支障がでる・・ということはあまりありません。現在、多額の軍事費が国家財政を圧迫すると懸念されるのは、ロシア、中国、北朝鮮、イスラエルなどです。

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でも実はこの比喩は形を変えて、今も残っています。21世紀の現代、膨張主義や軍国主義を進める隣国があるとしても、それに対抗すべく軍備を拡張していく・・・というのが必ずしも現実的とは限りません。隣国のように大砲に無制限にお金をかけることはできません。大砲は必要かも知れないけれど、バターを犠牲にはできない・・。むしろ周辺諸国と同盟を組んで、膨張主義を進める国に対抗するのが適切です。

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ここで重要なのは、その同盟が必ずしもNATOや日米安保条約のような軍事同盟とは限らないということです。 TPPEU(その前身のEC,EEC)のような経済連携協定も立派な同盟であり、実は軍事費を抑制するのに役立ちます。

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国家間の争いは軍事的な戦争だけでなく、経済、文化、情報というあらゆる分野に存在します。軍事衝突という「熱い戦争」は最後の最後の手段です。 隣国との間に領土主権などを巡る諍いがあっても、それですぐに戦争だの徴兵だのを考えるのは、19世紀的思考の単細胞の人です。

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隣に、経済成長が著しく、軍事力と領土の拡張に野心的な国家があるとして、それに対抗するには、周辺諸国と同盟を結ばなければならない。まずは経済・産業面で同盟を組む必要があります。経済戦争は必ず熱い戦争の前に勃発します。

その際、重要なのは第一に価値観の共有です。民主主義を尊び、それを実践し、自由主義で、宗教、思想、言論の自由と多様さを認める国々と手を携える必要がありますが、実はこれはそう簡単ではありません。

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民主主義の成熟度は国によってさまざまです。 信教の自由や、表現・報道の自由を誠実に守っている国もごく少数です。 だから、多少のことには目をつむって、地理的な理由などを根拠に同盟を組むしかありません。 小異を捨てて大同を取る訳ですが、EUTPPはまさにその典型です。

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他人と仲良くするには我慢も必要・・と、我々は幼稚園の庭で学びますが、TPPもまた痛みを伴います。日本の場合、TPPによって深刻な打撃を受ける分野は数多くありますが、農業での痛みが最大でしょう。 私はその中でも乳製品を製造する産業が甚大な影響を受けると思います。安価なニュージーランド産のバターやチーズ、ヨーグルト、さらには牛乳そのものが入ってくれば、日本の酪農はこのままでは多分持たないでしょう。日本は大砲を節約するうえにバターもあきらめるのです。

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実はTPPの協議が白熱した頃から、日本ではバター不足が深刻になりました。スーパーマーケットの店頭ではバターが姿を消し、ケーキ屋さんはクリスマスケーキに使うバターが足りない・・と言って嘆いています。こちらの方は、フランス軍とは違い、マーガリンで代用する訳にはいきません。 どうやらこれは、政府がTPP妥結に向けて、乳製品輸入を許容する方向に世論を誘導する工作だったのではないか?と思います。TPP大筋妥結の後、急に店頭にはバターが並ぶようになりました。姑息なことをするものです。 日本の農業を守る事を真剣に考える人はいないのか?

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でも、TPPで痛みを感じるということは、そもそも、これまでの国内の産業のありかた自体が、不自然で不適切だった・・・ということに他なりません。 

ある自民党議員がTVで日本の酪農の悲惨さを訴えます。

「北海道の酪農家は、牛乳の価格が下がり、売れ行きが低迷して、牛の餌代も出ないと言って泣いているのですよ。 売りに出しても仕方ないから、せっかく取った牛乳を川に捨てているありさまです」

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これほど、馬鹿げていて、矛盾に満ちた発言はありません。彼は農家の窮状を訴えますが、だからどうしろというのか分かりません。 補助金をばら撒けというのか?酪農家は乞食ではありません。 TPPに反対しろというのか? でもこの問題はTPP以前からあります。 一体、何をどうしろと言うのか?

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売れなくて困っているのなら、販売促進策を講じるべきです。 それなのに、学校給食では牛乳が米飯に合わないから・・という訳の分からない理由で牛乳を献立から外しています。生産価格が高すぎるなら、牛の飼料の価格を安くする方策を考えるべきです。

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日本は、これまで牛肉輸入の完全自由化を回避してきましたが、実は飼料の方はほぼ100%輸入に頼っています。だから米国としては、牛肉を日本に売れなくても、飼料の供給で日本の畜産をコントロールできる訳で、彼らの思いのままになっています。米国は不当に高い価格で飼料を日本に押し付け、日本の畜産と酪農を追い詰めています。

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これはもともとは畜産の問題から始まったことですが、酪農もとんだとばっちりを受けている訳です。それに加えて、日本では北海道の某社など、一部の巨大資本が、乳製品の市場を牛耳っていて、価格を高く維持しています。その結果、日本の乳製品は不当に高く、その結果、需要も喚起されずジリ貧になっているのです。

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そんないびつな構造に風穴を開けるのなら、ニュージーランドのバターもチーズも大歓迎・・というのが、オヒョウの意見です。

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しかし、それでは日本の農家は困るだろう・・・。 必要な対策は2つあります。

一つは乳製品の国内消費を積極的に拡大することです。

もう一つは、他の産業や他の農作物と同じようにブランド化、差別化を図り、高コスト高価格の国産品が、国内市場や海外市場で生き残れるようにすることです。

Cheeze.jpg

それについては次号で


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