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【アスタ・ラ・ビスタ】 [アメリカ]

【アスタ・ラ・ビスタ】

アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画「ターミネーター」は人気があり、幾つも続編ができています。 この映画については語るべき点が非常に多いのですが、映画の最後に、主人公が語るセリフが、毎回話題になります。 “I’ll be back!”は文字通り、「また戻ってくるからな」であり、彼が守る少年に語りかける言葉です。そして、観客に対しても、「きっと続編を作るからまた観てくれよ!」と語っているようです。

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しかし、分からないのはスペイン語で話す「アスタ・ラ・ビスタ」です。 なぜ彼は映画の最後に唐突にスペイン語で話したのか?

英語が当たり前の標準語である米国では、奇をてらう時、ちょっと気取る時、特別の意味を持たせる時に、アクセントとして会話に外国語を挟むことがあります。

普通はフランス語だったりラテン語ですが、日本語が登場することもあります。

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例えば、別れる時に、Good byeではなく、サヨナラといったりします。では、ターミネーターは単なる洒落としてスペイン語を使ったのか?どうもそうではなさそうです。

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全く付け焼刃の知識で恥ずかしいのですが、「アスタ・ラ・ビスタ」の意味は少し複雑なようです。 直訳すれば「いつかまた会おう」ということになりますが、期日を規定せずに、(いつかその内に)・・・というのでは具体性の乏しい提案となります。ラテン系の人々の性格を考えると、日にちを決めない・ということは、もう会う積もりなどない・・という意味にも解釈できます。 つまり「あばよ。もう会わないぜ!」という訳も可能になります。

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さらには、この世では会う積もりは無い・・というのであれば、「あの世で会おう」という意味になります。 映画の字幕スーパーでは、多少露悪的に「地獄で会おうぜベイビー」となっていたような記憶があります。 だから、最後のセリフの意味に多用な解釈の可能性を持たせて、判断は観客の想像に委ねる・・ということかも知れません。

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うーむ、CGを駆使した、ただのアクションSF映画だと思っていたけれど・・かなり文学的なセリフが登場するのだ・・と感心するほどの事ではありません。

しかし、この映画にスペイン語が登場した意味については別の角度から考える必要がありそうです。

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ここで考えるべきは、米国の中でスペイン語が市民権を得つつあるということです。合法、不法を問わず、米国に暮らす中南米出身者つまりヒスパニック系の人々は増えつつあります。近い将来、彼らはアングロサクソンだけでなく全ヨーロッパ系のアメリカ人(つまり白人)の人口を上回る可能性があります。これは移民による社会増だけでなく、白人に比べて高い出生率による自然増も関係します。

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アジア系でも黒人でも白人でもなく、ヒスパニックが米国の最大多数となる日がやがて来るのです。問題はその数ではありません。かつてアメリカで暮らす人々はフランス出身だろうとイタリア出身だろうと、ドイツ出身であろうと英語を学び英語を話しました。英語が母国語の英国出身者やアイルランド出身者には当たり前ですが、そうでない人々も苦労し英語を習得しました。 渡米した一世の世代では無理であっても、二世の世代は英語を母国語とする世代でした。 無論、日系や中国系も同様です。

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ところが、人口比でマジョリティになった場合、果たして彼らは英語を学ぼうとするだろうか?と私は考えます。スペイン語だけで生活できる環境が実現すれば、ヒスパニックの人々は、なにも英語を学ぶ必要はないではないか?

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この環境が、米国の南部と西部で実現しつつあります。未来の世界からカリフォルニアに現れたターミネーターは、未来のアメリカがヒスパニック中心の国になっていることを知ったうえで、「アスタ・ラ・ビスタ」と言ったのかも知れません。 ちょっと穿ちすぎかも知れませんが・・・。

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現代の米国は、マイノリティに配慮しハンデを設けるアファーマティブアクションを是としています。マイノリティに強制的に英語を押し付けることを否としています。

このあたり、昔の弊ブログ【 セサミストリートの挫折 その1、その2 】に既に述べておりますので、重複は避けます。

http://halibut.blog.so-net.ne.jp/2010-03-31

http://halibut.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01

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ここで明らかなのは、・・・複数の言語を標準語として認めると、多民族国家の場合、国としてのまとまりは、必ず弱くなり、国力は低下します。 元のアラスカ州知事である共和党のペイリン女史は、その点を強く危惧しています。

http://www.sankeibiz.jp/express/news/150908/exd1509080000001-n1.htm

彼女は、大統領選に出馬するトランプ候補を応援するスピーチの中で、「アメリカに住むなら米語を話しなさい」と訴えていますが、この考え自体は正鵠を射たものだと思います。 マスコミは、トランプ候補が、「アメリカ人は英語だけを話すべきだ」と訴えたのに対して、彼女は英語でなく米語と表現したことを面白く取り上げています。

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彼女が知事をしていたアラスカ州は、かつてイヌイット(エスキモー)の言語を抹殺し、西側地域に残っていたロシア語を排斥し、英語で統一しました。彼女の発言はアラスカ州の歴史に基づいたものかも知れません。

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しかし、実際のところ、トランプ氏とペイリン氏が本当にそう思っているのか、あるいはスペイン語が堪能でメキシコ人を奥さんに持つ、元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュ候補への単なる当て付けなのかは分かりません。 実際、前回の選挙で、ペイリン氏がアジア(特に日本)について全く無知であることが明らかになり、「とんでも発言」が多かったことを考えると、彼女の発言は信用できません。

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一方、ジェブ・ブッシュ氏については、彼の発言が常に思慮に満ちたものであることや、温厚篤実な性格であるとの世評を考えると、どうしてもこちらに軍配があがります。

少なくとも、兄ブッシュよりかなりまともで、パパブッシュに近い存在のようです。

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大統領選の共和党候補が誰になるか・・とは関係なく、私は、アメリカで暮らす以上は、英語を学び、英語を話せるべきだ・・という考えは、その通りだと思います。米国の標準語も英語(米語)ひとつでいいと思います。 でも、その上でアメリカ人も外国語を学び、他国の人を理解すべきだと思います。 ジェブ・ブッシュはそれを実行しています。そういえば、かの文豪ゲーテも、「外国語に無知な者は、自国語についても無知だ」と語っています。

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ジェブ・ブッシュが知事をしていたフロリダ州では、既にスペイン語が相当通用しますが、今後、キューバとの国交が正常化されれば、ますますスペイン語が普及するはずです。ブッシュの考えは米国南部では広く支持されるはずです。 言語の問題は、移民問題とも絡まり、米国内で重要な問題になりつつあります。ひょっとしたら、スペイン語を認めるか認めないか・・で、米国に新たな南北戦争が勃発するかも知れません。

共和党の大統領候補選びはその前哨戦です。

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最初は英語教育から始まり、今はスペイン語も認める教育番組、「セサミストリート」をジェブ・ブッシュも、ペイリンもトランプも子供の頃見たはずです(世代的には)。ただそれが英語だけのセサミストリートなのかスペイン語OKのセサミストリートなのかは分かりません。

そしてオーストリアで育ったターミネーターことアーノルド・シュワルツェネッガーは、多分セサミストリートを見ていないはずです。                           
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