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【 尾道映画資料館 その1 】 [映画]

【 尾道映画資料館 その1 】

 

広島県での勤務が決まった時から、一度訪れてみたいと思っていた場所があります。

それは尾道です。ご承知の通り、この町は日本文学の多くの作品の舞台になっている・・というより、私にとっては多くの映画の舞台になった場所・・ということで、特別な意味があるのです。

 

ちょっと思い浮かべるだけで、尾道が登場する映画は幾つも挙げられます。

 

小津安二郎  東京物語

新藤兼人    裸の島

山田洋次    故郷

斎藤耕一    内海の輪

成瀬巳喜男    放浪記 放浪記は何度も映画化されています

大林信彦    時を駆ける少女 アニメ版もあります

佐藤順一    たまゆら ご当地アニメのひとつですが正確には竹原が舞台です

沖浦啓之    ももへの手紙

 

アニメの2作品は、正確には尾道が舞台ではなく、竹原や大崎下島が舞台ですが、雰囲気としては「尾道映画」の近縁種と言えます。いつごろからか、アニメ映画が特定の町を舞台にした「ご当地アニメ」の形になり、ファンがその舞台を訪ねる「聖地巡礼」が流行になりました。

その現象については、Y教授の著作である、「サブカルチャー聖地巡礼アニメ聖地と戦国史蹟」に詳しいので、オヒョウ如きがコメントするのは不適当です。

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B5%E3%83%96%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E8%81%96%E5%9C%B0%E5%B7%A1%E7%A4%BC%E2%80%95%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E8%81%96%E5%9C%B0%E3%81%A8%E6%88%A6%E5%9B%BD%E5%8F%B2%E8%B9%9F-%E7%94%B1%E8%B0%B7-%E8%A3%95%E5%93%89/dp/4872948823

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昨今は、いろいろな地方都市や、ローカル線の鉄道が、町おこしや町の知名度を上げるために、映画やTVのロケ地として立候補し、作品の争奪戦になっていますが、映画都市尾道は、その先駆けとも言えます。

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そして、映画の舞台を訪ねる「聖地巡礼」は悪くない趣味です。私も、上記の懐かしい映画の舞台を見てみたい・・という思いで、休みの日に一度尾道へ行こうと決めました。

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しかし、呉から尾道はちょっと遠いのです。映画「故郷」で井川比佐志と倍賞千恵子が乗った電車で行くことも可能ですが、電車の本数が少ない。

自動車では時間がかかるのですが、その代わり国道沿いの瀬戸内海の沿岸の風景は絶品です。私は自動車で行くことにしました。 

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ある秋の土曜日、私は午前中に呉での用事を終え、尾道に出発しました。

秋の(安芸の)午後の穏やかな日差しの中、瀬戸内海は凪いでいて、波がきらきらと光ります。 うーむ、この軽自動車ではなく、「昔愛していたオープンカーのライトスポーツカーで走れたら最高なのになぁ」と思いながら東に向かいます。

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やがて、竹原、三原を過ぎたら、尾道はすぐ目の前です。

そして尾道の市内に入ったら、まずは丘を目指します。

尾道に来たら、最初に高い丘の上から市街を見下ろさなければなりません。

曲がりくねった細い道を走りながら、ああ、軽自動車でよかった・・と思います。細いのに、一方通行になっていない山道で対向車とすれちがうには軽自動車が適しています。

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丘の上から、細い街並みと狭隘な水道、対岸の島と造船所を一望すれば、他にランドマークが何もなくても尾道だと分かります。全ての監督は、その俯瞰シーンを挟むことで主人公が尾道にいることを示すのです。

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東京物語の笠智衆は、その尾道の街を見下ろしながら、「今日も暑うなるなぁ」と、戦死した息子の嫁である原節子に語り掛けます。 老妻を亡くし、その喪失感と虚無感を、わずか一言のセリフに表現します。 その演出は、小津と笠と尾道の町の組み合わせだけがなしえたのだと、私は考えます。

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笠智衆は、その後の山田洋次の「『故郷』にも登場します。倉橋島での砕石運搬船の仕事をあきらめ、尾道の造船所の職工に転職する息子(井川比佐志)を見送り、島に一人残る老人を演じています。 一人残される老人の役・・・これはある時期、笠智衆の独壇場でした。

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それにしても、造船所に勤務する事はそれほどまでに忌むべき嫌なことなのか・・・。

造船所が登場する映画では、この他に「居酒屋兆次(函館ドック)」や「海炭市叙景(函館ドック)」がありますが、いずれも造船所に勤務した結果、葛藤を抱え、不幸になる主人公が登場します。

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市街を見下ろす丘を降りたら、今度は海岸に近い尾道映画資料館を目指します。小津安二郎と新藤兼人の資料が充実しているとのこと。ここを見逃すわけにはいきません。http://www.bbbn.jp/~eiga2000/

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新藤兼人の「裸の島」は、不覚にも私が涙を流した映画の一つです。

映画には、カラーの方がいい映画、白黒の方がいい映画というのがありますが、無声の方がいい映画というのは稀です。「裸の島」は無声映画だからこそ、見応えがあり、心に響く映画です。無声映画でよかった・・というのは、新藤兼人の他は、チャップリンの初期の作品ぐらいしか思い当りません。

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小津と新藤の資料が充実しているなら、見学する価値大です。

しかし、尾道の市街地は狭く、駐車場が少ないのです。 しまった軽自動車ですら不便だ。 やはり鉄道で来るべきだった・・と思ったのですが、意外にも尾道映画資料館の前には広い駐車場があります。そしてその駐車場の先はすぐ海です。

「これはありがたい・・」と思って、私はその駐車場に車を入れ、古い土蔵を改造したような、映画資料館に入りました。 それが、騒動の発端だったのですが・・・。

 

以下、次号


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