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【 ある日の京成スカイライナー 】 [中国]

【 ある日の京成スカイライナー 】

 

先月末のことです。私は成田空港から日暮里に向かう京成スカイライナーに乗ろうとしていました。発車まで時間がなく、あわててエスカレーターを降りようとした時、30代と思われる男性とぶつかりそうになりました。彼はとっさに体を引いて私に道を譲りました。

お礼を言う余裕もなく、私はホームに入ってきた電車に飛び乗りました。

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電車が滑り出し、やがてトンネルから地上区間に出た頃です。窓の外には、成田市の秋の風景が広がっていました。通路を挟んだ反対側の席に中国人一家と思われる4人が着席しました。

「パパ、ここが空いているよ。座ろうよ」と子供の声が聞こえます。それは中国語(北京語)です。ふと見ると、その父親は、先ほどエスカレーターでぶつかりそうになった男性です。

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私は嫌な予感がしました。「この一家は日本に着いたばかりだろう。空港から東京行きの電車ということで、この電車に飛び乗ったのだろうが、スカイライナーは特急券が必要で、しかも全車指定席だ。彼らはそれを知らずに乗ったとして、必ずやってくる車掌の車内検札で、特急券を買わされることになる。でも、かっての分からない中国人は追加料金の徴収を理解できずに、車掌と揉めるかも知れない。 トラブルになったら気の毒だな。日本の印象も悪くなるだろう。 車掌が来る前に、僕が説明してあげようかな・・。でも僕の拙い中国語ではうまく説明できないし、トラブルに巻き込まれるのも嫌だな・・。さてどうしたものか」 と私はちょっと悩みました。

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やがて、車掌が現れ「切符を拝見」と言って、接近しました。

その時、くだんの中国人男性は、すばらしい日本語でこう言いました。

「すみません。 あわてて電車に乗ったので特急券を買う余裕がありませんでした。ここで買えますか? それからこの席に座っていていいですか?」

それを聞いた日本人の車掌は何と、こう答えました。

「没問題! (メイウェンティ)=構いませんよ」

そして手元の端末器で特急券を印刷して手渡し、料金を受け取りました。

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すると、切符とお釣りを受け取ったお客の男性は、今度はこう言いました。

「どうもありがとう」 私はだんだん混乱してきました。

私の知る中国の人は、サービスする事が当然の立場にある人(例えば、店員とかホテルのボーイとか、レストランのウェイトレス)に、チップを渡すことはあっても、丁寧にお礼を言うことはあまりありません。 なぜなら、サービス自体が彼らの本来の仕事だと考えているからだと思います。 お礼の言葉を言うのは、日本に留学して日本流のマナーを身に着けた人ぐらいです。 

しかし、彼はお礼の言葉を、日本語で言ったのです。

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すると、今度は車掌が、「不客気!(ブカチ)=どういたしまして」と話し、次の席に移っていきました。

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私は、ある意味で少し落ち込みました。

私より上手な日本語を話す中国人、私より上手な中国語で応対するスカイライナーの車掌、中国ではあまり見かけなかった上品なマナー、・・・どれも全く意外です。

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私は、中国に対してであれ、韓国に対してであれ、相手をあまり知りもしないで、決めつけたり、色眼鏡で見る人々を苦々しく思っています。 民主主義が未発達な国では、政府の姿勢と国民の意識や感情に、しばしば乖離がある訳で、政府が反日でも、一般国民が反日とは限りません。生き方も考え方も人によって千差万別です。

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だから、私は外国の人のことを考える時は、先入観無しで接しようと思っています。

しかし、そういう私も、何時の間にか、中国人とはこういうものだ・・とステロタイプをイメージしていたようです。そして、電車の車掌さんについても、中国語を話す人はいないだろう・・と根拠なくイメージしていたのです。恥ずべきことです。

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50代の後半に至ってなお、意外な場面に接して、驚き、考えを改めるというのは、喜ぶべき経験と言うべきか、それとも反省し恥じるべきことなのか・・。

だんだん近づいて来る、スカイツリーの姿を見ながら、オヒョウはそんなことを考えました。


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yusai-zenji

書き込み内容と直接関係ないですが、ずいぶん久しぶりの更新では? 海外に行ってらっしゃったのでしょうか?

当方は、つい2週間ほど前、勤務先に宮様をお迎えして挙行した某学会例会にて、恥ずかしながら私が講演したりしました。詳しい話しは、またお目にかかった際にでも。
by yusai-zenji (2014-11-25 08:57) 

笑うオヒョウ

YUSAI-ZENJI 様
コメントありがとうございます。また返信が遅くなり申し訳ありません。私は広島県呉市の製鉄所にずっといます。更新が滞っていたのは、業務繁多というか、新しい職場で勉強すべきことがあまりに多く、ブログを書く精神的余裕が無かったからです。しかしやはり、ブログに雑文をしたためるのは、私にとってはひとつのカタルシスであり、再開することになりました。しかし、忙しくなれば、また中断するかも知れません。どうか、生あたたかい目で、応援していただければ幸いです。
またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2014-12-10 22:41) 

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