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【 エボラ出血熱について考える その2 】 [医学]

【 エボラ出血熱について考える その2 】

 

米国で開発された薬品 ZMappがエボラ出血熱に有効である・・というニュースが流れました。 米国人2人に投与して、症状が改善したとのこと。これはタバコから抽出したヒト化モノクローナル抗体を用いた薬だそうです。それ以外に日本ではワクチンを開発中です。また富士フィルムの子会社の富山の薬品会社が開発したファビピラブルというRNAポリメラーゼ阻害剤も有効な可能性があり、一時富士フィルムの株価があがりました。

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これら3種類の薬品は、病原体への働き方が違いますから、3種混合のワクチンにすれば、さらに薬効が増す可能性もあります。

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エボラ出血熱はタバコモザイクウィルスと同じようにRNAウィルスであり、そしてRNAウィルスに対応した薬品の開発は過去に実績がありますから、近い将来エボラ出血熱は克服されると私は楽観視しています。

同じRNAウィルス疾患であるラッサ熱(ただし、エボラウィルスとはウィルスのタイプは違います)の場合、最初は非常に致死率が高かったのですが、生還した患者から採取した血清を用いて薬が開発され、致死率は劇的に下がったのです。エボラ出血熱でも、同じ手続きで特効薬が開発されるだろうと思いますが、今少し時間がかかります。

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しかし、そんな悠長なことは言っておれない深刻さが現地にはあります。ナイジェリアには、今まさに死なんとする患者が多くいるのです。

中国の逸話で、干上がりそうな轍の水溜りにいる魚が水を求める話があります。通りかかった旅人が「明日大量の水を持ってきてやろう」と言いますが、魚は明日の大量の水より、今すぐの手のひら一杯の水が欲しい」と訴えます。

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現在開発中の数種類の薬は全て未承認で、研究の段階です。ZMappは例外的にアメリカ人2人に治験薬扱いで投与され有効だったのですが、まだ多くの人に提供できる訳ではありません。そこに問題があります。

リベリア政府は「開発中の段階でいいから早くZMappをリベリアにもくれ!」と切羽詰った訴えをしていますが、そうはいきません。絶対量も足りません。

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医師や医療関係者はしばしば神の仕事を代行せねばなりません。つまり、患者を選ぶ仕事をせねばなりません。

具体的には、限られた薬を誰に優先的に投与するべきか、 臓器移植を待つ多くの患者の中で誰を選ぶか、大事故で発生した多くの怪我人の中で、誰を最初に救急車に乗せ治療対象にするか・・・・。一応の判断基準はありますが、現場では医師が人の命を選ぶ形になります。

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なまじ、薬があるから、悲劇が起きる・・・と私は逆説で考えます。世界は過去にも何度か経験しています。 エイズ治療薬AZTが登場した時、高価であるため、途上国の人々は買うことができませんでした。 その結果、裕福な先進国ではエイズ禍は下火になったというのに、アジア・アフリカの国々では感染者と死亡者は増える一方です。

先進国で唯一感染者が増加傾向にあるのは日本ですが・・それについては触れません。 タイなどでは夫婦がHIVに感染したのに、AZTは一人分しか買うことができず、どちらか片方は死を選ぶしかない・・という事態が起こりました。

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エボラ出血熱の場合も同じでしょう。 最初は外国から救援に来ていて罹患した医療関係者・・・もっと言えば欧米の白人が優先的にZMappを投与され、地元の黒人は後回しになるでしょう。 そしてナイジェリアやリベリアなどの国内に薬が出回るようになった時、お金持ちだけが薬を購えるようになるのです。 今度は貧富の差が命の差になります。それは悲劇と言うべきではないのか?

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VIPだけが、お金持ちだけが、新薬を使えるという事情に反発する人も多くいます。

その昔、ペニシリンが英国で発明された時、最初に投与されたのはウィンストン・チャーチルだったという都市伝説がありました。 フレミング博士はそれを否定し、ペニシリンが投与されたのは、重症の肺炎にかかっていたある男性警察官だと説明しています。 ペニシリンが発明されたのは第二次大戦前ですが、第二次大戦中、連合国側にはペニシリンがあり、日本にはペニシリンが無いという状態でした。 ペニシリンの有無は戦争の勝敗にも影響したと私は考えます。

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話は脱線しましたが、西アフリカで、お金持ちは生き残り、貧乏人はエボラ出血熱で死ぬという、悲惨な状況が近い将来予想されます。憂鬱なことです。

ここで日本にできることはないのでしょうか?

私は、新しく開発された薬を早期に大量生産できるようにして、価格を大幅に引き下げ、アフリカにばらまくことが日本にはできると考えます。 日本はこの分野では実績があります。 生物由来の抗生物質の構造式を解析し、それを化学的に合成するというのは、日本のお家芸なのです。ワクチンの大量生産も得意です。それを緊急にアフリカに空輸して日本からの援助物資とします。

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無論、問題は多くあります。製薬会社は研究開発投資を回収するために薬価に研究費を上乗せします。知的財産権を盾に、高額で売り出します。エイズ禍の時も患者の命を利用して薬九層倍の商売をした会社が多くあります。 しかし、アジア・アフリカ諸国向けについては、ジェネリックと同じく直接製造原価だけで薬を販売することが認められました。 同じように、エボラ出血熱の薬は最大限に安く提供すべきです。 いやODAの一環として無償供与すべきです。

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薬をばらまくことで、薬剤耐性の問題やウィルスの変異の問題が生じる可能性もあります。しかし、その為に躊躇することはできません。医師や研究者が注意深く観察しながら投与するしかありません。

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これまでアフリカを懐柔しようと手を尽くしていた中国や韓国が、疫病の発生と同時に手のひらを返したような対応を取る一方で、野口英世の母国である日本はさすがに違う・・と世界中の人を唸らせたい・・と私は思います。 お金の有無が助かるか否かを決める地獄が再びアフリカに発生するのを防ぐべきです。

さあ、抗エボラウィルス薬の出血大サービスといきましょうか! あっ、でも出血大サービスという表現はまずいかな?


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