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【 なぜ商社を使わないのか 】 [航空]

【 なぜ商社を使わないのか 】

 

国内第3位の航空会社であるスカイマークが経営危機に陥りそうです。事故を起こした訳でもなく、業績不振という訳でもないのですが、エアバスの巨人機A-3806機も発注してしまったという、身の丈に会わない判断が会社を苦しめることになりました。国際線進出を睨んでの投資だったのですが、結局、資金の工面がつかず、キャンセルとなった訳です。その際に、エアバスから数百億円のキャンセル料を請求され、かつ他の航空会社の傘下に入れという、とんでもない要求を受けたというのです。

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もともと、日航でも全日空でもないスカイマークがA-380を購入するのは無謀ではないか?という意見は以前からありました。 それなのにA-380を注文したのには理由があります。この会社は国際線への進出を考えていましたが、単に普通の飛行機を外国に飛ばすだけなら、日航や全日空の亜流になってしまいます。差別化して特徴を出すなら、巨人機と考えた訳でしょう。

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A-380は国内線には似合いません。仮に東京=福岡間を考えた場合、1000人乗りの飛行機を11回飛ばしても意味がありません。空港で何時間も待つなら、みんな新幹線を選ぶでしょう。 100人乗りの飛行機を110回飛ばした方が、乗客には待ち時間も無く、便利なサービスになります。

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だからA-380は国際線、それも大陸間を飛び、団体客など多くのお客を確保できるエアラインにふさわしいのです。 この機体を運用できるエアラインは限られます。個人的には、富裕な海外旅行団体客を多く確保できる、中国のエアラインに適した飛行機だと考えます。

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スカイマークが国際線に進出するなら、国内線と同じか、少し大きな普通の旅客機で運行を始め、ある程度実績ができてから巨人機を購入すべきだったのです。しかし判断を誤りました。急成長を遂げていた航空会社だけに、トップの経営判断に誰も反論できなかったのでしょう。

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しかし、エアバスインダストリーの対応も異常です。普通、欧州の大企業は、本心はともかく、応対は慇懃で常に紳士的です。お客であるエアラインに対して、とても払えないような違約金を請求したり、他社の傘下に入れというような、失礼な要求をするというのは、解せません。 これはスカイマーク側の対応にも非常識な点があって、エアバスがよはど腹を立てた・・ということでしょうか? 外野席にいる私には分かりませんが。

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そもそも、発注した飛行機のキャンセルは珍しい事ではありません。飛行機メーカーは幾らかのキャンセル料を取って、他の客に転売すれば、損害をほぼ解消できます。

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有名なロッキード事件の際、全日空はオプション発注していたダグラスDC-10をキャンセルして、ロッキードトライスターに乗り換えました。キャンセルされたダグラス社は、その一部をトルコ航空に売りました。 トルコ航空としては、安くそして早く入手できるので、契約した訳ですが、その内の1機がパリの森に墜落しました。 有名な貨物室のドアが閉まり切っていなかったための墜落事故ですが、機体の残骸には日本語の表記も多く残っていました。

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しかし、作りかけの飛行機を別のエアラインに転売できるのは、よく売れる小型機や中型機の場合に多いのです。 運用できるエアラインが限られるA-380の場合は難しいと思います。 この飛行機が開発された時、話題性もあり、多くの受注残を抱えていましたが、今の時点では、キャンセル機が出ても売れ残る可能性があり、それはエアバスインダストリーの経営を圧迫します。

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そこで経営不振が囁かれるスカイマークを救済しようという会社が現れました。例えば、LCCのひとつであるエアアジアです。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ1806R_Y4A810C1MM8000/

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO75834080Z10C14A8TJ2000/

しかし、これが善意の救済でないことは明らかです。彼らは羽田の発着枠を魅力に感じているだけで、スカイマークの会社自体に魅力を感じている訳ではありません。

もうひとつの目的は人手不足が深刻化しつつあるパイロットの確保です。破綻しそうなエアラインまたは経営破綻したエアラインは、ライバル各社によって、パイロットの草刈り場になることは必定です。 そこで救済される側の会社の人が喜んではいけません。

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救済してくれるLCCは、普通のエアラインより明らかに待遇が悪いのです。救済される側は待遇悪化を覚悟しなくてはなりません。どう転んでも、スカイマークの社員にとっては憂鬱な事態です。

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それにしても、今回のキャンセル劇で商社は何をしていたのでしょう?

エアバスの日本での商権を持つのは、かつてのニチメン、今の双日ですが、今回のスカイマークのA-380キャンセル劇では表に出ません。最初から関係なかったのかな? それとも逃げたのかな?

仮にスカイマークに購入する資金がなく、かつ与信を付けにくい状況でも、商社なら転売も可能ですし、自分が買い取ってリースで貸し付けるという方法があります。

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航空機リースは多くの総合商社が始めたいと考えている事業です。A-380の借り手はそう多くないでしょうが、双日が買い取り、スカイマークにオペレーティングリースするという契約をすれば、何という問題はなかったのです。 オペレーティングリースとはパイロットも一緒に貸し付けて、借りる側は何も用意しなくていいというリース契約です。 まさか、エアバスは双日を信用せず、双日がエンドースメント(裏書)をした契約でも納得しなかったのかな? これが航空機リース事業を積極的に進める住友商事だったら少し事情が変わったかな?とも思います。

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ここから先は、私の無責任な推測です。エアバスはスカイマークが破産・倒産することを恐れていたのではないか? 1990年代以降、米国のエアラインは、どの会社もチャプターイレブンを申請しまくりました。 Chapter11は、米国の連邦破産法第11条です。これを日本のマスコミは「日本で言えば、会社更生法にあたる・・」と説明しますが、かなり違います。 Chapter11は、日本の民事再生法と会社更生法の中間に位置する法律だと私は思います。

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Chapter11では、経営者はその身分を保全されます。経営内容は裁判所や管財人の管理下に入りますが、すぐにクビにはなりません。一方で債務はかなり免除または棚上げされます。 だから引退した社員の年金や健康保険の負担が大きくなれば、あるいは組合の発言力が強くなって、社員の給料が上がり、経営の負担になれば、すぐにChapter11申請となります。

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Chapter11の乱発は債権者にとっては苦々しいことです。だから北米のエアラインに売り込みたいエアバスにとって、ひとつの障害だったはずです。 一方、日本のエアラインは、Chapter11を申請しない訳で、エアバスには魅力的だったはずですが、日本はボーイングの牙城であり、なかなか売り込めません。

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そしてついに、国を代表するナショナルフラグキャリアーである日本航空が経営破綻しました。 しかし経営再建するとのこと。・・・「なんだ、日本にもChapter11があるではないか。すると、財務的にもっと脆弱なスカイマークは、飛行機だけ受け取ってChapter11という暴挙に出るかも知れない・・。 LCCとの競争で、経営もかなり厳しいらしいし・・・。

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エアバスは焦ったのかも知れません。「それなのに、スカイマークはのんきに、客室乗務員の制服をミニスカートにしてはしゃいでいる。実に怪しからん!」と、エアバスが思ったかどうか・・は分かりません。

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客室乗務員の制服について、論評するつもりはありませんが、ミニと言えば、もっと短い会社があります。米国のサウスウェスト航空では、客室乗務員がホットパンツというかショートパンツを穿いています。しかし、全く色気を感じないというか、エッチな感じはしません。(あくまで個人的な感想ですが・・)。

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派手なコスチュームという点では、思い出すエアラインが1社あります。 鮮やかな原色に塗装した機体や、同じように原色で奇抜な制服の客室乗務員で有名だった米国のブラニフ航空です。しかし、無理な拡大路線や放漫経営で何度も倒産し、ついに姿を消しました。 最後の頃にはエアバスの機体も大量に購入して、すぐに破産していますから、エアバスインダストリーも迷惑をこうむったに違いありません。

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まさか、スカイマークを第二のブラニフだと思った訳ではあるまいに・・。

今回の騒動がどういう形で決着するかは分かりませんが、ひとつ言えることがあります。それは、日本市場で、ボーイングに比べて苦戦しているエアバスですが、今度の一件で、ますます不利になるだろう・・ということです。


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