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【 原鉄道模型博物館について考える その3 】 [鉄道]

【 原鉄道模型博物館について考える その3 】

 

文学であれ、芸術作品であれ、他人様に鑑賞していただく作品に共通に言えることですが、優れた作品とは、異なった立場の人、違う視点の人が見て、それぞれに感銘を受け、評価できるものだと思います。

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例えば、川柳でも、多面的な面白さがある川柳が最高であると私は考えます。

5・7・5の文字の背景にある事情をよく理解した人にも面白く、またそれらを知らない人にも別の意味で面白く感じられる作品が奥の深い作品と言えます。

例えば夏炉冬扇様の川柳のように。

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小説だって、若い頃に読んで感動した作品を、中年になって読み返し、新たな感動を覚えるということがあります(最近は全く読んでないけれど)。映画も同じです。 そして文学でも芸術でもありませんが、鉄道模型もそうなのです。

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模型の列車が卓上の線路の上を疾走するのを見て、子供達は目を輝かせて歓声をあげます。 そして分別のある大人も喜び、面白がります。これは決してその大人が幼稚なのではなく、眺める視点、感じるポイントが違うのです。

幼稚園児から大学教授まで、多面的に楽しめる趣味が鉄道模型です。

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子供達は単に動くおもちゃとして、喜びます。

大人たちは、その精密な技工に感嘆します。

機械工学の専門家は作者の工夫を面白がります。

それだけではありません。 

中年のカップルは自分たちが旅行したヨーロッパの風景を思い出して懐かしみます。

そして老年期にさしかかった人達は、自分達が若かった頃に、一緒に活躍し、今は引退した蒸気機関車に郷愁と共感を覚えます。鉄道は単なる機械ではなく、鉄道模型は単なる玩具ではないのです。

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しかし、今後もそれが続くか?と言えば、それは微妙です。

鉄道ファンおよび、鉄道模型ファンというのは昭和の人々が主体です。かつて、昭和30年代まで、人々の移動の手段、交通機関は鉄道が主体でした。その頃に少年時代を過ごした人々に鉄道ファンは多いのです。 その後、各家庭に自動車が普及し、飛行機での旅行も普通になりました。若い人々にとって鉄道への思い入れは昔ほどではありません。鉄道模型を持つ子供は増えたかも知れませんが、所詮おもちゃです。 近年、にわかに鉄道ファンが増え、撮り鉄だの鉄女などと言いますが、あれは一時のブーム、流行り廃りでしょう。本当の鉄道ファンとは無縁の存在です。

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原鉄道模型博物館も、本当のファンは中年以上の世代なのではないか?と私は思います。 鉄道模型趣味のもうひとつの問題は、どうしてもヨーロッパ志向になるということです。日本は鉄道王国ですが、鉄道文化あるいは鉄道模型文化の本当の奥深さを感じさせるのはヨーロッパの鉄道です。これはいたしかたない。

したがって、鉄道趣味を高じさせていくと、どうしてもヨーロッパに行き、ヨーロッパの鉄道の模型を作ることになります。

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しかし、そこに何とも言えぬスノブさが漂います。昭和の時代、ヨーロッパに気軽に旅行に出かけられる人は限られていました。つまり、鉄道模型趣味とは限られた人だけの、お金がかかる貴族趣味だ・・ということになるのです。 鉄道を追求していくとヨーロッパになる・・というのは、ある意味で致命的です。

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ドイツの傑作と言うべき、103型電気機関車を運転する原信太郎氏の写真、或いは家族全員でオリエント急行の豪華な車室にいる写真は、鉄道趣味が特権階級だけのものであることを示しています。 これが家族全員で山手線の電車の中で撮った写真ならそうはならないのですが・・・。

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鉄道趣味、あるいは鉄道模型趣味はこれから廃れていくでしょう。鉄道はますます高速・高性能になり、便利になるでしょうが、味気ないものになり、鉄道旅行にロマンを感じる人は減るはずです。(JR九州の「ななつ星」号みたいな、あだ花は咲くでしょうが)。

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しかし、私には鉄道趣味の将来はどうでもいいのです。原鉄模型博物館にはもっと別の意味があると私は考えます。

それはひとりの男性が一生をかけて追求した趣味の集大成を披露することの意味です。 裕福な家に生まれ、高等教育を受け、サラリーマンとしても成功した幸運な人物の生き方は、一般の人々の参考になる訳ではありません。 

しかし、この博物館を訪れた人は、誰もが「あなたは一生を貫いて追い求める何かがあるのか?」という問いかけをされるのです。 即座に回答できる人は多くないでしょう。

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定年を迎えて、仕事を辞めてからでは遅いのです。原信太郎翁はその是非はともかく、少年時代から鉄道趣味を続けました。一生を貫くものは始めるのに早すぎることはありません。 私は定年まで幾ばくかの時間がありますが、世の中の団塊の世代は一斉に退職しだしました。 多くの人が、持て余すほど膨大な残余の日々を前に立ち尽くしているはずです。 原信太郎翁のように幸福な老後を過ごせるだろうか?

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私もぐずぐずしてはいられません。私は何を追求しようか?

もっと皆様に読んでいただける中身のあるブログ作成にかけようか? それともそんな事は考えず、退職のその日まで仕事に全てを捧げようか・・? 私だけでなく同世代の多くの人が考えているはずです。

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「さて次に私は何をすべきか?」 博物館を出て、横浜駅に向かって歩きながら、私は考えました。でも本当は頭の中では、既に決まっていました。

「せっかく横浜に来たのだから崎陽軒の焼売弁当でも食べようかな?」

 

原鉄道模型004.jpg原鉄道模型005.jpg原鉄道模型006.jpg 


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