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【 アマチュアリズムからの離脱 その1 】 [雑学]

【 アマチュアリズムからの離脱 その1 】

 

夏のオリンピックの種目からレスリングが外されるという、突然の報道が日本のアマチュアスポーツ界を混乱させています。 私などには晴天の霹靂ですが、スポーツの専門家や事情通の報道関係者には、ある程度予想できたことらしく、これまで何の対策もしなかったレスリング界の怠慢が招いた事態ともいえます。

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オリンピックのレスリングといえば・・・、その昔、1980年のモスクワオリンピックを日本がボイコットした際、金メダル候補だった高田裕司選手が、記者会見で泣きじゃくり「モスクワに行きたいよう。オリンピックに出たいよう」と、まるで駄々っ子のように訴えていたのを思いだします。

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それまで平和だったアフガニスタンに、突如ソ連軍が戦車隊を送り込んで、人々を蹂躙したのは、まさしく暴挙であり、それに抗議する必要は絶対にあったのですが、高田選手にそんなことを説明しても無理というものでした。

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多くの部族社会が一つの国家を形成するアフガニスタンは、かつては平和な国でしたが、やがて、反体制派のイスラム組織ムジャヒディンが決起して、国内紛争が始まりました。追い詰められた政府は、ソ連軍を呼んで反体制派を鎮圧しようとしました。ソ連軍は、何を考えたか、彼らを招いた政権側の指導者を殺し、ソ連の傀儡政権を打ちたてようとしましたが失敗し、アフガニスタン国内は無政府状態になりました。その混乱状況の中でモスクワオリンピックが開かれたのです。

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ソ連軍のアフガン侵攻は、アフガニスタンの抵抗勢力を目覚めさせ、米国からの武器援助を得て力を付けてソ連軍を追い出し、ソ連と入れ替わりに軍事介入した米国をも排除し、やがてアフガニスタン全体をイスラム原理主義のタリバン勢力が支配するようになりました。ムジャヒディンが先鋭化して、タリバンになり、そこから過激なテロリスト集団アル・カイダが生まれ、それが9.11同時テロを含め多くのテロ事件を起こし、21世紀初めのアフガニスタンを戦争の時代にしてしまったのです。

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そのきっかけとなったソ連軍侵攻は歴史上重要な事件でした。歴史に“もし”は許されませんが、もし世界が毅然とした態度でソ連軍の侵攻に反対してこれを阻止できていれば、その後20世紀末から21世紀にかけて、世界中で流された膨大な血は流されずに済んだのです。それを高田裕司や山下泰裕に理解しろ・・と言っても無理な話ですが。

その高田選手は、今回のレスリングがオリンピック種目から外される事態についても、記者会見でコメントしています(もちろん彼は現役選手ではなくコーチですが)。

いたって冷静に「残念で遺憾なことだ」と語っており、かつてのように泣きじゃくることはありません。 彼も年をとったのか、自分自身が選手として出場しないオリンピックなら大して感慨がないのか・・どちらかでしょう。

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マスコミは今回、レスリングがオリンピック種目から除外される理由をいろいろ解説しています。

1.人気がなく、ネット上のツイッターでフォローされる回数が少ない。

2.競技者が特定の国に偏っていたり、男女で競技人口に偏りがある。

3.ルールが分かりにくく、審判の判定が理解しづらい。

等ですが、一部のスポーツ記者は、訳知り顔で「IOCへのロビイングが足りなかったのさ」と話します。

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これはまた不愉快な話です。ではロビイングとは何か?

ある事柄について決定権を持つ機関に対して働きかけるには3種類の方法があります。

1.有権者の選挙権やその他の権限の行使をちらつかせて圧力を掛ける。

いわゆる圧力団体というヤツです。「昔陸軍今総評」と言われたのは昔の話、現代は、農協、医師会などが、その代表です。国や国民全体の利益ではなく、自分達の組織の利益のみを考えます。

2.公の場で、デモやストライキをして、主張をアピールする。

今、反原発や反オスプレイ配備のデモで見かける手法です。既に決定したことを覆す手段として用いられます。少数派、反体制派が多用します。

3.ロビイング活動。

これは決定権を持つ人や団体に、非公式に接触したり、賄賂を贈って、便宜を図ってもらったり、有利な決定をしてもらうことです。全米ライフル協会は、銃規制に反対する典型的なロビー団体です。

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1,2,3とも、スポーツマンシップとは遠く、フェアとは言えませんし、3.のロビイングなどは清潔な国では犯罪と言えるものです。(中国あたりでは常識ですが)。

ここではIOCに対して足りなかったという、ロビイングの問題と、その背景について考えます。

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ロビイングとは何か?カタカナ英語で言うから分かりませんが、これはつまり賄賂の事です。日本では都合の悪い単語、或いははばかる言葉をわざとカタカナ英語で表現することがあります。ロビイングもそのひとつでしょう。

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TV番組の水戸黄門で、悪代官に山吹色の小判が敷かれた菓子折りを手渡し、「越後屋、お主も悪よのう」と代官に言わせる悪徳商人は、必ず成敗されますが、外国ではそうではありません。 収賄と贈賄は、度を過ぎなければ、当たり前の常識・・というのが中国です。「なぜ、あの代官と商人は罰せられるのか?」中国の人には理解できないでしょう。 そして、それは中国だけではありません。 先進国以外の多くの国は、道義的な面では清潔でないのです。 東南アジアでも、東アジアでも、アフリカでも、贈収賄は当たり前です。

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そして、国連もIOCも建前は民主主義です。不潔な国から選ばれた委員も、平等に一票を持ち、ロビイングは彼らに対して特に効果があります。ロビイングに精を出した競技団体や国が、多数決の結果、良い結果を得られます。

ロビイングが足りなかった事を、さも落ち度のように語る(自称)ジャーナリスト達の品性を疑いますが、IOCが腐敗してしまったのは事実です。

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では、なぜオリンピックは腐敗してしまったのか? なぜ賄賂で動くようになったのか? それを考えると、オリンピックが考えるアマチュアスポーツとは何か?という問題に突き当たります。

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私は、今回IOCがボクシングをオリンピック種目から外した本当の理由は、ルールが分かりにくいことでもなく、ロビイングが足りないからでもなく、オリンピックからアマチュアリズムが消滅したことだと思います。

 

具体的にそれがどういう意味かは次号で申し上げます。


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