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【 ううっ 電波が私を攻撃する その2 】 [雑学]

【 ううっ 電波が私を攻撃する その2 】 

携帯電話を身近なところで使用されると恐怖を感じるという人がいるそうです。ある新聞によると、電車の中で、近くの乗客が携帯電話を開くと、とたんに心臓がドキドキして、着信音が鳴ると息苦しくて死にそうになる・・人がいるとのことです。その人とは、ペースメーカーを付けている人で、携帯電話が発する電波がペースメーカーの動作に影響を与え、その結果動悸が激しくなって死にそうになる・・ということらしいのですが、本当でしょうか?

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その新聞とは、以前携帯電話を使用すると腫瘍ができるというキャンペーンをした新聞です。 科学的根拠を確認する前に、人々の不安をかき立て、科学技術の最先端を行く「便利なもの」のネガティブキャンペーンをする傾向がある新聞です。

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では、本当に携帯電話の出す電波はペースメーカーに影響を与えるのでしょうか?ステンレスやチタンなどの金属製の筐体に納まったペースメーカーは、3次元的に閉じていれば、外界の電磁波の影響を受けることはありません。 3次元的に閉じているとはどういう意味か?と問われると困るのですが、開口部が無く金属でぐるりと囲まれている・・という意味です。

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しかし、実際のペースメーカーはそうではありません。 内部の機器が電波を受信します。 実はペースメーカーは外部からのリモコンでプログラムできるようになっていますから、リモコンと同じ電波を受信して動作が狂う可能性はあるのです。 

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実験の結果、影響がありうると判断された周波数は800MHz帯だそうです。( 正確に言えば、この周波数帯で実験したということのようです) 実際に使われている携帯電話の周波数は、日本の場合、800MHz帯、900MHz帯、1.5GHz帯、1.7GHz帯、2.0GHz帯で、今年900MHz帯の業者への割り当てが決まったことは、大きなニュースになりました。 さらに数年以内に700MHz帯も、携帯電話に割り当てられる見込みです。 

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うーむ、周波数域としては、ちょっと危険です。 しかし、影響範囲はどうなのかな?実験の結果あるいは理論計算の結果では、ほんの数センチ、人体から携帯電話を離せば影響はなくなるそうです。 それを元におおよその目安として携帯電話を22cm離すようにというガイドラインがあるそうですが、22cmを算出した根拠は甚だ怪しいというべきでしょう。 放射線の人体への影響についても、正確な閾値は出せませんが、ペースメーカーへ800MHz帯の電磁波の影響についても、明確な閾値は出せないのでしょう。 だから、実験で計測された値の10倍をひとつの目安にしたのか?安全工学専攻の私から見れば、奇妙な話です。

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それはともかく、常識的に考えると、満員電車で身体が密着しした状態で、隣の人の携帯電話が鳴ったら、初めて影響があるかも知れない・・というレベルです。 なんだそれなら問題ないではないか・・

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近くで携帯電話が鳴ったためにドキドキしたという、ペースメーカー装着者の体験談は、実際にその電波でペースメーカーが誤動作したという訳ではなく、恐怖を感じた結果、精神的に緊張して脈拍が変動したものではなかったのか?朝日新聞がある意図を持って記事を書く場合、主張に都合のよい物理現象は緻密に記載しますが、都合の悪い現象や研究結果は意図的に捨象します。その代わりに科学的とは言えない情緒的な印象記事を書いてごまかします。

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携帯電話の脳腫瘍への影響が科学的に否定されると、「それでも多くの人が不安を持つのだから、規制を考えるべきだ」とむちゃくちゃな論理を展開します。報道機関であれば、非科学的な噂で不安を抱いている人に真理を伝えて安心させるのが務めだろうに、不安を煽ってどうしようというのか?

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なんにせよ、携帯電話の電磁波がペースメーカーに影響を与えるというのは、実に愚かな都市伝説です。 それなのに、電車の車掌は「優先席の付近では電源をお切りください」と、半ば命令に近い口調で、アナウンスします。 その車掌に「なぜ携帯電話の電源が入っているとなぜ悪いのか?」と尋ねても、おそらく彼は答えられないでしょうが・・。

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物理現象以前に、車掌のアナウンスには問題が多くあります。

1. 優先席の付近というが、その範囲はどの程度か?電車によっては吊革の色でその範囲を規定している車両もありますが、それは22cmをずっと超えた範囲です。 優先席付近という抽象表現では何も規定できません。

2. ペースメーカーを付けた人は優先席に座っているのか?ペースメーカー装着者だって健康体で優先席に座るのを潔しとしない人、立っている人だっているでしょう。 お年寄りでも普通の席に座る人、立っている人が普通にいるのが日本の電車です。 目で見て分かるハンディキャップを持った人に対してさえ、席を譲らない乗客がペースメーカーを付けた人に席を譲るでしょうか?ペースメーカー装着者=優先席に座る人という図式は、成立しません。

3. 携帯電話とは何か?ある時、私が電車の優先席の前に立つと着席者は全員若者で、しかも全員が携帯機器を操作していました。 しかし、一人はアイホン、一人はアイパッド、一人はアイポッドナノです。 今は亡きスティーブジョブスが見たら感激しそうな風景ですが、古典的な普通の携帯電話を操作している人は一人もいませんでした。 ちなみに私の隣で立っていた乗客も携帯ゲーム機を操作していました。

もし、そこに車掌が通りかかって「携帯電話のスイッチをお切りください」と言っても、彼らは一斉に「これは携帯電話じゃないもん」と反論するかも知れません。壁に貼ってあるシールにも「携帯のスイッチオフ」と書かれていますが、その絵は古典的な携帯電話です。車掌は反論できるか?

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本来なら、携帯電話ではなく、電磁波を発生する機器は・・という表現になるべきでしょうが、前述のとおり、周波数帯と出力で影響は異なります。朝日新聞のキャンペーンに乗った形の「携帯電話・・・」はナンセンスです。

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飛行機の場合も、離着陸時には電磁波を発生する機器の使用を止められます。そのためにデジカメで飛行場の景色を撮影することもできませんが、これは仕方ありません。実際、私はこれでパイロットに迷惑をかけたことがあります。自慢になりませんが・・。

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しかし電車の場合、繰り返しになりますが、以下の理由でナンセンスです。

1.携帯電話の悪影響がそもそも不明確。

2.ペースメーカー装着者が優先席にいるとは限らない。

3.優先席の付近という表現があいまい。

4.そもそも携帯電話の定義が不明。

多くの乗客は、そのナンセンスさを見抜いていて、電源を切る人は一人もいません。しかし、最低限のマナーとして車内で音声通話する人はいません。でも考えて見れば、それ以前に、若い健康な人が優先席を占拠している状況を問題視すべきでしょう。

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私が車掌のアナウンスを聞いて、最も怪訝に思うのは、他人を不快にさせないマナーについての戒めと、極めてあやしい科学の問題をまぜこぜに話していることです。無責任で不合理なマスコミの扇動記事になにゆえ迎合するのか?私には分かりません。

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ところで、ペースメーカーと言えば、外国のペースメーカーには原子力電池を用いたものが多くあります。 これはプルトニウムやウラン235が出す放射線から電気を得るもので、装着者は一生電池交換をする必要がありません。 しかし、彼らが事故に遭い、体内ペースメーカーが破壊されるような事態になればどうなるのか?東北地方の瓦礫に含まれるわずか20ベクレルの放射線量に神経質に反応する人々は、なぜ外国のペースメーカーに無関心なのか?そしてラジウムを含む夜光塗料を塗った古い時計になぜ無関心なのか?

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それより何より、優先席を占拠し、無遠慮に足を投げ出し、携帯のゲームに興じる都会の高校生を・・・どう考えるべきか? に興味があります。朝日新聞は決して記事にはしないだろうけど。


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