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【 たいこ腹 】 [金沢]

【 たいこ腹 】

お盆の休み中に再び腰を痛めてしまいました。 重量物を持ち上げようとして、グキッという感覚を腰に感じました。8月14日の夕暮れです。

まもなく、腰を捻ったり、かがもうとしたり、腰に力をいれようとすると激痛が走るようになりました。

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そして、しばらくすると、力を入れなくても痛みが続く状態になりました。

その日予定していた、Y博士との会食を急遽キャンセルして、私は休む事にしましたが、痛みでなかなか眠れません。

寝ても立っても座っても痛みがあるのですから逃げ場がありません。

翌8月15日の朝は、寝床から脱出して立ち上がるまでに20分もかかります。

その上、着替えて靴下を履く事の難しいこと・・。

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妹が、お医者さんに行くべきだ・・と勧めます。 北国新聞を見て

「ちょうどI田病院が当番医で診察してくれるみたいよ。行ってみたら?」と薦めます。

終戦記念日でお盆の真っ最中ですから、多くのお医者さんはお休みなのです。

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整形外科のI田病院は、そう遠くはありません。 ちなみに、院長のI田医師は、私の小学校、中学校、高校の同級生で、古い友だちです。 

「久しぶりに会いたいな・・」という思いがチラッと頭をよぎりましたが、もし久しぶりに会って、久闊を叙すという事になれば、時間がかかるかも知れません。

私は何としても、15日中に弥富に帰りたかったので、それは困るのです。

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それにI田君がいかに名医であろうと、ぎっくり腰でできる治療は限られるはずです。

すぐに完治するということはなく、時間がかかるでしょう。

「いや、やめとこう。それよりなんとか、今日中に帰らなくては・・」と答え、私は早い時刻に金沢を出発しました。

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痛みが強くなった時に、いつでも路肩に止まれるように、高速道路を諦め、一般道を走り、夕方に弥富に着きました。

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そして翌日、朝、寝床から起き上がる事ができません。かろうじてたどり着いたテーブルの上の携帯電話から、会社に仕事を休む事を伝え、近隣の病院を紹介してもらいました。

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しかし、教えてもらった病院は、まだお盆休み中です。そこで別の病院をネットで探し、K整形外科を訪ねました。

夏の陽光が光る病院の駐車場で、ソロリソロリと車を降ります。この時間帯、休み明けの会社では、皆一所懸命仕事をしているのだ・・と思うと、後ろめたさと情けなさを感じますが、痛みによって、その殊勝な感情はかき消されてしまいます。

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およそ午前中を全て潰す長い待ち時間の後に、私の診察が始まりました。

「 私の具合ですが、右側の、ちょうどIlium(腸骨)とSacrum(仙骨)の接合部辺りに強い痛みを感じるのですが・・ 」

私の説明などほとんど聞かずに、医師はレントゲン写真を見ます。

レントゲンは、旧式のシャウカステンに架けるのではなく、高精細の液晶モニター上に映しだされます。 写真の鮮明度は非常に高く、詳しく見たいところのズーム表示も簡単にできます。

「これは便利だな・・・。僕は医者じゃないからレントゲン写真を見る事は無いけれど、この液晶モニターは羨ましいな・・」。

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「 ああ、骨や椎間板には問題ありませんね。 つまり単なる腰痛ですな 」

・・・単なる腰痛と言われても、現実に痛みはあるわけで困るのですが・・・

「 以前に使っていた腰痛バンドがあるのなら、それをお使いください。 痛み止めの薬も以前使っていたボルタレンをそのまま使っていいですよ。一応別の薬も処方しますが。 一週間程度で治るでしょうが、それ以降も痛みが続くなら、また来てください 」

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診察はごく短時間で終わりました。

その日の夜は、以前からの約束で、川崎のご隠居が来てくれたのですが、体が動かなくては何のお構いもできません。 逆にお客である彼にいろいろ助けてもらう有様でした。

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その翌日、やっとのことで出勤すると、皆さんから声を掛けられます。

そして自薦他薦で、いろいろな病院や治療法を薦めてくれます。

「腰痛なら、××の○○医院が一番いいよ。 とにかくどんな痛みでも注射1本でピタリと治って、杖を突いて来た患者が、帰りはスタスタと歩いて帰るのだから」というルルドの泉みたいな話とか、「どこどこ治療院の鍼治療は本当に効きますよ」といった話をたくさん教えてくれます。

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その中でK部長が「実はうちの息子がカイロプラクティックの修行をしてましてね。お嫌でなければ、一度診させたいのですが・・」との話を持ちかけてきました。

「それはありがたいです」と適当な返事をしていたら、その日の夜、突然、K部長が息子を連れて、私の部屋に現れました。

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驚きながら、彼らを中に招じ入れますと、すぐに持参したマッサージ台に私を載せ、治療にかかります。 随分急な話ですが、しかし、その前にちょっとした能書きがあります。

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カイロプラクティックにも幾つかの流派があり、彼が所属するのは姿勢重視派・・つまり本来の自然な姿勢に戻れば、自ずと痛みは無くなるという考えの流派です。

本来あるべき姿に戻すには、一般の整体のように強い力で関節を矯正するのではなく、弱いソフトなタッチで姿勢を正していくのだそうです。(ほんとにそれで治るのな?)

「 うーむ、オヒョウさんの体は相当ねじ曲がっていますね。第三腰椎で出っ張りに神経が接触しているのかも知れない・・ 」

私は、自分の根性がねじ曲がっている事は薄々気づいていましたが、背骨までそうだとは知りませんでした・・。なるほど

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それにしてもカイロプラクティックにいろいろな流派があるとは知りませんでした。なんだか宗教みたいです。 宗教は科学と違って、立証する必要が必ずしもありません。

腰痛治療も、明快な理屈の説明がなくても成り立っていますから、ある意味で宗教に近いのかも知れません。

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残念ながら、彼の治療では、その場でピタリと治るという訳にはいきませんでした。

帰り際・・、「お代は幾らです?」と尋ねると「まだ修行中の身なので、代金は頂けません」と答えて青年は帰って行きました。

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その日、やっとのことで、寝床につくと皆さんから勧められたいろいろな治療法が頭に浮かびました。さて、誰に治療してもらうのがいいだろうか?

そういえば、私の古い友人T田君のおくさんは、鍼治療をするそうです。

鎌倉夫人というより大船夫人・・・であるT田君のおくさんは、子育てが一段落して時間ができた時に鍼治療の勉強を始めたのだそうです。でも怖いからまだ旦那さんは治療を受けた事がないとか・・。

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マッサージのベッドの上に私がうつ伏せになっています。そしてパンツを尻まで下ろした“半ケツ”の状態で私は治療を待ちます。もはや、まな板の上の鯉です。

そこにT田夫人が現れると「では治療を開始します」とブスリと鍼を腰に刺します。

どうも鍼治療用ではなく畳屋の針のようです。

「ギャー」と悲鳴を上げると、もう1本ブスリと刺し込まれます。再び「ギャー」です。

彼女は「どうもうまく行きませんね。ではそういうことで、ここで失礼します・・」

しかし、身動きできない状態で放り出されては困ります。

「ちょっと待ってください。このままでは・・・」

「いえ、お代なら結構です。まだ修行中の身ですから」と、動けない私を尻目に彼女は立ち去ります。 

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「 あれ?こんな話をどこかで聞いた事があるぞ。そうだ落語の『たいこ腹』だ 」

読者諸兄もご存知かも知れませんが、この落語は、にわか仕込みの鍼治療の腕を試したい若旦那に、練習台として我が身を使われ、鍼を打たれてさんざんな目にあう哀れな太鼓持ちの噺です。 私は太鼓持ちではありませんが太鼓腹“ではあります。

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そこまで気づいて目が覚めました。 鍼を打たれた痛みは、寝ていて無意識に体をねじ曲げようとして感じた痛みのようです。 やれやれ、まだ夜明け前です。

でも、その後、寝床から体を起こすのに、しばらく時間がかかり、その日も私は会社に遅刻したのです。

そして8月19日現在、痛みは続いています。


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コメント 12

yusai-zenji

心配していました。名古屋に帰ることができた由、何よりでした。私も随分前ですが、たしか博論を書き上げる直前だったか、冷蔵庫を開けようとして腰痛で倒れ込んだことがありました。その時住んでいた有松の病院で医者に言われたのは、運動不足が原因、ということでしたが、誰かに(丁度電話する用件があった、Tくんから?)“太り過ぎのせいだよ”と言われたことを思い出します。お互いに、減量しましょう。

14日は、私が最近アニメ映画に興味を持ち出したりしていたので、その話で盛り上がろう、と思っていたので残念でした。また今度。


by yusai-zenji (2011-08-22 08:53) 

笑うオヒョウ

Y博士様 コメントありがとうございます。
そして先日のドタキャンでは大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。
ご指摘のとおり、問題の本質は運動不足と太りすぎだと・・わかってはいるのですが。
貴兄がアニメに興味をお持ちとは知りませんでした。 今度お会いした時にうんちくを語りたいと思うのですが、アニメといっても、ジャンルが多岐にわたります。どのあたりに興味がおありかをお教え頂ければありがたい・・と思います。

さらなるコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2011-08-22 13:13) 

yusai-zenji

いま準備している共著で、アニメの“聖地巡礼”を研究している人が書いてくれる予定で、その人(外国人なのですが.....)が対象としているのは白川郷を舞台とした“ひぐらしのなく頃に”です。私は未見ですが........ で、その手の、ローカル・ネタのアニメを物色中です。同じ共著で、城端を事例としている人がいるので、その人に、当地を舞台とした“true teas”に触れて欲しい、と頼んだりしています。こちらも、私は未見。埼玉を舞台とした?“らきすた”は、既にかなりの量の研究がある由。

で、私が見たその手のローカル・ネタのアニメは、長野県上田市を舞台とした“サマーウオーズ”です。オヒョウさんの嫌いな?、アニメ版“時をかける少女”と同じ監督です。ユーチューブに、そのクライマックスの花札のシーンがアップされていますね....
by yusai-zenji (2011-08-22 14:47) 

牛肉麺

腰痛持ちの小生には身に沁みる話です。慢性的な痛みに悩まされていますが、その始まりはどうしても思い出せません。原因不明、しかも外見上ほとんど分らないものは本当にどうしょうもないです。早く治りますようにとお祈りします。
by 牛肉麺 (2011-08-22 15:56) 

夏炉冬扇

こんにちは。
ぎっくり腰でしょうか。しばらく不便ですね。
私も畑仕事屈んだり、腰に力を入れたりすること多いので時折痛くなります。
そういうときは畳の上で「腰ストレッチ「をいつもしてます。ぎっくり腰までいかずに治ってます。
早く治りますように。
by 夏炉冬扇 (2011-08-22 16:38) 

笑うオヒョウ

yusai-zenji様 コメントありがとうございます。

残念ながら"ひぐらしのなく頃に"も、”true teas"も"らきすた"も未見です。しかし、サマーウォーズはTV放映されたのを見ました。たしかに長野県上田市でしたが、内容はかなり現実離れしていましたね。 個人的には非常に面白いと思いました。いわゆる"ご当地もの”のアニメで最近見たものは、スタジオジブリの「海が聞こえる」ですが、評価としては普通のできだったと思います。 そのあたり、次回お会いした時に詳しく意見を交換したく、お願いします。
次に名古屋に来られるのは何時でしょうか? ご連絡をお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2011-08-22 23:27) 

笑うオヒョウ

牛肉麺様 コメントありがとうございます。

私の腰痛の場合、きっかけはある程度はっきりしているのですが、本当の原因は分かりません。医師によっては腰痛の原因にストレスなど心理的なものもあるはずだ・・という方もいるそうですね。

どうも不思議な病気ですが、私などは、ストレスが原因と言われたら、ちょっと複雑な気持ちになりますが、納得してしまうでしょうね。
by 笑うオヒョウ (2011-08-23 03:12) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。

夏炉冬扇様の腰痛は労働の結果であり、肉体の酷使の結果と拝察します。一方私の場合は、Yusai-Zenjiも言うとおり、運動不足と肥満が原因ですから、全く事情は違います、 結果として症状は似ていても、異なる病気であると思います。 ひたすら恥ずかしく思う次第です。

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2011-08-23 03:15) 

シカゴ

半田の愚夫も、自宅へ来てくださる整体師さんのベッドを破壊してしまいました。(ワイヤが切れたそうで。どこの会社の原料なのでしょう?余計な詮索)オヒョウさんの状況は、とても他人事ではありません。よく読ませます。癖になるそうですから、くれぐれもお大事にしてください。
by シカゴ (2011-08-23 12:46) 

笑うオヒョウ

シカゴ様 コメントありがとうございます。

それから先日の名古屋での会食は大変楽しうございました。
今回も(東京の時につづいて)お勘定を払うタイミングを失し、
結局、奢っていただいてしまいました。 申し訳ありません。

次回は、是非私めのアカウントで食事をさせていただきたいと思います。
私の家内が名古屋に来るタイミングを見計らって・・と考えておりますが、
いつ頃になるか見通しが立ちません。 腰痛が治るのとどちらが早いか・・
ちょっとわからないありさまです。 

では次のコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2011-08-24 12:25) 

上野まり子

笑うオヒョウ様

腰の具合は如何ですか?
私もぎっくり腰経験者ですが
その時に治療を怠ったためか
毎日起き上がりは半ぎっくり腰状況です。
それは年々厳しくなってきて、毎朝腰に手を当て
ゆっくりと歩行するという状況です。
不思議なことにその状況は10分ほどで収まります。
しかし、完治しておくことが肝心だと実感しています。
再びならないという保障はないとしても。
by 上野まり子 (2011-08-25 01:15) 

笑うオヒョウ

上野まり子様 ご心配を頂きありがとうございます。

実は現時点での私の状態は、まさに上野様が経験されているのと
同じ状態です。 なぜか、朝起きる際に最も痛み、寝床から立ち上がるまでが
大変です。 その後、立ち上がってしばらくすると、痛みはほぼおさまるのですが、ちょうど朝の出勤前の時間帯であるため、緩慢な動作を強いられる事は、別の意味で苦痛です。

でも、私と上野様で違うことがひとつあります。 私の場合は、肥満した体躯が腰痛の原因の一つと思われる事です。 腰痛の完治が可能かどうかは分かりませんが、とにもかくにもダイエットの必要性を痛感しております。

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2011-08-28 02:05) 

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