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【 スーパーマーケットプリンセス 】 [イギリス]

【 スーパーマーケットプリンセス 】

 

西欧の王室は万世一系の日本の皇室とは違います。国王や王室の地位と立場は、国民との一種の契約によって保障されたものと言えます。だから時には国民の人気取りとも言えるパフォーマンスが必要です。そして王室に美しいお嫁さんを迎えるというのは、国民が王室に親しみを感じ、ファンを作る絶好の機会とも言えます。

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ダイアナ妃の死去の後、明るい話題のなかった英国王室にとって、ウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンさんの結婚は、その点で絶好の機会でした。 新婦に求められるのは、高貴さよりも明るく快活な性格、きさくで親しみやすい人柄、勿論美人であれば、それに越したことはありませんが・・。

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プリンセスは、庶民の間に溶けこむことも求められます。 オランダの王女は王宮から自転車で通勤していたそうですし、英国の王女も何か庶民性をアピールする機会が必要かな・・なんて余計な事を考えていたら、ケイト妃(ケンブリッジ公爵夫人)がスーパーマーケットでお買い物をした・・という記事が登場しました。

日本でも報道されましたが、英語版では例えば下記の新聞記事が報道しています。

http://www.dailyfinance.co.uk/2011/05/06/princess-kate-shops-at-waitrose/

英国の場合、タブロイド紙はパパラッチの巣窟ですから、ロイヤルファミリーの記事はしょっちゅう登場します。でもこの記事には特に興味があります。

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これで思い出すのは、昭和天皇の末娘だった貴子内親王が島津家に嫁いだ後の初のお務めが、島津家の姑に同行して日本橋三越への買い物だったというニュース映画です。「私の選んだ人を見てください」という名台詞で、天皇家の中で最もハキハキと自分の意見を言う人・・と言われた島津貴子さんですが、デパートの買い物は初めてだったとの事です。降嫁する前であれば、内親王がお買い物などありえない・・・という時代だったのです。

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逆に王室に嫁いだ女性・・しかも夫は将来の国王・・が、スーパーマーケットでショッピングカートを推すというのは、やはり驚きです。 下々の者であれば、スーパーで公爵夫人(Duchess of Cambridge)が何を買ったのかに興味があります。

やはり特売の食料品だろうか?とか、まさか衣類ではなかろう・・とか、どんな日用品を使っているのか?なんて、全く下品な事を考えてしまいますが、私は全く別の事を考えます。 それは公爵夫人が訪れたスーパーが、Waitroseだった事です。

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実は階級のある国、英国では百貨店だけでなくスーパーマーケットにも格があります。最も、一般的というか当たり前なのはTESCOで、英国ならどこにでもあります。さしずめ、英国のダイエーというか、今ならイーオンといった感じの店です。

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私がロンドンに赴任した当初は、単身赴任でしたから、もっぱらこのTESCOで買い物をしていました。 やがて家内が子供達を連れてやってきて暮らし始めたのですが、家内はどうもTESCOの商品構成が気に入らなかったみたいです。行きつけの店をTESCOから100mほど先にあったWaitroseに切り替えました。

「何が違うんだい?」

「うーん、よく分からないけれど、なんとなく品揃えが違うのよ。Waitroseの方が、気がきいてて、ちょっとあか抜けているのよ。サンドイッチなんかもWaitroseの方がおいしいし・・」

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鈍感な私には、両者の違いはよくわかりませんでしたが、Waitroseの方がちょっと高級で、TESCOは庶民的だという事は、後でわかりました。

チャールズ皇太子が、豪華な邸宅を建築した際、新聞は皮肉たっぷりに、皇太子がデザインした邸はまるで、TESCOの店舗みたいだ・・と揶揄したのです。

つまりTESCOとはダサくておしゃれじゃないものの象徴だったのです。

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一方、Waitroseよりも上となると、Marks & Spenserなどがありますが、これはもうスーパーというより百貨店に近い領域です。

では、逆に大衆的なTESCOより更に庶民的・・というか格の低いスーパーはないか?といえば、勿論あります。ASDAというチェーン店もその一つです。日本では西友と提携していましたが、ロンドンではあまりブランドイメージは高くありません。どちらかと言えば、ロンドンではアフリカ系移民の人などが、多く買い物をしていました。

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私は、特にASDAには興味は無かったのですが、ある時、英国のパソコン雑誌にASDAの名前を見て驚きました。 その小さなベタ記事には、米国のマイクロソフトが裁判でASDAに負けて、お金を支払ったと書いてあります。

記事によると、・・・ MicrosoftはもともとASDAが販売する女性の肌着のブランド名だった。それをビル・ゲイツが勝手に用いて自分の会社名にしてしまった。実にけしからん・・と訴えたのだそうです。長い裁判の末、マイクロソフトはその商標を買い取ったということだそうです。 翌日、会社の人達にその話をしたら、皆さん笑いました。

今をときめく、コンピューター業界の雄が、大衆スーパーマーケットに負けたのが面白かったのです。

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日本の場合、百貨店にはランキングというかお店の格がありますが、スーパーにはあまりないみたいです。 そもそも小売店のブランドの持つ意味も変化しつつあります。

スーパーのブランドなどない日本は平等な国でよかったな・・と思う反面、別の事を考えます。

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もし、日本の皇室のお妃様が、スーパーに買い物に行く・・なんてことになったら、どの店に行かれるのかな? お店の序列がある英国ではWaitroseに行けば問題ないけれど、日本ではそうはいきません。 イーオンに行ってヨーカドーに行かない訳にはいかないでしょうし、西友もダイエーも黙ってはいないでしょう。 そもそも皇室はその手の不公平やえこひいきを最も嫌います。 結局、どこにも行かないのが無難という事になります。そう考えると皇室のお妃様も結構窮屈で大変なのだろうな・・と思ってしまいます。

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えっ?ところでオヒョウがロンドンで一番好きだったスーパーはどの店か?ですか?

それはやっぱり、ヤオハンです。 もう無いけれど。


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上野まり子

笑うオヒョウ様

ロンドンのスーパーのランキングについて
大変興味深く読ませていただきました。
東京にもスーパーのランキングはあると思います。
それにしても日本の皇室の皆様は多方面に
大変気遣っていらっしゃることと存じます。
天皇陛下、妃殿下が被災地へお見舞いのため
何度も足を運ばれましたが、
被災者は大いに励まされと大きな感動を持って受け止め、
涙する方も沢山いらっしゃいました。
罵倒されるどなかとは大違いでした。
まあ比べる話ではありませんが。
by 上野まり子 (2011-08-25 01:06) 

牛肉麺

上の方と同感です。
日本のスーパーもランキングはございます。
もっと細かいかもしれないです。
東京都職員さんと結婚されたプリンセスはどこのスーパーでお買い物されているでしょう。
パパラッチさえないのもすこし寂しいですね。
by 牛肉麺 (2011-08-25 13:54) 

笑うオヒョウ

上野まり子様、牛肉麺様 貴重なご指摘をありがとうございます。
私は都会のショッピング事情を知らないもので、田舎のスーパーマーケットだけを見て日本にはスーパーの格やランキングは無い・・などと誤った考えを断定的に書いてしまいました。お詫び致します。実際には日本のスーパーマーケットにも格付けはありますね・・。
反省する次第です。そう言って思い出したのは、主に東京に店舗を展開する明治屋です。これがスーパーマーケットと言えるかどうかよくわかりませんが、私はこの店などが高級なスーパーマーケットの部類かな?なんて思います。そのあたりの記憶を今度、雑文にいたします。
またのコメント、ご指摘をお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2011-08-26 12:39) 

上野まり子

笑うオヒョウ様

ひとつお尋ねしたいのですが、
イギリスではスーパーマーケットの行けるお店、
行けないお店は階級によってありますか。
東京のスーパーの階級は経済力だけが基準ですから、
賢い消費者は同じものを、より安価に買うのかも知れません。
すでに銀座も六本木、赤阪も昔と違い誰でも行ける街になりました。
スーパーのランクは、そこで買えることの自己満足という面もあります。
ただし、良いものがある事も事実です。
by 上野まり子 (2011-08-26 23:16) 

笑うオヒョウ

上野まり子様 コメントありがとうございます。

ロンドンの場合、階級によって入れるスーパー、入れないスーパーがある・・という事は寡聞にして聞いた事がありません。 基本的には、置いてある商品が上等か安物か・・という事で、価格の問題かと思います。 自己満足・・かも知れませんが、高くても良いものを買う人は高級店に、むしろ経済性を重んじる人は価格で勝負する店を選ぶという事でしょうか?

そこで思い出したのは、高級百貨店ハロッズですが、この店には一応ドレスコードがあるみたいです。 スパッツを穿いたアメリカ人女性観光客が店からつまみだされた事件があり、百貨店側は「下着姿の女性はお入れできません」と突っぱねたのです。 女性側は「これは下着ではない」とカンカンになり、百貨店を訴えたとの事です。 私には、全く理解できない事ですが、家内の説明では、
「スパッツは下着ではない。でも裾にレースなどをあしらうと、確かに下着に見えてしまう」とのことで、ハロッズの言い分も分かる・・と言っていました。
その規準を当てはめると、今のアメリカ人女性は、どの店にも入れなくなります。 あっ、日本の女性も同じですかね、 またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2011-08-28 02:15) 

上野まり子

笑うオヒョウ様

度々恐れ入ります。
ハロッズの対処に同感します。
奥様のレース・・・についても同様に考えます。
私は官庁街の近くに住んでいますが、
私にとっては下着か部屋着としか思えない洋服で
出勤なさる女性を見ると首を傾げたくなります。
同僚の男性は不愉快だと思わないかと
他人事ながら心配します。

最近日本人は場所をわきまえるということを
少々忘れているようです。

またお邪魔します。
by 上野まり子 (2011-08-28 10:09) 

笑うオヒョウ

上野まり子様 コメントありがとうございます。

実は、私にはレギンスだのトレンカだの、スパッツだのという衣類の区別が全くつきません。 スパッツは登山用の衣類にあるので、その名前を知っていました。 ただひとつ言える事は、下着とアウターの区別がだんだん不明瞭になっているな・・という思いです。 換言すればファッションがだらしなくなっているなという事です。 それが当たり前になれば問題ない・・という意見もあるでしょうが、例えば、外国人が日本人をどう思うか・・などという事を考えたら、きちんとした身だしなみである事も大事ではないか?と思います。 ちょっと古い考えかも知れませんが。
下着と間違えるようなファッションの女性を見て、男性陣が不愉快に思うか、それとも喜ぶか・・は人それぞれです。 勿論着ている女性がどうかではなく、男性側の人格の方ですが。

またのコメントをお待ちします。


by 笑うオヒョウ (2011-08-30 00:19) 

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