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【 海の名前 その2 】 [中国]

【 海の名前 その2 】

古代ローマ帝国の時代から20世紀の中頃まで、強い国が弱い国を併合して国土を拡張する事は当たり前の事で、侵略する側には何ら呵責がありませんでした。

20世紀の後半に、その考え方が「帝国主義」と呼ばれ、非難の対象になったのは、為政者が急に良心に目覚めたからではなく、第一次、第二次の大戦の被害があまりに甚大で悲惨だったことと、虐げられる側の発言力が一定のレベルに達したからです。

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私は、大が小を呑み込みますます大きくなる現象を、オストワルド成長と呼びます。大都市のスプロール化の現象をオストワルド成長に例えましたが、大国が小国を併呑するのもオストワルド成長です。

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自然界ではオストワルド成長はエントロピーを大きくする現象と言え、ごく当たり前の事です。しかし、人間は(あるいは生物は)唯一エントロピーを小さくできる存在です(と物理学者ディラックは言っています)。

だから人間の叡智で、大国が領土拡張主義に走るのを抑える事ができるのですが、中国の指導者には理解できないようです。

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中国の歴史の中で最も経済と軍事力が充実し、中央集権が実現した状況下で、彼等はチベットを襲い、新疆ウイグルを襲い、そして21世紀になると海の覇権を求めています。彼等が目指すアジアは、パックスペキーナでしょう。

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ところで、韓国も自国の領土と領海について神経質です。

韓国は中国と違い、領土領海について、現在の勢力バランスではなく、昔の帰属を参考にする考え方です。古文書や古地図を持ち出して、日本海に浮かぶ竹島を韓国のものだと主張します。

しかし、独島と書かれた彼等の古地図には、海の名前は日本海と記されています。竹島の領有権を主張し、一方で日本海の呼称を東海にすべしとする彼等の主張の矛盾点が現れます。

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中国の要請に伴い、シナという呼称をタブー視する日本のマスコミもこの種の矛盾にぶつかります。

東シナ海の尖閣列島の帰属や、白樺ガス田の帰属について日本のマスコミが報道する際、なるべく中国に配慮して中立を装いますが、東シナ海という名称は使わざるを得ません。東中国海とか東海と言うほど、中国に阿る覚悟はないのです。中国からの強いプレッシャーを受けてオロオロするジャーナリストの姿が眼に浮かぶようです。

ではオヒョウならどうするか?

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実は日本語には、都合の悪い言葉はカタカナ英語に逃げるという方法があります。わいせつな表現などは、全て英語で表現して下品にならないようにしたりします(実際には何の効果もないのですが・・・)。

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シナとも言えず、中国とも言えない時は、チャイナと言えばいいのです。

その例が歌謡曲の歌詞にあります。尾形大作の代表曲である「無錫旅情」には「チャイナの旅路を行く俺さ」というセリフがあります。なぜ唐突に英語が登場するのか?と言えば、支那とも言えず、中国とも言えない苦衷があったからです。

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脱線しますが、歌謡曲/演歌は日本人の心に根ざしたもので日本人にしか分からない・・と船村徹だったか遠藤実だったか言っていますが、そんな事はありません。中国人は日本の歌謡曲が大好きですし、韓国には日本の演歌そっくりの旋律があって、庶民に好まれます。具体的には4と7の音階を抜いて、音符を並べた旋律です。

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話を元に戻します。では、領土拡大を是とせず、帝国主義を悪とする現代の日本は、海や島の名前の問題と無縁か?といえば、そんなことはありません。

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もう30年近く前の事です・・・。

南大西洋のフォークランド諸島で英国とアルゼンチンの戦争が始まった時、カナダ出身の英会話の先生は、当然のように、英国側に領有権があり、正は英国、邪はアルゼンチン・・という前提で話を進め、私にも同意を求めます。

そこで、私は「ちょっと待ってくれ。日本も同じように、島の領有権をめぐる問題を抱えており、これは非常に微妙な問題だ。実はフォークランドと呼ぶべきか、マルビナス諸島と呼ぶべきかも迷うところだ」と説明すると、先生は少し白けた様子でしたが、縦に首を振り「その事情は理解している。クリル諸島の問題だね」と答え、再び私をがっかりさせました。

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実は、外国で世界地図を見ると、千島列島という名前を見ることはなく、全てクリル諸島と書かれています。良心的な地図には、小さな文字でこの区域は日本政府から領有権についてクレイムされている・・と書かれていますが、千島列島という名前を使う地図はありません。

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いわんや、樺太の南半分の領有権について、空白とする地図はありません。

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日本が島や領海について領有権を主張する場合に、まず日本名の正当性を主張するのは、一便法として優れています。この点では韓国を見習うべきです。

オホーツク海と東シナ海という具合に、日本の国土を囲む海洋の名前に外国名を二つも用いている日本のおおらかさは、通用しない時代なのかも知れません。

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ところで、韓国は竹島の領有を主張し、日本海という呼称を拒否し、さらには対馬の領有をも主張しています。日本の領土を掠め取ることより、北朝鮮との統一を考えるべきではないか?と私は思うのですが、そうではないようです。

文句を言いやすい方にまず文句を言うという考え方のようです。

では第三者である、ロシアはどう考えるか?

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日露戦争に登場する日本海海戦を彼等はどう呼ぶか?

国際的には対馬沖海戦であり、ロシア側からこの海戦を描いた有名なノンフィクション作品の名前は「ツシマ」です。つまり対馬については、日本側の名称「対馬」が世界的に通用します。あとは韓国が「対馬とはもともと韓国名だ・・」というつまらぬ主張をしないように注意するだけです。






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牛肉麺

なるほど。名称一つにしても野心が見え隠れしていますね。
なぜ日本にはこういう外交戦略、或いは主張できる政治家がいないでしょうね。
平和主義の一言で本当に平和になれますか。
by 牛肉麺 (2011-07-04 14:22) 

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