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【 海の名前 その1 】 [中国]

【 海の名前 その1 】

南シナ海で中国とベトナム、それにフィリピンを加えた三カ国間の領土・領海を巡る争いが激化しています。

正確にはベトナムとフィリピンが従来から固有の領土としていた島嶼に対して、中国が領有権を主張して騒動になっています。さらに島嶼を取り囲む海域を中国に帰属する排他的経済水域だと主張し、ついに中国が実力行使をして、衝突しているのです。

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三国とも、歴史のある独立国ですから、今頃何で国境をめぐる紛争が勃発するのか?と不思議に思いますが、中国の考え方を知れば理解できます。

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ベトナムとフィリピンが「歴史的にずっと我が国の領土・領海だった」と主張しても、中国相手では意味を持ちません。なぜなら、かの国では国境線自体が、変化するものであり確定したものではないからです。過去はあまり関係ありません。

彼らは、その時々の軍事力のバランス、国力の比較によって変化するのが国境線であると考えています。中国が増大させている軍事力、とりわけ海軍力は決して純粋な防衛目的ではなく、国威発揚の為のおもちゃでもありません。

海軍力を強化する事で国境紛争・領土争いで有利になり、その結果実益が得られる事を知っているからお金をかけて空母や潜水艦を増やしているのです。

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南沙群島(スプラトリー諸島)での中国の進出を、その海域で石油の埋蔵が確認されたからだ・・と短絡的に言う人がいますが、ちょっと違うようです。

中国は、相手との軍事バランスが偏り、自国が優位に立った瞬間に領土拡大を狙うので、石油が見つかるか否かは、引き金ではありません。

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西沙群島(パラセル諸島)の戦いは、この中国の考え方を明確に示すものです。

パラセル諸島はかつて旧南ベトナムが領有する島嶼でしたが、ベトナム戦争の末期、米軍が撤退して南ベトナムが崩壊するまさにそのタイミングを狙って、中国が侵攻して領有権を主張し西沙群島と名づけました。南ベトナムの敗北と米軍の撤退をひたすら喜んだ日本のマスコミは報道しませんでしたが、ベトナムと中国の確執はその瞬間から始まっています。

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第二次大戦の末期、いよいよ日本の敗北が明らかになった時に、満州と千島列島、樺太に侵攻したソ連を彷彿とさせますが、これは珍しい事ではありません。

フィリピンでも、コラソンアキノ政権下で米軍がフィリピンから撤退し、空軍の軍用機がゼロになった瞬間を狙って、中国はスプラトリー諸島に海軍を展開しました。 東シナ海の白樺ガス田(春暁)の開発を強引に進めるのも、中国の軍事力の近代化が進み、日本の軍事力を凌ぐレベルに達したからです。

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その中国が抱える最大の懸念はロシアとの国境線です。ネルチンスク条約の後も、両国の国境線は様々に揺れ動いています。同じ社会主義・共産主義の体制になってからも両国は武力衝突をしています。

国境線となる黒竜江(アムール川)の支流であるウスリー川が氾濫すると、流路が変わります。ダマンスキー島(珍宝島)という川中島の中央に国境があるのですが、川が向こう側へ蛇行すると、そちらに行って標識を立てます。逆に川がこちら側へ移動すると、相手がやってくるのでそれを防ぐために、武力衝突がおこります。子供の喧嘩みたいですが、かつて中ソではそんな衝突が頻繁にありました。

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中国にとってもソ連にとっても領土の拡大は国是であり、国土を広げた為政者は名君、領土拡張に成功した軍人は名将軍になります。

共産主義は全世界に革命を広める事を是としていましたから、世界中を自国の版図に加える事になんの呵責もありません。

そして社会主義もまた、自国の領土拡大を是としています。世界の社会党で、最も領土拡大に熱心だったのは、ドイツのナチス党であり、それについで、隣国に侵略的だった社会党はイラクのバース党です。

中ソ国境で紛争があった頃、中国はソ連を覇権主義として非難しましたが、覇権を持つこと、覇者である事は、古来、中国では是です。

私はなぜか、覇者と聞くと早稲田大学を思い出すのですが・・・。

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話を南シナ海に戻します。

武力では中国に全く敵わないフィリピンは、悔しさのためか、南シナ海という名称を止めて、その海域を西フィリピン海と呼ぶ事にしたそうです。

少しでもフィリピンの領有権を主張するためです。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110614-OYT1T00853.htm

これは、不思議というか、実に面白い作戦ですが、気になることがたくさんあります。

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第一番には、東シナ海という名称の妥当性です。

中国は、自分より格上とみなす国(つまり西欧諸国)には、支那、シナ、キノ、キナ、チャイナという名称の使用を認めますが、自分より格下とみなす国(つまりアジア諸国)には中華(ツォンフア)という名前の使用を強制します。

実は支那は蔑称でも何でもなく「絹の国」が語源なので、中国が気にする必要もないのですが、とにかく彼等はアジア人にシナと呼ばれる事を嫌います。

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フィリピンやベトナムが、中国に意趣返しをしたいなら、南シナ海や東シナ海という名前を使い続ければいいのです。

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余談ですが、中国は、勿論、日本に対しても、中華という名前を強要します。

いつだったか、中国の駐日大使が「日本と支那では、日本が本店、中国が支店みたいに聞こえるから侮辱されているみたいに思える」と言ったのには驚きました。中国では普通は、本店は総公司、支店は分公司ですから、本店、支店という呼び方はしません。 彼が朝日新聞の投書欄に載った読者の意見を盗用したのは明らかです。しかも朝日の投書は小学生が投稿した体裁をとっていましたが、明らかに大人の文章でした。 朝日新聞と中国がグルになって、日本に種々の事を強制しようとした時期があったのは確かです。

小泉純一郎が、中国政府に対して毅然とした行動を取る少し前の頃です。

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次に、海域の名前に東西南北を付ける事の是非です。

言うまでもありませんが、地球の東西南北には絶対的方角と相対的方角があります。北極と南極は誰が見ても、同じ方向です。北とは北極により近い方、南とは南極により近い方と考えれば、矛盾はありません。

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しかし、東西はそうではありません。ある場所が誰かにとっては東側に位置し、別の誰かにとっては西側になるのは当たり前です。

だから海に東西を付けるのは、本来不適切なのです。

日本海を東海(トンヘ)と呼ばせようという韓国/朝鮮の態度は、朝鮮半島の立場から考え、日本を無視する失礼な呼称なのですが、敢えてそう主張します。

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一方、彼等にとって西海である黄海については、中国に西海と呼べとは強制していません。やはり朝貢の国韓国にとって、中国は事大すべき対象であり、ずうずうしい要求はできないのです。日本海を東海と呼べという一方、黄海はそのままというところに朝鮮民族の悲しさがあります。

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話が脱線しましたが、あえて方角を海域の名称に用いるなら、やはり起点となる陸地を示さなければ、無意味となります。だから東海という呼び方は全く不適当なのですが、西フィリピン海とか南シナ海、東シナ海という名称はまだ通用します。あの海域の名称として西フィリピン海が普及するか、それとも南シナ海のままになるかは、重要なポイントです。

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ところで、海域の名前、島の名前の問題は、日本の周囲にもあります。そのあたりは、次号で考えます。




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