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【 三等重役考 】 [雑学]

【 三等重役考 】

 

夏炉冬扇様のブログに登場する時事川柳を毎回楽しみにしています。

先日、その川柳に、「十両昇進嬉し恥ずかし二関取」という作品がありました。

http://www013.upp.so-net.ne.jp/karotousen/

これは言うまでもなく、負け越ししたにもかかわらず、昇進して関取になってしまった力士のことです。さぞかし本人達は複雑な思いでしょう。

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こんな事態になったのは、相撲協会のスキャンダルで、上位力士の引退が大量に発生したため、その穴埋めで下位の力士を繰り上げる事になったためです。

よく考えれば十両の関取だけではありません。相撲協会の理事長だって引責辞任した訳で、横綱になれなかった大関魁傑(放駒親方)が、本来なれないはずの理事長に就いています。

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なんだか妙ですが、世の中には思わぬ出来事で、幸運に昇進してしまう事があります。

経営破綻した日航では上位の役員が全員責任をとったために、子会社の社長だった大西氏が飛び級で社長に就任しました。

東電でも、取締役・役員級は責任を免れないでしょうから、現在役員手前の部長級に社長のポストが巡ってくる可能性があります。

もっともこんな状況下で社長に就くことを、本人が喜ぶかどうかは疑問ですが・・。

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実は昔もこういう事はありました。

第二次大戦後、政財界の実力者がパージされた事があります。戦争協力者だったり、あまりに影響力が強いので、GHQが敬遠した人物です。

そのパージのために、会社の重役たちが公職追放(民間企業も含みます)になり、その下の部長級が成り上がりで重役になった訳ですが、その光景をおもしろおかしく、小説にしたのが源氏鶏太の「三等重役」です。

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実は源氏鶏太は財閥である住友合資に務めるサラリーマンでした。その住友財閥は、戦後、上層部の公職追放で幹部ポストが空いた事と、財閥解体で多くの分社化がなされたために、急に新しい重役が増えたのです。

役員の心構えができておらず、肩書きは重役だけれど、気持ちも実力も、そして懐の具合もサラリーマンという人物の様子を、ユーモラスに表現したのですが、実際には、笑い事ではありませんでした。でも結果的には、この騒動は吉とでました。

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住友財閥の優秀な中堅社員達は、頭の上の重しが無くなった事で、思う存分暴れました。彼らは分社化した多くの会社に分かれていき、それぞれの会社を、日本を代表する企業に育てました。

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住友金属に行った日向方斉、住友化学に行った長谷川周重、住友商事に行った津田久らですが、彼らは40代の半ばで、会社の命運を決めるような大プロジェクトを任され、活躍したのです。

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源氏鶏太が言った三等重役は決して三等ではなく、一等だったのです。

ではこれからの三等重役達はどうでしょうか?

これから就任する東電の若い重役達は就任時にはとまどうでしょうが、すぐに実力を発揮するでしょう。まずは原発事故を終息させて、徐々に国民の信頼を回復させるしかありません。

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経営陣の若返りは、ほとんどの場合成功し、会社の業績はV字回復しています。

ゴーンが着任した後の日産がそうですし、前述の日本航空も一気に黒字化しました。

先ほど住友財閥の例をあげましたが、戦後の一時期、実力者の公職追放と財閥解体で、若い経営者が登場した時代は、日本の経済に最も活気があった時代です。

そして今、経済成長が著しい国、あるいは発展が著しい産業は、みな経営者が若い世界です。三等重役、おおいに結構です。

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そして今、日本の政治もトップが代わろうとしています。できれば思い切った若返りを・・と期待するのですが、難しいかも知れません。

「日本の政治家は三等政治家だ」と言われたら・・・どうしましょうかね。


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コメント 2

夏炉冬扇

今晩は。
駄作を引用して頂き恐縮致しております。
源氏鶏太・三等重役、昔そういう小説ありました。映画にもなったような。

若い人が新しい時代を拓くのですね。当然と言えば当然ですが。

当方「60の手習い」で「ぎゃらりぃ」を始め、お客さまに勉強させて頂いております。
by 夏炉冬扇 (2011-06-12 21:46) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。

そして返信が遅くなり、申し訳ありません。
三等重役の映画で活躍したのは、森繁久彌、加東大介といった役者でした。
たしかヒットして続編もつくられたはずです。 森繁の社長シリーズや植木等のサラリーマンものなど、当時はサラリーマンを主人公にしても喜劇映画ができたのですね。 今は国会を舞台にして喜劇映画ができそうですが・・。
いや、悲劇映画かな?

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2011-06-22 02:38) 

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