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【 ビデオ三昧の日々 その3 潜水艦映画 】 [映画]

【 ビデオ三昧の日々 その3 潜水艦映画 】

映画の中には、奇妙なジャンルがあります。女優が一切登場せず、男優だけで構成される映画です。そんな映画はつまらないではないか?というのは浅はかな了見です。

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第二次大戦後、日本で最初に上映されたカラー映画(総天然色)は「南極のスコット」という作品で、たしかこれには女性は登場しません。

ちなみに、邦画で最初の総天然色の作品は、あの「カルメン故郷に帰る」です。

「南極のスコット」は、素晴らしい南極の大自然がカラーで映しだされ迫力はあったのですが、なにせむくつけき探検家だけが登場し、しかも最後には全滅してしまう話ですから、美しさ・・とは関係ないかも知れません。

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それ以外で男性ばかりが出演する映画といえば戦争映画です。特に海上の戦い、それも潜水艦ものとなると、男性しか出演しません。それで観客を持たせるのですから、ストーリーのサスペンス性は重要です。

映画には潜水艦映画というひとつのジャンルが存在すると私は考えます。

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ところで、日本の中年男性はみんな潜水艦が大好きです。

それは少年サンデーに連載された漫画「サブマリン707」のせいだ・・という人がいます。少年漫画はこのブログの研究課題の外なのですが、少し解説しますと、この「サブマリン707」はたしかに傑作でした。

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実際に潜水艦の乗組員でなければ知りえないような精確な描写や表現が随所にあり、魅力的な登場人物、そして見えない敵(音波だけで探る訳です)との虚々実々の駆け引きという内容は、当時の少年漫画の平均点を大きく超えるものでした。昭和30年代と40年代に多く書かれた戦争ものの少年漫画は旧日本軍を主人公にしたものばかりでしたが「サブマリン707」は海上自衛隊の現役艦の乗組員が主人公で、米軍の露払いのような情けない立場であることも自然体で書かれています。そして敵は秘密結社だったり、ナチスの残党だったりするのです。私はその自然体の姿勢が正直に思えて好きでした。

この漫画の影響で、当時、海上自衛隊への入隊志願者には潜水艦乗りを希望する人が多かったのだそうです。

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「サブマリン707」の後に実に多くの潜水艦漫画が登場しましたが、全てこの作品の亜流というべきです。

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漫画でそうであるなら、映画でも潜水艦もので傑作を作る事ができます。

聡明で豪胆な艦長の作戦、見えない敵との駆け引き、閉所の中で息をひそめる人達の恐怖感と絶望感、艦内の人間模様・・。映画化するのに適したポイントがたくさんあります。そして潜水艦ものには、必ずお決まりの場面が登場します。 

損傷した艦が限界深度を超える深さまで沈下し、水圧でバルブが破損し沈没しそうになる場面(必ず圧潰寸前で助かりますが)。

長引く潜航で艦内の酸素が欠乏し、あるいは電池の残量が低下し、あわや絶望か・・という場面(原子力潜水艦ではこの場面はありませんが)。

そして敵の魚雷や爆雷が接近して炸裂する場面。

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どれもこれも、結果は分かっていても手に汗を握る場面です。

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そういった外国の潜水艦ものの映画で、私が最初に見たのは「眼下の敵」です。

これは厳密には潜水艦ものというより駆逐艦と潜水艦の駆け引きの映画ですが、ロバート・ミッチャムとクルト・ユルゲンスの演技が光りました。勿論女性は登場しません。

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そして評論家の間では、最高の潜水艦映画として、30年前の「Uボート」(原題Das Boot)をあげる人が多いようです。こちらの艦長はユルゲン・プロホノフです。単なる勇敢な乗組員を描くのではなく、恐怖で錯乱しそうな人々、目的地に到達した後に虚しく亡くなる人々と沈没する艦、という具合に、戦争の虚しさを、傍観者の目を通して見たこの映画は確かに傑作です。

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特にこの映画で評価され有名になったのは、警報が鳴った時に潜水艦の艦首から艦尾までを、キャメラが走りながら通り抜けて撮影したシーンです。

潜水艦の閉所性を十分に示し、かつ乗組員の慌ただしさと緊張感をだしていて、その後の潜水艦映画に取り入れられています。

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その後の、「レッドオクトーバーを追え」「クリムゾン・タイド」「K19」などは、皆「Uボート」の亜流の作品だと言ってもいいのです。

では日本の作品では・・というと、無理やり美少女を登場させて荒唐無稽のむちゃくちゃな内容になった「ローレライ」あたりが思い浮かびますが・・不作です。

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では私が考える潜水艦映画の最高傑作とは何か?といえば、

それは中尾彬主演の「魚住少尉命中」です。これは正確にはTVドラマであって、映画ではありませんし、厳密には潜水艦ものと言えないかも知れません。

しかし、この作品は心に残ります。1963年の作品で、当時私は小学校1年生で正確なストーリーは理解できなかったのですが、印象に残ります。ちょうどその頃私の父が他界したので、その影響もあるかも知れません。

21世紀になってから、この作品をNHKアーカイブスで見る事ができ、子供の記憶に残るのも当然の、鮮烈な作品である事を理解しました。

このずしりとくる作品の重さの前には他の潜水艦映画は霞んでしまいます。

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ああしかし、嘆くべき点がひとつあります。

精悍な海軍士官だったはずの中尾彬が、今は中年後期の肥満した体躯とゴマ塩頭をバラエティ番組にさらけ出し、着流しのスタイルで横柄な口調でグルメについて薀蓄を垂れているのです。全く幻滅です。

やはり、魚住少尉は命中して戦死し、その後は登場してはいけないのです。

あまりに早くに代表作に出演してしまったため、その後は残余の生を送らなければいけない早熟の俳優の悲劇かも知れません。

もっとも肥満した体躯とゴマ塩頭の醜さをさらけ出しているのは二枚目俳優だけではありません。私オヒョウも同類です。こちらは悲劇ではなく、純粋な喜劇ですが。




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無用ノ介

『嗚呼回天特別攻撃隊』もいいですよ。
by 無用ノ介 (2011-06-06 21:51) 

笑うオヒョウ

無用ノ介様 コメントありがとうございます。

また返信が遅くなり申し訳ありません。
恥ずかしながら、まだ「嗚呼回天特別攻撃隊」を見ておりません。
こんど時間をつくってレンタルビデオ店で見てみようと思います。

アドバイスに感謝します。そして次のコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2011-06-22 02:44) 

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