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【 そうね コンラート 】 [雑学]

【 そうね コンラート 】 

ときどき、自分がとんでもない錯覚をしている事に気づく事があります。最近の事で言えば、小学6年生の時に読んだ「水晶」という小説が記憶に残ります。これはクリスマスの前日に、少年とその妹が雪の中で、山道に迷うというストーリーで、風景描写のすばらしい短編小説です。作者はアーダルベルト・シュティフターです。 読んだ時は、オヒョウと同年代の子供が主人公の小説なのに、なんと大人びた世界なのか・・と強い印象が残りました。

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実は、オヒョウはこれをスカンジナビアの氷河が舞台の小説だと思っていました。 Y博士にも「あれは確かスェーデンかノルウェーの話だよね?」と話したのを覚えています。しかし、ある日それがオーストリアの小説だったと気づいたのです。どうして北欧の小説であると錯覚したのかと言えば、たぶん同時期に読んだ鈴木三重吉の小説「少年駅伝夫」と混同したからでしょう。

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ずっと後になって欧州を旅行して気づいたのは、オーストリアとスェーデンでは、風景も違うしクリスマスの様子も違うようで、間違える余地はないという事です。 しかし外国の事を全く知らない田舎の小学生には仕方ない事でした。

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そして、この小説で記憶に残るのは・・、兄のコンラートが何かを話しかけると、妹のザンナは必ず「そうねコンラート」と返事することです。なんだか返事がとても大人びているな・・と思いました。 妹なら「うん、お兄ちゃん」でいいではないか?だいたい、兄の言葉にあんなに従順な妹などいるものか・・。

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コンラートとは、英語で言えばコンラッドです。男子の名前というより、姓に多くあります。これもオヒョウの記憶をたどれば、高校2年の英語の教科書に、ジョセフ・コンラッド(Joseph Conrad)の海の詩が登場し、そのあまりの難解さに手を焼いた事があります。 教科書の名前は”England as She is”です。そしてそれ以来、オヒョウは英語が苦手です。トラウマの原因はジョセフ・コンラッドです。

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話が脱線しましたが、「そうねコンラート」の台詞は原文では“ Ja Konrad !“です。 それを「ヤー コンラート」と発音するか、「ヤッ コンラート」と発音すべきかでインターネット上に議論がある事を知りました。

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世の中には、実に細かい事にこだわっている人もいるものだ・・・・。しかし、細かい事にこだわるという点ではオヒョウも人後に落ちません。オヒョウならは、Jaの発音は、ヤーでもヤッでもなく、ヨーではないか?と主張します。

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オーストリアはドイツ語圏ですが、オーストリアのドイツ語は少しドイツのドイツ語とは違います。オヒョウの感覚では、オーストリア人のドイツ語は、ややゆっくりとした間延びした表現が多いように思われます。発音のスピードは遅く、ドイツ人からは、田舎者の発音として馬鹿にされるのさ・・・とリンツのタクシードライバーは語ります。

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そして、英語でYesにあたるJa“の発音は、ドイツではヤーですが、オーストリアではヨーとしか聞こえません。(オヒョウには)。そのことをリンツにあった製鉄所の技術者に訊くと、答えは「その通りさ」でした。もちろん、その発音はヨーでした。

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だから、オヒョウは「そうねコンラート」は、「ヨー、コンラート!」だったに違いないと考えます。そして、彼らが迷い込んだ山は、オーストリアアルプスつまりアルプスの東端ですが、これはフランスやイタリアの西アルプスとは違います。峻険な高峰が連なる山脈ではなく、どちらかというとなだらかで奥の深い山が並びます。だから、オヒョウがスカンジナビアの山と錯覚するのも仕方ない・・と弁解したくなります。

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今、オヒョウが暮らす愛知県西部から見える鈴鹿山脈は、上越から見える妙高山よりずっとなだらかな低山です。人々の話す声のアクセントも違います。ヨーロッパだけでなく、日本も土地によって、全てがさまざまです。外国の誰かが、日本の児童文学を読んで、地方の差に着目し、方言の発音を議論しているかな?と思うと興味深いのですが、実際のところ、どうなのかは、全くわかりません。


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雪紘

海外の言葉に注目しがちですが、
日本の方言で表現される人情の機微も興味深いものですね。
千葉と茨城、川ひとつ隔てた県同士でも、
方言、発音の違いを実感します。
by 雪紘 (2010-09-20 20:23) 

NO NAME

オヒョウ様へ
私の趣味はオフロードバイクで走りまわることですが、それで感じたこと。
私は川を境界にしての左右の地形の違いが、お互いの相違を際立たせて、特色を出していったにではと感じます。地形の違いが人情まで変えられるかな?という思いもありますが。
by NO NAME (2010-09-20 20:40) 

笑うオヒョウ

雪紘様 コメントありがとうございます。
千葉と茨城の違いに着目されるとは・・うーむ、鋭いですね。

鹿嶋に家があるオヒョウとしても一家言がありますが、それについては
また別稿で触れさせていただきたいと思います。

風景の違い、言葉の違い・・それと人々の考え方の違いに関係があるのか
お考えをお教えいただければ幸いです。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-09-21 00:49) 

笑うオヒョウ

NO NAME様 コメントありがとうございます。

川の両岸で風土や人情が全く違うというのは、全く同感で、私も経験しております。 それが地形の違いと関係あるのか・・・考察したいと思います。

私は、今、木曽川沿いの土地に暮らしていますが、対岸の桑名と弥富では
全てが違うようです。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-09-21 00:53) 

Dr.Y.

オヒョウさんとシュティフターの話をしたことは、多分ないと思います。記憶違いでは? そういう質問があったら、即座に否定したと思います。ウィキで今調べたらオーストリアの作家、とありましたが、イメージ的にドイツの南の方の作風だという感じがします。

でも、小学生でこの小説を読むとは、随分大人びていますね.... 私は、第2外国語の授業でたしかOという教授が、ぜひ読むようにと奨めていたのでレクラム文庫を紀伊國屋だったかで買ったけれど、歯が立たなくて岩波文庫で読んだと思います。でも、内容はすっかり忘れました。

シュティフターが良い作家であることは認識しています。たしか、ニーチェやマンが絶賛していたとかいう話。でも、そのニーチェが称賛したという代表作『晩夏』、今年の夏もよむ暇がありませんでした....
by Dr.Y. (2010-09-21 08:35) 

笑うオヒョウ

Dr.Y様 コメントありがとうございます。

時系列を追って説明いたします。私が「水晶」を読んだのは小学6年生の時です。 そして貴兄にお話したのは高校生の時です。 そしてオーストリアを旅行したのは40代の頃です。 そして北欧と錯覚したのに気づいたのは、先日です。 貴兄に「水晶」を読んだよ と話かけた時、小学生で読むとはなんと早熟な!と貴兄が驚かれたのを記憶しています。

しかし、今考えれば、字面を追っても、本当に中身を理解しなければ、読んだ事にはならないのだな・・と気づきます。 子供の頃、映画「わらの男」を見ても、本当のところは理解できなかったように。

またコメントをお願いします。
by 笑うオヒョウ (2010-09-22 22:07) 

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