SSブログ

【 誰も緒方拳を超えられない 】 [雑学]

【 誰も緒方拳を超えられない 】

NHKの大河ドラマは、昭和38年(1963年)に始まりました。最初の年は「花の生涯」で、主演は尾上松緑(四代目)、翌年の「赤穂浪士」の主演は長谷川一夫と、既に大俳優として有名だった人を起用しています。しかし、その次の年の「太閤記」は違いました。 主演には新国劇の俳優で、有名とは言えなかった緒方拳を起用したのです。背景には、TVをライバル視していた映画界からのスターを呼べなかったことや、歌舞伎の看板役者も忙しくて呼べない・・などの事情がありました。

・・・・・・

結果的に緒方拳の起用は大成功でした。 ハンサムではないけれど、人情味があって、誰からも好かれる表情を持ち、味のある演技をしました。 そして「太閤記」では、主人公以外でも若手俳優が多数起用され、その多くが有名になり、大活躍しています。一例を挙げれば・・・

石田光成 石坂浩二

織田信長 高橋幸治

明智光秀 佐藤慶

荒木村重 小池朝雄

大政所(秀吉の母) 浪速千栄子

北の政所(ねね) 藤村志保

勿論、浪速千栄子や藤村志保はその前から活躍していましたし、石坂浩二もその前からTV出演していました。

・・・・・・

しかし、彼らの多くが「太閤記」出演をきっかけに、ブレイクしています。映画スターではなく、最初からTVスターとして大物になった初代の人達と言えます。 しかし、大河ドラマは、その後が・・続きません。翌年の「義経」は全く不評でした。聞くところでは、その後も、作品によって人気の上下はあるものの、視聴率は長期低落傾向にあり、太閤記をしのぐものはないそうです。

・・・・・・

大河ドラマがうまくいかない理由は多々あります。

1.ひとびとのTV離れが進み、誰もが夜の8時にTVを観る時代ではなくなった。

2.ドラマの舞台が戦国時代か、幕末・明治維新期、元禄時代、もしくは源平の時代に限られ、超ワンパターン化している。 

3.既に人気のあるイケメンタレントやミュージシャンを起用する安直なキャスティングになり、演技力のある個性派俳優を抜擢する機会が減った。

・・・・・・

別に大河ドラマが凋落しても、見ない人には構わないのですが、受信料を払う者として文句も言いたくなります。制作費に巨額を投じるドラマがマンネリ化して、つまらないというのでは困るのです。

・・・・・・

そして視聴者以外にもクレームをしたくなる人がいるはずです。 それは実力がありながら、いまだ無名の若手俳優たちです。彼らにとって登竜門というべきNHKのドラマの権威が失墜するのは、困った事です。

・・・・・・

かつて、NHKは出演者のギャラが安く、日本薄謝協会と言われたそうです。 俳優たちの苦情に対し、制作局の幹部は、「NHKで大役をやれば、その後の仕事のギャラの相場が上がるので、NHKのギャラは安くてもいいではないですか」と嘯いたとの事です。

・・・・・・

しかし、大河ドラマに出演しても誰も注目しない時代になれば、NHKのこの説明では理解が得られないでしょう。

・・・・・・

既に、緒方拳はこの世を去り、佐藤慶も亡くなりました。刑事コロンボの小池朝雄は、それよりずっと前に、鬼籍に入っています。では彼らに代わる俳優はいるか?と言えば、その部分にはポッカリと空白があるのみです。彼らが大物で「余人をもって代えがたい」という事情もあるでしょうが、実力がある無名俳優に、機会が回ってこないという事情もあります。

・・・・・・

TV演劇の俳優の世界は、本来、新人の登場で世代交代が進み、新陳代謝があるべきですが、そのきっかけがないのです。歌舞伎や映画の世界では、ひとつのシステムとしてスターを作りだしていますが、TVではそううまくはいきません。大河ドラマの凋落は、それに拍車をかけます。

・・・・・・

無論、この考えには異論反論があろうかと思います。現在の大河ドラマに満足し、毎回見ているファンもあると思いますが、それでも昔に比べてドラマの印象が薄くなった・・という点は同意いただけるのではないか?と思います。例えば、今から5年前の大河ドラマは、時代が何時で、主人公は誰だったか?と尋ねられると、オヒョウは答えられません。似たようなドラマが毎年くり返し制作され放映されるからです。 西郷隆盛も織田信長も、大勢の役者が演じていて、誰がどのドラマだったかはっきりしないほどです。しかも個々の俳優の個性は次第に薄くなっています。 だから、つまらないのです。

もっとも、これにも反論があるかも知れません。思い出せないのは、単に私が健忘症になっただけだと言われると、確かに返す言葉はありません。


nice!(7)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 7

コメント 6

上野まり子

こんにちは 上野まり子です。

ご指摘の件、同感です。
大河ドラマもさることながら、各局の番組も似たり寄ったりで
あの番組は、あの局という強い印象はなくなりました。
たった今見ていた番組がどの局かわからないほど
似たような番組ばかりだと思えます。

NHKのドラマのキャスティングにかかわった事がありますが
それはなかなか厳しいものでした。
また、必ずしも演技を習得している人に限らないようです。
しかし、その場合には演出の力量が問われるでしょう。

『太閤記』はリアルに観ておりました。
主役以外の方々のお名前はとても懐かしく、
しかもどなたも力量がありました。
特に浪花千栄子さんは独特の味を持つ
素晴らしい女優さんで大好きでした。

ところで私が関連している韓国俳優も
最近は邦画の出演が増えてきました。
緒方拳氏と共演し、とても得るものが多かったと話していたそうです。
そのお話は感動的だったそうです。

そのうち大河ドラマの主演が韓国俳優になったりして。
またお邪魔します。
by 上野まり子 (2010-08-07 11:11) 

笑うオヒョウ

上野まり子様 コメントありがとうございます。

浪花千栄子は、私の大好きな女優でした。バリエーションの非常に多い関西弁の中で、本当の正統派の大阪弁を話すのは彼女だけだと聞いた事があります。 優しい母親役、おばあさん役がイメージにありますが、上品な女性の役も庶民的な女性の役もこなせる、一流の女優だったと思います。

韓国俳優、韓国女優が大河ドラマの主人公になるのもまたいいのではないか?と私は思います。 必要なのは演技力ですから、日本に人材がおらず、韓国に適した人がいれば問題ありません。 ただ一つ言えば・・・、今日本で評判の韓国スターは、あまりにイケメンすぎたり、美人すぎたりして、彼等の実力(演技力)に目がいっていないのではないか?という懸念を持ちます。
by 笑うオヒョウ (2010-08-07 14:39) 

上野まり子

こんにちは 上野まり子です。

韓国俳優の中でも名優といわれる方が
必ずしも日本においての韓流スターとは言えません。
出来れば実力も伴って人気となった方が良いとは思いますが
それは受け取る方の問題で、日本に於いては別物のようです。
勿論韓流スターと言われている俳優が
全て実力が無いとは言えません。
以前、映画関係の本の中で<韓国の本当の四天王>という趣旨の
記事を紹介された事があります。
そこに載っていたのは所謂韓流スターと言われている人では
ありませんでした。
しかしそのメンバーは誰しもが納得のいく方々でした。
またお邪魔します。

by 上野まり子 (2010-08-09 21:16) 

笑うオヒョウ

上野まり子様 コメントありがとうございます。

韓国で名優と言われる人が、日本の韓流スターとは違うというお話は、なるほどと、得心する次第です。 我々日本人は、韓国の俳優・女優を眺める時、まだ浅い見方しかしていないのかもしれないな・・と思いました。

ひとつ思ったのは・・・、日本人が韓国の俳優・女優を考えるとき、吹き替えをする声優の影響がどうしても出てしまうだろうな・・という点です。 西洋のタレントの吹き替えなら、画像は外国人・声は日本人と明確にわりきる事ができますが、韓国や中国・台湾のタレントの場合、なまじ顔が日本人と似ているので、声優の声がそのまま本人の声だと錯覚してしまいます。

本人の韓国語の声を聞いて、なんだ全く違うじゃないかと思うときもありますが、これはしかたないですね。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-08-10 12:34) 

上野まり子

笑うオヒョウ様

声優に関しては大変問題です。
それがアジア人の顔が似ている為ということに、
なるほどと思う点もありますが、
人気韓流スター俳優だから、人気日本俳優という安易な選択もあるようです。確かに本人の声とイメージが全く違ってがっかりすることが多々あります。しかし字幕では文字を追いかけられない方もいらっしゃるので
吹き替えの存在は仕方が無い事でしょうが、そのキャスティングには
確固とした哲学が欲しいものです。また稀に人気ドラマの吹き替えがしっかりしていてこれならと思える作品もありました。
声と言うのは俳優の大切な要素です。したがって吹き替えで観るとなると出演した俳優の一部しか観ていないことになります。
ちなみに私は洋画も含めて字幕で観ます。
もう一つの問題は翻訳です。
特に韓国の作品は輸入量が増えた為に翻訳家の数が足りない無い為
、出来る人は寝ずに頑張っているというのが現状のようです。
それでもただ訳せばよいと言うものではないと思う事もあります。

少し長くなりますが、韓国俳優と日本俳優の比較をもう一つさせていただくと、会見などでドラマやキャラクターについて話したり、質問をされたりした場合に、その答え方に大きな差があるということです。
韓国俳優は自分が出演したドラマやキャラクター、自身について
しっかりとした考えを答えるのに対し、日本の俳優はあいまい、あるいは
他の事にすり替え、答えになっていない場合もあり少々がっかりします。

またお邪魔します。
by 上野まり子 (2010-08-11 11:23) 

笑うオヒョウ

上野まり子様 コメントありがとうございます。

いつもながら、コメントを読んで、なるほど・・と思うことばかりです。
たぶん、外国映画の吹き替えや、アニメ映画に どの声優を起用すべきかというのは本当に難しい問題だろうと思います。
それでも、私がこれまでに見た映画やTVドラマで、吹き替えの声優が本当にぴったりと役にはまっていた・・と感じた例はあまりありません。具体例を挙げるときりがないので、いつか別稿で述べたいと思いますが。

そして私が問題だと思うのは・・・一人の俳優、女優に対して、いつの間にか、声優の方も一対一対応で決まってしまうということです。多分、キャスティングを行う人が冒険を恐れ、過去に成功した組み合わせをそのまま引き継ぐからだと思うのですが、いささか窮屈に思います。 例えば、アラン・ドロンなら自動的に野沢那智だとか、チェ・ジウなら田中美里という具合に、声優が決まってしまうと、視聴者である私にはイメージが固定されてしまって、それ以上に広がりません。 野沢那智にしても田中美里にしても才能ある役者ですから、アラン・ドロンやチェ・ジウのイメージがつきまとっては、本当は迷惑なのでは?と思ってしまいます。 また逆にチェ・ジウの方は田中美里の声の演技に満足しているのか?そのあたりも気がかりです。理想は日本語を学んだ韓国のタレントが、日本向けバージョンについては、自分の声で日本語のせりふを語ることなのですが、まだ難しいかもしれませんね。でも日本の役者では英語のせりふを上手に話す人がでてきています。
だから将来に期待します。それまでは、私も字幕スーパー派を続けます。

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-08-11 17:04) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。