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【 蘇州夜曲 】 [中国]

【 蘇州夜曲 】 

TVの芸能ニュースを見ると、斉藤由紀が渡辺はま子の役を演じるとの事です。斉藤由紀については、少女時代しか知りませんが、利発そうな子でした。だから、自分の知らない昭和の歌手を演じるのに問題ないでしょう。

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過去の人物であっても、比較的最近の人で、本人を知っている人が多く存命の場合、その人を演じるのは非常に難しいと聞いています。どうしても本人とイメージが違うとクレームが付くからです。昭和の歌い手である渡辺はま子の場合は、本人を知る人も存命ですから微妙です。

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そして彼女は、舞台の上で、渡辺はま子のヒット曲「蘇州夜曲」を歌いました。これはオヒョウにはちょっと思い出がある曲です。

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中国江蘇省昆山市には、日式スナックという日本人向けのスナックが何軒かあり、日本人のストレス発散の場所になっています。 そこの女性はみな歌がうまく、日本の歌謡曲も上手に歌います。 特に彼女たちが得意とするのは、日本と中国の両方で歌われる歌謡曲で、テレサ・テン(鄧麗君)の歌などは、十八番です。彼女の歌は、のべつ誰かが歌っており、演歌や歌謡曲が苦手なオヒョウでさえ、覚えてしまうほどです。 それ以外にも、ご当地ソング(と言えるのかな?)の無錫旅情なども定番です。

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ある時、オヒョウは店の中で、日本の歌に一番詳しい女性に「蘇州夜曲」を歌ってくれ・・とリクエストしました。 蘇州は隣町であり、当然この店ではポピュラーな曲だろうと思ったからです。

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オヒョウは、この曲を名曲だと思います。歌詞の方は、類型的・・というか、特に特徴はありません。 柳=泣くという戦前の連想ゲームが取り入れられ、蘇州といえば寒山寺という・・安直な観光地を詠み込む手法は平凡です。 現地に行かなくても、ご当地ソングの作詞ができるという典型です。しかし、旋律の方は優れていると思います。 日本の曲なのに、中国風の旋律を取り入れ、異国情緒をかもし出しています。

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しかし、オヒョウにリクエストされた高蘭小姐は、ちょっと顔を曇らせ「その曲は歌えません」と、上手な日本語で答えます。「そういう曲がある事は知っているけれど、よく知らないのです」カラオケブックには記載されているけれど、歌い手が知らないのでは仕方ありません。 逆に「オヒョウさん、ためしにどんな曲か歌ってください」と言われて、私はあわててリクエストを取り下げました。

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(なぜ、彼女は蘇州夜曲を知らないのか?)最初、私はお客である日本人駐在員の年齢が理由かと思いました。蘇州夜曲は戦前の歌であり、30代、40代の人にはなじみの無い曲です。そんな古い曲をリクエストする人はいないかも知れません。しかしそれだけではないようです。

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Y博士の論理は明快です。「 だって、あの映画も曲も日本人のためのものでしょ?」確かに李香蘭(山口淑子)が主演した映画は、日本人男性が中国人女性と恋におち、そして別離を味わうというストーリーです。

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日本人の日本人による日本人の為の映画であり、それを見た日本人の観客は異国情緒を味わい、男性は自分を主人公になぞらえてちょっといい気持ちになります。

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しかし、中国人にとっては“蘇州という場所だけを借りた、全くの外国映画ということになります。なじみがないのは当たり前です。ひょっとしたら、戦前の日本は、同じように外地を舞台にしただけの日本映画をたくさん作っていたのではないでしょうか?

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いや、日本だけではありません。外国だって同じ事です。アメリカ映画には、外国に旅行したアメリカ人男性が現地人女性と恋をして別離を経験するという映画がくさるほどあります。 旅行でなくても、戦争にでかけて戦地で恋をする・・という戦争映画か恋愛映画かよく分からない作品も多いのです。

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それらの原点は、やはりプッチーニの蝶々夫人かもしれません。蝶々夫人が、今ひとつ日本人の間に人気が無いように、蘇州夜曲は中国人にはなじみがないのかも。 つまり、昆山の女性に蘇州夜曲を歌えというのは、長崎の女性に「ある晴れた日に」を歌えというようなものか?(ちょっと、この例えは飛躍しすぎですね)。

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れはともかく、蘇州夜曲は戦前の曲だけれど、今でもカバーする歌手がいます。 名曲だから自信のある歌手が腕試しに歌うという場合があるのかも知れません。 日本人の心も中国人の心も分かる一青窈や、平原綾香が歌っています。

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先日、その平原綾香の蘇州夜曲を車の中で聴いていて、はっと思い出した事があります。

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蘇州には、すばらしい庭園がたくさんあります。 寒山寺や虎丘はあまりに有名で観光客でごった返していますから、落ち着いて鑑賞することはできません。しかし拙政園や獅子林、留園や、西園は、まさに蘇州夜曲のイメージにピッタリの場所です。特に私が好きなのは、夕方の風景です。 多分、美しい女性を伴って訪れたら最高でしょう(もちろん想像です)。

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私は平原綾香の曲を聴いて、それらの風景を思い出し、自分が中国を懐かしく思っていることに改めて気付きました。自分の意識にいまさら気付くなんて間抜けですが・・・。

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実は、私の今回の転職にあたって、もうひとつの候補の会社がありました。 その会社は、中国の無錫に新工場を建設するので、その要員にと・・声をかけてくれたのですが、結局、専門分野の違いなどから断念し、別の会社に入る事になりました。

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「でも中国勤務もよかったかも・・・」、この曲を聴いてちらっと、心の迷いというか、せつなさを感じました。

素敵な歌謡曲というのは・・・、確かに、どこかで、せつなさや、過去への思いを掻き立てるものだ・・とオヒョウは考えます。


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夏炉冬扇

今晩は。
「情」のある文章ですね。こういう文章は読み応えがあります。
by 夏炉冬扇 (2010-07-27 19:07) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。

歌謡曲は、私の一番苦手な分野です。それでも、車のラジオやCDから流れてくると、思わず情緒的になったりします。若い頃は毛嫌いしていた演歌も、ある年齢になると、よさが分かる・・と言われたことがありますが、そちらの方はまだまだです。
ただいま、私事でどたばたしており、ブログの更新が遅れておりますが、これからしばらく、長野の火祭りについて駄文を書き連ねようと思います。お読みいただければ幸いです。
またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-07-29 00:08) 

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