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【 泣いて馬謖を斬れない貴乃花 】 [雑学]

【 泣いて馬謖を斬れない貴乃花 】 

今回の野球賭博騒動の処分を巡って、理事会が紛糾し、貴乃花親方が辞意を表明して慰留されたとの報道がありました。

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大きく報道された角界の薬物汚染などの不祥事に危機感を持ち、慣例を破って理事選挙に立候補したほどの人物ですから、彼は野球賭博騒動についても事態を深刻にとらえて厳しい処分を主張し、それが受け入れられなかったから辞表を出そうとしたのかな? とオヒョウは思いました。

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しかし、予想は外れました。彼は、処分が厳し過ぎるとして、琴光喜を番付の降格処分だけにとどめ、再起の機会を与えるべきだと主張したそうです。退職の意志についても、正義感の発露ではなく、大嶽親方や、琴光喜を守ってやれなかった無念さによるものだ・・と聞いて、オヒョウは首を傾げました。 私が予想した彼のビヘイビアとは180度反対だったからです。

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一門のしがらみにとらわれずに、理事選挙で彼を応援した大嶽親方らを、貴乃花は、身内の子分と考えていたのでしょうか? 或いは、大嶽と琴光喜の解雇を、自分の派閥を解体・弱体化させるための陰謀だと、貴乃花は考えたのかも知れません。そこには正義感など関係なく、派閥の力学だけを考えた親方が存在します。

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選挙で自分を応援してくれたから、その人の面倒を見たり、可愛がったりするというのは、当たり前の様にも思えますが、民主主義の基本理念に反するものです。

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以前から日本の政治では、支援者や自分の地盤に利益誘導したり、便宜供与したりするのが当然のようになっています(田中角栄型政治)。そして議論の場は、建設的な討論の場ではなく、各分野の利益代表の駆け引きの場になっています。

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角界にも、派閥政治が横行し、各派閥の利害がぶつかり合っているであろう事は、よほどナイーブな相撲ファンでも理解しています。しかし、それを露骨に示してはいけません。 特に今回の様な刑事罰の対象となる様な事件で、身内だから庇うという姿勢を見せても、ファンの理解は得られません。 スポーツの世界は、常にフェアである事を示す必要があります。 大相撲の行司や審判員の裁定に私情や不公正があってもいけませんし、番付編成にも不公平があれば、ファンは冷めて離れてしまいます。

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その辺りの非理曲直が分からないとしたら、大横綱の名に瑕が付くというものです。では貴乃花親方はどう行動すればよかったのか・・。

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彼は思い切って厳しい処分を主張すればよかったのです。全ての賭博に関与した親方、力士を全員追放して、理事長は責任を取って辞職し、名古屋場所は中止すべき・・と主張すればよかったのです。彼は選挙の経緯から、もともと理事会では異端・非主流派ですから、執行部や理事長を追及できる立場にありました。そして彼の主張が通らないなら・・辞意を表明すればいいのです。

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記者会見では、涙を流し「琴光喜と大嶽親方を特に信頼していた。だから裏切られた思いで一杯であり、特に厳しい処置をお願いした」とコメントし、理事長辞任や名古屋場所中止の主張が受け入れられなかったので、自分が辞表を書く・・・・と主張すれば、世の人は「なんとあっぱれな親方であることか!さすが角界の名門に生まれ、大横綱だった男だけの事はある」と讃えるに決まっています。 どうせ辞表は受理されないに決まっていますから、自分も安泰です。

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貴乃花は、そんな事を考えないところが真面目な相撲取りらしさとも言えますが、身内に甘い事を肯定する意識があっては角界の浄化はできません。

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今回の騒動で、理事長代行を外部から招いたのは日本相撲協会の数少ない救いです。外部から人を入れず、唯我独尊になっている世界は堕落します。プロ野球にあるコミッショナー制度は、プロ野球界が腐敗・堕落しない為に、相当役立っています。(江川騒動の時などは、全く無力でしたが)。

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横綱審議委員会のようなお飾りではなく、もっと厳しいご意見番が相撲協会には必要です。 オヒョウが最も敬愛した横綱審議委員は、故高橋義孝先生、それに続いて、田中角栄を逮捕した故稲葉修法相です。彼らが存命で、角界に対して、もっと発言力がある立場であったら、もっと厳しい処置がくだされたでしょう。おそらくは名古屋場所の中止という事になったでしょう。

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もう一つの救いは、力士の国籍を誰も気にしない事です。琴光喜の追放に関連して、幕内上位に日本人力士がいなくなる事を嘆く意見がありません。横綱・大関陣が外国出身力士で占められる状況下で、数少ない日本人の上位力士琴光喜の廃業を惜しむ声があるかと思いましたが、それがありません。 大麻汚染問題や横綱の不品行が問題視された時も、外国人力士だから罪を犯すのだ・・という意見はありませんでした。

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大相撲が国際化しつつある事の証拠だと思いますが、その一方でこのスキャンダルが、全世界で報道されている事も本当です。そして、海外の多くのマスコミはNHKの様に、甘い報道はしていません。


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雪紘

貴乃花親方の件は私も不思議に感じました。
以前は圧倒的に多かったNHK中継反対の声も、
謝罪会見後、ある番組が独自に調査したアンケート結果は賛成反対がほぼ二分…

このまま一件落着となってしまうのは頂けない気がするものの、
根強い相撲ファンがいる事を知り、胸中複雑です^^;
by 雪紘 (2010-07-06 14:23) 

笑うオヒョウ

雪紘様 コメントありがとうございます。

芸能界やプロスポーツなど、興行を常とする業界で、本当の意味で裏社会と手を切るのは至難かと思います。TV局が日本相撲協会の追及に及び腰になる理由は不明ですが、芸能界との関係もあり、周囲が”叩けばホコリの出る”組織ばかりというのもあるかも知れませんね。

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-07-06 15:04) 

上野まり子

こんにちは 上野まり子です。

外部理事長が一時的に入られた事はとてもよかったと思います。
これが一時ではなく通常になる可能性はないのでしょうか。
記者会見の時のあの理事長のマスコミに対する言葉にも首を傾げました。
それなら会見はやるべきではないでしょう。
勿論TVでは編集をしてありますから前後があるかもしれませんが
TV局や記者に会見するわけではなく、それらを介して多くの一般の方に
理解を得ることや説明をする為に行われるべきでしょう。
幼い頃より相撲の世界だけにいらした方ではない人に
理事長をしていただくほうがよいのではないかと思います。
これは一般の社会人としての意見です。
専門の方はまた違うご意見をお持ちかと思いますが。
by 上野まり子 (2010-07-07 02:46) 

笑うオヒョウ

上野様 コメントありがとうございます。

日本の演歌歌手のプロダクションや興行主の世界をみると、どうしても裏社会との繋がりが消えないみたいですが、外国のスターを招く場合はそのあたりのしがらみがなくて清潔かも知れませんね。大相撲の場合も外国人力士がスターになっていますが、しきたりは古いままのようですね。

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-07-07 12:31) 

笑うオヒョウ

雪紘様 上野様 コメントありがとうございます。

相撲は、外国では単なる競技ではなく神秘性を持った儀式として紹介されていますが、同時にいさぎよさの競技であるとされています。審判の号令ではなく、競技者自身が阿吽の呼吸で試合を開始する事や、行司の裁定に対して、競技者自身は決して抗議したり異議を唱えない事、勝っても誇らしげに振舞ったり喜びを表情に表さない事などが、誇るべき日本の精神に通じるというのです。 だから欧米の知日派の教養人には相撲ファンが多いのだと私は思います。フランスのシラク前大統領が訪日予定を組む時、小声で「日程は大相撲の本場所期間中に合わせてくれ」と頼んだのは有名な話です。
今回のスキャンダルで、相撲を神聖視する海外のファンが失望する事も私には残念です。

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-07-07 12:31) 

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