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【 中国でこれから値上がりするもの 】 [中国]

【 中国でこれから値上がりするもの 】 

以前、人民元の切り上げの可能性について拙文で言及しましたが、現在経済成長が続く中国ではいろいろなものが値上がりしているそうです。都市の不動産価格は投機目的で上昇していますし、同じく都市部の勤労者の給料も上がっています。 ものによって早い遅いはありますが、これから多くの物価が上昇していくはずです。 その中で、最後になるのは、人の命の値段かも知れません。

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需要と供給のバランスで価格が決まるのなら、人口が多すぎる中国で、人の命の値段が安くてもしかたない・・というのは冗談で、どんな国でも人の命の価値は同じだというのが、オヒョウの考えです。

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しかし、現実はそうでもありません。中国の山西省を中心に分布する炭鉱では毎年60008000人が事故で命を失っています。安全対策設備を充実させれば犠牲者は減りますが、設備投資額と遺族への補償金を天秤にかけて、人命の方をないがしろにする経営判断がなされてきた訳です。

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オヒョウが中国に赴任した頃、交通事故で人を死なせた場合の賠償額は、( 農村で農民を死なせた場合 )日本円で10万円見当でした。だから遺族への賠償額よりも、車のフェンダーやボンネットの修理代の方が高くつく事があり、加害者は人を死なせた事よりも、自分の車の修理代を嘆いた・・なんて話もありました。

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しかし、人命を軽視する風潮は急速に改まるかも知れません。オヒョウの理解では政治が民主化されないと、人権に対する理解も深まらず、人の命の値段も上がらないはずなのですが、中国では違うようです。グローバル化の中で、商品の競争力を高めるには、人命軽視は許されない・・という考えです。

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具体的には、中国では自動車の安全性能が近年著しく向上しているそうです。

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先日、オヒョウはある機械商社のセミナーを聴講しました。講師はブラザー工業の産業機器営業部の企画管理Gr.の小島氏です。伺ったのは、世界の環境対策車(EVだとかハイブリッド車)の今後の動向についてのレクチャーです。話の内容は面白く、簡潔にまとまっていて、オヒョウにはとても貴重でありがたい講演でしたが、中でも興味深い話が1つありました。

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中国の江陵汽車製の乗用車「陸風」がドイツの安全性審査機関(ADAC)の評価でゼロポイントという過去最低の評価を得たという話です。実際に実験映像を見ると、正面衝突で運転席が潰され、インパネなどが、キャビンに飛び込んで致命傷を与える可能性が伺えます。勿論エアバッグはありますが、申し訳程度の効果しかありません。・・・・これはひどい・・・・

しかし、小島氏はその直後にBYDの乗用車の正面衝突実験の映像を見せました。 BYDとは? 実は中国の携帯電話用電池のメーカーです。新たに自動車産業に参入したもので、今後の電気自動車普及の台風の目になる可能性がある会社です。こちらは、ボンネット部分がクラッシャブルゾーンとして完全に潰れる一方、キャビンの方は堅牢そのもので潰れていません。ウィンドシールドと呼ばれる窓ガラスも割れていません。これならレクサスやメルセデスと比較しても遜色ありません。

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小島氏は、ほんの2、3年の間に中国の技術は進歩する。かつて危険きわなりない存在だった中国の自動車も、短期間にレクサスと肩を並べる安全な車になった。(だから、EVやハイブリッド、燃料電池車でも中国の技術は、すぐに進歩するかも知れない・・・・・)と説明します。

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実は、オヒョウの学校時代の専門は安全工学で、私は自動車の安全性には一家言があります。 現在もっともオーソドックスな自動車設計の考え方は、エンジンルームなどのクラッシャブルゾーンを徹底的に潰して衝撃エネルギーを吸収する一方、乗員がいるキャビンには剛性を持たせて、潰さないという考え方です。

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しかしこれは簡単なようですが、簡単ではありません。キャビンを保護するには、剛性を持たせる必要がありますが、軽量化との兼ね合いで、高張力鋼で周囲を囲ったりします。具体的にはピラーやサイドインパクトビームに120Kf/mm2の超ハイテン鋼を使ったりします。しかし破壊時はその破片が槍になって、運転席に突き刺さる可能性があり、諸刃の剣です。クラッシャブルゾーンからエンジンが飛び込めば致命傷になります。

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自動車の安全設計は、泥臭い工夫と、有限要素法で計算された衝突シミュレーションの結果で実現するもので、簡単に模倣できるものではありません。例えば、他社製自動車を分解して調べるリバースエンジニアリングを行っても、本当のところは分かりません。手っ取り早く、技術を手に入れるには、ボルボなど安全設計で先進的と言われる会社を買収する事ぐらいです。

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BYDがいかなる工夫をしたかは分かりませんが、短期間の内に安全設計を身につけたとすれば、これは驚異的な事です。

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しかし、中国で人命の価値が見直され、それで自動車設計が洗練されたものになったのなら結構な事ですが、単にそうしないと欧米で売れないから・・・というのでは、中国の夜明けはまだ遠いと、オヒョウは思います。


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