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【 丸の内M善 その2 】 [雑学]

【 丸の内M善 その2 】

Y博士と川崎のご隠居が「オオッー」と声をあげたのは、M善の民俗学の書物のコーナーです。 そこの棚には、表紙が見える様に横置きされたY博士の新刊書が置かれていました。出版元は角川書店です。

本の題名は「郷土史と近代日本」です。

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さらに探してみると、岩田書店発行のY博士の著作が複数、書棚に並んでいます。 一般啓蒙書ではなく、学術専門書なので、そうたくさん売れる本ではありません。 彼は自分の著作が一般の書店の棚に並んでいるのを初めて見たそうです。

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「 いやぁ 感激したねぇ。 これまで東京駅の近くというとYブックセンターばかりだったけれど、これからはM善にも来ることにしよう 」とY博士。

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オヒョウは別の事を考えます。

「 地方には、これだけ多くの本が置いてある書店はないよ。それどころか、今ある本屋さんも、どんどん撤退したり廃業している 」

「 確かに、都会と地方の格差は、書店の数と規模を見る限り、どんどん拡大してきているね。 これは問題だ 」

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でも、この問題を深刻化している張本人は私達自身でもあります。最近はインターネットで本を買う事が多くなりました。それは確かに便利ではありますが、ふらっと立ち寄った本屋で、面白そうな本を物色するという楽しみというか知的刺激も失ってしまいました。そして地方の本屋は客を失っていきます。

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インターネットで本を探すというのは、3人共通ですが、その後の買い方は微妙に違います。Y博士は、インターネットで在庫の有無を確認して購入し、自宅に取り寄せます。オヒョウは、インターネットで注文し、近くのコンビニに配達してもらったり、鹿島の留守宅に配達してもらいます。川崎のご隠居は、在庫を確認すると池袋の書店まで足を運んで購入します。彼は書店内を歩いて、いろいろな本を物色する楽しみにこだわるのです。

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書架に並ぶ、Y博士の著作を見ると、かなり以前の初版本がそのまま置いてあります。「 滅多に売れない本なのに、ちゃんとこうして置いてあるのは実に良心的だねぇ 」とY博士。ここでウカツに頷いてしまっては、彼の本が売れない事を認めてしまうので、返答に窮しますが、オヒョウは答えます。

「 東京駅の目の前の、坪単価が最も高いオフィスビルに設けた本屋で、売れない(もとい回転しない)商品を長期間、並べて置くというのは、確かに太っ腹で良心的だけれど、経営としてはどうなのかね?」

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川崎のご隠居は「 しかし、売れるものだけを、あるいは回転の早いものだけを並べるのだったらM善はコンビニの雑誌コーナーと同じ事になってしまう。 経営効率としてはいいだろうが、それではつまらない。M善のアイデンティティを保つためには、例え数は出なくても専門書や学術書を揃えなければいけない。それが老舗書店の矜持というものだろう 」

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川崎のご隠居は、かつて全国に展開する大手スーパーのPOSシステムの仕事をしていた事があるので、小売業の各店舗のあるべき姿と言う点でも一家言があるのだろう・・と、オヒョウは考えます。

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そしてこれは、書店だけの話ではありません。全ての商店に共通する問題があります。 今、日本では、全国、どこでも同じ商品、画一的なサービスを提供するチェーン店が大流行です。或いは無店舗販売の商店、無在庫の商店が流行っています。一方で豊富な品数を誇る百貨店は軒並み窮地です。オヒョウが暮らす北陸の街でも、その地方を代表する百貨店が閉店に追い込まれました。

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いわゆる専門店でも、画一的で安価な商品を大量に売る量販店が流行り、本当の”専門店”は姿を消しつつあります。いや日本では・・と言いましたが、これは外国でもそうかも知れません。あまり断定的な事は言えませんが・・・。

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上記の事情は書店だけでなく、多くの商店に共通の事情ですが、それ以外に書店には固有の問題があります。

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それは、電子書籍時代の到来です。既に、米国ではアップル、グーグル、アマゾン、ソニーらが、ビジネスを開始し急拡大しています。彼らが虎視眈々と狙うのは日本市場。日本語はアルファベットじゃないから容易には参入出来ない・・なんて寝言を言っている余裕はありません。

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もはや、4隻の黒船は浦賀沖に到着しているというのに、日本の出版界は、作家の著作権や版権は守られるから大丈夫などと、眠たい事を言っています。 音楽CDの時だって、著作権は守られましたが、あっという間にMP3が普及し、CDの売上は激減したではありませんか。

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電子書籍が普及すれば、

1.昔ながらの手法の出版社。

2.紙問屋

3.印刷会社

4.書籍の問屋

5.小売店

6.古本屋

7.チリ紙交換等々、

ありとあらゆる業界が深刻な影響を受けます。それなのに、ああ、皆さんは実にのほほんとしています。

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2,3年後に我々が、東京に集まり、M善に来ても、もはや書架に本は並んでいないかも知れません。 ああ、それどころかM善自体が姿を消しているかも知れません。 まあJAXAの展示場の方が早く姿を消すでしょうが・・・。

PS ソフトバンクがi-Pad を予約販売する事になりました。 5月10日受付開始です。

既に黒船は上陸しました。 


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コメント 2

Dr.Y.

この前はM善で楽しく過ごせて、ありがとうございました。また、私の本の宣伝?もしていただき恐縮です。
電子書籍の未来については、よく分かりません。レコードとかと違って、本はかなり歴史が古いので、すぐ無くなるとは思えませんし、学術書は少なくとも人文系はなくならないのでは?(もっとも、ものすごく高くなるかも?)
私がM善での会話で感じたのは、少し違ったことでした。地方で本の小売り業が苦しくなっているのは、家電製品とかと違って再販価格制度があるため、定価販売を余儀なくされているということです。拙宅から北陸K市の繁華街に出るためにバス代が540円かかりますので、繁華街の本屋で買うとアマゾンよりバス代分損することになります。
by Dr.Y. (2010-05-10 17:12) 

笑うオヒョウ

Dr.Y様 コメントありがとうございます。

確かに再販制度はこれから議論すべき話題と認識します。
化粧品の再販制度は不可で、書籍は可とする根拠がよくわかりません。

それと、紙の書籍は、他のメディアより長持ちして、古くなっても残るという話がありますが、私の書棚の古い本はみな、紙が茶色になってしまいました。
紙を製造する際の硫酸成分などが残っているのかな?と思いますが、他のメディアに対する優位性を保つなら、もっと上等な紙を・・・使ってほしいと思います。
by 笑うオヒョウ (2010-05-13 12:58) 

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