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【 そんなに偉いか 坂本龍馬 その1 】 [雑学]

【 そんなに偉いか 坂本龍馬 その1 】 

実際はどうだったか分かりませんが、幕末から明治維新にかけては、日本人にとってロマンあふれる時代です。魅力的な人物が多数、歴史の舞台に登場し、しかも若い人が大活躍しています。 そしで不思議な事にドラマの悪役となる人がいないのです。 強いて挙げれば、悪玉は安政の大獄を断行した井伊直弼や、意気地なしの徳川慶喜ぐらいですが、井伊直弼も舟橋聖一の「花の生涯」に描かれた様に、善玉にする見方もあります。徳川慶喜だって、頭脳明晰だったようで、大河ドラマの主人公にもなっています。

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尊王派も佐幕派も、両方とも善玉というのでは、チャンバラの物語にはならないはずなのに、ドラマは成立します。そうなったのは、明治維新を舞台にした作品が多い司馬遼太郎の影響でしょう。 それまでは、尊王=善玉、佐幕=悪玉という鞍馬天狗型の典型的な図式が多かったのに、司馬遼太郎は両方にスポットライトをあて、両方を主人公にした作品を書いています。

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幕末・維新の頃の小説で気付くのは、必ずしも戦争を遂行した人物や戦争に勝利した人がヒーローではなく、むしろ戦争をしなかった人、押しとどめた人がヒーローである事です。普通の歴史ドラマであれば、戦いに勝利した人や、武運つたなく敗れた人が主役であり、戦争に参加しなかった人物は主人公にはなりません。しかし、明治維新は必ずしもそうではないのです。

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例えば、ヒーローのひとりである西郷隆盛の人生のハイライトは、勝海舟と談判して江戸を無血開城した時であり、その前後の戦争は、彼の評価を高めるものではありません。特に最後の西南戦争は、晩節を汚した出来事です。

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幕末のヒーローで人気ダントツなのは、坂本龍馬ですが、彼も戦争で活躍したヒーローとは言えません。 そして彼がなぜ偉いのか、なぜ人気があるのか、オヒョウにはよく分かりません。

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でも、歴史上の人物に関するいろいろなアンケートの結果でも、彼は人気No1の英雄ですし、政治家の中には、龍馬人気にあやかろうと、自分を平成の坂本龍馬の如くに語ったり、選挙ポスターにちゃっかり龍馬の写真を取り込むおっちょこちょいもいます。 大人だけでなく、小中学校の児童・生徒にきいても、歴史上の人物として龍馬は一番人気だそうです。

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しかし、龍馬を好きだという人に、では彼の業績は?と問うてはいけません。きっと彼らは口ごもってしまいます。彼の功績は

1. 犬猿の仲だった、薩摩と長州を引きあわせて倒幕同盟軍を作った。

2. 大政奉還の文言の草案を作った。

3. 日本初の総合商社を作った。

4. 日本で初めて新婚旅行に行った。

5. 日本初の海難審判の当事者になった。

5つぐらいでしょう。 日本初・・というのは、実はそれほど重要な事ではありません。 日本で最初に新婚旅行に行ったからといって尊敬される理由にはなりません。

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それ以外の業績も、現代の物差しに当てはめてみると、必ずしも誉められた話ではありません。例えば、総合商社の元祖 亀山社中(後の海援隊)とは、密輸入した外国の武器を、国内の各藩に売りさばいていた死の商人です。密輸商人というだけでアウトローですが、更に、武器商というのであれば、現代なら全くいいイメージがありません。彼らが各藩に売りつけた武器が内戦に用いられ、多くの日本人が血を流したのです。

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しかも、海援隊は、いろは丸事件という海難事故を起こしています。紀州藩の明光丸という船と瀬戸内海上で衝突し、いろは丸が沈没した事故で、どちらに非があったかは今となっては分かりません。しかし龍馬は海に没した積荷の明細を偽り、紀州藩に多額の弁償を迫り、7万両をせしめています。その方法は、世論を喚起して、相手の非をならし、体面を気にする紀州藩に圧力をかけて、交渉を有利にするという方法で、例えは悪いですが・・・暴力団の交通事故の対応に似ています。

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龍馬が特に長けていたのは(表現が甚だ下品ですが)Deep Pocketを見つけて金をせびる術です。 Deep Pocketとは、大企業やお金持ちなど資金力のある存在で、揉め事や事件があった場合、最終的にDeep Pocketが金銭を負担して決着する・・という事になります。例えば、PL法関連で、工業製品の品質問題で賠償責任が発生した場合、最終的に最も資金力のある会社が訴えられお金を払う事になります。 

具体的には、トヨタ車の暴走事故が北米で発生した場合、原因はともあれ、Deep Pocketであるトヨタ自動車本体が小切手を切るしかありません。

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坂本龍馬が優れていたのは、Deep Pocketを見つける嗅覚です。海援隊の資本金は、福井藩の松平春嶽から出して貰い、海難事故では紀州藩から金をせしめています。それはともかく、龍馬に人気があるのは、司馬遼太郎の小説によるところが大きいと思うのですが、他にも大きな理由があります。それについては、次号で申し上げます。


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夏炉冬扇

今晩は。
龍馬は好きではないのです。ドラマも見ないし。
西郷は好きです。
全く関係ありませんが、某国営放送の時代劇、役者が「みぎれい」過ぎます。あれはぞっとします。

by 夏炉冬扇 (2010-04-09 17:45) 

おじゃまま

同郷としては肩を持ちたいところですが…。
次号期待。
by おじゃまま (2010-04-10 00:06) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。

返信が遅くなり申し訳ありません。
役者がみぎれい過ぎる事には、同感です。ただ、ひとつ思い当たる事があります。 世阿弥の風姿花伝には、役者が演じる時は、例え乞食の役柄であっても、それなりに身奇麗にする事。写実を追求するあまり、本当にみっともない様を示してはならない・・・とあるそうです。役者にはある種の花というか派手さが必要なのだと思いますが、私は、昔の人が普通に着ていた地味な服装の方にリアリティを感じます。 またのご意見をお待ちいたします。
by 笑うオヒョウ (2010-04-12 12:31) 

笑うオヒョウ

おじゃまま様 コメントありがとうございます。

ちょっと週末にドタバタして、ブログの更新が遅れております。
本日夜に、龍馬論の続きを書きますので、暫時お待ち願います。


by 笑うオヒョウ (2010-04-12 12:33) 

MORI

竜馬は戦争に参加してますよ
by MORI (2010-04-14 14:39) 

笑うオヒョウ

MORI様 ご訪問そしてコメントをありがとうございます。

ご指摘の通り、龍馬は船を率いて第二次長州戦争に参加していました。
恥ずかしながら、見落としておりました。
ご指摘に感謝します。

これからもミスや錯覚があったら、ぜひお教えください。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-04-14 17:39) 

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