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【 一粒の麦死なずば その2 松下塾の場合 】 [雑学]

【 一粒の麦死なずば その2 松下塾の場合 】 

一粒の麦が地に落ちて、豊かな実りをもたらす・・・例を挙げよと言われれば、教育の世界にいい例があります。何時の時代も人気がある、幕末の志士の物語では、吉田松陰が開いた松下村塾が数々の優秀な人物を輩出した学校として知られています。

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吉田松陰が、この塾を主宰したのは、ごく短期間でしたが、塾生は松陰から絶大の影響を受けた様です。そして松陰自身は、明治維新の前に他界しましたが、その教え子は明治期に大活躍した・・・という訳で、松陰という麦が一粒地に落ちて、広大な麦畑ができたと言えるかも知れません。

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急に話は現代になりますが、先日、民放TVで松下政経塾を紹介していました。松下政経塾は、オヒョウが学校をでる頃に、松下幸之助が、未来の日本を担う指導者を育てようと私財を投じて作った学校です。 晩年の松下翁が、日本の将来を憂いていた事はよく知られていますが、松下政経塾の設立で、彼の期待した成果がえられたかは、甚だ疑問です。

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誰も言いませんが、松下翁は、松下政経塾を昭和の松下村塾にしたかったに違いありません。単に名前が同じ松下だという低次元のダジャレが恥ずかしいのと、自分を吉田松陰になぞらえるのが、おこがましいから、決して口にはしませんでしたが・・・。そして彼は一粒の麦になろうとしたのかも知れません。 しかし、現実はどうか?

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松下政経塾出身の国会議員は30人以上います。他に自治体の首長や地方自治の政治家として活躍する人は多く、また実業界で活躍している人も多くいるそうです。 塾出身者の政治経済への影響力は確かに無視できません。国会議員では、民主党の人が多く、昨年の政権交代で漸く、実力を発揮できる時代になったと言えます。

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ご同慶の至りですが、TV番組の中で、いみじくも前原国交相が言っていた通り、松下翁が存命なら「国会議員が30人以上いて、このていたらくは何だ!」と一喝されたかも知れません。

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松下政経塾出身者に限らず、また民主党の議員に限った事ではありませんが、多くの政治家は、長期的なビジョンもバックボーンとなる信念も持ち合わせていません。オヒョウの見る限り、目先の点数稼ぎや、有権者にアピールするためのTVカメラの前のパフォーマンス、或いは有権者に媚びるポピュリズムに終始しています。

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まあ、首相からして、日々、方針や考えが変わり、周囲が振り回されるのですから仕方ない面もありますが・・・・。

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晩年の松下翁は、日本は無税国家を目指すべきだ・・と主張しました。国が歳出を切り詰め、財政を健全化し、やがて国家財政に余裕ができれば資金を蓄え、それらの資金の運用で得られる利益で、国家予算を賄えるようになる。 そうすれば無税の国家が実現する・・という意見です。

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勿論、財政の素人である松下翁の意見は、かなりムチャクチャです。歳出を切り詰める過程で、必要な支出ができない為に、国民は大変な不利益をこうむりますし、やがて無税の豊かな国家が実現するとしても、世代間の不公平が大きくなってしまいます。

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それに無税化すると、租税の持つ所得の再配分という重要な機能が失われます。松下翁の発想は、重税感が強い一方で、資金運用で利益をあげられる大金持ちの人の考えであり、そのまま国家に適用できるものではありません。

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世界を見渡しても、直接税を無税化しているのは、ブルネイ、モナコ、リン鉱石が枯渇する前のナウル共和国など少数で、大きな国ではありえない事です。

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現実には、赤字国債を無くす事はできず、国の負債は増え続けています。このままでは多分、増税も避けられない見通しです。民主党政権の責任とは言えない部分も多いのですが、前原氏が「・・・このていたらくは何だ!」と自嘲するのも、無理からぬ事です。

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でも松下政経塾出身者について、感心する事が、ひとつあります。それは彼らが徒党や閥を作らない事です。自民党でも民主党でも、国会議員は世襲が多くなり、今は政治家の家系に生まれなければ、政治家になれない時代です。その中で松下政経塾出身の人々は徒手空拳で地位を手に入れたエリート集団です。だから、彼ら同士でグループを作っても自然なのですが、そうはしません。そしてそうしてはならないのです。

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ある地方を代表する名門校の卒業式で、校長先生が卒業生に「これからは、皆さん、お互いに仲良くしてはいけません」と語ったと聞いた事があります。オヒョウのごとく逆説で語る先生ですが、その意味は理解できます。これは卒業生達が、その地域で学閥を構成すれば、なまじ名門校であるだけにエリート意識の強い排他的な組織になり、弊害が必ずあるだろう。また外部からは疎まれるに違いない・・・という配慮です。松下政経塾の卒業生には、今のところその問題はないみたいです。

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一方、160年前の松下村塾の卒業生はどうだったか?彼らは、松下村塾の学閥こそ作りませんでしたが、長州藩の藩校明倫館の卒業生も合わせて、強大な長州閥を作りました。薩長の藩閥政治の影響は、オヒョウの理解では日露戦争終結まで、他の人の意見では原敬内閣ができるまで続いたとされます。 

或いは、長州閥の系譜は岸信介、佐藤栄作、安倍晋三まで続いているかも知れません。どうも吉田松陰の一粒の麦は、繁茂しすぎたのかも知れません。現代の松下政経塾の麦畑がこれからどうなるか、オヒョウには分かりませんが。


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広島ピアノ

一粒の麦が地に落ちて、豊かな実りをもたらす。

本当に養育は大切だと思います。

今回もブログへのコメント、ありがとうございました。
by 広島ピアノ (2010-04-09 10:04) 

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