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【 受動喫煙論 】 [医学]

【 受動喫煙論 】 

オヒョウの記憶では受動喫煙という言葉ができたのは35年ほど前です。これは、”Passive Smoking”という言葉を、日本語に訳したものですが、Passive Smokingという題の本が米国で出版されています。

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「諸君、この言葉を日本語でどう訳すかね?」と質問されたのは日吉の教養におられた遠藤教授です。

Passive=受身、受動態だから、受動喫煙でしょう」と誰かが答えました。

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「いや違う、もっと厳しい意味がある」と先生。

「この言葉には、本人の意に反して、強制的に煙を吸わされるという、人権を侵害する強制喫煙という意味も含まれる」

「タバコを吸って利益を得るのは本人だけ。傍らの人は利益がなくて煙ったい思いの不利益を被るだけだから、非受益者喫煙とも言える」

「副流煙が肺に入るのは、積極的な喫煙ではないから、現象的には消極的喫煙とも言える」

「自分自身は有害なガスを吸引しているという意識はないから、無意識喫煙という意味も含まれる」

「煙が付着した食品などを摂取する事もあるし、妊娠中の女性が、夫のタバコの煙を吸えば、胎児への影響もあるから、間接喫煙という意味もある」

実際、”Passive Smoking“には、夫がタバコを吸うと、同じ部屋にいる妻の胎児の心拍数が上がるという実験データがありました。

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「つまり、Passive Smokingという言葉には多くの意味があり、生理学、病理学、人権論、人間関係論などから多面的に見た解釈ができるのであり、単に受動喫煙などという直訳で済ませてはならない」と先生は言われたのですが、結局マスコミ用語としては受動喫煙になってしまいました。

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この受動喫煙論には、30年間、実にくだらない些末な議論も多くありました。

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曰く、フィルターを通らない副流煙の方が主流煙(そんな言葉があるのかな?)より、ずっと有害なので、タバコを吸う本人には害はないが、吸わない人には多くの害がある。 → だから、火を付けたタバコをそのままにせず、皆さんタバコをせっせと吸いましょう。

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タバコ自体の煙の毒性は低いが、紙巻たばこの紙が燃えると有害な煙がでる。→ だから皆さん、葉巻かパイプタバコを吸いましょう。

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今思えば、珍説と言えますが、当時は真面目に考える人もいました。これらの説は、具体的な根拠に乏しく信用できませんでした。一応医学博士と名乗る人が唱えていたりしますが、実はその医師自体が愛煙家で喫煙を弁護したり、抜け道を探すために論じていた気がします。あるいはタバコ産業から賄賂がわたされていたか・・・。

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各種のガンで、喫煙者と非喫煙者で罹患率に差があり、最終的には平均寿命についても喫煙者と非喫煙者で違いがある事は、統計的に明らかです。 しかし、具体的な因果関係のメカニズムについては未解明です。

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タバコの煙ひとつをとっても、ニコチン、タール、一酸化炭素など、複数の有害物質が含まれます。タールとひとくくりにしますが、その中にも3-4ベンツピレンなどの発がん性物質やダイオキシンが含まれる訳で、それぞれの人体への悪影響については独立して検証されるべきです。

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しかし副流煙論や紙巻タバコ悪玉論には、その種の詳細な検討が抜けていました。単に、フィルターを通らない煙の方がより有害だという単純な議論になっています。 それは部分的であれ、タバコの有害性を否定する議論に持ち込む為に、わざと科学的な緻密さを欠いたのではないか?とさえオヒョウは思います。

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現実には、非喫煙者でも家族や周囲の人の喫煙に常にさらされていた人は、ガンや一部の疾患に罹る確率が明らかに高く、受動喫煙の害は間違いないそうですが、その検証が不十分です。

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実際には、受動喫煙の議論では科学的・医学的な検討よりも、人々の権利意識が重視されました。

嫌煙権という言葉ができた時に「嫌煙権を認めるなら喫煙健も認めるべきだ。そうでなければ公平を欠く」と言ったのは製鉄所時代の上司です。

大会社というのに、こんな意識レベルの人が管理職をしているのか・・と暗澹とした気持ちになったのを記憶しています。

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オヒョウは「両方が利益を得る場合、または両方が行為の実行や中止を決定できる場合は、双方の権利を認めなければバランスを欠くけれど、喫煙の場合は違う。 喫煙者は非喫煙者に対して一方的な加害者で、不利益を与えるだけだし、タバコを吸うか吸わないかも、喫煙者だけが判断できる立場にある。だから保護されるべきは、非喫煙者の権利だけだ」と説明しました。

しかし、その鉄冶金の技術者には、オヒョウの理屈は理解できなかったようです。・・・でも日本の場合はまだましです。

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人々の権利意識が希薄な中国では、喫煙はあたりまえの習慣であり、場合によっては、上位の人から強制されれば、押し付けられたタバコを吸わざるをえない場合もあります。

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受動喫煙の問題を重視する神奈川県では、4月1日から条例で公的な空間での喫煙を禁止していますが、その話を中国の人に話しても、できの悪いエイプリルフールだと思われるでしょう。

ちなみに、中国語ではエイプリルフールを愚人節と言います。なんだか言い得て妙ですね。そして中国では、オヒョウの知る限り、まだPassive Smokingに対する適切な翻訳はないようです。


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夏炉冬扇

今日は。
煙草は吸わないので、やはり近くで吸われると堪らないです。
値上げ賛成論者。
by 夏炉冬扇 (2010-04-02 12:34) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。

私も全くタバコを吸いません。大人になった頃、友達が私に勧めましたが断りました。 なぜなら、私はとても意志の弱い男なので、一度タバコを始めたら、禁煙する事などできないと思ったからです。

タバコを始めれば止める事はできない。 タバコを始めない内は、吸う事も吸わない事も自分で判断できる。 人生の自由度を確保するために、安易にタバコを吸う事は避けようと思った訳です。 今思えば、それなりに正しい判断だったかも・・と思っております。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-04-02 17:25) 

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