SSブログ

【 セサミストリートの挫折 その2 】 [アメリカ]

【 セサミストリートの挫折 その2 】 

セサミストリートのもともとの趣旨は、移民などのマイノリティの子供に英語を教える事でした。国民全てが共通の言語を話す事で、差別をなくし、平等化を図るという発想ですが、世の中の流れは、全く反対でした。

・・・・・・

マイノリティのアイデンティティを認めよ・・という発想の延長には、メキシコ系はスペイン語を話して何が悪い?英語を押し付けるな!という主張があります。同じ様に中国語や韓国語も認めろ・・と言い出したら、アメリカもスイスみたいな多言語国家になってしまいます。TV放送が多チャンネル化したり、音声多重化したことも、多言語化を容認する方向に拍車をかけました。

・・・・・・

米国では1960年代の公民権運動の結果、公的権利は人種や民族によらず、平等に与えられるようになりました。そして70年代以降は、更にそれを進めてマイノリティの立場に配慮する発想が強くなりました。少数派には、その人口比率に応じて優先的権利が与えられる一種の逆差別とも言うべき、Affirmative Actionが始まったのも、その頃です。例えば、大学の医学部の入学定員には、一定のマイノリティ枠が設けられ、本来の合格点に達しなくても、優先的に入学が認められたりします。

・・・・・・

米国の医学部は、学部を卒業した後に入学する大学院格ですが、学部での専攻分野とは無関係に受験できます。スペイン語を専攻した文科系の学生が、医学部に入ると聞いて不思議に思いましたが「患者の中には英語を話さないヒスパニックもいるから、スペイン語専攻は役に立つ」という不思議な回答です。

・・・・・・

話が発散しましたが、多言語化を認めよ・・という流れは、等しく英語教育を・・というセサミストリートの所期のスローガンとは一致しません。いつの間にか、セサミストリートにはスペイン語も登場し、単に数字とアルファベットを幼児に教える番組に変化していきました。更には幼児に教えるのが難しい、シリアスな話題(生、老、病、死)なども取り上げ、幼児教育の別の課題に挑戦していく方向になっています。

・・・・・・

では多言語国家と、単一言語国家はどちらがよいのか?欧州の場合、圧倒的に単一言語国家の方が強くなります。フラミッシュ語とフランス語の2つの文化圏が相克しているベルギーはいまだに国家としての統一が弱いですし、4つの言語圏を持つスイスも19世紀にその統一に苦労しました。

・・・・・・

移民を先祖に持つ米国の歴史は、英語での統一の歴史です。漫画スヌーピーの主人公、チャーリー・ブラウンは、ドイツ系移民の一族で、その姓がBraunからBrownに変化していく過程が、ドイツ人からアメリカ人に変化していく葛藤の歴史です。オヒョウが英語を学んだ、アロヤベスクールの校長、アロヤベ先生はコロンビア出身で、自らが移民で英語を学ぶ苦労を知っていたから、外国人向けの英語学校を開いたのかも知れません。もっとも彼の発音は強烈なスペイン語なまりがありましたが・・。彼にとってもアメリカ人化の歴史は英語化の歴史です。

・・・・・・

一方、カナダはアメリカと違い、言語の統一をサボった国です。18世紀の7年戦争(上下カナダ戦争)で英国系カナダ人が全カナダを支配した後、征服したフランス系カナダ人地域の英語化をしなかった国です。今現在、単一言語のアメリカと多言語のカナダのどちらがいいかは不明です。しかし、アメリカ南部もやがてスペイン語化していき、カナダと同じ様に多言語国家になるでしょう。

・・・・・・

多言語国家の悩みが最も深刻なのは中国です。今は広東でも四川でも、普通語(北京語)が通じますが、まだ辺境には別の言葉を話す民族がいます。

・・・・・・

中国で暴動と鎮圧が繰り返される、チベットや新疆ウイグルは、そもそも言葉も文字も、漢民族のそれとは別です。違う言葉を話し、違う文字を用い、宗教も違うのなら、国家として独立しても良いではないか?という発想を共産党政権は最も恐れます。だから弾圧と暴動・鎮圧がくりかえされるのです。

・・・・・・

言語統一を重要課題とする中国政府にとっては、セサミストリートは最も有効なテレビ番組でしょう。だから将来、チベットや新疆ウイグルで北京語を話すセサミストリートが放映されるかもしれません。中央電視台が放映するその番組は、多分胡麻路という名前でしょう。

・・・・・・

しかし、放映権料や意匠権料が制作元のChildren Television Workshopに払われる事かどうかはわかりません。

IMG_0028.JPG
nice!(7)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 7

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。